少し前まで米国では、家族の食い扶持を稼ぐのは父親という固定観念があった。だが、2012年に実施された調査機関ピュー・リサーチ・センターの研究によると、米国で18歳以下の子供を持つ家庭の40%で、母親の稼ぎが主な収入源になっていることがわかった。これは過去最高で、1960年の11%と比較して、大幅な増加といえる。
また、米南部では、金融危機の煽りを受けて失業した夫の代わりに稼ぐ女性が増加傾向にある。こういった事実や女性の高学歴化が進む状況と相まって、「男が稼いで女が家庭を守る」という旧来の価値観にも変化が見られる。
こうしたなか、男性が稼ぎ頭の時代は終わったと、高らかに宣言する報道が増えている。真の男女平等に近づいているという楽観的な見かたが拡がっているのだ。

ところが、今年の5月に発表された調査の最終報告書でその内訳をよく見ると手放しで喜べない現実がある。主たる収入源である女性は「大黒柱ママ」と呼ばれ、夫よりも収入が高い女性とシングルマザーの2つに分類される。しかし、その数は前者が510万人(全体の37%)で、後者が860万人(63%)に上る。じつは、後者は家庭で唯一の稼ぎ手なのだ。
しかも、両者の収入には大きな差がある。妻が夫よりも稼ぐ家庭の年収の中央値が8万ドル(約800万円)だったのに対し、シングルマザーの家庭は約2万3000ドル。3・5倍の開きがある。夫より稼ぐ女性のほとんどが大卒の白人であるのに対し、シングルマザーの多くは若く、アフリカ系かヒスパニック系で大卒資格を持たない。
「大黒柱ママ」のイメージ先行を懸念する声も出ている。

COURRiER Japon
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