« ニコラス刑事 in バンコック・デンジャラス (2008) | トップページ | あんにょん由美香 »

2009-06-03

ルサンチマン中年

 ジュンク堂池袋店でnobodyと映芸の共同ブックフェアをやっているのだが、宇野常寛に色紙でディスられてるって風の噂に聞いたもんで覗いてきた。

 宇野氏の色紙には 「秘■のルサンチマン中年を皆■せ!」 と書いてある(■は元の色紙で潰してあったので、本人が伏せ字にしたものと思われる)。「ルサンチマン中年」ってなんのことだ? なんにせよ、宇野氏はこれが〈映画芸術〉との共同企画だということを忘れてるんじゃないか? 誰がどう見たって映画界でいちばん「ルサンチマン中年」な人がすぐ上にいるんだが。 もっと笑ったのは中原昌也の色紙が一緒に並んでいることである。

 で、何を言っているのかちっともわからなかったんだが、近所の本屋でPLANETSの六号を立ち読みしてやっと色紙の意味がわかった。中に「PLANETS Selection Special 惑星開発会議」という座談会があり、森直人、前田智也、福田彩乃、宇野常寛の四人が園子温の『愛のむきだし』について話していたのである。座談会自体はどうでもいいのだが、その中で、森直人が〈映画秘宝〉の「日本映画縛り首」の中で『少年メリケンサック』をとりあげた回のことに触れたのに対して、宇野常寛がこう言っていたのだ。
『少年メリケンサック』は柳下さんみたいなルサンチマン系の中年はもう通用しないと言っている映画なので、彼らにとっては不快なんでしょうね。痛いところを突かれすぎて。僕も宝島チルドレンのひとりだから、あんまり言いたくないけれど柳下的なルサンチマンについていけなくて、僕は秘宝だったりサブカル保守から離れていったという経緯があります。教室でいじめられている自分はその分真実が見えているんだ、みたいな逆差別をあの年で生きがいにしているところがどうしようもなくつまらない。
「柳下的なルサンチマン」ってなんだ!? ていうかオレ別にいじめられっ子じゃなかったし! たぶん宇野氏的にはオタク=いじめれっ子=ルサンチマンという公式が成立しているのだろう。オレはたしかに暗いかもしれないが、オレの中にある悪意はルサンチマンという言葉で表現されるものとはちょっと違うと思うな。 まあ宇野くんには、人がすべて「快/不快」に基づいて発言しているという浅薄な思い込みをいいかげん捨てて、早いとこ文章の中身を理解する努力をすべきだ、とだけアドバイスしておきます。

|

« ニコラス刑事 in バンコック・デンジャラス (2008) | トップページ | あんにょん由美香 »

コメント

町山さんが日本にいたら襲撃されてますね、コイツ。いや、町山さんは強いヤツにはかかっていくけど、弱い者イジメはしないか(笑)。

しかしコイツラって要するに浅羽通明・大月隆寛あたり(『宝島30』知識人。笑)の完全なエピゴーネンですよね。‘不愉快芸’とでもいいますか。

しかしまぁ同じケツを舐めるにしても、映画って分野なら元・東大総長とかロキノン社長とかにしといたほうがまだ将来の展開に繋がりそうな気がするがなぁ。浅羽・大月それに荒井晴彦をお手本にしようなんて料簡じゃあ、地球が猿の惑星になったってお先は真っ暗ザンス。

投稿: kamikitazawa | 2009-06-03 12:29

初コメ、失礼します。
言い分の本質は、どっちも良く分かりませんが、とりあえず『いじめられっ子が~』は、サブカル好きなオタクが選民思想を持つことのたとえあたりで、少なくとも現実に『いじめられっ子出身』という発言ではないですよ。(『みたいな』と言ってるし)

投稿: 理由無 | 2009-06-03 14:41

「教室でいじめられている自分はその分真実が見えているんだ、みたいな逆差別」

「サブカル好きのオタクによる逆差別」
と読み替えろということでしょうか?
しかし、それならなぜそこでルサンチマンが生まれるのでしょう? ルサンチマンというのは虐げられた者、持たざる者が持てる者へ抱く感情なのではないですか? 別に「サブカル好きのオタク」は何にも虐げられてないよね。

投稿: garth | 2009-06-03 16:05

酸っぱい葡萄ってやつですよ。
サブカルに耽溺するのは全部酸っぱい葡萄なんです。
「俺は青春とか恋愛とか、そんな下らないものより本当にいいものを知っている」なんて態度は、青春とか恋愛ができない人間の強がり、逃避です。
青春できない故にルサンチマンが溜まった結果、そういう態度になるんです。

投稿: chiktak | 2009-06-03 17:22

>「サブカル好きのオタク」は何にも虐げられてないよね

実際のところ大抵の場合は別に虐げられてないと思いますが、まだ世界が狭い若い子が、勝手に被害妄想に陥って劣等感を募らせてるケースは割と多いんじゃないですか。エロゲのヘビーユーザーな若い子たちとか、知り合いの範囲ではそうなんですけど。秘宝方面はちょっと違う気がするんだが(さらに虐げられる要素が少ない)、その辺のイメージに引っ張られてるんじゃないでしょうか。

しかし、社会人になって何年も経って、いい加減トシ取って来りゃ別にそんなもん、ねえ…(宇野君だってもう30過ぎなんだから、そんな感情に突き動かされる中年は意外と少ないって事が分かりそうなもんだけど)。

あと、「柳下的ルサンチマン」って言葉は御本人が仰るように見当違いも甚だしいんだと思いますし、個人的にもそういうイメージはないですが、例えば中原さんの昔の文章は結構、ルサンチマンから来る悪意や怨念が芸になってますよね(最近はともかく)。なんか色々と混同してるんじゃないすかね。

投稿: unko | 2009-06-03 18:24

どういった戦略があるにせよ、宇野さんの口の悪さは「筋違い」だから、巧くないよなぁなどと改めて。

同調できないってことは一概にルサンチマンへ原因を求められないでしょうし(単純に興味の範疇ではない悲劇性とか)、
こと「柳下さんが~」ということで言挙げしたいのであれば、
彼は『愛は死より冷たい』すら“読めていない”ってことになりはしないだろうか?

まぁ、僕が読めていると言う自信もありませんが。

投稿: 冬の蠅 | 2009-06-03 20:09

宇野氏の中では秘宝とかに集まるのは世間へのコンプレックスと、裏表の選民意識をもった、いじめられっ子『みたいな』オタクなんでしょう。

それは事実と違うのでしょうが、ただ、氏は現実にいじめられっ子かどうかなんて言ってないし、文章を理解しろと言っているのに自分は言葉じりをとらえているのは、ちょっとオカシイですよ。

投稿: 理由無 | 2009-06-03 21:44

言葉っ足らずの意味もよく解らん罵りを突然ぶっつけてきた人間の発言の含意について、「いやそれはこれこれこういうことが言いたいんですよ」とシンセツに教えてくれる人がいる…。

ニッポンの人情もまだまだ捨てたもんじゃないようです(笑)。

投稿: kamikitazawa | 2009-06-04 07:19

あまりにも、おもしろかったので。

http://d.hatena.ne.jp/kossetsu/20080410/1207837397

投稿: yama | 2009-06-05 00:09

「ルサンチマン系の中年」と名指しでディスられた上に、
「教室でいじめられている自分はその分真実が見えているんだ、みたいな逆差別をあの年で生きがいにしている」と評された柳下さんがいて。

別にいじめられっ子じゃなかった柳下さんは、
自分の中にある悪意はルサンチマンという言葉で表現されるものとはちょっと違うと思うと応えた。
映画評論も「快/不快」に基づいて発言しているのではないと。

非常にスッキリしている返答だと思うのですが、
理由無さんは何に引っかかっているんでしょうか。

僕は、人が人を評する尺度(偏見)というものは、
その人の個性だと思いますし、その人を映す鏡だと思います。
「選民意識」や「逆差別」「ルサンチマン」という言葉を多様すれば、
それがそっくりそのまま、宇野氏に返ってしまうように。

投稿: イカろす | 2009-06-06 05:26

「俺はお前らとは違うという」という自意識以外よってたつところが何も無いなんもない彼のような評論家の方がよっぽど「選民意識」や「ルサンチマン」を感じますけどね。

それにしても
>座談会自体はどうでもいいのだが

ってこれはヒドいですよ!

投稿: 地獄のキューピー | 2009-06-06 11:44

ひっかかってるというか…
宇野氏の言葉の中で、『みたいな』は前の文章全体にかかってるから、いじめられっ子や教室は、比喩的表現で、『オレ別にいじめられっ子じゃなかったし!』ってのは、見当違いのツッコミですよ、
と…同じことを三回も書いて、結局私がしつこい挙げ足取りの人だ…。

投稿: 理由無 | 2009-06-06 14:59

「少年メリケンサック」を批判したのは、宇野常寛が決めつけているように不快に感じたせいではない(ルサンチマンによるものではない)、というのが柳下氏の反論の骨子であって、いじめられっ子云々は、どうでもよいオマケだと思いますが。

投稿: zeroes | 2009-06-06 19:23

じゃあ「オレ別にいじめられっ子みたいじゃなかったし!」とでも言ってればよかったんでしょうかね、バカバカしい。
こういう見当違いのツッコミって本当にブザマだ。
教室でいじめられている自分はその分真実が見えているんだ、みたいな逆差別が柳下的なルサンチマンで、柳下さんみたいなルサンチマン系の中年がその逆差別をあの年で生きがいにしているってハッキリ書いてあるのに、そんなルサンチマン持ってないとつっこむのは見当違いとかよく言えたもんだ。

投稿: ヘルシー女子大生 | 2009-06-06 21:54

はじめまして。
宇野さんって何言っても学園生活に当てはめちゃうから何も言いようが無いですよね。
仮想敵作ってワイワイやってるサークルは皆クズだぐらいに思ってますよね。
そりゃ、はたから見りゃ健全じゃないかもしれないけど皆■しにするとか全否定できるほどしょぼい文化圏でもないだろと思いますけど。

投稿: ギャルーキン(笑) | 2009-06-07 12:03

仮想敵作ってワイワイやってるサークルって惑星開発委員会のことですか。

投稿: ヘルシー女子大生 | 2009-06-07 23:58

あの宇野とかいうバカは相手にしない方がイイですよ。
ただ頭が悪いだけなので。

投稿: targy | 2009-06-08 00:24

オマケなのは分かってますよ?柳下さんの文章の読み違えを指摘しただけで、全体論としては最初から、どっちの擁護も反論もしてないです。

『ルサンチマンを持ってないとつっこむのは見当ちがい』って私の文のどっこにも、そんなこと書いてないですよ?

投稿: 理由無 | 2009-06-08 01:30

サブカルと対比するものって、主流の文学とか芸能、スポーツではなくて、青春とか恋愛なんだというのは、ちょっと驚きました。自分にはその認識は全くなかったので。

で、そもそも宇野って誰?それほど興味もないので、出来れば簡潔にお願いします。

投稿: kime | 2009-06-08 01:30

…私は柳下さんに反論してるから敵側とか、全体論として正しい方がすべてにおいて正義とか、敵の論旨は理解も不要とか、むしろ快/不快の理屈を裏付けてるような感じですな。


ネット上にしか、まだ自分の城を持てないガキならともかく、柳下さんは普段、名前を出して文章を書いて(読んで)お金にしている人で、読み違えをした上に『理解する努力を』とか言うのは恥ずかしいことだし、それをほっとくのは不親切なんですよ。


とはいえ、こんなこと2回も3回も書いてたらバカバカしいと思うわ!!


…秘宝は面白い雑誌だと思うし、色紙はキ●●イっぽいし、柳下さん本人はルサンチマンじゃないって言うなら、そうなんでしょーよ。

そのへんの反論はひとつもしてないのに、なんですりかわるのやら…。

投稿: 理由無 | 2009-06-08 03:29

http://blog.goo.ne.jp/wakusei2nd/e/4501b36c71c234e3d78e0615131ba917
比喩です誤読ですか。上の人そっくりですな。

投稿: ヘルシー女子大生 | 2009-06-08 12:36

ううーむ、
「あなたのタメを思って(親切に)指摘してあげたんですよ!」
ですか…。

柳下さんってそんなこと言われなきゃならないレヴェルのプロなんですか?! だとしたらそっちの方がよっぽど大問題です(笑)。

投稿: kamikitazawa | 2009-06-08 13:11

満たされない感情、あるいはあふれ出してしまう感情、そういうものを抱えているのは、表現者としての必然であると思うのですが。
どういった形であれ、何かを表現するというのは、そういった感情をうめたり、あるいは削り取る作業なのでは?
だから、本当に安定してる人は表現者にはならないでしょ。(もちろん、そういう人間のほうが圧倒的に少ないが)

あなたも、自分が過不足なく満たされているのであれば、こんなところに(失礼)わざわざ何度も書き込みをしないでしょう?

思い当たる節はありませんか?

で、もし仮に、あなたの心がわずかでも満ち足りない部分を抱えているとして、そこから、あなたが‘ルサンチマン’だという結論が導けるの?

愚問でしょう?

みなさん、上でそういうことを仰ってるんじゃないんですか?

あ、前提が違うとか言わないように。
見苦しいです。w
そういう潔さのなさが、一部の?人が宇野さんをあまりよく思わないことの一因になっている訳ですから。


あと、私見ですが、柳下さんは、満たされないものを、映画その他への愛情、情熱で埋めてるんだと思う。

一方において、宇野さんという人は、ひたすら自己顕示欲を満たすことによって、それを埋めているんだと思う。
だから、宇野さんの対象って、何かの作品ではなく、常に人でしょ。(しかもある程度(失礼)権威や勢いのある)

その人間に認められたい、もしくは論破したい。
そんな俺カッコイイ。w
・・・ってキモチワルくないっすか?w

投稿: yama | 2009-06-08 14:40

僕が鼻息を荒げることではないでしょうし、憶測の域を出ませんが―と、前置きして―

柳下さんが読み間違えているっていうんですか?近隣では『惑星~』を取り扱っていないので、「対談」の文脈を総ざらえすることはできませんが、
抜粋部分では「いじめられっ子」の比喩でもって被差別心理に移入するような態度・動機で映画に触れている→もうそんな段階で批評するのは古い、というような風に批判をしているのですから、「いじめられっ子ではない」=それだけに定点して偏執的に拘っているわけじゃない(そんな心因もない)と「意趣返し」をしただけではないかと思いますが?

言ってしまえば、「いじめられっ子」というレッテルを無効化する最も率直なやり方(宇野さんと同じな仕方)を採った、というだけではないでしょうか?(勿論、事実「いじめられっ子ではなかった」とも思いますが)。

投稿: 冬の蠅 | 2009-06-08 20:11

あー、評論家の評論スタイルを評論していると、そういうことですか。大体わかりました。

ところで、哲学の文脈以外でルサンチマンという単語を使うのはどうなのでしょう。

投稿: kime | 2009-06-09 01:18

"るさんちまん"ってなんですか?。ルチオ・フルチみたいなもんですか?。
ブッ殺して喰ってもいいんですか?。

投稿: ウーリー | 2009-06-09 02:49

“ザ・センチメント中年”って言い換えたら秘宝むけの童貞映画の題名みたいだよね。

投稿: st | 2009-06-10 05:53

ウノサンのブログで反・反論読みましたけど、相変わらずの性格の悪さはヒジョーに印象に残ったものの、アレで勝った気になってんのかなぁ。

まぁおそらくキチッとした秘宝批判や柳下さん批判を書く気なんざ最初っからなくて(書けない?)、でも今後もチクチクネチネチあっちゃこっちゃで折りに触れ秘宝や柳下さんに対するイヤミやアテコスリは展開していって、「秘宝?柳下?ああ、そんなもん完全に流行遅れですよ、論ずるにも値しないダサダサですよ」みてーな雰囲気作りに精を出しやがるんだろうな、と推測しますねオレは。
この予想は絶対当たるよ!自信持ってる。

投稿: kamikitazawa | 2009-06-10 08:16

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ルサンチマン中年:

« ニコラス刑事 in バンコック・デンジャラス (2008) | トップページ | あんにょん由美香 »