現在、はてな匿名ダイアリーで人気の記事「写真はモテるよ」(魚拓)。読んでいてモヤモヤした。特に「撮影」に関して気になる部分があったのでコメントを入れてみたよ。
そもそも「写真はモテるよ」は、「精神年齢が低いコスプレイヤーを狙って撮影し、仲良くなれば食いまくれる」という、指南文章。しかし、カメラ機材は買わないといけないし、撮影後はマメに連絡しないといけないし、結局仲良くなれる相手はメンヘラ中心だし、中の人が「カメラつかって女食いまくった」と言われても、全然羨ましくないよ! そこまで手間と労力がかけられたら、普通にナンパでも上手くいくよ! と文章の根幹部分で突っ込みをいれたくなりました、ってか入れました。
ハッタリカメラマンこそデカい機材を使え
それでは見ていきましょう。
まずはキヤノンかニコンのフルサイズ一眼だ。APS-Cじゃないぞ。フルサイズを買え。
フルサイズを買え! って言っている理由は以前話題になった「【コスプレ】「フルサイズじゃないんですか?」論争で出た意見6通り」がネタ元でしょう。確かにコスプレイヤーはカメラ機器に詳しい人も多い。しかし、機材の知識があれば、フルサイズとAPS-Cの違いを知っていれば、なかなか「APS-Cじゃダメ」とは言わない。生半可な知識を持ったコスプレイヤーは「APS-Cじゃイヤ」とか言いそうですが、そんな人間はボディを見ただけで、フルとかAPS-Cと見分けることはできません。
以下、ニコンのフルサイズとAPS-Cのカメラを貼り付けていますが、カメラ機材に詳しくない人間がどちらかフルサイズ・APS-Cか一瞬で見分けることはできると思う?
Nikon デジタル一眼レフカメラ D5500 ボディー ブラック 2416万画素 3.2型液晶 タッチパネル D5500BK
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キヤノンなら5D mark3か6Dだ。24-105のレンズキットで20万~30万だ。
ニコンならD810かD610の24-85のレンズキットだ。これも大体20万~35万だ。
本体とレンズキットを買ったら次は単焦点レンズだ。
迷う必要はない。シグマの50mm F1.4だ。大体9万円前後で買える。
と、具体的な機種をあげて書いてますが、この釣り文章のコンセプトに沿って書くならば「フルサイズとAPS-Cなどありますが、プロぽい機材を手に入れろ」と書くべきです。ニコンのフラグシップ銀塩カメラ「F5」なんか、中古屋で5万円ぐらいで売ってます(ヤフオクだと2万円ぐらいから)。1万円ぐらいの中古の単焦点レンズを付ければ、合計3~6万円ぐらいで「なんちゃってコスプレカメコ」に変身できます。もちろん、フィルムでの撮影はお金もテクニックも手間もかかるので、フィルムはいれずに空シャッターで「撮影したフリ」をして、サブカメラとしてスマートフォンやコンデジで撮影したデータを渡せばよろし……ぐらいまでは書いて欲しいところですね。
1996年発売のニコンのフラグシップ機「F5」。重量は1210g!
→ニコンF5 ヤフオクの検索結果
レンズもでかいブツを使え
レンズに関しては意見が分かれるところ。次にも書いてますが、ハッタリ重視であれば「フードを含めて見た目がでかいレンズ」をつければいいのではないでしょうか。
50mmの単焦点もイイですが、個人的にはポートレイトの定番とされる85mmも推したいところ。ただ、短時間で撮影を済まさないとイケナイ場面であれば、広角から望遠まで押さえたズームレンズでしょう。
以下、貼り付けているシグマのAPO 200-500mm F2.8はいかがでしょうか? 巨大なレンズで、これを使えばハッタリもバッチリ。定価も250万ほどなので、財力を見せつけるにももってこいですよ。重さも15キロほどあるので、使わないときは漬け物石としても使えます。
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スピードライトは必須
三脚もスピードライト(いわゆるフラッシュ)もいらない。写真を趣味にしたくなってから買えばいい。
この一文も「妄想で書いたのでは?」と思わせる部分。三脚は確かにコスプレ撮影では重要度が高くないアイテムですが、スピードライトは必須です。この釣り文章は「カメラを通じてコスプレ娘と仲良く」というコンセプトなら、ますますスピードライトは重要。なぜならデカいスピードライトを付けていれば「写真が上手そうに見える」から。
私もハッタリカメラマンとして、いくつか仕事をしてきましたが、炊く・炊かないは別にして、カメラにデカいスピードライトを付けていきました。そうすると、カメラに詳しくない「いやー凄い機材ですね」なんて話しかけてくる。おいおい、これニコンの入門一眼やど! まあ、「天気がいいですね~」的な挨拶的なものかもしれないけど、知らない人にとっては大きなインパクトを与えるのは間違いない。でかいことはいいことだ。
さらに、なんちゃってカメコスタイルを考えるなら、このデカいスピードライトをブランケット利用してレンズ横にライト取り付けるのがポイント。デカいディフェーザーを付けると、さらにプロっぽく見えるぞ。まあ、実際の撮影ではディフェザー&バウンスは必要なんだけどね。
最前線くんもこのスタイルだ! スピードライトの位置に注目。
コスプレ撮影とスピードライトは重要だ! と説明するには、ながながと説明する前に、以下の写真を見てもらった方がはやいかもしれない。
まあ、これは受け狙いのスタイルなんだろうけど、作例が気になります。
撮影パートの部分で
基本的に人を撮影するときは逆光か斜め後ろ45度に光源を持ってくる。レフ板は下から煽るように構えて光源の光を反射させてやることで顔の影を減らすことと目の中に明るい部分を作ることが目的だ。あとはググれ。
レフ板もいいけど、スピードライトを使えばいいじゃん!
実用的な部分でもスピードライトは屋内でも光量が少ない場合も使いますが、屋外での撮影だと「日中シンクロ」、つまり被写体が逆光・逆光気味の場合にスピードライトを使って、顔を綺麗に写すという定番中の定番テクニックがある。屋内での光量不足はカメラのISO感度をあげて対処できるが、屋外の逆光だとスピードライトがないと無理。てなわけで、増田(はてな匿名ダイアリーを書いた人)さんは、「本当にコスプレ撮影したことあるの? いや、そもそも写真撮影したことあるの?」と思ってしまうわけです。
ちなみに増田があげたD810かD610は内蔵フラッシュを搭載しているので、「外部ストロボを買わなくて良い」と言えるのですが、5D mark3は内蔵フラッシュはないです。
ブツ撮りと人物撮影は別物
増田さんは、写真を上手く撮るための練習としてこのように書いている。
とにかく食べ物と花を撮るんだ。
花はどこでも咲いてるし、大きな公園とか季節に合わせた名所が沢山ある。
食べ物だって店に行けば出てくるし、お取り寄せグルメだっていいんだ。
まずはとにかく機材に触れて、ピントの合わせ方を練習するんだ。
写真が失敗する理由は主に3つ。
ピンぼけ、手ブレ、被写体ブレだ。あとはデジタル処理でどうにでもなる。
動かないモノの撮影と、動いているモノの撮影は、発言小町と2ちゃんねる以上に違う。
確かに花や食べ物を撮影するのは、機材に慣れたり、ピントをあわせる練習にはなる。そしてブツ撮りの世界は奥が深い。が、残念ながらコスプレイヤーを撮影するのには、また別のスキルが必要です。
人物の撮影を撮影するときのポイントはこちら。
(1)被写体とのコミュニケーション術
(2)適切なポージングの指示
(3)髪や衣装の乱れを見つける観察力と修正するスキル
(4)被写体周りの光量を把握
(5)ピントを目に正しくあわせる技術(相手は動いているぞ)
(6)撮影イメージにそった被写界深度の設定
プロカメラマンの人物撮影に何度か立ち会ったことがあります。
上手いカメラマンはコミュニケーションスキルが高い。短い時間でモデルをリラックスさせて、イイ表情を引き出して撮影していく。また、顔に髪の毛が付いていたら見つけて取り、服のしわを直し、ポージングを出していく。
コスプレイヤーを撮影する際も、コミュニケーション術はもちろん、人を美しく撮るテクニックは磨かないとダメでしょう。人物撮影を鍛えるには「人物」を撮るしかない。え、撮影する相手がいない!? 父親や母親を撮影しまくれ! その際は、ただ単に撮るのではなく、ポージング指示を出すこと。初心者はポージング指示なんか出せないので、事前に「こんな写真を撮りたい」と完成図描いておくこと。そうすると指示が出しやすくなります。
写真も文章も絵画も音楽も、「ゴール」を持っていないと、上手く出来ないことが多い。
以上、撮影に関して私がモヤモヤした部分の突っ込みでした。