子どもの生理痛、薬やピルを使って良い? 産婦人科医が勧める対応策

高尾美穂
高尾美穂
パッケージも薬も鮮やかな低用量ピル=東京都中央区で2022年5月13日、前田梨里子撮影
パッケージも薬も鮮やかな低用量ピル=東京都中央区で2022年5月13日、前田梨里子撮影

 学校や仕事を休まなければいけないほどの深刻な痛みを伴う場合もある「生理痛」。症状の程度には個人差がありますが、月に1回のサイクルで訪れる生理のたびに、体調不良に悩む女性は少なくありません。小中高生など成長段階にある子どもが生理痛を抱えている場合、痛みを和らげるには、どのような対応策があるのでしょうか。産婦人科医の高尾美穂先生に聞きました。

生理がある=体が稼働している証し

 最初に、生理痛が起こる仕組みから説明しますね。筋肉でできている袋である子宮がぎゅーっと握りつぶされることによって、中身が押し出されていくかたちで生理がきます。押し出されていく中身は、赤ちゃんを迎えるための子宮内膜などです。生理がくるということは、体がちゃんと稼働している、巡っているということ。生理そのものをネガティブに捉えないために、こうしたメッセージはとても大切です。

 握りつぶす力が強すぎると、それを収縮痛として感じます。子どもの年代においては、重い生理痛の原因となる病気があって痛みが出るということはほとんどありません。特定の原因(疾患)がないけれど生理痛が重い状態を「機能性月経困難症」といいます。

 原因となっている病気を見つけて、病気の対策をすると生理痛が軽くなるというプランではなく、とりあえず、まずは痛みを取ることを考えましょう。痛みを取り除くことで、前向きな毎日を過ごせるというイメージで考えていただければと思います。

大人も使う鎮痛薬、子どもも使ってよい?

子どもの生理痛にどう対応したらいいのだろう(写真はイメージ)=ゲッティ
子どもの生理痛にどう対応したらいいのだろう(写真はイメージ)=ゲッティ

 無理に産婦人科を受診しましょうとおすすめしたいわけではありません。まずは痛み止めを使って痛みを緩和する方法を手に入れましょう。どの痛み止めを、どんなタイミングで使ったら楽になるという成功体験を親も子もできたら良いですね。

 例えば、15歳未満は解熱鎮痛薬の「ロキソニン」や「ボルタレン」は使えないので、小児科の先生が処方してくれる「アセトアミノフェン」などの痛み止めを使うことになるでしょう。特に小児の薬は、体重のキログラムあたりで用量が決まるので、以前処方された小児科の痛み止めは用量が足りていないというケースはよくあります。

 そうすると、痛み止めを使っても効かないという失敗体験につながります。痛み止めを使う時は、今の体重にあっている量かをしっかり確かめてみてください。15歳以上であれば、「ロキソニン60mg」を上手に使うのも一つの手です。

 子ども用の薬の方が、体に悪くないのではないかという考えは要りません。15歳以上であれば使ってよい薬なら、「大人も使う薬を子どもに使うのは心配……」とは考えずに、痛み止めを適切なタイミングで使って痛みを取り除く。子宮を握りつぶす力(プロスタグランジン)が作られる過程をブロックすることが大事ですから、早めに服用するなど、効果を実感できるタイミングを自分なりに知ってほしいと思います。

 痛みを緩和できると、日常生活における前向きさを手に入れられます。「何日間も生理で寝込む」という言葉があるように、生理痛は動きたくない理由になるのです。

 学校生活では、歩道橋を上って下りて登校したり、体育や休み時間に運動をしたり、意外と体を使う場面が多いもの。そんな時に、動きたくない理由になり得るのが痛みです。痛みを取り除くことで、快適に学校生活を過ごせることを、親子で知っていただければうれしいです。

安心して相談できる大人を見つけることも大切だ(写真はイメージ)=ゲッティ
安心して相談できる大人を見つけることも大切だ(写真はイメージ)=ゲッティ

低用量ピル、何歳から使える?

 痛みを緩和するもうひとつの方法が、低用量ピルです。先ほどお話しした痛み止めは、薬局など身近なところでも手に入りますが、ピルは必ず医療機関を受診する必要があります。ピルは、小児科の範囲外ですから、処方を希望するのであれば、産婦人科・婦人科を受診しましょう。

 ピルは、生理痛が重いという理由で保険が適用されます。初潮を経験していれば使い始められます。小学生でも、生理が来たら始められるわけです。世界保健機関(WHO)も初潮が起こる10~12歳でも服用できるとしています。

 実際には、ピルを使い始めるのは早くて中学生、ほとんどが高校生、という印象です。高校受験のタイミングや、部活やスポーツの大会などをきっかけに受診し、ピルを飲み始めるケースが多いです。

「ピルを飲むと身長が止まる」は本当?

 ピル内服開始のタイミングに関して心配されるのは、身長が止まってしまうのではないかという点ですが、大きな影響はないというのが世界的な見解です。

 そもそも、エストロゲンが大量に分泌されないと生理は来ない。このエストロゲンが骨の成長に重要な部分「骨端線」を閉じる働きがあり、骨端線が閉鎖すると、それ以上骨が伸びなくなる。当然、身長の伸びも止まります。エストロゲンは男性においても女性においても骨端線を閉じる役割を担いますが、女性の場合は、生理が来たということはすでにエストロゲンがしっかり分泌されているということ。ということは既に骨端線は閉じられているということ。なので、初潮を迎えてから、5センチも6センチも背が伸びることはないのです。

生理痛を緩和し、日常生活を快適に過ごすための対応策とは(写真はイメージ)=ゲッティ
生理痛を緩和し、日常生活を快適に過ごすための対応策とは(写真はイメージ)=ゲッティ

病院に行く目安、具体的な診察内容

 産婦人科を受診する目安としては、毎月ではなくても、1年のうち半年以上、生理痛を繰り返していたら一度相談してみてはいかがでしょうか。

 痛み止めでもピルでもよいので、対策することでこんなに良くなるんだ、楽になれるんだという成功体験をしてほしいです。生理痛は仕方がないものと思って何もしないという状況を変えていきたいですね。

 産婦人科の診察では、話を伺うことが中心になります。具体的に、生活の中で何に困っているのかをお尋ねします。普段は友達と駆けっこをして遊んでいるのに生理中はしたくなくなるとか、痛いことで困っていることを深堀りしていく。生理痛が、したいことができない理由になっているということを子ども自身が気付くことはすごく大事なことです。

 その他、痛み止めを使っている場合は、体重に合った用量かどうかの確認や、飲み方のアドバイスをします。

産婦人科受診のハードル、乗り越えるには

 一方で、子どもにとって産婦人科を受診するのは、勇気がいることだと思います。産婦人科の受診につなげるベストな方法としては、他の科でもよいので、かかりつけ医など子どもも親も安心して相談できる先生を受診した時に、「最近、生理痛がひどいんだね。専門の先生に相談してみたら?」とお母さんから切り出してもらう。あらかじめ先生に相談し、先生から産婦人科への受診を促してもらうように頼んでおくのも良いかもしれません。

 大事なのは、子どもが親以外にも信頼できる大人がいることを知ること。小さい頃から診てくれている先生(小児科)や、保健室の先生でもよいです。その人が言ってくれることは自分にとって良いことなんだろうと思えるのが大事でしょう。

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