ロンドンでキャメロン首相と歓談した習近平主席 〔PHOTO〕gettyimages
「イギリスが中国を大歓待」のワケ
英国が中国の習近平国家主席を異例の厚遇で迎えた。一方、米国は南シナ海における中国の軍事基地建設を許さず、埋め立てた人工島周辺12カイリ内に米軍を展開する構えだ。中国をめぐって緊迫する世界情勢をどう読むか。
まず英国からだ。英国は習主席夫妻の宿泊先にバッキンガム宮殿を提供し、エリザベス女王主催の歓迎式典や晩餐会を開いて手厚くもてなした。宮殿提供の一事をもってして、大歓待ぶりが分かる。
肝心の経済協力では、英国で人民元建ての国債発行を認めたり、新設する原発の事業に中国が出資することで合意した。英国への観光ビザ費用も値下げする。
私は4月30日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/42747)で、中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国はじめ欧州勢が参加したのは「インフラ投資ビジネスへの参加と人民元国際化の取引だ」と指摘したが、その通りの展開になった。
欧州勢はアジアでのインフラ投資に参画することで利益を得る。一方、中国はロンドンやフランクフルトの金融市場で人民元建て取引が盛んになれば、人民元の国際化が進んで米国のドルに対抗できる。
欧州と中国は地理的に遠いから、欧州にとって中国が自分たちを脅かす安全保障上の脅威になる可能性はない。だからこそ、中国とはビジネスのウインウイン関係を築けばいい。一言で言えば、英国は今回の習訪英でビジネスパートナーとしての中国の位置付けをはっきりさせた。
もちろん国内に慎重論もある。中国の人権問題を懸念しているチャールズ皇太子は国王主催の晩餐会を欠席した。これは、まったく異例だ。「中国の人権侵害や安保上の懸念を無視して歓待一辺倒でいいのか」という一部の世論に配慮した形である。