2014.06.24

為末大×遠藤謙×太田雄貴×栗城史多×菅原聡【前編】「スポーツを通じて、社会課題をどう解決していくか」

Global Shapers Session 2014
左から、菅原聡氏、太田雄貴氏、為末大氏、遠藤謙氏、栗城史多氏

世界経済フォーラム(通称ダボス会議)Japan Meetingの開催に合わせて、六本木ヒルズで6月3日に開催された「Global Shapers Session 2014」。「若者がチャレンジできる社会の実現」をテーマに、Shaperそれぞれが関わるトピックについてゲストを招き議論を重ねた。

スポーツセッションのスピーカーは、為末大氏(アスリートソサエティ代表、R.project取締役/株式会社Xiborg)、遠藤謙氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所株式会社Xiborg代表取締役/Young Global Leaders)、太田雄貴氏(フェンシング選手/Global Shapers東京Hub)、栗城史多氏(ソロ・アルピニスト/Global Shapers東京Hub)、モデレーターを菅原聡氏(特定非営利活動法人GLOBE PROJECT代表/株式会社リクルートホールディングス/Global Shapers東京Hub)が務めた。

 

スポーツを通じて社会課題を解決する取組み

菅原: 本日は、社会課題をスポーツでどう解決できるか、ということでスポーツ×テクノロジーを軸にスポーツの可能性、その明るい未来についてセッションをしていきたいと思います。まず、自己紹介をお願いします。

栗城: 僕は、大学生から登山を始めまして、登山家になって世界6大陸の最高峰を登頂し、世界には8000M級の山が14つあるのですが、そのうちの3つを無酸素単独で登りました。人間が登れる限界高度は7500Mと言われておりまして、それ以上は酸素ボンベが必要なのですが、それを使わずに無酸素で登っています。またそれまで登山というのは、なかなかわかりにくい世界だったわけですが、僕はインターネットで生中継をして、「冒険を共有する」という挑戦をしています。

2012年の秋のエベレストで重度の凍傷になり、手の指9本を失ってしまいましたが、治療をしながら、6月29日からはパキスタンの8047Mのヒマラヤに挑戦するので、そこへ向けてトレーニングに励んでいます。

遠藤: 僕はエンジニアです。ソニーコンピューターサイエンス研究所で、基本的には義足の研究をしています。凍傷という話がありましたが、僕はMIT(マサチューセッツ工科大学)で、アイスクライミングで凍傷にかかり膝下を失い、義足の研究を始めたヒュー・ハー教授の下で、ロボット義足の研究をしていました。2年前に博士課程を経て帰ってきて、為末大とパラリンピックに向けて、競技用義足を作り始めたところです。

為末: 僕は2年前までハードルを飛んでいて、引退後はいろんな活動をしています。遠藤と一緒に義足を作る会社をやったり、選手のセカンドキャリアを支援する団体をやったり、スポーツのベンチャーあるいはスポーツ選手がやるベンチャーを支援するということで、自分のマンションの1室に3社ほどが集まって、仕事をしています。

僕がやっていきたいのは、社会の問題をスポーツでどう解決するかということです。僕が個人的に問題だと思っているのは高齢化で、誰でもスポーツができる環境をどうやって作っていくかということと、あとは、これは大きな夢ですが、紛争をどうやって解決するかということです。

太田: フェンシング競技をしている太田です。昨年は2020年のオリンピックの招致に力を入れていて、年齢的にも今年29歳なので、現役を引退する予定でしたが、復帰し、リオを目指しています。今回2020年が決まったことで、僕たち若い世代にとっては自分の目指す指標がひとつできたと思うので、少しでもスポーツがもっと社会の役に立てるように、そういう地位にもっていきたいと思っています。

菅原: スポーツを通じて社会課題を解決するという「GLOBE PROJECT」という団体をやっております。具体的には、フットサル大会を開いて、そのフットサルコートと同じ分だけタイ・カンボジアの地雷原がなくなるというプロジェクトです。参加費が現地の地雷除去費用になるという仕組みで、8年前からやっていて、延べ1万2000人以上の方に参加いただき、約6万㎡の地雷を除去できています。世界一周をしていたときに紛争地帯に直面してスポーツで何かできないかと思ったことがきっかけだったので、市民の力でもスポーツを通じて社会課題を解決できたらと思っています。

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