ドングルのHFコンバーターでJJY標準電波は見えたか
どういうはずみか、PCで長波の40Khz標準電波を見ることに熱中している。今となっては何のきっかけでこれを始めたのか、すぐに思い出せないくらい長い期間だ。ブログの更新間隔もいつのまにか一か月を越えてしまった。
前回記事のとおり、PCでJJY標準電波を見るために、USBアダプターに接続したソフトウエアラジオドングルで画面上に受信した電波のスペクトルを出そうとしている。何十年ぶりかのRF(電波、高周波)の世界に完全に飲み込まれてしまったようだ。
そもそものきっかけは、このサイトの記事のような気もするが、もっと前からJJYの電波強度を調べていた気もする。いずれにしても、この記事は、6年以上も前の記事で、今や、このほかにも長波のJJYを受信した話は沢山でてくる。ここにはドングルではなく、一般の普通の受信装置で聞いておられる例もある。
アマチュア無線家の中には、このドングルを受信機(高級型がある)として実用に使っておられる例も数多くあるようで、技術の進歩の激しさに今更ながら驚くばかりである
JJYの電波そのものは、当研究所ではAitendoの受信モジュールを使った電波時計の自作や、標準電波のリピーター制作などで既にお馴染みである。PCで受信することは目新しい話なので飛びついた。しかし、これが電波を見るとなると、そう簡単にはいかなかった。 我ながら馬鹿なことにこだわっていると思う。そう、当研究所のモットー、「実用」ということでは、全く実用のあてのない(アマチュア無線をやらないなら)工作である。それでも、後述するように、ドングルとHFコンバーター、それに外付けRFアンプと手製のループアンテナで、40Khz近辺でそれらしい電波を捉えることに成功した。
しかし、受信機のデコード機能の関係か、正確なパルスコードを見ることは出来ず、本当にこれがそうなのかの確証はない。とはいえ、近辺でそれらしい電波はこれしかなく、3Khzほどオフセットしているが、これはコンバーターのクリスタルの誤差の範囲(数十PPM)だと思われる。受信できたことにしておこう。ともあれ、以下は、この一か月の悪戦苦闘の記録である。
HFコンバーターの組み立て(11/2/2018)
前回のブログ記事をUPしたあと、予定通りHFコンバーターの組み立てに入った。製作者のサイトには数多くの制作記が載っているが、みなさん例外なく部品の小ささに驚かれているようだ。しかし、こちらには例の実体顕微鏡という強い味方がいる。
1608チップの実装も怖くない。それでもLEDひとつを飛ばして行方不明にしてしまった。このクラスのパーツは床に飛ばしてしまうと、まず発見は不可能である。しばらく床の絨毯をペンライト片手に文字通り手探りで探したが、早々に諦めた。
というのは、この大きさのLEDなら手持ちがあるからだ。昔々、ネットの記事(チップ部品の手ハンダ実装競争)に刺激されて手に入れてある。これを取り出して難なくハンダ付けし、とりあえず配線終了である。失くしたLEDは青色だったようで、取り替えたLEDは緑。こちらの方が所長の好みなので怪我の功名であった。
プリント基板なので、誤配線の心配はない。オプションパーツのリレー(VHF帯へのバイパス)の実装を残し、テストを開始する。アンテナの準備が出来ていないので、まず、自作SG(シグナルジェネレーター)から40khzを出し、ドングルを100Mhz起点にして受信できるかどうかを試す(コンバーターは100Mhzへアップコンバートする。つまり40Khzなら100,040khzを受信)。
PCのラジオソフトはこの前から使っているSDR#(SDRシャープ)である。よーし、受信しているようだ。それでは、これまでのLTC1799を使ったJJYリピーターではどうか。ふーむ、これは無理なようだ。直付けしていないこともあって受信できない。
カップリングコンデンサーで直付けすれば、前のドングル直結のダイレクトサンプリングのときのように見えるのだろうが、先を急ぐのでアンテナを使った中波の受信テストに進む。
中波のAM放送が聞こえない。アンテナの原理を学ぶ(11/5/2018)
中波の受信はJJY受信と直接関係がないが、どの程度の受信能力があるかは試しておきたい。最近のアマチュア無線は、このソフトウエアラジオによるバンドウォッチ(入感の監視)が当たり前になっているようなので、今後この世界に復帰するときのためにも調べておきたい(おいおい)。
アンテナが問題だ。はじめループアンテナを作ろうと、ウェブサイトを漁ったが、作りたくなるようなものが見つからなかった。調べて行くうちにどんどん基本に戻り、アンテナとは何ぞやというところまで調べる羽目になった。
ウェブで基本的なことを学ぼうとするが、なかなか良い資料にめぐまれない。どの世界でもそうだが、最初の初歩の部分の解説は山ほどあるが、ちょっと進んで、長波帯での有効なアンテナの考え方を分かりやすく書いたサイトは全く見当たらない。
恐らく、書籍でもそうだろう。改めて探す気にならない。これまでに何度も失敗をしている。あきらめきれずネットサーフィンを続けるうち、不要電波の輻射をおさえるサイトの解説でふと面白いことを思いついた。要するにこの反対をやれば良いのだ。
輻射を抑えるには、シールド線のように、行きと帰りのワイヤーを近づけて相殺させる。ぐるぐる巻きをさけて磁界と電界を交錯させないようにとある。そうだ、この逆をやれば、電波が出て行く勘定だ。
つまり、ワイヤーのさしわたす範囲の面積を出来るだけ広げたり(一本線のアンテナでは地上接地面が対極)、繰り返しの流路をまとめて磁束と電界を交叉させたりすれば(コイル)、電波が輻射していくのだ。一波長が数キロメートルという長波電波でも、ループアンテナのようなものが有効だということが少しは理解できた。
続々とウエブで高周波部品を注文。圧着工具を2度買い(11/10/2018)
無線、高周波(RF)の世界は、これまでの、マイコンなどの電子工作とは少し毛色の違う部品を使う。同軸コネクターだけでも多種多様な規格があることを学ぶ。秋月電子の店頭で横目でみていたSMAコネクターが小さくて、とても工作心(ごころ)を刺激されていたのだが、これが大威張りで使える。
当面、当研究所の高周波コネクターは、SMAに統一することにしてSMA関係のコネクターやケーブルを次々に物色して、ネットで注文している。まるで新しい玩具に夢中になっている子供のようだ。 同軸などの通信ケーブルの配線では、コネクターかしめ用の圧着工具(ペンチ)が重要なキーディバイスである。圧着ペンチは昔から何故か気になる工具で、当研究所では、みな安物ばかりだがイーサネットや電話のRJ11,RJ45用から、ピンヘッダー用のオープンバレル型(これだけはまともなEngineer製)、AC配線の絶縁端子型用まで5つ近くが揃っている。
圧着ペンチの価格はピンキリで業務用のものは軽く一万円近くするが、ここも最近は中華ものが幅を利かせているようで2千円しないで各種の工具が手に入る。同軸コネクターの圧着工具も中華製が安いので、気楽に他のSMAプラグなどと合わせて注文していたら、コネクターの規格とダイスのサイズの違うものが届いてしまった。
どうもRG58や、RG174などのこれから使おうと思っているケーブルのサイズと微妙に違っている。いざとなればプラス側の細いピンの固定はハンダ付けで何とかなるが、千円ちょっとの工具なので、ウェブでもう一度、太さを確認し(インチとミリでややこしい)、2本目を発注した。 ところが、こういうときに限って、注文したものと全く違う型番のものが届いた。アマゾンは返品が簡単に出来るので、宅配業者に送料受取人払いで送り返し、同じものを注文しなおす。それにしても、肩の力が抜ける話だ。
コネクターだけでなく、同軸ケーブルも種類が多すぎて何を選べば良いのかわからない。RG系列(米軍仕様)と、5C2V,3D2VなどのJIS系列は互換性があるところとないところがあり、コネクターそのものも、ケーブルによって種類が違い(太さが違うので)、もう何が何だかわからない状態である。
既製品のアンテナも色々見つかった。マグネティックシールドループアンテナが良さそうだが、1万円以上してちょっと手が出せない。ケーブルを何メートル用意するのかも問題だ。最終的には、室内ではなく、せめて2階のベランダあたりまで伸ばすことを考えれば20メートル以上は買っておきたい。しかし、余り長いのを買ってしまうと損失がばかにならない。悩ましいところである。
またケーブルの値段が店によって極端に違うのも気になる。秋葉原の有名なケーブルの専門店オヤイデ電気は結構高い。ネットの方が圧倒的に安いのだが、これもまちまちで迷ってしまう。ケーブルは規格品なのにどうしてこんなに値段が違うのか。中華パチものがあるのだろうか。
子供のラジカセからループアンテナをはずし実験。受信成功(11/13/2018)
ちょうどそのころ、我が家の物置の奥に娘が捨てていったラジカセが見つかった。MDカセットという今では絶滅した電池式だ。手提げハンドルの脇にちょうど欲しかった巾10センチばかりの中波用のループアンテナがついていた。本体からはずれるようになっていて方向を選べる。
早速これを利用することにする。たいしたループをしているわけではないが(7ターン)、テストしてみる価値はある。早速、SMAプラグにターミナルブロックをつけるブレーク基板を用意して、接続し、地下のPC横でテストしてみた。
おお、HFコンバーターで始めて中波AM放送を聞くことができた。地下では、せいぜいが、NHK第一とFEN、それに東京放送(TBS)くらいだが、同軸ケーブルで地上近くに持って行くと、5局以上が受信できた。
ためしに、電話線でワイヤーを垂らして持ち出すと、家庭電力からの強烈な雑音で全く聞こえなくなった。同軸ケーブルはやっぱりノイズ抑制には欠かせないものであることを納得する。
アンテナを外に出しても感度改善せず(11/15/2018)
圧着ペンチが届かないので、SMAプラグを、買い置きのRG174ケーブルに、だましだまし固定し、中継プラグで継ぎ足して(例のリバースSMAコードに変換プラグをかませたもの)、ラジカセアンテナを屋外に出した。
我が家は家族の要望で防犯・防災用に網ガラスが入っている。電波事情としては良い環境とは言えない。これを避けるためである。屋外に固定するために作ったのが、写真のデコパネでつくった棚である。玄関の外壁に両面テープで固定した。 デコパネ(ポリスチレン樹脂)は、近くのホームセンターでたまたま見つけた極めて軽くてしかも意外に丈夫な板素材である。ポリスチレンも接着できるという接着剤が、最近売り出されているのでそのテストの意味もあって買ってきた。
デコパネをハサミや、カッターで簡単に切り離し、接着剤で固定する。考えていた構造をあっという間に作ることが出来た。重いものは載せられないが、ループアンテナくらいなら問題ない。ガムテ―プでアンテナを仮止めする。
ケーブルは、ルーバー型の換気窓の下を通す。見映えはいまひとつだが、無事、地下の工作室から、玄関先の換気窓のところまでケーブルがつながった。勇躍、受信テストに入る。しかし、アンテナを外に出しても感度は殆ど改善されなかった。期待していただけにがっかりである。
4アマくらいならちょっと勉強したら合格できるかも?(11/17/2018)
RFの世界を調べ始めて、どんどん深入りが止まらなくなっている。今まで避けて通っていたアマチュア無線の世界でもある。見ること聞くことが、とても新鮮で物珍しい。危険だ。ここもオーディオ同様、やりだすと止まらない趣味である。
それでも誘惑に耐えられず、ウェブで昨今のアマチュア無線界を覗いてしまった。色々面白い。無線の資格が昔に比べると全く変わっている。4級というクラスまである。これが昔の電話級という初心者向けのライセンスのようだ。
試験問題までウェブで見ることができる。試しに電波工学のところを全く復習せずにやってみた。10問くらいですべて選択問題である。解答を調べる。おお、70%くらいの正解率だ。これはやれるじゃないか。ちょっと楽しみになってきた。
とはいえ、アマチュア無線を活発にやろうという気は何故か盛り上がってこない。電波の送信だけがやってみたいだけなので、これ以上の具体的なステップには進まなかった。
驚くべき中華ラジオの世界。オールバンドラジオがたったの1500円!(11/19/2018)
我が家にはだいぶ前から携帯ラジオがない。リファレンス機器として一台買うことにした。災害への備えにもなる。
適当なものを探すためウェブで調べ始めて驚いた。何とたったの¥1500台でオールバンドラジオが売り出されている。もちろん中華製だが、どうも日本のELPAのコピー品のようだ。だめもとで注文してみる。 ほどなく到着し、早速試聴した。これがなんと、これまでのHFコンバーター付きのRTL-SDRドングルより感度が高い。地下のPC横の外部アンテナなしでNHK第一が楽々入感する。ニッポン放送などドングルでは入りにくいものまで聞こえる(ノイズが多いが)。すっかり肩の力が抜ける。
あわててドングルの前段につけるHFアンプを発注する。ドングルといえども、もう少し感度を上げておきたい。HFアンプは、これまた多種多様のアンプが販売されて適当なものを見つけるのが大変だった。少しづつスペックが違う。 RFアンプはともかく、この¥1500台のラジオは家族に強奪された。手芸の時にラジオが一番落ち着くのだそうだ。
2万円以上するSDRドングルがあるそうな(11/28/2018)
話は発散するばかりで止め処がない。ソフトウエアラジオ(SDR)には、別のオールバンドSDRがあるということを知る。RTL-SDRドングルは8ビットADCだが、これは12ビットサンプリングである。さらにLNA(ローノイズアンプ)が付いている。
紛らわしいがSDRplay RSP2という名前で、イギリスの製品である。アマチュア無線家が本国から輸入して実際の局の運用に使っているレベルのようだ。ただし価格は 2万円以上する。いずれ中華パチものが出てくると思うが、今のところその情報はない。だいぶん迷ったが、結局、買うことは見合わせる。
デコパネのループアンテナが案外感度が良い。3D-2V同軸ケーブルと接続(12/2/2018)
格安のモノタロウから50mで¥4000(メートルあたり¥80!オヤイデだと¥200以上)の3D-2Vケーブルが届いた。とりあえず30mで切って両端にSMAプラグを付ける。将来2階のベランダにアンテナを上げても届く長さにした。
再発注して届いた圧着ペンチで本格的な、コネクターのかしめの仕事をする。この圧着ペンチはアマゾンで売られている格安のペンチ(¥1500 足らず)で、型番はTU-301Gである。秋月で買った、かしめ用のSMAプラグの各部のサイズとどうも0.1ミリほどの誤差があるのが気になったが問題なく圧着に成功した。
アンテナは、棚で味を占めたデコパネで作る。30cm四方のループアンテナを作った。デコパネなのでフニャフニャだが、沢山巻かなければ大丈夫だ。Aitendoで手に入れたポリバリコンをミニブレッドボードに実装し、中波帯は同調アンテナにする。 秋月で買った精密級(?)のLCRメーター(LE5000)が大活躍である。14ターンで190μHで、4連のポリバリコンをすべて並列にして400pF足らず。これで中波帯が入るはずだ。念のためフランクリン発振回路に入れてみた。見事に、500KHzあたりの発振を確かめた。
遂にJJYを捉えたか(12/7/2018)
このあいだのテストで外に出しても余り感度が変わらないことがわかったので、アンテナを1Fのサンルームの三脚(ライブカメラ用)に固定して、アンテナのテストに入る。ポリバリコンはつけたままで同調形の中波用になっている。
アンテナ出力は、ピックアップコイル(3ターン)を同時巻きし、同軸ケーブルで受信機までつなぐ。結果は上々で沢山の放送局が聞こえる。ポリバリコンで感度の高い周波数帯域が移動することを確かめる。AGCをかけないと、大電力のNHK第一や、FENは出力が大きすぎ歪んでしまうほどだ。
いよいよ、40Khz帯の探索だ。ポリバリコンにさらに並列に0.03μFのセラコンを加え、ドングルの前にHFアンプを加えて、ソフトウエアラジオのSDR#を100Mhz帯にセットする。
左側に、局発の100Mhzの大きなピークが映り、右横の周波数帯をrangeバーで広げて、出現するピークを慎重に調べて行く。ヘテロダイン方式の受信機は、とにかく混変調を起こしやすく(自分で別の電波を作っているので)、至る所にあらわれるイメージ波に用心しないといけない。
すると、40Khzより少し低いが、数Khz手前の38.5Khz近辺に出力が間歇的に上下する電波を発見した。ラジオをCWモードにするが、JJY時報のようなパルスは捉えられない。暫く、周辺を探索する。HFコンバーターは中波でも数Khzの誤差が出ているので、これがどうもJJY臭い。
JJYは毎時15分と45分にJJYのコールサインをモールスコードで発信している。何回かこのタイミングで耳をそばだてたが、聞き取ることは出来なかった。
確かな証拠は見つけられなかったが、これがJJYの40Khzである可能性は高い。RFの世界の探索は今後も続けるとして、JJYを見るというテーマはこのへんで一段落して肩の荷を下ろすことにする。
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