医療保険とは?保障内容・必要性と正しい選び方

医療保険は、保険の中で最も人気があり、CMの放映も多いものです。

しかし、医療保険の保障内容やそもそもの必要性についてはあまり理解されているとは言えません。

また、医療保険に加入するにしても、保険会社ごとに特長を打ち出しており、どの保険会社を選べばいいのか、中身の設計をどのようにしたら良いのか、なかなか分からないものです。

今回は、医療保険について、保障内容や必要性、種類、選び方を初歩から分かりやすく説明します。

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保険の教科書 編集部

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私たちは、お客様のお金の問題を解決し、将来の安心を確保する方法を追求する集団です。メンバーは公認会計士、税理士、MBA、CFP、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、行政書士等の資格を持っており、いずれも現場を3年以上経験している者のみで運営しています。

目次

1.医療保険(民間の医療保険)とは

民間の医療保険は、病気やケガで治療を受けた場合の入院費や手術費等の医療費をカバーする保険です。

保障内容は保険会社によってさまざまですが、いずれも基本の保障(主契約)は「入院給付金」と「手術給付金」で、それに「先進医療特約」を付けます。

また、そこにさまざまなオプションの保障(特約)を付けることができます。

まず、基本の保障(主契約)である「入院給付金」「手術給付金」と、事実上必ず付けるべきと言ってよい「先進医療特約」についてお伝えします。

1.1.基本の保障は入院と手術

医療保険の基本の保障内容は入院と手術です。

入院費用をカバーする「入院給付金」、手術費用をカバーする「手術給付金」のそれぞれについて説明します。

1.1.1.入院給付金

「入院給付金」は入院日数に応じて「日額5,000円」「日額1万円」などの額を受け取れます。以前は5日目からが主流でしたが、今はほとんどの保険会社で1日目から受け取れます。

1つの病気・ケガでの入院日数には原則として制限があり、「30日型」「60日型」「120日型」等があります。ただし、がん、心疾患、脳血管疾患の「三大疾病」等になったら入院日数無制限で保障してもらえるタイプが多くなっています。

また、近年は、入院日数にかかわらず「10万円」「50万円」等を受け取れる入院一時金タイプや、10日以内の入院ならば10日分受け取れるタイプも登場しています。

その背景には、入院日数が短くなってきていることが挙げられます。

1.1.2.手術給付金

手術給付金は、手術を受けた時にまとまった金額を受け取れるものです。

「日帰り手術」「入院中の手術」それぞれについて金額が「入院給付金日額の●倍」と決められている場合がほとんどです。

たとえば、入院日額5,000円であれば、

  • 日帰り手術:5万円(5倍)
  • 入院中の手術:10万円(20倍)

などと決められています。

このように、医療保険の基本の保障は入院給付金と手術給付金です。

1.2.先進医療特約は必ず付ける

次に、先進医療特約についてお伝えします。

先進医療は、簡単に言うと、まだ国の健康保険制度の適応対象となっていないが、今後対象とするか検討中のものです。

入院・手術や投薬の費用については国の健康保険の対象となっていますが、「技術料」は自己負担となっています。

そして、医療保険の先進医療特約は「技術料」の実費をカバーしてくれるものです。

先進医療の種類は技術料の中には数十万円、数百万円と高額になるものがあります。これに対し、先進医療特約の保険料はせいぜい月100円前後〜数百円なので、医療保険には必ず付けておくことをおすすめします。

詳しくは「先進医療特約とは?必要性・メリットと検討する上での注意点」をご覧ください。

2.医療保険の必要性

このように、医療保険は入院・手術の保障を基本とするものです。

では、そもそも医療保険は必要でしょうか。

結論から言えば、医療保険は優先順位が低いが、一定の場合には検討する価値があると言えます。

どういうことか、説明します。

2.1.医療保険は優先順位が低い

まず、医療保険は優先順位が低いと言えます。

なぜなら、病気・ケガの治療の方法が多様化してきていますし、公的医療保険制度によるサポートも受けられるからです。特に、以下のことに着目する必要があります。

  • 入院期間は短期化し、通院治療が増えている
  • 入院・手術費用だけなら公的医療保険制度で負担を大幅に軽減できる
  • 入院・手術なしで長期療養が必要となるケースも多い
  • がん等の「三大疾病」では入院・手術以外の重要性が増している
  • 高齢者は介護の重要性が増している

特に重要なことは、入院したり手術を受けたりした場合、かなりの部分を日本の公的医療保険制度でカバーできるということです。簡単にお伝えしておきます。

公的医療保険の対象となる医療費の自己負担割合は最大でも3割です。

また、高額療養費制度により、毎月の自己負担額の上限が定められており、その上限を超える額を負担しなくて済むようになっています。

たとえば、標準報酬月額28~50万円の方であれば、どんなに治療費がかかっても、1ヶ月あたりの治療費は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」に抑えられます。

もし「総医療費」が100万円かかったとしても、自己負担額は87,430円で済みます。

したがって、病気・ケガで入院したり手術を受けたりした場合は、国の健康保険でかなりの部分をカバーできるのです。

優先順位が高いのは、国の健康保険でまかないきれない経済的負担が発生するリスクをカバーする保険です。

たとえば、働けなくなった時の収入減のリスクをカバーする保険(就業不能保険、所得補償保険)、がんになって治療が長期化して経済的負担がかさむリスクに備えるがん保険です。

特に、がん保険は医療保険よりも先に検討すべきと考えます。なぜなら、がんの治療は、入院も手術もしない治療の比率が高くなっているので、医療保険の基本の保障ではカバーしきれないからです。

保険の優先順位については「生命保険とは?4つの種類ごとの役割と選び方」をご覧ください。

2.2.医療保険を検討する価値があるのはどんな場合か?

ただし、国の健康保険の対象となる範囲は決まっていて、以下のような費用はカバーされません。

  • 個室に入る場合の差額ベッド等
  • 食事代等の日常生活費
  • 先進医療の技術料、自由診療の費用

また、1ヶ月ごとの自己負担額が限られていると言っても、何ヶ月、何年と長期化すると経済的負担が重くなっていきます。

さらに、医療保険の商品の中には、重大な疾病等の場合に手厚く保障してくれる魅力的な特約があるものもあります。

したがって、医療保険を検討するケースは以下の2つです。

  • 国の健康保険制度でもカバーしきれない経済的損失のリスクを重視する場合
  • 重大な疾病等に備えられる特約に魅力を感じる場合

なお、編集長の個人的な意見については「保険業界で働く私が医療保険に入らない理由」をご覧ください。また、女性の立場からの論評については「女性のための保険の正しい選び方|医療保険を中心に」をご覧ください。

3.医療保険の種類

医療保険には様々な種類がありますが、主に以下の2つのポイントから分けることができます。

  1. 持病等があっても入れるか
  2. 保険が一生涯続くか

それぞれについてお伝えします。

なお、「女性向け医療保険」と言われるものがありますが、それについては後ほど改めて「6.2.女性特有の病気に絞って備えたい場合」で説明します。

3.1.「持病等があっても入れるか」による分類

まず、持病等があっても入れるかというポイントでの分類です。

通常の医療保険の他に、「引受基準緩和型医療保険」「無告知型医療保険」というものがあります。

医療保険に加入するには、健康状態等について「告知書」を正確に記入していただき、一定の条件を満たしている必要があります。

この「一定の条件」は、パーフェクトな状態である必要まではありません。たとえば、健康診断で血中コレステロールや中性脂肪等について指摘があった場合でも加入できる場合はあります。また、高血圧症の持病があっても降圧剤によって正常値に抑えられていれば加入できることがあります。

もちろんその前提として、健康状態の告知を「告知書」等で正確に行っていただく必要があります(詳しくは「持病で医療保険を検討する時に重要な6つのポイント」をご覧ください)。

しかし、それでも加入できない方のために、以下の2種類の医療保険があります。

  • 引受基準緩和型(限定告知型)医療保険
  • 無選択型(無告知型)医療保険

3.1.1.引受基準緩和型(限定告知型)医療保険

引受基準緩和型医療保険は、健康状態を告知する際の告知事項が3〜4項目に限られているものです。

以下はある生命保険会社の告知事項です。質問の回答が全て「いいえ」の場合に加入できます。逆に、1つでも「はい」が付くと加入できません。

最近3ヵ月以内に受けた医師による検査、検診または診察により、以下の①または②をすすめられたことはありますか。

① 入院または手術
② ガン(悪性新生物または上皮内新生物)の疑いでの再検査・精密検査

過去1年以内に、病気やケガで入院や手術を受けたことがありますか。
過去5年以内に、以下①~③の病気と新たに診断されたこと(再発や転移を含みます)、あるいは以下①~③の病気により入院や手術を受けたことがありますか。

① ガン(悪性新生物*2または上皮内新生物)
② 肝硬変
③統合失調症、アルコール依存症、認知症

このように、持病等がある方も加入しやすくなっています。また、いったん加入できれば、持病による入院・手術も保障してもらえます。

ただし、その分、以下の点に注意が必要です。

  • 保険料が割高(1.5〜2倍程度)
  • 最初の1年間は給付金が半分しか受け取れない

詳しくは「緩和型医療保険は必要?メリット・デメリットと賢い入り方」をご覧ください。

3.1.2.無選択型(無告知型)医療保険

無選択型医療保険は、告知が一切不要なので、持病がある方でも無条件で加入できます。

しかし、その代わり、それ以外の給付金の支払条件等が非常に厳しくなっています。

保険料が非常に割高で、更新ごとに上がっていく

最初の一定期間、保障が全く受けられない

持病の悪化・既往症の再発は完全に対象外

特に、持病が完全に対象外ということになると、高額な保険料を払ってまで加入する必要性は乏しいと言わざるを得ません。

詳しくは「無告知型医療保険|加入前に知っておくべきメリット・デメリット」をご覧ください。

3.2.「保障が一生涯続くか」による分類

次に、保険期間、つまり保障が一生涯続くか、期間が決まっていて更新されていくか、による違いです。

保障が一生涯続く医療保険を「終身医療保険」と言い、今はこれが主流です。

これに対し、期間が「5年」「10年」などと決まっていて更新され保険料が上がっていく医療保険を「定期医療保険」と言います。最近は少なくなってきています。

基本的には終身医療保険がおすすめです。定期医療保険はあまりおすすめできません。

その理由は以下の通りです。

まず、ご覧の通り、入院したり手術を受けたりする可能性が高くなるのは、年齢が高くなってからです。

【年齢別/10万人対の入院者数】

年齢 入院者数
20~24歳 158人
25~29歳 235人
30~34歳 291人
35~39歳 296人
40~44歳 311人
45~49歳 398人
50~54歳 552人
55~59歳 758人
60~64歳 997人
65~69歳 1,358人

(参照元:厚生労働省「平成29(2017)年 患者調査の概況/受療率(P1)」)

特に「65~69歳」は「20~24歳」の9倍近くです。

定期医療保険だと、高齢になるほど保険料の負担が大きくなってしまいます。

また、定期医療保険は、新規加入できる年齢が限られています。たとえば新規加入できるのが「69歳まで」で、保険期間が10年ならば、80歳以降は保障が受けられないことになります。「人生100年時代」と言われる現代では、終身医療保険の方がおすすめです。

4.保険料の払込方法は「終身払い」がおすすめ

次に、保険料の払込方法についてお伝えします。

医療保険の保険料の払込期間は、加入中ずっと支払い続ける「終身払い」の他、指定の年齢までに支払いを終了する「●歳まで」「●年」と設定する「短期払い」があります。

このメリットとしてよく言われるのは、定年までに払込を終えてしまうことで、老後に保険料の支払をしなくてよいという点です。

しかし、あまりおすすめできません。

なぜなら、医療保険の保障内容は改良が繰り返されています。そんな中で、現在の保険を一生涯使うことを前提に払込期間を「●歳まで」「●年」に設定すると、見直しを考える時に「保険料がもったいない」ということで断念せざるを得なくなる可能性があります。

しかも、「終身払い」を選んだ場合でも、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)で所定の「状態になったら保険料の支払いを免除してもらえる「保険料払込免除特約」を付けられます。

したがって、「短期払い」にするメリットは決定的なものではなく、「終身払い」にして「保険料払い込み免除特約」を付ける方がおすすめです。

5.貯蓄型の医療保険はおすすめか?

読者の方から「貯蓄型の保険はおすすめか」というご相談をいただくことがあります。

医療保険の多くは保険料が返ってこない「掛け捨て型」ですが、貯蓄型の医療保険もあります。

貯蓄型の医療保険の特徴は、「70歳」など所定の年齢を迎えると、それまでに支払った保険料が返ってくることです(それまでに入院・手術などで保険金を受け取った場合はその額が差し引かれます)。

しかし、その代わりに、以下のようなデメリットがあります。

  • 保険料が掛け捨ての医療保険より高額(2倍くらい)
  • 途中で解約したら少ししか戻ってこない
  • お金が返ってきた後も高額な保険料を払い続けなければならない

また、「貯蓄型」と言っても、お金が1円も増えません。

したがって、上の3つのデメリットがあるにもかかわらず、敢えて貯蓄型の医療保険を選ぶメリットは、乏しいと言えます。

6.パターン別!おすすめの特約はこれ

上でもお伝えしたように、医療保険の特約の中には、「先進医療特約」以外にも、重大な疾病等に備えることができる魅力的な特約があります。

そこで、以下の3つのパターンごとにおすすめの特約を紹介します。

  1. 重大な病気に備えたい場合
  2. 女性特有の病気に重点的に備えたい場合
  3. 仕事ができなくなって収入がなくなるリスクに備えたい場合

6.1.重大な病気に備えたい場合

まず、重大な病気、特に「三大疾病」「がん」に備えたい場合です。

三大疾病とは、日本人に多い代表的な3つの死亡原因であるがん(悪性新生物)・急性心筋梗塞・脳卒中をさします。

そのための特約は「三大疾病給付金特約」「がん診断給付金特約」などです。

これらの病気で入院や治療を行う場合、他の病気と比較して治療期間が長くなるなどして医療費が高額になってしまうことがあります。

医療保険における「三大疾病給付金特約」「がん診断給付金特約」は、これら三大疾病にかかった時に50万円や100万円といった一時金を受け取れる特約です。

これによって、三大疾病にかかったときの保障を手厚くすることができます。

ただし、この特約で注意しなければならないのは、保険会社や商品によって、支払い条件が異なることです。

たとえば、がんになった場合でも、上皮内にとどまり転移することがない「上皮内がん」は保障の対象外となることがあります。

また心疾患や脳血管疾患については、「急性心筋梗塞」や「脳卒中」の場合しか保障を受けられないものもあります。また、働けない状態が60日以上継続した場合や後遺症が残った場合といった厳しい条件を設けていることも多いです。

一方で、「入院したこと」「手術を受けたこと」だけで保障してくれる保険商品もあります。

「三大疾病給付金特約」「がん診断給付金特約」を検討する場合は、こういった支払い条件についてもチェックするようにしましょう。

6.2.女性特有の病気に重点的に備えたい場合

子宮がんや乳がん、子宮筋腫のような女性特有の病気にかかった時に、より手厚い保障を受けられる「女性疾病特約」があります。多くは、女性特有の病気になった場合に入院給付金・手術給付金を2倍受け取れるものです。

この特約により保険料を抑えつつ、女性特有の病気に備えることが可能です。

たとえば、主契約を入院日額5,000円にして、女性疾病特約を付与することで、女性特有の病気で入院する時だけ入院日額1万円受け取れます。

6.3.働けなくなって収入がなくなるリスクに備えたい場合

病気やケガになった場合に心配なのが、働くことができず、収入が減ってしまうことです。

働けない期間が長期化するほど、家計のダメージは大きくなります。

「就業不能保障特約」は、病気やケガで働けない状態が継続した時に給付金が受け取れる特約です。

対象となる疾病などの条件、給付金は保険商品によって異なります。

たとえば、ある生命保険会社の就業不能保障特約では、働けない状態が61日以上継続した場合に、最大10年間、月額5~30万円の給付金を受け取ることができます。

ただし、給付金の受取条件が以下のように厳しくなっている点に注意が必要です。

  • 所定の5疾病(悪性新生物・急性心筋梗塞・脳卒中・肝硬変・慢性腎不全)を原因として就業不能状態が60日を超えて継続した時
  • 高度障害状態もしくは不慮の事故により身体障害状態となった時
  • 所定のストレス性疾病による入院が60日を超えて継続した時

医師からドクターストップがかかって働けないといった状態で給付金を受け取りたいのであれば、医療保険の就業不能保障特約ではなく、「所得補償保険」をおすすめします。

まとめ

医療保険は、入院した場合と手術を受けた場合の保障を基本とするものです。

日本には公的な健康保険制度があり、入院・手術の場合の医療費等の自己負担額は大幅に抑えられます。したがって、民間の医療保険は、他の保険に比べて優先順位が低いと言えます。

ただし、国の健康保険制度でもカバーしきれない経済的損失のリスクを重視する場合や、重大な疾病等に備えられる特約に魅力を感じる場合には、医療保険を検討する価値があると言えます。

その場合は、自分自身にどのような保障が必要なのか、はっきりさせる必要があります。たとえば、「重大な病気に備えたい」「女性特有の病気に重点的に備えたい」「働けなくなって収入がなくなるリスクに備えたい」といったことは、個人個人の価値観や、おかれている経済的事情によっても左右されます。

したがって、医療保険を検討する際には、生命保険と同様、ご自身のライフプランを考え、信頼できるファイナンシャルプランナーのアドバイスを受けることをおすすめします。

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