2024年10月25日にリリースされた『コール オブ デューティ:ブラックオプス6(以下『CoD:BO6』)』で、何の告知もなく一部の声優が変更されたと話題になっています。海外メディアのGame Developerなどが報じていますが、その経緯はかなり複雑なようです。
『CoD:BO6』の声優が突然変更に?
事の発端は、同作における「ゾンビモード」のアップデートに際し、既存キャラであるウィリアム・ペックと、サマンサ・マキシスを元にしたであろうAIキャラクター・SAMの声が既存の声優と大きく変わっていることにユーザーが気が付いたことにあるようです。
ペックを元々演じていたZeke Alton(ジーク・アルトン)氏は本作にクレジットされておらず、サマンサを演じていたJulie Nathanson(ジュリー・ネイサンソン)氏は本作にクレジットされているものの、他の声優と同様に役名が明記されていません。
こうした状況を受けてGame Developerがアクティビジョンとアルトン氏に確認した結果、両者が声優の交代を認める声明を発しました。
両者のコメントは声優交代を認める方向で一致
アルトン氏は同作におけるペックについて「私が演技したものではありません」と明確に否定。ペックというキャラクター自体はアクティビジョンが保有していることからどのような決定にも異議はないとしつつも、「(『CoD:BO6』が)代役の声優が誰であるかを明示していないため、自分の仕事であるかのように受け取られてしまう可能性がある」ことに懸念を示しています。
アクティビジョンは「声優の個人的な“選択”を尊重する」とコメントし、同時にSAG-AFTRAのストライキへのコメントは控えるとしました。
『CoD:BO6』はSAG-AFTRAによるストライキの対象外作品
SAG-AFTRA(全米映画俳優組合・米国テレビラジオ芸能人連盟)は、アメリカの映画やテレビ等で働く俳優・放送従事者などを代表する労働組合です。2024年7月26日から、インタラクティブメディア協定に署名したすべてのゲームスタジオ・企業を対象に「AIの使用からビデオゲームの声優・俳優らの権利を保護するため」のストライキを行っています。
今回の声優変更も、このストライキを受けてのものである可能性があります。しかし事態は複雑で、インタラクティブメディア協定には「ストライキが宣言される前から制作が始まっていたゲームに関しては、SAG-AFTRA契約下の俳優・声優が(ストライキせず)仕事を継続することを認める」特別条項が存在します。それを鑑みると『CoD:BO6』はストライキ対象外の作品ということになります。
また、SAG-AFTRAはストライキ対象外の作品に参加する組合員声優・俳優に関しては「ストライキをしている組合員との連帯を示す」ために「新規契約をせず、日雇い契約のような形で」仕事を続ける選択肢があると述べています。
ここで浮上してくるのが、先のアクティビジョンのコメントにある「選択」です。アルトン氏は、日雇い契約としてペック役を続けることを望まなかったのかもしれません。
もちろん、「アクティビジョンはストライキと一切関係なく、もっと以前から声優の変更を決定していた」という可能性もまだ排除できません。
なおアルトン氏は、「私は開発チームを心から尊敬しています」「すべてのパフォーマーが生成AIの悪用から守られるようになれば、将来的にコラボレーションすることを心から望んでいます」ともコメントしています。