2011.03.05

フェースブック、iPhoneに殺されるウェブ
オープン・モデルに立ちはだかるプライバシーの壁

フェースブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグCEO〔PHOTO〕gettyimages

 先週、フェースブックと比較しながら、グーグルのトップ交代に関する分析記事を掲載したが、さっそく読者の皆さんから様々な感想を頂いた。その中で気になったのが「フェースブックはクローズドな世界と感じない」方が多いことだ。反面、オープン・モデルを基本とするウェブ・ビジネスに、十分な関心が払われていない。

 気楽に見過ごしがちだが、日米におけるネット・コンテンツの格差は、そのままインターネット・ビジネスの国際競争力に結びつく。そこで最近米国で渦巻くウェブ尊重論やSNS非難、アプ・エコノミーへの反発などをまとめてみたい。

ワイヤード誌は、ウェブが死んだと言うが・・・

 インターネットに関心の高い読者であれば、昨年夏に話題となった「the Web Is Dead(ウェブは死んだ)」という米ワイヤード(Wired)誌の記事を覚えていらっしゃるだろう。インターネット・カルチャーを代表する同誌は、2010年8月号に同記事を載せて大きな反響を呼んだ。

 この特集は、クリス・アンダーソン編集長の「Who's to Blame: US(恨むなら:自分を恨め)」とマイケル・ウォルフ氏(ジャーナリスト)の「Who's to Blame: Them(恨むなら:奴らを恨め)」の2部から構成されている。

 アンダーソン編集長は、iPhoneアプリなどアプ・エコノミー *1が便利なおかげで、私たちがウェブを利用しなくなっている状況をまず説明する。そして、こうしたモバイル・サービスやコンテンツは検索エンジンにも現れず、セミ・クローズド(半閉鎖的)な世界であるとした。また、それはウェブの良さであるオープンな情報環境を阻害すると指摘し「デジタル経済の商業コンテンツに関する未来」は暗いと嘆いている。

 一方、ウォルフ氏は、ソーシャル・ネットワークの最大手フェースブックを取り上げた。この閉鎖的なシステムが人々に支持される背景には、ウェブの貧弱な広告ビジネスがあり「メディアを支える広告主や投資家を満足させられなかった」と述べる。そして、クローズドなサービスの台頭は、投資家・大企業によるネット・コンテンツ・ビジネス支配を進めると指摘する。

 この特集は、米国でここ数年台頭しているウェブ危機論やSNS警戒論を象徴している。これは「ウェブが築いてきた情報公開の流れを否定する動き」として、iPhoneやAndroid端末を使うモバイル・アプリケーションや情報アクセスを制限するソーシャル・ネットワークを批判している。

*1 本稿では用語統一のため、アプリケーション・エコノミー(アプ・エコノミー)を使っている。クリス・アンダーソン氏は、同記事の中で同じことをアップス・モデルと表現している。アプ・エコノミーは、米国の通信業界で広く利用されている言葉だが、アンダーソン氏はより広い意味を持たせるためか、別の言葉を利用しているようだ。

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