電波行政の秩序破りに苛立つ総務省。イー・アクセス買収で2社分のプラチナバンドを手にしたソフトバンクの成算とは
「法治国家ですから法律に則ってということについて、確認をさせていただく」---。
ソフトバンクによるイー・アクセス買収の検証をお約束した本コラムの前編が掲載された10月2日。前日発足の野田佳彦第3次改造内閣で総務大臣に就いたばかりの樽床伸二氏は定例記者会見で、事務方が作成した想定問答を何気なく読み上げた。
マスメディアは、大臣発言の意味するところを理解できなかったのだろう。ほとんど報じられなかったが、実は、この発言ほど、今回のM&A(企業の合併・買収)に対する総務省の苛立ちを象徴しているものはない。
というのは、孫社長は、総務省の裁量で周波数を無償で割り当てる比較審査方式を求めて、それを後押し。3.9世代携帯電話用のプラチナバンドと呼ばれる周波数を真っ先に獲得した経緯がある。ところが、その配分が完了した途端、他社分の周波数まで掌中に収めようとして、イー・アクセスを会社ごと金銭で買収する戦略に転換した。
3.9世代用の周波数は当初、オークション(入札)方式で割り当てられて、巨額の税外収入をもたらすものと期待されていた。その入札を先送りして、携帯4社に平等に周波数を割り当て規制下の競争を図ろうとした総務省は、その顔に泥を塗られた格好だ。
そもそも、周波数は国民共有の公共の財産だ。総務省が手をこまねいて黙認するのか、それとも何らかの是正策を打ち出すことができるのか。我々納税者は、注意深く成り行きを見守る必要がありそうだ。