いよいよ始まった
Bloombergが13日に報道したところによると、
「米銀JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は12日、同行のトレーダーが仮想通貨ビットコインの取引を行ったとしたら解雇すると言明した」
「ダイモンCEOはニューヨークでの投資家会議で、ビットコインは『良い終わり方はしないだろう』と述べ、バブルがはじけると予言。『これは詐欺』であり、最古のバブルと言われる17世紀オランダの『チューリップ球根より悪い』と指摘した」
「同CEOはその上で、JPモルガンのトレーダーがビットコイン取引を始めたとしたら、『即座に解雇するだろう。理由は2つだ。当行の規則に反する上に愚かであり、いずれも危険なことだ』と語った」
「ダイモンCEOは、特に何か問題が発生すれば、監督を受けずに仮想通貨が流通するのを各国当局は許さないだろうと指摘した。ビットコインの基となるブロックチェーン技術については、有益かもしれないとしつつも、同技術を銀行が応用できるようになるまでには時間がかかると述べた」
「同CEOはさらに、『ベネズエラやエクアドル、北朝鮮などに住む人や、麻薬密売人や殺人者の類いであればドルよりもビットコインを使うことで裕福になるだろう』」
このような、ビットコインなどの仮想通貨への疑問視の姿勢は、世界的に強まっている。各国で規制が導入され始めており、日本の金融庁をはじめ世界の金融当局が問題しているのは、特に利用者保護とマネーロンダリングの観点である。日本の当局対応も、実は、この9月末が山となるのである。
仮想通貨ではない「デジタル通貨」
最近「デジタル通貨」という単語が躍っている。以前「デジタル通貨」とは「仮想通貨」のことをいった。筆者の書籍『決済インフラ入門』(東洋経済新報社)でも、仮想通貨の英語を”Virtual Currency、Digital Currency、Crypto Currency”と書いている。
最近の「デジタル通貨」とは、いわゆる仮想通貨ではなく、その国の通貨の電子化したもの、中央銀行が発行(管理)する公的な電子マネーのことで、仮想通貨のことではない。
まだまだ誤解している方は多いので、念の為申し上げるが、通貨とは「法的通用性のある貨幣」のことで、円やドルのことをいう。したがって、日本でも法的(改正資金決済法)によって、通貨でも、金融商品でなく、モノ(財産的価値)と確認された。仮想通貨は、本来は「通貨」という単語を使うのは適正ではない。仮想通貨は管理する主体もない。なお、「貨幣」というのは、一般的な「お金」(全般)をいう。
さらに、仮想通貨やフィンテックの分野では、研究・検討・提携・実証実験という状況が長く続くという特徴がある。最近でもこの「デジタル通貨」に興味を持って研究している中央銀行は、ロシア・シンガポール・中国・エストニア・スウェーデン、そして日本などがある。
ちなみに、という話であるが、エストニアは仮想通貨「エストコイン」を発行する計画を検討中である。彼らにとって電子化は国外の外国人取込み、投資誘致として小国の生命線なのである。しかし、エストニアの通貨はそもそもユーロである。この基本的なルールに違反しようとしているエストニアに対し、当然、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は公式に批判している。
このデジタル通貨というものを考えたときに、現在の通貨・銀行制度は、中央銀行を中心に銀行が口座を持つ形の階層構造であり、システム上の記帳(内部振替)がほとんどである。すでに各銀行に「分散された台帳」であり、デジタル通貨となっているのである。
これより進めるとなると、SUICAやPASMOのような電子マネーを日本銀行などの中央銀行名で発行するか、日銀が国民のお金(通貨)の動きをすべて管理するのかという形になってくる。
一方、日本の現金流通は欧米の約3倍弱である。そもそもマネロンや脱税防止の観点からも、世界的に高額紙幣の廃止と電子マネー・デビットカードの使用などが進んでいる。ロシア・シンガポールなど、中央銀行の中では特に「イーサリアム」型のブロックチェーンの研究が流行っている。
イーサリアムは「スマートコントラクト」という契約に関する情報をブロックチェーンに書き込めるという利点があるからである。
繰り返しになるが、このような「デジタル通貨」の検討の背景にあるのが、ビットコインなどの仮想通貨への世界的疑問視の姿勢である。日本の金融庁をはじめ世界の金融当局が問題としているのは、特に利用者保護とマネーロンダリングの観点である。筆者は資金決済法(資金決済に関する法律)等の制定を支援してきた経験も踏まえご説明したい。