ソースのある主張は、そもそも主張ではない

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

ソースのある主張は、そもそも主張ではない

なんかkawango氏のツイートを見てたら、こんなスレをお勧めしていた(どういう意味でお勧めしてたのかは分からない)。

「2ちゃんで喧嘩してる時、ググっても反論のデータが見つからない「やべっ!」と思った時どうすれば……」2011年07月30日『マジキチ速報』
http://majikichisokuhou.blog34.fc2.com/blog-entry-3912.html

まあ、タイトルの内容が全てなのだが、そもそもソースのある主張というのは主張なんだろうか? それって「誰かがどこそこでこう言っていた」と言ってるだけだよね。

ソースは権威ある研究機関が発表した科学的データだったり、統計データだったり、法律の文章だったり、報道機関の記事だったり、するわけだけど、どれであれ、結局は他者の主張でしかない。「教科書にこう書いてあった」というのと同じだ。自分の主張ではないのだ。ソースが客観的事実であれば、自分どころか人間の主張ですらない。

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俺は主張やそれに関する議論というのものは、ソースのないものが本物だとずっと思っている。「ソースは俺」としか言えないものこそが、まさに俺の主張であり、自分が主張する価値のある主張だ。ソースにこだわる議論というのは、主張ではなく、単に知識の量を競っているだけなのだ。

もちろん「確かこういうデータがあるからうんぬん」と主張しておいて、「じゃあ、そのデータがどこにあるのか示せ」と言われて示せないのはダメだ。自分の主張の組み立てに使った外部の根拠を信憑性(しんぴょうせい)の高いものにしておくことは大事。

しかしネットの議論の多くは、自分独自の主張の部分がほとんどなく、外部の根拠≒自分の主張のものが多すぎる。他者の主張をわざわざ自分が主張する必要はない。他の誰かが主張してくれる。自分は自分が考えた自分だけの主張をすべきだろう。

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たとえ根拠が薄弱でも、理論の組み立ても粗雑でもいいのだ。どんな主張でも最初は未完成なものだ。それが批判にさらされ、欠陥や弱点を補強していく過程で完成度が上がっていく。あるいはその未完成な主張を他の誰かが見聞きして、独自に完成させてくれる。

議論とは完成品の品評会ではない。作品を作るまさにその過程こそが議論なのだ。議論が始まる前には存在しなかった概念が、議論の後に生み出される。それが有意義な議論。俺が「結論はさほど大事ではない」「過程こそが大事」と常日頃から言うのは、そういうことだ。議論とは、すでにどこかにある概念をどれだけ沢山かき集められるかの競技ではない。

よく「議論に勝負は大事か」と言われる。勝ち負けは大事だ。議論は勝つためにやらなければ意味がない。しかし最終目的が勝つことではない。スポーツと同じ。スポーツは試合で優勝することが目標だ。しかし本当に大事なのは、そのために鍛錬される技術の向上の方なのだ。優勝するというモチベーションがあってこそ、スポーツの技術の絶え間ない精進が行なわれる。

議論も同じで、議論において大事なのは、そのテーマに関する思索を深めることだ。しかしそのためには議論に勝つことをモチベーションとするしかないのだ。相手にやり込められたら、そこからどうすれば反撃できるか? を考えることで、思索が深まっていく。より深く本質について思いを巡らさなければ反論できない。

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一つ確かなことは、ソースをポンと示せば勝負がつくような議論をいくらやっても思考能力は向上しないということ。むしろ誰が見ても鮮やかな決着は無理というテーマで、悪戦苦闘した方が頭のトレーニングになる。ソースがないんだから、自分で生み出さなければならないのだからね。

誰かの主張ではなく自分だけのオリジナルの主張をしよう。明確な根拠が示せない不完全な主張をしよう。その議論でそこそこ善戦できれば、その人の議論の能力、思考の能力は本物だ。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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