四半期決算の風物詩「日経業績予想」が示す"報道界版ガラパゴス"の現実

英フィナンシャル・タイムズ1面に載った記事「業績予想は日経の独壇場」

東京株式市場の異様な光景

日本語という壁に守られた我が国の報道界は国際競争から遮断され、独自の進化を遂げてきた。いわば「報道界版ガラパゴス」といえよう。しかし、そのガラパゴス化の現実について、日本語メディアしか読まない読者は気づかないし、日本語メディアを読まない外国人も気がつかない。

それでもたまに外国メディアが"ガラパゴス諸島"を訪れ、母国の読者向けに日本の独自進化の模様を伝えることがある。その一例が、8月5日付の英経済紙フィナンシャル・タイムズが1面に掲載した記事「業績予想は日経の独壇場 規制当局は見て見ぬふり」だ。

書き出しはこうだ。

〈 単なるまぐれ当たりなのか? それとも、それ以上の何かがあるのか? 〉

企業の四半期決算発表が近づくと日本経済新聞の紙面上をにぎわす「業績予想記事」。その予想精度があまりに高いため「まぐれ当たりなのか?」と問うているのだ。

〈 世界第2位の株式市場を抱える日本は、四半期決算発表のたびに悪名高き慣行が繰り返されることで知られている。先週にピークを迎えた決算発表も例外ではない。企業が発表した業績結果が、実は何日も前の日経紙面上にすでに掲載されているのだ。 〉

フィナンシャル・タイムズがこのような記事を掲載するのは、これがロンドンやニューヨークなどの主要株式市場ではまず見られない光景だからだ。決算発表を待たなければ、誰も業績内容を知ることはできない---これが大前提としてあるのだ。

当然のことである。業績数字は株価に大きな影響を与える。すべての投資家に公平に情報が行き渡るよう徹底しなければ、インサイダー取引を招きかねない。「業績数字は決して外部に漏れない」が常識になっている市場関係者にとって、発表前の業績数字が風物詩のように一部メディアに載る東京株式市場の光景は異様に映るのだ。

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