日本人の平均寿命は83歳。定年を迎えてからも、長く人生は続いていく。たしかに将来は不安かもしれないが、「安心のために」とたくさん入った保険のせいで破産してしまっては、元も子もない。
保険料で首が回らない
「若いころ、生命保険会社の販売員に言われるがままに入った生命保険ですが、実のところ定年を迎える直前まで一回も見直したことがありませんでした。
保険料は妻の分と合わせて月約4万3000円で、手取り30万そこそこの我が家では正直キツイ出費です。でも、保険料が何十年もずっと変わらなかったこともあって、なんとなくそのままにしていましたね……」
こう語るのは、東京都に住む飯田博さん(61歳・仮名)である。飯田さんはつい最近、「これからの年金生活では保険料で首が回らなくなる」と懸念して、専門家とともにプランを見直した。
その結果、現在の保険料は夫婦で月1万5000円に抑えることができ、定年後の生活に少し余裕を作ることができた。
「60歳に差し掛かろうとするころには、多くの家庭で子育てが終わっていて、大きな出費が必要になるリスクが少なくなっています。
定年後の暮らしを考えるにあたって、現役時代に無計画に入ってきた保険が、今後どこまで必要なのか、しっかりと見直すべきです」(ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏)
人生100年、今まで以上に定年後の資産形成を熟慮すべき時代に突入している。だが生保会社の販売員は、こちらの台所事情はお構いなしに、「老後の貯蓄はできていますか? 介護保険やがん保険にも入っておきましょう」と不安を煽り、シニア世代に新たな契約を持ちかけてくる。
しかし、その前にすべきなのは、不要な保険を解約していくことなのだ。
先述の飯田さんと同様に、会社員の服部義男さん(59歳・仮名)も、自身が加入してきた保険を見直すと、定年後の経済的不安を軽減できることがわかったという。
服部さんは30歳のときに、3種類の保険に加入した。まずは死亡時1000万円の定期特約がついた終身保険で、病気で入院したときにも給付金が下りる。これに入院日額5000円保障の終身がん保険と、手術時に10万円の給付金がもらえる医療保険を合わせて、保険料は毎月2万5100円だ。
60歳をすぎても嘱託社員として働く予定の服部さんだが、今後の給料や年金との兼ね合いから保険を必要最低限に絞ることを決意。終身保険の死亡保障特約と医療特約、がん保険と医療保険も解約した。
ただ、親類にがんで亡くなった人が多い服部さんは、新たに別のがん保険に加入。月10万円の治療費保障と、以前の保険にはなかった先進医療特約をつけた。
この結果、服部さんの保険料は月9875円となり、これまでは1万円以上もムダがあったことに気づいた。そのうえ、いちばんの懸念だったがんに対する保障をさらに充実させることができた。
保険のなかには、満期を迎える前に解約しても損をしないものが多くあるが、なかには加入したままのほうが得なものもある。
定年という節目に、保険を見直したいと考えた人にとって、やめどきはいつなのか、なにを解約すれば損せずに最低限の保障が得られるのか、種類別にみていこう。