プレスリリースでは、トヨタ自動車が人工知能の研究開発のため米国に設立したToyota Research Institute(TRI)がブロックチェーンと分散型台帳への取り組みを進めていることを明らかにしている。
ブロックチェーン/分散型台帳技術は、複雑な商流を持つ大企業や業界団体のデータ管理に適していると考えられている。利益相反する複数の当事者がデータを効率的に共有するための技術だからだ。自動運転車のためのデータ共有は、ブロックチェーン技術の重要なユースケースになるかもしれない。
特に以下の3分野への取り組みについて説明している。
(1) 自動運転車の開発のためのテストデータ共有を効率化
(2) カーシェアリング、ライドシェア
(3) 保険
上の(1)の分野について、TRIのモビリティ・サービス担当ディレクター、最高財務責任者(CFO)のChris Ballinger氏は次のようにコメントしている。
「安全で信頼できる自律運転自動車を開発するために、何十億マイルもの人間の運転データが必要になるでしょう。ブロックチェーンと分散型台帳により、クルマの所有者、交通管制、および製造業者からのデータをプールして、この目標に達する時間を短縮でき、自律走行技術の安全性、効率性、利便性を向上させることができます」。
パートナーとして、MITメディアラボと、スタートアップ企業群の名前が上がっている。企業名と担当分野は次の通り。
●独BigchainDB:自律運転テストデータのデータ交換基盤を構築中
●米Oaken Innovations:P2Pカーシェアリングのアプリケーションを開発中、トークンによる自動車へのアクセスと決済に取り組む
●イスラエルCommuterz:P2PカープーリングソリューションをTRIと共同開発中
●米Gem:トヨタの自動車保険関連会社TIMS(Toyota Insurance Management Solutions)およびAioi Nissay Dowa Insurance Services (あいおいニッセイ同和損保の米国事業会社)と協調
]]>
今回のエントリは、「Nexus 5X/Android6.0.1で突然モバイルデータ通信ができなくなる」症状で困っている人向けのメモです。まず、2016年3月10日時点での結論から記します。
事象1 モバイルデータ通信が突然OFFになる
対策「設定→データ使用量→モバイルデータ」をONに戻す (注:詳細はこの後の記事本文を見てください)
事象2 モバイルデータ通信がONでも通信できない
対策「設定→データ使用量→モバイルデータ」をいったんOFFにして、その後ONに戻す
以下、記事本文です。
2016年1月からスマートフォンNexus5Xを使っています。
最初にコメントしておきますと、Nexus 5Xは結構、お買い得の端末だと思って使っています。最近は、公式ストアやeXpansysで値引き販売されてますね。ディスプレイは高精細で大画面、動作はおおむね快適です。過去のNexus端末ではカメラの性能がいまひとつでしたが、Nexus 5Xではスマートフォンとしてのトップクラスに並びました(iPhoneのカメラと比べてもひけをとりません)。
ただし、弱点がいくつか報告されています。カメラアプリ起動が不安定な場合があること、利用中に動作が異常に重たくなる場合があることです。自分としては、これらの問題は、時々再起動することで実用上は回避できる現象だと感じています。3月セキュリティパッチではこれらの問題の解決を試みているようです(Gigazineの記事)。
今回、以下の2点の事象に遭遇して、解決に至るまでかなり不安を感じたので、同じ症状に遭遇した方のために記録に残しておきます。Google検索で「Nexus 5X データ通信できない」とか「Nexus 5X モバイルデータ OFF」などと検索しても、同じ事象の報告がなかなか見つからないので、あるいはレアな事象かもしれません。
(1)
事象1 モバイルデータ通信が突然OFFになる
対策「設定→データ使用量→モバイルデータ」をONに戻す
経緯
3/8、外出中に突然モバイルデータ通信ができなくなりました。機内モードをONにしてからもう一回OFFに。症状変わらず。再起動してみる。いぜん症状変わらず。別の端末でキャリアの障害情報を見るが、通信障害は報告されていません。また、音声通話を試すと可能だったので、SIM接触不良でもありません。
「設定→データ使用量→モバイルデータ」を見るとOFFになっています。これは、操作していないのにOFFになっていたのです。今回はアプリ利用中に突然通信できなくなった経緯であり、間違って設定を操作した可能性は考えられません。これをONに戻すことでモバイルデータ通信ができるようになりました。
(2)
事象2 モバイルデータ通信がONでも通信できない
対策「設定→データ使用量→モバイルデータ」をいったんOFFにして、その後ONに戻す
経緯
3/10の朝、Android6.0.1の3月セキュリティパッチを更新しました(セキュリティパッチがいち早く適用されるのはNexus端末のいい所です)。
その後、モバイルデータ通信ができません。再起動しても症状変わらず。「設定→データ使用量→モバイルデータ」を見るとONの表示になっているので、いったん「モバイルデータ」をOFFにして、その後ONにしてみると通信できるようになりました。
実は、少し前に使っていたZenFone5/Android4.4でも、(1)の事象は一回経験していました。なので、今回は比較的冷静に「ひょっとして、あの系統のトラブルかも?」といった形で解決できたのですが、とはいってもスマートフォンが突然通信できなくなる現象はストレスフルでした。
今回の「対策」は対症療法にすぎません。Androidの「ヘルプとフィードバック」から、事象の報告はしておきました。今後のNexus 5X/Android6.0.1のさらなる安定性向上を望みます。
]]>政府は、ブロックチェーン技術に基づく分散レジャー(分散台帳)の徴税、福祉、パスポート発行、土地登記などへの活用を真剣に検討するべきだ──こう聞くと「流行に惑わされたホラ話だろう」と受け取る人もいるかもしれない。だが、これは英国政府の科学技術に関する諮問機関であるGovernment Chief Scientific Adviser(GCSA)が先日発表した公式な調査報告書の中で、英国政府に対して提言している内容なのである。
]]><![CDATA[◎報告書のダウンロードページ(内容紹介ビデオあり)
https://www.gov.uk/government/publications/distributed-ledger-technology-blackett-review/
ブロックチェーン技術とは、暗号通貨Bitcoinのコア技術を他の分野に転用する文脈でよく使われる言葉だ。ブロックチェーンは、暗号技術と分散型合意形成アルゴリズムを活用することで、消すことも改ざんすることも盗難もできない「レジャー(台帳)」を作成する技術といえる。
大事な話なのでもう一度繰り返すと、「消すことも改ざんすることも盗難もできない」のだ。このような「分散レジャー」の性質は公文書の保管にぴったりではないか。こう考えるのは、むしろ自然なことだろう。
報告書では、英国政府に対して8項目の提言を行っている。特に、政府がリーダーシップを取るべきとし、また政府内にブロックチェーン技術に基づく分散レジャーを構築できる能力を保持すべきだとしている。また、積極的に現実の生活に結びつくアプリケーションに適用して実証し、その可能性を理解するべきだとしている。
報告書に記されている応用分野は、徴税、福祉、パスポート発行、土地登記など政府機関の主要分野である。つまり、政府の情報システムの作り方を大きく変革する可能性を真剣に検討せよ、と提言している。
報告書の中には、次の図がある。データベースに情報を格納する従来型の情報システムは、いわば「集中化レジャー」と位置づけられる。
集中型レジャー(従来型の情報システム)は、集中型であることが弱点につながる。例えばサイバー攻撃への耐性、無停止運転の可用性を向上するには、それ相応の工夫、コストが必要となる。分散レジャーの技術を取り入れることにより、システムのコストを抑え、可用性、サイバー攻撃への耐性を向上させられる可能性がある。これは真剣に検討するべき内容といえる。
セキュリティへの言及もある。分散レジャー/ブロックチェーンは原理的に改ざんに強いとされているが、システムにとって“合法的”な変更を強いるサイバー攻撃に強いとまではいえず、セキュリティへの配慮は必要であると指摘している。
また、報告書で紹介されている個別の事例、事実関係も興味深い。
●エストニア政府は、KSI(Keyless Signature Infrastructure)と呼ぶ分散レジャーを実験中である。エストニア、英国、イスラエル、ニュージーランド、韓国は「Digital 5(D5)」と呼ばれるグループを作り、政府機関のためのブロックチェーン技術の取り組みを進めている。
●Bitcoinのマイニングのため消費されている電力は1GWと推定される。これはアイルランド全体の消費電力に匹敵する。
●7人のコア開発者がBitcoin Coreのコードの7割を書いている
BitcoinのノードのためのソフトウェアBitcoin Coreのコードへの開発者の貢献を調べると、図のようになる。プログラムコードのライン数の69%は7人のコア開発者によって書かれた。つまり、Bitcoinの創設者Satoshi Nakamoto、彼が指名した後継者のGavin Andresen、そのGavinが指名した5名のコア開発者の貢献が、コードの7割を占める。
Bitcoinの発明者であるSatoshi Nakamotoのコードも2%残っている。最近、「Bitcoin実験は失敗した、俺は辞める」という内容のBlogを書いてBitcoin相場暴落につながる騒動を巻き起こしたMike Hearnが書いたコードは6%だ。
執筆協力者のリストには、Bank of England、R3社CTOのRichard Brown、(注:R3は金融機関向けブロックチェーン活用に関するコンソーシアムを主催する企業)、シンギュラリティ大学のMike Halsall、Oxford Internet InstituteのDr Vili Lehdonvirtaらの名前が上がっている。
報告書のトーンは、非常に冷静で落ち着いた内容だ。ブロックチェーン技術としてたくさんのプロダクトが世の中に出回っている。この報告書ではBitcoinへの言及は多いが、他の個別技術はEthereumとRippleの名前がそれぞれ一カ所出てくる程度。一方、セキュリティに関しては1章を設けて論じている。個別技術の評価ではなく、政府や民間部門にとってのブロックチェーンの意味とリスクを考察する内容となっている。
Bitcoinやブロックチェーン技術に関しては、FUD(証拠が不確かなネガティブな風評)が非常に多い。そんな状況下でこのような調査を進めていた英国政府、おそるべし。
参考:
この報告書を紹介するThe Guardianの記事。
Is Blockchain the most important IT invention of our age?
久々のBlog更新です。はてな岑さんから振られたハイパーリンクチャレンジ2015に、2015年最後の日ということもあり挑戦してみます。自分の振り返りも兼ねて書いてみます。
]]><![CDATA[自分の記事から──こんな記事を書いてきたし、書いていきたい
まず、印象に残った自分の記事から。
「僕らはインディーズ」、受託からインターネットサービスへ変身できた秘密とは
ヌーラボ橋本正徳さんへのインタビュー記事です。無署名なんだけど、私が書きました。橋本さんとは古い知り合いということもあって、かなり個人的な事まで聞いたインタビュー記事です。劇団の経験とヌーラボ創業は、実はつながっていたんですね。
鮮烈な演出を支えるのは、枯れた技術と入念なテスト――ライゾマティクス リサーチのプログラマーに聞く
ライゾマディクス リサーチのプログラマ、花井裕也さんのインタビュー記事も印象に残った仕事でした。花井さんは理工学部修士課程在学中にISSCCでの発表経験があり、ソニーで研究職をしていたところでPerfumeの「氷結SUMMER NIGHT」を見てライゾマティクスに応募したという経歴の持ち主。取材で聞いた「地べたに座り込んでプログラミング」のくだりでは、エンジニア気質とアートはいい感じで結びつくんだと感じました。
未来都市を考えるイノラボが、ロボットを作って着るクリエイターきゅんくんと組んだワケ
テクノロジーとアートの関連ということでは、電通国際情報サービス(ISID)の外部研究員としてロボティクスファッションクリエイター「きゅんくん」が招聘されたことを伝える記事も印象に残っています。テクノロジーというと有用性をまず考えてしまいがちですが、この過剰性の時代、有用性だけでは行き詰まります。そこに「好きなもの(=ロボット的ななにか)を着る」という発想で作品を作る発想の素直さが、いい方向に出ているのかなと。この記事を書いた後、「きゅんくん」はGoogleのAndroidのテレビCMに出演したり、 『日経ビジネス』の表紙を飾ったりすることになります。
もちろん(岑さんに言及してもらった)TechCrunchに書いた記事 グーグルでChrome開発に関わった及川卓也氏が「Qiita」開発元Incrementsの14人目の社員にも印象に残った記事です。この後、40歳代後半で一流企業からスタートアップへ移った及川さんのチャレンジに刺激を受けた人が大勢出てくるのではないかと感じています。
自分としては、IT系で「話すべき言葉を持っている人」へのロングインタビューの仕事は、積極的に受けていきたいと思っています。興味を持って頂いた編集部の方は、下記までご連絡いただけると嬉しいなと。
hoshi (あっと) commonsmedia.co.jp
(あっと) を@に置き換えてくださいね。
他媒体の記事から──AI、メディア、ビットコインとブロックチェーン
他の媒体の記事、ということでメディア運営者目線のチョイスが期待されているのでしょうが、当方は今は自分のメディアを持っている訳ではないので、単純に「読んで印象に残った記事」を上げてみます。
2015年7月に開かれた機械学習の国際会議のパネルを伝える記事の翻訳ということなのですが、AIやディープラーニングの当事者が何を語っているのか、何に興味を持っているのか、そのあたりが分かります。商業メディアは、だいたい成果が出たとか、資金を調達したとか、そういうタイミングで記事が出る訳ですが、学術研究の人たちは別の時間軸で考えている訳で、そうした話が自分にはものすごく面白く感じました。3次元構造を持つ専用LSIや、自然言語への応用といった新しい可能性の話を聞くとワクワクします。
商業ライターにおける5つの発展段階について(Publickey私案)
いろいろ考えさせられる記事でした。短い言葉では説明が難しいのですが、あえて補足すると「読者と広告主は利害相反の関係にある(あなたも邪魔な広告は見たくないでしょ?)。そこを調停して、読者と広告主の双方にとっての価値を生み出すのが広告モデルのメディアである」というのが、当方の考えです。そうした「調停」ができるライターが、商業ライターとしては最終段階ということじゃないのかな、と感じています。
銀行のATMカードを封印して、Bitcoinで生活できるか試してみることにした
記事の書き手が、自らを実験台にして、ビットコイン生活を実践してみる記事です。とはいっても「人はビットコインだけで生きていけるか」的なネタ記事ではなく、一人の大人がビットコインで貯金して、消費して、さらには投資を回収しようとしている様子を描いています。ここが個人的なツボに入りました。他のエントリーでは「マイニング詐欺」に騙された話も赤裸々に書かれています。ビットコインに関して、こうした等身大の目線で書かれた記事はけっこう貴重だと思います
私はこの記事に影響されて、e-coinのデビットカードを入手してみました。英国の企業が発行しているカードで、ビットコインで入金して、ドル建てのVISAデビットカードとして使えます。このカードの大事な点は、例えば万一この日本国の銀行預金が封鎖されたとしても(あくまで例えば、の話ですよ、念のため)、ビットコインを持っていれば海外のATMでドルで引き出して使えるところです。
BITNATIONがブロックチェーンを利用した難民支援プロジェクトを開始
銀行で口座を作れないシリア難民の援助のため、ビットコインとブロックチェーン技術を活用しようというプロジェクト(BITNATION REFUGEE EMERGENCY RESPONSE (BRER))の記事です。ブロックチェーン身分証、ビットコインデビットカード、そしてビットコインによる寄付。自分の国を失った人に対して、特定の国家や企業に依存しないブロックチェーンとビットコインは支えを提供できるという視点は、ものすごく新鮮でした。
最後に、ハイパーリンクチャレンジ2015とは、一応次のような企画、らしいです。
「ルールはその年(2014年12月から、2015年11月)までに公開されたウェブコンテンツから印象に残った記事を2本だけピックアップする。1本は自らが執筆・制作に関わった記事、もう1本は他媒体で公開された記事とする」
2本だけ、というルールはあまり守られないようなので、こちらも緩く選ばせて頂きました。
]]>今のiPhone/iPadに搭載されているiOSは完成度が高いと思います。しかし、日常的に使っているうちに、Androidに比べて「残念!」と感じる部分がいくつか出てきました。
]]><![CDATA[最初にお断りしておくと、私はiOSにもAndroidにも愛着があります。iOSに最初に触れたのは初代iPod touchを入手した2007年9月で、その後でiPhone3GSを長く使いました。妻はiPhone4Sユーザーなので、時々触らせてもらっています。一方AndroidにはHT-03Aを2009年の冬に入手したのが最初の接触で、長く使っている端末はNexusシリーズです。日常的に持ち歩いている機種は、2011年12月から2012年9月まではGalaxy Nexus、ここ4カ月はiPhone5です。並行して、Galaxy NexusやNexus 7も使い続けています。
今回は「iPhone5を日常的に使って感じているiOSの残念なところ」を書いていこうと思います──が、その前に私なりに感じている「iOSとiOS端末(iPhone、iPad)の良いところ」をまず挙げてみたいと思います。「良いところ」がなければ、そもそも使っていませんからね。
(1) iOS端末は選びやすく、手に入りやすい
機種数が少なく、製品サイクルが予測しやすい。日本のキャリアが売るiPhoneは端末の値引き額が大きく、パケット通信サービスを2年連続で使えば端末価格は実質「無料」になる。それどころか、最近はMNPでキャッシュバック(お金がもらえる!)場合も多い。
(2)iOS端末は寿命が長い
経験的には、OSアップデートを続けて2年は使い続けられる。Nexus以外のAndroid端末はそこまで寿命が長くない。
この2点は、機能ではなくて端末の販売戦略やOSアップデートの状況の話ですが、ユーザーにとっては大きい話です。金銭的な負担が少なく入手できて(日本国内のキャリアモデル限定の話ですけれども)、しかも長く使えるので、お金がない人にも優しい端末といっていいと思います。
次に、iOSの機能面で「良いところ」を挙げてみます。
(1) フォントがきれい
特に日本語フォントの表示がきれいで読みやすい。これは素晴らしいと思います。
(2) 操作感が快適
今のiPhoneは、タッチUIの完成度がさらに高まっていて、指先での操作感が非常に良好ですね。タッチパネルの感度、UIコンポーネントのデザインと挙動など、よく考えて作り込まれているのを感じます。
ただし、Android端末も最近はなかなか良くなっています。Android4.1以降搭載で、マルチコアSoCを搭載のいくつかの機種は、もう操作感においてもiPhoneと互角といっていいと思います。
(3) 話題になるサービス/アプリの多くがiOS版から登場する
これ、新しいITトレンドを体験する意味では重要です。Vine(Twitterの動画サービス)、tab(頓知ドットの地域情報アプリ)、SmartNews(スマートニュース)、Gunosy などは、まだiOSじゃないと使えません。
Flipboard(有力なソーシャル系ニュースアプリ)、7notes(iPad向け手書き文字入力機能を備えたノートアプリ、iPhone版は7notes mini)、ToriSat AR (国際宇宙ステーションなどの観測アプリ)、Eight(ソーシャル風味の名刺管理アプリ)などはiOS版が先に出て、後からAndroid版が登場しています。新しいアプリ/サービスを早い時期に体験するにはiOS端末が必要という状況ですね。iPad版が最初に登場する例も増えてきました。
一方、Androidの方が先行していたジャンルもあります。位置情報トラッキングやAR系のアプリはAndroidの方が先に体験できていたと思います。
iOSの方がAndroidより進んでいる機能も、もちろんありますよ。例えば、iOSには子どもに使わせる場合に使える「機能制限」があるのはいいですね。Web閲覧を禁止したり、新規アプリの導入を禁止したり、といったことがOSの標準機能で手軽にできます。
その一方で、Androidに比べて、明らかに不便に感じる点があります。
(1) アプリのバックグラウンド処理に制約がある
通知&バックグラウンド動作で違いが出る例はGMailアプリです。iOSのGMailアプリの場合、「新着」の通知が来てからアプリを開くと、新着メールのダウンロードを始め、しばらく待たされます。一方、AndroidのGMailアプリは通知が届いた時点で、即座に開くことができます。バックグラウンド処理でメールの中味もダウンロード済みであるためです。
(2)インテント(Androidの「共有」メニュー)がない
複数のアプリをまたがった操作の一貫性は、iOSの弱点です。例えばソーシャル系/ニュース系サービスで閲覧中のURLをPocket(あとで読む)に保存する、という操作が、iOSの場合はアプリにPocketのメニューがあるかないかで大きく変わってくる訳です。
Pocket対応のアプリの例
Flipboard , Echofon , SmartNews(スマートニュース)など
Pocket対応ではないアプリの例
Facebook(公式) , Twitter(公式) , Google+ , Pinterest , Gunosy など
Pocket対応ではないアプリの場合は、開いているURLをPocketに保存するには次のような結構な手間が必要です。
(a) URLをWebで開く→Safariで開く→ブックマークレットからPocketに登録 (このブックマークレット登録も、かなり面倒な作業です。)
(b) URLをコピー→Pocketアプリを起動→クリップボードのURLをPocketに登録
これがAndroidの場合は
メニュー → 「共有」(=インテントの機能)メニュー → Pocketを選ぶ
という一貫性を持った操作で保存できる訳です。
(3)「戻る」ボタンがない
先にPocketに登録する場合を例に出したのですが、「別のアプリに移動してから戻る」操作が、iOSでは結構面倒です。例えばFacebookアプリで見たページを、メニューを使ってSafariで開き直し、そこから元のアプリに戻るにはどうするか? といえば、「ホーム」ボタン2度押しでアプリを選択して、戻らないといけません。これは結構な手間で、いらいらさせられます。
Androidの「戻る」ボタンは、アプリ間連携を想定した「賢さ」を持っています。例えば、何かのアプリで見ているページのURLをブラウザで開いて、また元のアプリに戻ってくるには、
メニュー→「共有」→ブラウザ→「戻る」→元のアプリに復帰
という一貫性がある操作になります。
(4)日本語入力ソフトを選べない
日本語入力ソフトは、iOSではOS組み込みのものを使うしかありません。ジャストシステムは、ATOKの機能を組み込んだテキストエディタ「ATOK Pad」などの製品を出していますが、しかしATOKを使うためにわざわざアプリを立ち上げる手間をかける人は少数派でしょう。
Androidでは、ジャストシステムの「ATOK」、Googleの「Google日本語入力」、元はadamrockerの個人作品だったものをBaiduが買収した「Simeji」、慶應大学の増井俊之教授の「Slime」、手書き文字入力機能を備える「7notes with mazec 」さらに「iWnn」「POBox」等々、多くの日本語入力ソフトを使えます。
ここで挙げたのうち、(1)バックグラウンド処理の制約、(2)と(3)のアプリ間連携が弱い点はOSの設計思想に関わる部分で、すぐにAndroid並みになることは期待できません。(4)は、AppleがiOS用の多言語入力の方式(Input Method Framerork)を整備して公開してくれれば可能ですが、今のところそうした動きはないようですね。
iOSでは、アプリの作り方が自由ではない点も残念な部分です。次の2点は特に残念な部分ですね。
(a) ダウンロードしたスクリプト実行の禁止(WebのJSだけ)
開発環境は全滅状態。iOS版ScratchもApp Storeから削除されてしまいました。
(b) ブラウザのエンジンがSafariと同じ
Chromeなど競合ブラウザが、性能やレンダリングなどでSafariを越えることができず、競争原理が働きにくい。
こうした制約は、アプリ作りのルール上の問題なので、Appleが改善しようと思えば改善できるはずです。ただし、アプリ開発者の発想が「こういうアプリは作れないもの」という風に固まってしまうと、ルールを変える理由もなくなってしまうかもしれません。
もう1点もちょっと残念です。
(c)Kindle本購入の制約
Kindle本をiOS版のKindleアプリの中から購入できず、Webに移行しないといけない(これはAmazonがAppleにアプリ内課金の手数料を払うのを嫌がったのかな?)。Android版Kindleは購入も閲覧もアプリ内で可能(Androidも公式アプリ内課金は手数料が必要ですが、どういう判断なのかは分かりません)。ちなみに、Amazon MP3の楽曲類についても、Android版はアプリ内で購入できますが、iOS版ではできません。
一方、紀伊國屋の「Kinoppy」はiOSアプリ内でも電子書籍を購入できます。このあたりは、アプリ内課金のポリシーや手数料に対する考え方の違いということなのでしょう。
こうした「残念さ」を頭の片隅に留めつつ、それでもiPhone5を日常的に使っています。
AndroidはOS、端末とも猛烈な勢いで進化していて、ユーザー体験もどんどん改善されています(いろいろな悪口を言われつつも、です)。一方、iOSのユーザー体験が改善されるスピードは非常に遅くなっていると私は感じています。
関連記事:
追記:
iOS版のTwitter公式アプリはPocket(あとで読む)に対応しているとのご指摘をいただいたので、本文を訂正しました。
]]>enchantMOONは、ユビキタスエンターテインメント(UEI)が開発を進めているハードウエア製品だ。2013年1月8日から開催された2013 International CESでデモ機を初公開した。それに先だって、2012年11月末頃から、“ある種の人々”の関心を引きつけずにはおかないようなティーザー(=じらし)情報が出回った。公式サイトのプロモーションビデオや、UEI代表取締役社長兼CEOである清水亮氏のBlogに頻繁に載る思わせぶりな記述や、そして商業メディアにぼつぼつと掲載される事前取材記事、等々──。
]]><![CDATA[気になる。公開されている情報の中で、特に興味深いと(個人的に)思えた部分について、当Blogに記録することにした。実は、近日中にenchantMOONに関する取材をする予定なので、そのウォーミングアップのつもりである。
(追記:その後、取材に基づく記事が2013年2月15日に掲載された。
なぜ「enchantMOON」を、どうやって作ったのか? )
UEI清水氏が掲げるコンセプトは、1970年代初めにアラン・ケイが提唱したDynabookコンセプトの「先」を目指している──ようだ。小さな子どもの創造性を引き出すようなツールになる事が目標(の一つ)であるように読み取れる。そして、enchantMOON試作機を携えた清水氏はその後、アラン・ケイ氏との面会を果たしている(アラン・ケイ氏にenchantMOONを見せて来た)。
今、手に入るデジタル情報ツールといえば、PCと、スマートフォンと、タブレットだ。今売られているPCは、創造性を引き出すためのツールがデフォルトでは付属しない。情報を消費するツールのWebブラウザはプリインストールされているが、スケッチを描いたり、ノートを取ったり、知識を整理したり、プログラミングをするためのツールは、標準では付属しない。
iPadが登場したとき、私は「これはDynabookになりうるだろうか?」という期待を持った。ここでDynabookとは東芝のノートPCのブランド名のことではなく、アラン・ケイが提唱した「ノートサイズのパーソナル・ダイナミック・メディア」の名前である。Dynabookとは「これはだれでも所有でき、ユーザーの情報関係の要求を、事実上すべて満たす能力をもっている」「形も大きさもノートと同じポータブルな入れ物に収まる、独立式の情報操作機械」である(1992年アスキー刊、『アラン・ケイ』より、鶴岡雄二訳)。アラン・ケイのDynabookは、単に情報を格納して取り出せるだけでなく、プログラムによる動的なシミュレーションを重視したデバイスだ。
しかしながら、iPadは情報を消費することを主目的としたデバイスで、情報の創造にはあまり比重が置かれていなかった。それどころか、プログラミングに関して厳しい制約があった(当Blogの記事「App StoreからScratchが削除された後、開発チームは何をしたのか」で取り上げた事件もあった)。例えば、HyperCardのように、コンテンツ(テキスト、画像、音声・・)とプログラム(スクリプト)と連動する環境をサードベンダーが構築しようとしても、iPadでは無理だ。「スクリプトを内蔵したコンテンツ」は可能でも、そのコンテンツをクラウドからダウンロードして動作させるプラットフォームは、iOSの規約ではじかれてしまう。
enchantMOONは、高速な手書き文字描画機能にこだわりを見せている。さらに高速JavaScriptエンジンを搭載し、JavaScriptによる開発フレームワークenchant.jsを載せ、さらにenchant.js上でビジュアルプログラミング環境を提供する「前田ブロック」を発展させた「MOON Block」と呼ぶ開発環境を載せている、らしい。
つまり、手書きノートをなるべく快適に取る機能と、そしてマルチプラットフォームのプログラムを、このハードウエア上で手軽に作れるようにできている。
さらに、事前取材に基づく記事「UEIが仕掛ける「enchantMOON」の正体──目指すは「新しいコンピュータ」によれば、enchantMOONはWeb上の情報を切り取って整理する機能も備えている模様だ。同じ記事の筆者による「西田宗千佳のRandom Analysis 第021号[2013年1月9日発行] (MAGon) 」には、より踏み込んだ考察がある。
以上の情報を結びつけると、「子どもが、Web上に散らばる情報を拾って自分専用の学習ノートを作り、それを見たり書き込んだりしながら、プログラミングや、その他の興味がある内容を勉強する」といったユースケースが脳裏に浮かぶ。
うちの子ども(7歳男児)なら、「ポケモン」や「ワンピース」など彼が興味がある架空の作品世界の知識を整理したり、それにオリジナルの設定を付け加えるために使いそうだな、と思う。子どもがもう少し大きくなれば、そうした設定を拡張して、オリジナルのゲームを作るかもしれない。
子どもの創造性を、デジタル機器で拡張することができるなら、それはアラン・ケイのDynabookの後継といえるだろう。
製品名に「MOON(月)」、ソフトウエア・アーキテクチャの各レイヤーに「SATURN-V」「EAGLE」「COLUMBIA」という名前を付けている事に、作り手の思いを感じ取ることができる。1969年、人類を初めて月面に送り込んだアポロ11号で使われた3段式ロケットの型名がSATURN-V、司令船のコールサインがCOLUMBIA(2003年に空中分解事故を起こしたスペースシャトルもCOLUMBIAだったのだが、ここは月に行ったアポロ宇宙船を思い出すべきだろう)、そして月着陸船のコールサインがEAGLEだ。多くのレイヤー(層)を重ねて所望の機能を達成するソフトウエアを、多段ロケットで月まで到達したアポロ11号になぞらえているのだ。誰より遠くまで到達するために、既知の成果物を多段ロケットのように使うという気持ちを表している。余談ながら、ワシントンDCのスミソニアン航空宇宙博物館に展示されているSATURN-Vのエンジンの偉容は忘れられない眺めの一つだ。
関連情報
●公式サイト
enchantmoon.com
●UEIのプレスリリース
2012/11/26 UEI、映画監督の樋口真嗣氏、哲学者の東浩紀氏とともに enchant.jsをベースとした独自開発のハードウェア “enchant MOON”の開発を発表 〜2013年ラスベガスで開催されるInternational CESにて初披露〜
2012/12/03 UEI、enchant.jsの世界展開を目的として アメリカ合衆国カリフォルニア州にenchant.js, Inc.を設立
●UEI社長 清水氏のBlog
2012/12/01 [就活]小さい会社で未来のデバイスを一緒に作ろう! UEIが2014年新卒募集開始!
2012/12/03 UEI北米子会社、enchant.js,Inc.を設立しました
2012/12/06 清水亮vs川上量生vs東浩紀 怪獣大決戦
(※ 「enchantMOONのライバルは、iPadでもAndroidでもなく、Dynabookなのである」とある)
2012/12/-7 名前くらいは知っておきたい伝説のプログラマーたち
(※ enchant MOONへの言及はないが、「伝説のプログラマー」に反応する人々を狙い撃ちにし、UEIやenchant MOONへの関心を持ってもらう狙いがあると思われる)
2012/12/09 2023年のコンピュータとゲームはどうなっているのか
2012/12/11 僕が西暦1999年と2000年に予想した未来の姿
2012/12/15 突然、離島に来てしまった話
(※ enchantMOONへの言及はないが、enchantMOONのPV撮影に立ち会った経験を綴った文章と思われる)
2012/12/29 結局enchantMOONって何なのよ、という疑問に対する答えはいつ出るのか?
2012/1/9 CES一日目終了
2012/1/10 CES二日目終了 UIと脳のビミョーな関係
2013/1/11 CES三日目 enchantMOONの秘密 そして驚きの展開に
(※ enchantMOONの実装指針に関して言及あり。Alan Kay氏が関心を寄せたとの展開に)
2013/1/12 CES四日目(最終日)終了 まさかの最新HMDのプロトタイプがやってきた! そして延長戦へ
2013/1/16 アラン・ケイ氏にenchantMOONを見せて来た
2013/1/17 enchantMOONを持ってEvernote社に行って来た!
2013/1/18 enchantMOONをシリコンバレーでデモしてきた!
2013/1/22 アラン・ケイさん、enchantMOONをすこし語る
2013/1/25 オプティマイズとトレードオフ。または仕事に刺激を与える法
2013/1/26 MITのミッチェル・レズニック教授が来日! そして小学生ハッカーに会った
●togetter (※ UEI社長の清水氏(shi3z_bot)自らまとめている点に注目)
enchantMOON PV第一弾登場!の反響まとめ
enchantMOON PV第二弾登場!の反響まとめ
enchantMOON PV第三弾公開 の反響まとめ
enchantMOONとHypercardまとめ
●商業メディア掲載記事
◎『クイック・ジャパン 105 』
◎ITpro
2012/12/04 UEIが米国に現地法人、enchant.jsを世界展開
◎ASCII.jp / 週アスPLUS
2012/12/28 【スペシャル鼎談】清水亮×増井俊之×遠藤諭
世界をプログラミングせよ! でもってMOONってな〜に?
(※ 座談会中で「MOONはタブレットなんですよ」と形状を明かし、「小学生とかに使って欲しい」と想定ターゲットを、「ムービーの再生ができない」「常時接続を想定していない」とデバイスの特性を、ソフトウエアの要素技術としてAndroidとenchant.jsが使われること、ペン入力や「前田ブロック」の機能が含まれること、手書き文字認識はあるが「確定」操作をする訳ではないことを明かしている)
2012/12/28 『enchantMOON』のPV第一弾が公開、タブレット形状であることが判明
2013/01/04 enchantMOONのティザーPV第二弾が公開。ハードの外観写真も入手
2013/1/12 【実機レポ】enchantMOONは“ノーUI”なタブレットだった:CES2013
◎AV Watch
UEIが仕掛ける「enchantMOON」の正体──目指すは「新しいコンピュータ」, 西田宗千佳のRandomTracking
(※ コンセプト、外装デザイン、ソフトウエアのアーキテクチャ、搭載する手書きメモ機能、プログラミング機能などを含むレポート。「HyperCard」という重要なキーワードが出てくる)
◎ケータイWatch
UE、独自のタブレット型デバイス「enchantMOON」
今のところ、アスキー系、インプレス系のメディアでの露出が目立つように思える。その一方、日経BP社のITproおよびTech-On! サイトではenchantMOON関連の記事は発見できなかった。
◎『西田宗千佳のRandom Analysis 第021号[2013年1月9日発行] (MAGon) 』 (※ 開発者インタビューに基づく記事。UIコンポーネントを通常時に表示しない「No UI」コンセプトの誕生などが語られる。)
◎ITmedia
2013/1/15 UEIが開発中の新型タブレット「enchantMOON」とは
最後に、ほとんどの方々にとって興味はないだろうけれども、物書きにとって避けては通れない「表記」のお話を。実はenchantMOONの正式表記がまだ分からない。11月26日付けUEIプレスリリースでは「enchant MOON」とスペースを入れて表記している。公式Webサイトでは「enchantMOON」とスペースを入れずに表記している。どちらも公式な対外発表資料だ。清水氏のBlogを見ると、12月1日付けの記事では「enchant MOON」表記だが、12月29日の記事では「enchantMOON」に変わっている。今回の文章では、公式Webサイトの表記であり、かつ最近の清水氏の新しいBlog記事の表記に従って「enchantMOON」を採用することにした。
追記:
安藤幸央さん(安藤日記)から、次の情報にも触れた方が良いのでは、とのご指摘をいただいた。
アラン・ケイの論文 A Personal Computer for Children of All Ages (翻訳の試み)
手書きUIに見るApple Newton Message Padの影響
enchantMOONは一つの会社の一つのプロダクトだけれども、アラン・ケイの思想も、手書き入力の歴史も、それぞれ大きいテーマで、継続的に研究され続けるべきものだと思う。自分自身、常に関心を持っていたいテーマでもある。
追記:
UEI清水氏に取材して執筆した記事は、2013年2月15日に@ITに掲載された。
また、発表会の様子をレポートした記事が、2013年4月13日に@ITに掲載された。
]]>2013年1月29日、新サービス「ziny.us(ジーニアス)」のプレス向け発表会に参加しました。iPad向けのソーシャルマガジンで、2月20日から日本向けサービスを開始する予定です。自然言語処理や機械学習を使ったニュースのリコメンド機能を備えています。
]]><![CDATA[特徴は、次の3点。
個人的に興味を持った点は、「人工知能」というキーワードです。プレゼンテーションでは、(1)ソーシャルニュースアプリFlipboard、(2)関心を共有するソーシャルサービスPinterest、(3)クイズ番組に出演した人工知能IBM watsonの3つを「一緒にする」という説明をしていました。これは、iPhoneの発売時に、「iPod、インターネット端末、電話を一つにする」と説明していたスタイルを引用したものです。
IBM watsonと聞いて私が連想したのはGunosy(グノシー)です。Gunosyは、ユーザーのFacebookやTwitterのタイムラインを分析しつつ、ニュースをレコメンド、さらにどのニュースをクリックしたかを学習しています。こうした自然言語処理&機械学習スタイルのニュースサイトは、自分に必要な情報をフィルタリングする上での有望なアプローチだと思います。
発表会で、サービスを開発運用するソルトレックス社President & CEOのTony Lee氏に「人工知能ということですが、何を学習しているのですか?」と聞いて見たところ、自然言語処理によるクラスフィケーション、クラスタリング、機械学習を組み合わせているとのこと。開発運営のソルトレックスは韓国の企業ですが、翻訳ソフトを長年手がけていて、日本語の自然言語処理にも自信があるそうです。もちろん、どの記事に「いいね」を付けたかも見ているそうです。
もう一つ興味を持ったのは、「Pimterestのビジネスが伸びている」と評価していたこと。ソーシャルサービスの新たなステージは、ビジュアル、手軽、オシャレに関心を共有するサービスではないか、という「読み」があるようです。
発表会の記事は、ニュースメディアやBlogでいくつか上がっているので、詳細はそちらを。
YouTubeに紹介ビデオが上がっています。
発表会のスライドをいくつか紹介しておきます。
Flipboard、Pinterest、IBM watsonを合わせたサービスという説明です。
Pinterestを「第3世代SNS」と評価しています。
PinterestはFacebookよりクリック単価が上回るというデータ。
自然言語処理と機械学習を組み合わせたニュースのリコメンドを「スマートキュレーション」と呼んでいます。
サービスの画面サンプル。Pinterest風の機能ですね。
]]>MetaMoJiが今日(2012年9月26日)開催した「Note Anytime」の発表会に参加しました。スマートデバイス(iOS、Android、Windows8/RT・・)の時代ならではのアプリ作りに挑戦している姿勢がうかがえて、刺激を受けた発表会でした。
]]><![CDATA[「Note Anytime」は、タブレット端末を手書きノートとして使えるようにするアプリです。同社の前作「7notes」は「文字」にフォーカスした手書き入力機能を備えていましたが、このNote Anytimeは文字だけでなく、フリーハンドのグラフィックス機能に注力していて、文字やアンダーラインやスケッチなどが混在したノートを、タブレット端末上で作ることを目標としています。
例えば、次のサンプル画像を見てください。
「大学生が取るノート」のサンプル
図解や化学式、文字の色分けなどの要素を取り入れたノートをタブレットで取る利用法を想定したサンプル。
「プレゼン資料」のサンプル
手書き文字、カリグラフィなどを取り入れた印象的な資料を作る。プレゼンツールとしての機能を今後充実させる意向もあるとのこと。
このように、手書き文字、スケッチなど、あたかも手書きのノートのような世界をタブレット端末上で作り出しています。タッチパネルで入力した線はすべてベクターデータとして格納していて、拡大縮小、切り抜きなども可能です。また、PDFを読み込んで、その上に自由にノートを取ることができます。つまり、校正ツールとしても使える訳ですね。「PDFアノテーションツールとして見ても高速な部類だと思う」と浮川和宣社長は語っています。
iPad版を本日App Storeにて公開、今後はWindows 8版、iPhone版、Android版を順次提供していく予定です。アプリの本体は無償で提供し、「用紙」や「カラーインク」を消耗品に見たてて販売するという独特のビジネスモデルを採用します。ちなみに、「インク」は使っていると減っていくのですが、「毎日使っても、半年持つ場合もあるだろう」(浮川和宣社長)とのことです。
余談ですが、このNote Anytimeの画面に表示されるツール(アイコンが輪になって並ぶ)を、社内では「おへそちゃん」と呼んでいるそうです。浮川初子専務が「iPhoneの画面に出てくると、とても嬉しい」と本当に嬉しそうに語った場面が、今回の発表会の中でも印象的な一コマでした。
発表会場では、Windows8搭載PCと接続して外付けの超大型タッチディスプレイとして使えるNEC製の65インチ型液晶モニター「BrainBoard」を使ったデモも実施しました。この巨大ディスプレイに「おへそちゃん」メニューが表示された様子が次の写真です。
オプション機能として提供するカリグラフィの設定画面(発表会から)
入力後にペンの設定を変更している様子
MetaMoJiのアプリのターゲットは、iOS(iPad、iPhone)、Windows 8(Windows RTにも対応予定)、Androidです。PC(Windows、Mac)はターゲットとしていません。そして、今回のアプリ「Note Anytime」は前作「7notes」がそうだったように、タッチUIの極限に迫る使い方を追求しています。今のITの最前線であるスマートデバイス上のアプリに新ジャンルを確立しようとしている同社の姿勢が読み取れると思います。
App Store:
プレスリリース:
関連記事:
]]>「iPhone5にNFC機能が搭載されるのではないか」「そうなれば、NFC普及の起爆剤になる」──昨日まで、こうした話題がNFCに関心を持つ人々の間で盛り上がっていた。だが、2012年9月12日に発表されたiPhone5には、NFC機能は搭載されていなかった。
]]><![CDATA[NFCは"Near Field Communication"(近接無線通信)の略で、ケータイや、ICカード、無線タグ(NFCタグ)などを「タッチ」したり「かざす」だけで通信するための標準規格だ。クレジットカードや電子マネーによる決済への応用から、自動車のキー、ヘルスケア機器、Bluetooth機器とのハンドオーバー、O2O(online to offlice)マーケティングなど、多種多様な応用が期待されている。そして、もしiPhoneがNFCを搭載すればNFC搭載スマートフォンが一挙に大量に出現することになり、NFCの各種応用も爆発的に広まるのではないか、という期待が高まっていたのだ。
実際にはNFCはiPhone5には載らなかった。次期モデル発表までには通例で1年の間隔が空く。それでも、そう悲観することはない、という話をしたい。
「AppleがNFCをサポートすれば、その方式が事実上の標準になるのではないか」──そんな事を思っていた時期が、筆者にもあった。だが、NFCをめぐって取材活動を進めるうちに、この世の中はそんなに簡単ではない、と思うようになった。
AppleがNFCについてどのように取り組んでいるのか、対外的に発表されている情報はわずかだ。同社Senior VP Phil Schiller氏は、BlogメディアAll ThingsDのインタビューに答えて、「NFCがどのような課題を解決してくれるのか、はっきりしない」と発言している。
Interview: Phil Schiller on Why the iPhone 5 Has a New Connector but Not NFC or Wireless Charging
もっとも、否定的な発言を続けながら、ある日突然サポートするやり方はAppleのいつものパターンなので、この発言をもってAppleがNFCに関心がないと判断するのは早計だ。
むしろ、断片的に漏れてくる情報からはAppleはNFCを搭載するための研究開発を粛々と進めている、と考えられている。だが同社は、2012年モデルのiPhone5にNFCを搭載するという決断を下さなかった。
筆者の想像では、NFCを2012年発表のiPhoneに搭載しなかった理由は「iPhoneがNFCをサポートしただけではNFC普及の起爆剤とはならない」からだ。
今のIT分野で活動する人々は、「一人勝ちのプラットフォーマー」という存在に慣れ切っている。パソコンOS分野でのMicrosoft、企業システム向けデータベース管理システム分野でのOracle、インターネット検索分野でのGoogle、オンライン物販のAmazon、ソーシャルネットワーク分野でのFacebook、そしてiPhoneで成功したApple──このように、それぞれの分野で「支配的な影響力を持つプラットフォーマーがいる」という状態に、IT業界の人々は慣れ親しんでしまった。
NFCに関しても、知らず知らずのうちに「誰が支配的なプラットフォーマーになるのか?」と発想してしまっているのではないだろうか。AppleがNFCをサポートして、支配的とも言える大きな影響力を振るうことにより、NFC関連ビジネスも拡大する、という期待が、暗黙のうちにあるように思える。
だが、「プラットフォーマーによる寡占」だけが技術普及の姿ではないことを、私たちは思い出すべきだ。
NFCは国際標準に基づく標準規格であって、一つの会社の製品ではない。そして、NFCの応用の一つとして大きな期待がかかる決済分野は長い歴史があり、複数のプレイヤーが併存する世界だ。
技術標準という内容から見ても、その応用分野の性質から見ても、AppleがNFCの分野で「一人勝ちの支配的なプラットフォーマー」になれる可能性は、むしろ低いと考えた方が自然だ。
そして、IT分野の人々は、iPhoneやAndroidの急激な普及ペースにも慣れてしまった。しかし、「爆発的なペースでの普及」だけが普及ではないという当たり前の話を、私たちは思い出すべきだ。
例えば、ガートナーが発表した「Hype曲線」の2012年版では、「NFCペイメント」と「NFC」がともに「過度な期待のピーク期」を過ぎて「幻滅期」に入った、ことになっている。そして「主流の採用までに要する年数」は、NFCが2〜5年、NFCペイメントが5〜10年、と予想している。
NFCの本格普及は2年後以降、2015年にはスマートフォンの半数にNFCが載る──これがガートナーの予想だ。そして5年後、2017年以降にNFC決済の普及が本格化する、と予想する。
このペースは、iPhoneやAndroidの急激な普及ペースを体験した後では、ひどくスローペースに思えるかもしれない。だが、NFCに関して当事者への取材を進めるうちに、普及へ向けた準備は着実に進んでいることが実感できた。スマートフォン、店舗向け決済端末、スマートポスターなどに利用できる安価なNFCタグ、こうした品揃えの準備がじわじわと進んでいるのだ。
NFCは、Appleという1社の都合で普及度合いが決まるほど軽いものではない。そのことはAppleも理解していて、NFC普及曲線の中で、最も良いタイミングでNFCを載せることを考えているのではないかと思われる。
だから、NFC推進に熱心な人達も、2012年のiPhoneへのNFC搭載がなかったことで、必要以上にがっかりすることはない。その理由は、AppleはNFC応用全体を推進するほどの影響力を持てない可能性が大きいこと、そしてNFC応用の進み方はスローかもしれないが、着実ではあるからだ。
NFCとはITと現実世界を結ぶための技術だ。そして現実世界は、ITだけの世界よりずっと複雑なのだ。
]]>ソフトウエア技術に関するWebメディアInfoQが、OracleがJava EE 7の開発計画を見直し中と伝えています。Java EE 7の「目玉」機能として今まで説明してきたPssSとマルチテナンシ、つまりクラウドのための機能を、次のバージョン(Java EE 8)まで延期するかもしれないそうです。
]]><![CDATA[Oracle が Java EE 7 計画からクラウドサポートを削除(InfoQ)
この機能が実現すれば、Java EE 7をサポートしたアプリケーション・サーバーは、すなわちPaaSインフラとなる(クラウドインフラとなる)はずでした。昨年のJavaOne 2011や、今年のJavaOne 2012 Tokyoでは、Java EE 7のPaaS機能について「新しい破壊的な力がある」と強調していたぐらいに、大胆なコンセプトです。
Java EE7のPaaS対応は「新しい破壊的な力がある」──JavaOne 2012 Tokyoから(Publickeyに寄稿した記事)
InfoQの記事によれば、技術標準としてクラウド機能を定めることには「時期尚早だ」との声もあるようです。また、この記事に関連して、国立情報学研究所の佐藤一郎教授が次のような見解をツイートしています。
当然の結末かと。結果論に聞こえそうだけど、PaaSに限らず、クラウドインフラ技術は開発と運用が一体でないと難しいはず。もちろんJava EEの意義は別にして。"Oracle が Java EE 7 計画からクラウドサポートを削除infoq.com/jp/news/2012/0…
— ICHIRO SATOH (@ichiro_satoh) September 11, 2012
続き。分散システムはそれでなくても複雑で、ましてクラウドのような大規模分散システムは常軌を逸した世界。それが実現できているのは開発と運用を一体化しているから。逆に運用はせずに、PaaS向け技術だけを開発するというのは極めて難しいはず。
— ICHIRO SATOH (@ichiro_satoh) September 11, 2012
InfoQが伝えているJava EE 7 の仕様範囲の変更は、まだ決定事項という訳ではありません。ただ、Java EE 7というソフトウエア製品の仕様と、クラウドという「開発と運用が一体化することで機能する」ほど複雑・巨大なシステムとの違いについて考えさせてくれる良い機会になったと思います。
インターネット企業のエンジニアの技術講演を聴講するたびに、開発と運用を切り分けることの困難さを感じることが多々あります。最先端の技術分野と思われがちなクラウドは意外にも人間くさく、人が運用し続けなければ成り立たないという側面があるようです(もちろん、運用自動化について熱心に取り組んでいるエンジニアもいるはずですが……)。
関連記事:
]]>