フェースブック、iPhoneに殺されるウェブ
オープン・モデルに立ちはだかるプライバシーの壁
先週、フェースブックと比較しながら、グーグルのトップ交代に関する分析記事を掲載したが、さっそく読者の皆さんから様々な感想を頂いた。その中で気になったのが「フェースブックはクローズドな世界と感じない」方が多いことだ。反面、オープン・モデルを基本とするウェブ・ビジネスに、十分な関心が払われていない。
気楽に見過ごしがちだが、日米におけるネット・コンテンツの格差は、そのままインターネット・ビジネスの国際競争力に結びつく。そこで最近米国で渦巻くウェブ尊重論やSNS非難、アプ・エコノミーへの反発などをまとめてみたい。
ワイヤード誌は、ウェブが死んだと言うが・・・
インターネットに関心の高い読者であれば、昨年夏に話題となった「the Web Is Dead(ウェブは死んだ)」という米ワイヤード(Wired)誌の記事を覚えていらっしゃるだろう。インターネット・カルチャーを代表する同誌は、2010年8月号に同記事を載せて大きな反響を呼んだ。
この特集は、クリス・アンダーソン編集長の「Who's to Blame: US(恨むなら:自分を恨め)」とマイケル・ウォルフ氏(ジャーナリスト)の「Who's to Blame: Them(恨むなら:奴らを恨め)」の2部から構成されている。
アンダーソン編集長は、iPhoneアプリなどアプ・エコノミー *1が便利なおかげで、私たちがウェブを利用しなくなっている状況をまず説明する。そして、こうしたモバイル・サービスやコンテンツは検索エンジンにも現れず、セミ・クローズド(半閉鎖的)な世界であるとした。また、それはウェブの良さであるオープンな情報環境を阻害すると指摘し「デジタル経済の商業コンテンツに関する未来」は暗いと嘆いている。
一方、ウォルフ氏は、ソーシャル・ネットワークの最大手フェースブックを取り上げた。この閉鎖的なシステムが人々に支持される背景には、ウェブの貧弱な広告ビジネスがあり「メディアを支える広告主や投資家を満足させられなかった」と述べる。そして、クローズドなサービスの台頭は、投資家・大企業によるネット・コンテンツ・ビジネス支配を進めると指摘する。
この特集は、米国でここ数年台頭しているウェブ危機論やSNS警戒論を象徴している。これは「ウェブが築いてきた情報公開の流れを否定する動き」として、iPhoneやAndroid端末を使うモバイル・アプリケーションや情報アクセスを制限するソーシャル・ネットワークを批判している。