すべては妻の選択の結果だった…「夫の体中の骨は浮き上がり、腹部には穴が」…『ターミナルケア』の“想像を絶する実態”

2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。

介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務めた筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。

『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第40回

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『「一度始めたら止めるのは難しい」「このまま衰弱していくだけ」…介護施設に潜む『医療行為』の「落とし穴」』より続く

新人介護士の頑張り

体についていた脂肪はすっかり落ち、肋骨が浮き出ておなかが洞穴みたいにへこみ、あらゆる骨格がくっきりと浮かび上がって見えました。

その姿がなんとも痛々しくて、「奥さんがチューブは入れないと言ったときに、『じゃあ点滴もやめましょうね』とはっきり言ってあげたほうがよかったな」と、私は反省しました。

一方、ミカちゃんはそんな状態の岸田さんに、これまでと変わらずに接していました。

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「さあ、今日も岸田さんのお風呂だ」

「岸田さん、お手洗いに行くよ」

「看護師さんが言ってたけど、骨がもろくなってるから気をつけなきゃね」

ミカちゃんは、ターミナルケアだからとか、もうすぐ亡くなる人だからていねいにケアするのではなく、大好きな岸田さんが少しでも快適に過ごせるようにと頑張っていたのです。

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