中国に勝ち目はない…「中国製EV関税」をめぐる米中対立、絶望的な状況におかれた中国の報復措置が日本に飛び火する可能性も

2024年7月10日、日経平均株価は史上最高値の4万2224円2銭を記録した。その一方で、8月には過去最大の暴落幅を記録し、株価乱高下の時代に突入している。インフレ時代の今、自分の資産を守り抜いていくために私たちはどのような対策をすべきなのか。NVIDIA急成長の背景や新NISAとの向き合い方を見直しながら、日本経済の未来について考えていかなくてはならない。

本連載では世界的経済アナリストのエミン・ユルマズ氏と第一生命経済研究所の​永濱利廣氏が語る日本経済復活のシナリオを、『「エブリシング・バブル」リスクの深層』より一部抜粋・再編集してお届けする。

『「エブリシング・バブル」リスクの深層』連載第38回

日銀の施策が「アメリカバブル崩壊」の最後の砦…!世界的な“金融引き締め”の最中でもインフレが進むアメリカの“驚愕の真実”』より続く

中国からの報復措置

エミン:エミン・ユルマズ。トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。
永濱:永濱利廣(ナガハマ トシヒロ)。第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年より現職。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員などを務める。

エミン:アメリカが中国製のEVへの関税を引き上げました。これに対して中国も何らかの報復措置を取ってくるでしょう。

アメリカのテスラも中国に工場を持っていますが、これはメイド・イン・チャイナなので、中国は関税をかけられませんが、テスラへの締め付けは強化しています。

もともと中国はテスラの技術をパクって、国内のEV産業を育成してきました。その上、国内企業だけに徹底的に補助金を出して、テスラを追いかけようとしている。アメリカの関税引き上げは、こうした中国の動きに対する報復措置です。まさに1980年代後半の日米半導体摩擦を彷彿とさせる動きです。

当時、インテルや、テキサス・インスツルメンツといったアメリカの半導体企業は、アメリカ政府に対してロビー活動を繰り広げ、対日措置を講じるよう圧力をかけました。日本を何とかしなければ、我々は優位性を失ってしまうと訴えて回ったのです。

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それと同じことが起きています。テスラを含むアメリカのEV産業は、アメリカ政府に対して、中国製EVを何とかしないと競争に負けると圧力をかけている。同じことはヨーロッパでも起きています。日本で起きているかはわからないですが。

こうした動きがいずれ結実すると思いますので、欧米は中国製EVの台頭を許さないと見ています。