
1月26日から3週連続にわたって放映されたNHKのテレビ60年記念ドラマ「メイドインジャパン」では、リストラされて中国に渡った日本の技術者が現地で最新の電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池の開発に取り組み、古巣との競争に挑む姿が描かれていた。
このリチウムイオン電池は、1990年代に実用化され、日本の電機メーカーの「お家芸」のひとつとされてきた。そしてパソコンや携帯電話向けなどで圧倒的な存在感を示してきたが、現状では民生品向けでは韓国企業にコストと品質の両面でキャッチアップされている。
携帯電話やパソコン向けリチウムイオン電池で圧倒的なシェアを誇ってきたのが、三洋電機だ。パナソニックが8,000億円近い巨額の投資を行って三洋電機を買収、完全子会社化した目的のひとつが、このリチウムイオン電池事業を取り込むことだった。しかし、三洋のリチウムイオン電池事業は急速に競争力を失って事業の縮小を余儀なくされ、パナソニックは買収後に同事業の減損処理を余儀なくされ、巨額赤字の一因となってしまった。
中長期戦略を描けない日本企業
三洋電機のリチウムイオン電池事業のキーマンで、ビジネス開発統括部長の要職に就いていたが、パナソニックとの統合を嫌って2010年に退社、独立したのが技術者がいる。雨堤徹氏(54)だ。
雨堤氏は現在、「Amaz技術コンサルティング合同会社」(兵庫県洲本市)の代表を務めている。自前で資金を調達し、昨年秋に8人を新規雇用して「Amaz研究所」を本格稼働させたばかりだ。電池製造の前工程・後工程の設備や安全性を評価する試験装置などを備えた本格的な開発拠点であり、リチウムイオン電池の研究開発に現地現物で取り組んでいる。現在、世界中の企業から引き合いが来ている。