『百田尚樹の新・相対性理論』

2021年4月7日 印刷向け表示
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百田尚樹の新・相対性理論: 人生を変える時間論
作者:百田 尚樹
出版社:新潮社
発売日:2021-01-27
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著者は放送作家であり、『永遠の0』(累計400万部)や『海賊と呼ばれた男』(累計450万部)などを手がける小説家だ。タイトルに相対性理論とあるように、本書では新たな時間の概念について考察している。

その特徴は「時間」を全ての基準に置き、社会を「時間の売買」で成り立っていると捉える点だ。人は赤ちゃんとして生まれた瞬間から時間を与えられ、時間を失った瞬間に死に至る。つまり自らが持つ時間こそが、生そのものだと説いている。

たとえばサラリーマンは自分の時間を会社や経営者に売っているともいえる。労働条件には何時~何時と規定され、その間は自分の時間をささげていく。ただこの切り売りする感覚のデメリットは、人生が虚しく感じるという可能性だ。そうした懸念に対して、著者は「仕事がどのように社会の役に立っているか」により、価値観は変わるとも述べた。あらゆる些細な仕事でも、この世の中のために貢献していると実感するだけで、仕事に対する満足度が変わってくる。

ちなみに本書にある例として、一番過酷な強制労働というのは、何時間もかけて地面に穴を掘り、またその穴を埋め戻す作業だそうだ。意味のない労働ほど本人の生きる気力を無くさせるものはない。

充実した時間が少なければ寿命は短く、充実した時間が長ければ寿命は長く感じる。すなわち物理的な時間は同じでも、心理的に満足すれば長生きしたと感じるのが人の感覚だと説く。確かにアインシュタインの相対性理論は不完全であり、理論物理学者であるカルロ・ロヴェッリは「量子は相互作用という振る舞いを通じて、その相互作用においてのみ、さらには相互作用の相手との関係に限って、姿を表す」と『時間は存在しない』と説いている。

人類は効率重視で文明を発達させてきた。ただ効率が悪い行動をするのも人間である。それは趣味や遊びであり、古代人も生きるためには何の役にたたない装飾品などに実に多くの時間を費やしてきた。実際、私達は文明の発達により仕事時間は短縮され、多くの時間を娯楽に回してきた。1960年に日本人の1年の平均労働時間は2426時間だったのに、2018年では1680時間と少なくなっているデータもある。

本書で一貫しているのは、時間に操られることなく、時間を超越しようという提言だ。もしかしたら時間というのは本当に主観的な現象なのかもしれない。

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百田尚樹の新・相対性理論―人生を変える時間論―
作者:百田尚樹
出版社:新潮社
発売日:2021-01-27
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作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
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