『アンネの日記』破損事件にただよう無知の匂い---犯人はドイツの図書館で同じことができるのだろうか?

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あまりにも不可解なのが、最近起こった『アンネの日記』の破損事件だ。因果関係がまったくわからない。日本にユダヤ人問題はないはずで、ネオナチだって、あるとすればただのコピーだ。ましてや、シオニズムへの反発やユダヤ人憎悪が動機だとは、私には到底思えない。

ならば、わざわざ『アンネの日記』を破る意図は何か? 

犯人の目的がたとえば日本の評判を貶めることだったとしても、それが成功したとは思えない。この犯罪には、あまりにも無知の匂いが強い。反ユダヤの土壌の一切ない国で、こんなことをしても意味はない。

これが日本人の感情を代表していないことは一目瞭然だし、筋道だった何らかの思想に基づいた犯罪でなさそうなことは、誰もが感じる。まさしく象のいない国で、違法な象狩りの摘発に対するテロをやったような違和感がある。無知な人間の行った浅はかな犯罪、それが私の受けた印象だ。

ユダヤ問題は、私たちが思っているよりずっと根が深い

では、ヨーロッパのユダヤ問題はどうなっているのか? 

2013年11月、EUで行われたユダヤ人の日常についての調査結果が発表された。対象者は、ベルギー、フランス、ハンガリー、イタリア、リトアニア、スウェーデン、イギリス、ドイツに住む計6000人のユダヤ人。ヨーロッパのユダヤ人の90%は、この8ヵ国に住んでいるという。昔はポーランドに多かったのだが、ナチに殺されていなくなってしまった。

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