FreeBSD Daily Topics

[新春特別企画]FreeBSDの2010年、9のターゲット

2009年にFreeBSD Daily Topicsで紹介したものやその後のプロジェクトの状態などを鑑み、2010年においてFreeBSDで起こりそうなことから特に興味深い9のターゲットを紹介します。

1.高信頼性レプリケーションシステムHAST

高信頼のレプリケーションシステムを実現するHASTの成果物を使った実験的な運用がはじまると見られます。FreeBSD Foundationや企業の支援を得たHASTプロジェクトは順調に進展しています。主要開発者であるPawel Jakub Dawidek氏は同分野に関する技術力も高く、ZFSの移植者でありまたFreeBSD GEOMの主な開発者です。

HASTプロジェクトが目指している高信頼性を実現したレプリケーション機能は、これまでエンタープライズでFreeBSDを採用する場合にもっとも求められていた機能のひとつです。同機能が登場することでエンタープライズレベルにおけるFreeBSD普及の原動力になると見られます。

2.プロダクションクオリティZFS

FreeBSD 8.0でZFS v.13はプロダクション品質とされました。開発はすでにZFS v.19などより新しいバージョンの移植と、FreeBSD機能の強化、安定性の向上に移っています。ZFSはストレージ管理とファイルシステムの双方の機能を提供し、従来の枠組みでは提供できない柔軟で強力な機能を提供します。

2010年はFreeBSD ZFSの採用が大きく進む年になると見られます。はじめは最小限のUFSと残りをすべてZFSにするというアプローチにはじまり、いずれはGPARTをベースにすべてをZFSにする方法が増えるのではないかと見られます。ZFSを試すという目的でFreeBSD 8.0+やFreeNASが導入されるケースも増えそうです。

3.ジャーナルUFS2 Softupdatesとfsckフリー

ZFSに高い注目が集まっているとはいえ、高負荷時にも安定して動作するUFS Softupdatesには長い実績があり、安定性を重視する場合には欠かせない選択肢となっています。UFS2 Softupdatesの最大の問題点はバックグラウンドfsckの負荷が高いことです。

UFS Softupdatesに必要最小限のジャーナル機能を追加することで、従来の性能をほとんど犠牲にすることなく、fsckを不要にする取り組みが2009年末に発表されました。従来の仕組みはそのままです。このため、実績を失うことなくUFS2 Softupdatesの可用性を引き上げる機能として注目されています。2010年はこの機能を取り込んだ実験的運用がはじまると見られます。

4.NFSv4とWindowsファイル共有

2009年、FreeBSDに実験的にNFSv4の機能が実装されました。NFSv4の設計に大きな影響を与えたのはWindowsファイル共有機能ですが、Isilon SystemsのようにFreeBSDを大規模ストレージシステムの基盤OSとして採用しているベンダはSambaを使わずにFreeBSDでネイティブこうしたファイルシステムもサポートした方がいいとみており、そうしたベンダのサポートもありこの分野の開発が2010年は大きく進むことになると見られます。

5.ATAのCAMへの統合とネイティブコマンドキューイング

ATAレイヤをCAMレイヤに統合する開発が進められています。FreeBSD 9-CURRENTではすでに試せる状況です。ATAレイヤがCAMレイヤに統合されると、ディスク管理をCAMインターフェースのもとで一貫して実施できるようになります。またネイティブコマンドキューイングが機能するようになるため、従来よりもディスクIOまわりの性能が向上することになると見られます。

今のところ、CAMに統合されたATA(AHCI)を利用すると、ディスクデバイスは/dev/adaNとして認識されるようになります。camcontrol(8)から制御できるようになります。従来のATAディスク(/dev/adN)からadaNへ変更する場合、/etc/fstabの編集が必要になります。この場合でもZFSはそのまま移行して使えます。

6.ネットワーク仮想化Jails

FreeBSD 8.0にはネットワークスタックを仮想化Vimageが追加されました。この機能を利用すると、Jailに個別にネットワークスタックを割り当てることが可能になり、従来よりも柔軟にJailネットワークを構築できるようになります。この機能はFreeBSDをホスティングサービスに利用している場合や、ネットワークプロトコルの設計開発研究に従事している場合には大きな恩恵を得られます。

2010年はVimage Jailsの採用が進み、さまざまなユースケースが登場すると見られます。JailのなかにJailを作成する機能もあり、軽量で高速な仮想化機能Jailの適用シーンが広がる年になると見られます。

7.組み込みFreeBSDとBSDライセンス

2009年はベースシステムのコマンドのいくつかがBSDライセンスで開発されたものへ置き換わりました。FreeBSDを組み込みで採用しているベンダはGPLv3のソースコードがベースシステムにマージされることを懸念しており、FreeBSDではGPLv3ライセンスのコードを取り込まない方針にしています。システムコンパイラであるGCCはGPLv3に移行したため、ベースシステムのGCCはGPLv2でリリースされた最終バージョンで止められています。

代替コンパイラとしてはLLVMが有力候補です。GCCからLLVMへの移行ははやくても2010年、順当にいってもそれ以降になると見られます。またMIPSやARM、PowerPCへの移植進展、デバイス対応をプロファイルで実現するためのFDT開発、picoBSD開発の進歩など、2010年は2009年同様、組む込み分野向けの開発が進展する年になると見られます。

8.ワークステーションでamd64メインストリーム

3.2GBを越えるメモリの活用や仮想技術の活用を考えると、amd64版FreeBSDの利用が効果的です。サーバ用途ではすでにamd64は選択肢として有力ですが、ワークステーションで採用する場合にはNVIDIAドライバが対応していない、Wineが対応していないなど、移行できない理由がありました。

2009年はこうした問題が解決した年になりました。このため、2010年はワークステーション用途においてもamd64版の採用が進む年になると見られます。VirtualBoxが安定して動作するため32ビット機能が必要な場合にはVirtualBoxで代用できるというのも一つの後押し要因になると見られます。

9.FreeBSDベースプロダクトファミリー

FreeBSDをベースに開発されたプロダクトの動きが活発化しています。ZFSがプロダクションレベルに達したFreeBSD 8.0や、組み込み対応が進められた8.0はこうしたプロダクトのバージョンアップ要因になります。特に次のプロダクトは2010年も活発な活動がおこなわれると見られます。

  • PC-BSD - KDEベースのデスクトップFreeBSD。iXsystemsのサポートと最新FreeBSDへの追随の速さ、PBI技術の提供するアプリパッケージなどワークステーション向けの最有力候補
  • FreeNAS - FreeBSDベースのNASストレージ。iXsystemsの支援を得てFreeBSD 8系へのアップグレード、GUIのモジュール化、サードパーティアドオンの追加容易性の実現を目指す。ZFSを試したい場合にもっとも便利なソリューションのひとつ
  • pfSense - FreeBSDベースのファイアウォールおよびルーティングソリューション。多機能ファイアウォールやルーティングサーバを構築したい場合に簡単に実現できる
  • Debian GNU/kFreeBSD - FreeBSDカーネルベースのDebian。次期リリースで正式版が公開される見通し
  • GhostBSD - GNOMEベースのデスクトップFreeBSD。PC-BSDがKDEをベースとしていることから、Gnomeベースでのデスクトップ提供を目指している
  • Tomahawk Desktop - LinuxベースからFreeBSDベースへの基盤OSを変更したデスクトップOS。2010年にはTomahawk Desktop 2.0がリリースされるのではないかとみられる

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