ホワイト企業にブラック無能社員はつとめられぬ、この世の地獄

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dennou-kurage.hatenablog.com

ご説ごもっとも、という記事ではある。

が、おれは違和感を覚えた。例に挙げられているのが、「仕事を通じて成長をしたいと思っている人」だの、「外資系コンサルティングファームやスタートアップにそういった見返りを求めて就職する人」だの(コンサルティングファームってなに?)だの、意識や能力、求めるところが高いところにある人が、激務と引き換えに……という話なのである。

おそらく、筆者の取り扱う範囲外、というか、範囲の下の下にあるおれとしては、世の中そんなブラック企業と従業員の話ばかりじゃねえよ、と言いたくなるのである。一応、この世には下の下の人間も生きているし、ときには言葉を発するので、おれはそうするのである。

具体的に言えば、おれの勤め先の零細企業は残業代も出さないし(残業という概念があるかどうかというと、ない)、そもそも賃金が毎月きっちり支払われるかも怪しい。定時で働いたとしても、金が払われるかどうかわからないのである。これは、完全にブラックだろう。

が、しかし、おれのような意識も能力も精神状態も低い人間にとってありがたいところがある。それは、月に一度の定期的な精神科への通院(長くて2時間ぐらい)を、「ちょっと医者行ってきます」で済ませられること。あるいは、月に数度の朝の鉛様麻痺(身体がほぼ動かせなくなる重い抑うつ、倦怠)について、LINEで「具合が悪いので午後から出ます」ということについて、とくになにも言われないこと。さらには、おれの対人恐怖や対電話恐怖を認めてくれて、それらの業務から解放されていること。おれの双極性障害その他の精神疾患を大目に見てくれていること。もう三十代も終えるおれの茶髪と3つのピアスを全く問題にしないこと。それらのありがたいこと。

それらのありがたいことがあるので、おれはいくら賃金が低かろうと(おそらく平均的な大卒新入社員より低いし、都道府県の最低時給より高いかどうかも不明)、見返りのない休日出勤があろうと、この職場に留まる必要がある。見返りに、おれの病的な過集中やいくばくかの能力、何よりも時間を差し出してもいい。そう思う。

これが「洗脳」や「脅し」だろうか。高所から見下せば、十分に「洗脳」や「脅し」ということになるのだろう。だが、高所から見下ろすあなた、じゃあ、おれがおれの精神疾患と労働者として無能の性質をかなり自由な形で受け入れてくれる、べつのホワイト企業を具体的に紹介してくれるのか? という話になる。

おれは「洗脳」されているのかもしれないし、(あるいはおれ自身による)「脅し」に屈しているのかもしれないが、おれが最低でも自分の食い扶持をなんとかしているのは、この会社だからだ。きちんとした規則のある、きちんとした企業にあって、おれの居場所などありはしないだろう。それが正規雇用であれ、不正規雇用であれ。おれは現状にしがみつくしかないと判断し、そうしている。もっとも、おれに判断力というものがあるのかどうかも疑問だが。

もちろん、ブラック企業が駆逐されるのはいいことだ。だが、グレーとは言わぬが、無能者、愚者、精神疾患者にとって利点のあるブラック企業がすべて駆逐されてしまった先に、なにがあるのだろう。それは単純におれが食い詰めることであって、おれが死ぬことだ。おれは一応おれが死ぬことに反対しているので、この世に曖昧な部分、隙間があってほしいと願うものだ。福祉というものが行き届いて、生きられるようになりますよ、などというのは妄言というものだろう。そして、おれのような人間が、おれ以外に存在しないかといえば、しないことはないんじゃないの? と思うわけだ。

というわけで、御高説がポリティカルに正しい。ブラック企業、ゾンビ企業は駆逐されるべきだ。それには同意しよう。

ただ、正しさの中で死なねばならぬ人間がいることを忘れないでほしい。まあ、死すべき人間が死んだところでだれも気にはしないだろうが、それでも人殺しの顔をしていてくれないか、とは思うのである。

以上。

 

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