ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【演劇】DULL-COLORED POP 番外公演 『プルーフ/証明』

2013å¹´05月26æ—¥ | æ¼”劇
谷賢一氏率いる DULL-COLORED POP 番外公演 『プルーフ/証明』(谷賢一Ver)を観劇。


DULL-COLORED POP 番外公演 『プルーフ/証明』
【前半日程】
 演出:谷賢一(DULL-COLORED POP)
 出演:百花亜希、東谷英人(以上、DULL-COLORED POP)、境 宏子、中田顕史郎
【後半日程】
 演出:元田暁子(DULL-COLORED POP)
 出演:中村梨那☆、若林えり★、堀奈津美、塚越健一(以上、DULL-COLORED POP)、大石憲
 ※☆と★はWキャスト

HP上の案内を見ると、「この傑作かつ難解な戯曲に、谷賢一を除く劇団員で挑むことに」「百花は外部から演出家を探すことになったのだが…年明け、その決定は劇団員を騒然とさせた。演出家は――『谷賢一』」とあるように、本来は、普段は演出助手をしている元田暁子が演出をするバージョンと他から演出を招くバージョンを行う予定だったらしい。

一度、谷賢一の演出を見たいと思っていたので、今回、初めてDULL-COLORED POPを見たのだけれど、何といっても、役者陣の熱演が今回の芝居を引っ張ったといっていい。いやー、役者の皆様、お疲れ様でした。

特に主役のキャサリン役の百花亜希の演技は凄い。感情をストレートに表現できるその才能、悲しみや愛情やその裏返しの憎しみや、ツンデレもかわいかったし、その熱演ぶりはお見事。あまりの激しさに、精神的な不安定さよりも強さがでてしまうところもあったけど、それはそれ。いやー、惚れてまうわー。

ハル役の東谷英人は百花さんとは違うタイプで感情がストレートに出るというわけではないのだけれど、決して熱量で負けることなく、そのタイプの違いでうまくバランスが取れていたし、ロバート役の中田顕史郎やクレア役の境宏子もそれぞれ個性的でいい味を出していた。

これだけ役者の熱量、感情表現が確かだと、見ている側も自然に引き込まれる。久しぶりに役者にやられた。

演出面では、劇団名などから、もっと挑戦的な仕掛けなんかがあるのかと思っていたが、意外とストレートな作り。どちらかというと役者の演技で組み立てていくタイプなのかもしれない。

スタートから庭先で、紙を切り刻むキャサリン。舞台上には、切り刻まれた紙くずが散乱している。舞台奥には大きな穴が。物語が進むにつれ、キャサリンを中心に父・ロバートを巡る複雑な感情、姉・クレアへの憎しみや侮蔑が入り混じった関係、ロバートに師事するハルとの恋などが描かれていくが、シーンの変わり目にその穴にそのシーンを象徴していた小道具が捨て去られていく。

果たして捨て去られていくものは何なのか。否、そもそも切り刻まれたものは何なのか。思い出?人生?ぼろぼろになった心?自らの人格を支える感情?明確にされることのないまま物語は進んでいく。

引越しの日。クレアは家の片付けに忙しい。庭に散乱した紙くずも、あたかも庭先の枯葉などのように掃き捨てられていく。

天才の血を受け継ぐキャサリンと理性的・現実的な世界を生きるクレア。クレアが片付け作り出した「整然とした世界」とはいったい何なのか。果たしてクレアの住む「整然とした世界」は天才たちにとって許される世界なのか。

ラストシーンに描かれるささやかな救い。あぁ、百花さん、惚れてまうやん!

個人的には、今回は谷賢一の演出が目的だったので消化不良のところもあるのだけれど、これだけ役者陣が頑張っているのを見てしまうと、本公演の後半日程の元田暁子ver.も見てみたくなる。


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