正直、驚いたと言うしかない。原子力発電所の立地市町村を訪れると、地域事情を感じさせる原発がらみの"立て看板"に出会うのだが、この看板の文言には唸ってしまった。
「原電を妨害する人は上関町に来ないで!」.
原電とは原子力発電所のことだが、看板にはさらに「この町の大多数は建設を望んでいます」とある。
東京電力福島第一原発の事故に直面してなお、原発誘致を熱望する自治体があるのだろうか。あるとすれば、近隣への迷惑をかえりみない身勝手な言い分ではないのか・・・?
しかし、取材を進めるほどに、"地域エゴ"の一言で切って捨てることのできない過疎地の現実と、「国策」に翻弄され、原発マネーで歪んでいく地方の姿が浮き彫りとなる。
原発事故と地域発展のはざまで揺れる山口県上関町に入った。
川内原発を抱える鹿児島県薩摩川内市には原発賛成・反対、それぞれの立場の看板が道を隔てて並ぶ。
昭和59年の営業運転開始から30年近く経とうとしている川内原発であるが、薩摩川内市の2枚の看板は、いまなお反対運動の火が燃えていることを示している。
商工団体を中心に推進されてきた川内原発3号機の増設計画は、着工へのカウントダウンに入ったところで福島第一原発の事故が発生。再稼動問題も含め、先行きは不透明なままだ。
玄海町同様、3号機増設の裏に、原発交付金や九電のカネに頼ろうとする業者や自治体の思惑があることは言うまでもない。
上関町
山口県熊毛郡上関町。古くから瀬戸内海の要衝として栄え、万葉集にも詠まれた歴史ある土地柄である。
近年、この町の名前は「原子力発電所」の建設予定地として注目を集めてきた。
町内には、原発推進の立て看板が数多く立てられているが、極めつけが冒頭の看板だ。
中国電力が建設計画を進めてきた上関町の原発をめぐっては、賛成派と反対派の対立が続いてきたが、「原電を妨害する人は上関町に来ないで!」とまで踏み込む背景には何があるのか...。
次週から、上関原発建設計画をとりまく現実を報じていく。