北朝鮮危機のなかでニッポンが悩まされる「円高リスク」
あまりに不透明な情勢下でミサイル発射では円高に
8月29日、北朝鮮によるミサイル発射を受けて、東京時間早朝の外国為替市場では、ドル/円の為替レートが108円30銭台まで1円程度急落(ドル安・円高が進行)する場面があった。
その後、ニューヨーク時間に入るとドル/円は反発し、8月末には110円台半ばを回復した。市場参加者は北朝鮮問題を軽視していたが、楽観はできないことがここにきてあらためて明らかになった。
9月3日には6回目の核実験が強行されたが、北朝鮮の軍事挑発は今後も続くだろう。トランプ政権の迷走もあり、北朝鮮問題への緊張感は高まりやすい。加えて、米国の政治先行きへの懸念も高まっている。
リスクテイクが難しい中では円キャリートレードのポジションも増えづらいだろう。そのため、ドルの買い戻しは一時的なものに留まり、円はじり高の展開を辿る可能性がある。
米国が軍事的な行動を選択する可能性も
8月上旬、トランプ大統領が北朝鮮に対して炎と怒りに直面するとの警告を発したことなどを受け、世界の金融市場では北朝鮮問題への緊張感が高まる場面があった。その後、緊張感が低下する中でも、北朝鮮の建国記念日である9月9日にミサイル発射などの挑発があると考える投資家は多かったようだ。
しかし、北朝鮮の行動は予見が難しい。そもそも、短期間で金正恩政権と米国の関係が改善に向かうとも考えづらかったわけだが、ここにきての核実験である。国際社会はこれまで制裁を強化しつつ外交交渉を経て北朝鮮問題を解決しようとしてきたが、肝心のトランプ大統領はこの考えに否定的だった。
忘れてはならないことは、米国の軍事的な行動の最終決定権はトランプ大統領にあることだ。同氏はビジネスと外交の交渉を区別できないまま、思った通りの展開が進まない場合には相手に一段の圧力をかけ、要求を突き通そうとするだろう。この姿勢が修正されるとは考えづらい。