サンライズのアニメーションはこうして作られている:売れるのには理由がある(1/3 ページ)
サンライズというとアニメ制作の会社というイメージがある。しかし、数々のヒット作を生み出す秘訣は、サンライズがただのアニメ制作会社でないところにあるという。
ただのアニメ制作会社にあらず
ロボットアニメのみならず、最近では「アイカツ!」「ラブライブ!」などアイドルを題材にした作品も制作するなど、多岐にわたって数々のヒット作を生み出しているサンライズ。今回は、アニメーション作品の企画の起ち上げ方と、制作の秘訣をプロデューサーの河口氏にうかがった。
―― 最近はアニメ監督、声優さんのインタビューなどは、アニメ専門媒体でなくとも目にする機会が増えていると思います。しかし、アニメ制作にあたっている企画者の姿は、ベールに包まれているような気がします。まず、プロデューサーの仕事とはどういうものなのでしょうか? 某アイドルゲームの影響で世間一般のプロデューサー業務のイメージが、本来のものと違っているような気がしないでもないのですが。
河口氏 企業によっても、プロジェクトによっても変わってきますが、サンライズの一般的なアニメーション作品では、どういったお客様に向けた、どういった内容の作品にするのかを考え、その企画を実現するための制作スタッフを集めて作品を制作するのがプロデューサーの主な仕事です。
監督や脚本家は作品の内容をどうするか考えますが、プロデューサーは、内容はもちろんのこと、その作品がプロジェクトとして、商売として成り立つためにはどうすればよいのかというところも考えます。メディアミックスやキャラクター商品など、二次利用関連の展開を考えるのも仕事ですね。出版社や玩具メーカーの担当者と交渉するのも、一般的にはプロデューサーです。
―― 河口さんは、テレビ版「コードギアス 反逆のルルーシュ」から、プロデューサーとして関わっておられるとのことですが、テレビ版の企画はどのように起ち上がったのでしょうか?
河口氏 「コードギアス 反逆のルルーシュ」は原作のないオリジナル作品なのですが、この作品を企画するまでに私は、「∀(ターンエー)ガンダム」「オーバーマン キングゲイナー」、そしてマンガ原作の「プラネテス」という作品の制作に携わりました。
「プラネテス」は作品としての評価は非常に高かったのですが、その作品の性格上「めちゃくちゃ売れる!」という作品ではなかったんです。それで次も、そのスタッフで「また何かやろう!」となったときに皆で考えたのは、当時ヒットしていた「機動戦士ガンダムSEED」のことです。
「機動戦士ガンダムSEED」は、そもそもは、プラモデルを売ろうという企画だったのですが、人物キャラクターの人気が出て、ロボット好きの男性だけでなく、女性のお客様も多いという作品になっていたんですね。DVDの販売も好調でしたし。
それで「機動戦士ガンダムSEED」シリーズが一段落したところで、そのお客様の受け皿となる作品を「ゼロベースからオリジナルで作ろう!」というのが「コードギアス 反逆のルルーシュ」企画の発端だったんです。
「プラネテス」の谷口悟朗監督、脚本を担当した大河内一楼(おおこうち いちろう)さんのコンビが「コードギアス 反逆のルルーシュ」でも監督、ストーリー原案などを担当しているのはそういう経緯なんですね。「プラネテス」の作品としての完成度の高さもあって信頼していましたので、私も安心してお願いできたんです。
時勢に即したオリジナル作品を
―― 何か原作ものをやろうとか、次も「ガンダム」をやろう、という意見はなかったのでしょうか?
河口氏 どこの会社でも得手不得手があると思うのですが、サンライズが仕事をお願いしているスタッフの皆さんにはオリジナル作品が得意な方が多いので、やはりその「強みが生かせるものを!」というふうに自然になりました。「アニメ制作会社」という以前に「企画の会社であるべき」という意識があるんです。
そこで具体的に「内容をどうするか?」ということになったとき、まず弊社の成功例である「機動戦士ガンダム」に習って、ベースはロボットものでいこうと。ロボットが戦って、少年が主人公、というところですね。
それから、最初は主人公の少年は普通で、ライバルのほうがインパクトのあるキャラという設定だったんです。でも、時勢を考えたとき、普通の少年や正義の味方、ヒーローらしいヒーローが、若い人たちが支持したいキャラになるのか……それは違うなと。
ちょうど放送時間帯が、予定されていた夕方ではなく、深夜帯に変更されたということもあり、作品の方向性もそれに合わせて変わることになったんです。結果、それがよいほうに働いたと今ならいえますが、放送日は迫っておりスケジュールはより厳しいものになりました。
1週間に1回、8時間以上の打ち合わせをして内容をつめていたものが、その変更で間に合わなくなり、週2回に増やしてまきをかけたぐらいです。
深夜帯移行に合わせて、ライバルと主人公が入れ替わり、自分の価値観で突き進むダークヒーローが主人公になる課程で、「ギアス」という他人を意のままに操ってしまう魔法のような力が設定されました。
これは、扱いを誤ると物語が成り立たなくなるのではないかという大きな要素だったのですが、大河内さんがゲームのシナリオなどを担当したことがあり、そういったことは得意分野だったことがあって、うまく作品世界に組み込むことができました。
「ギアス」が登場した背景にもやはり時代背景の分析があって、「今の若い人はスポーツカーとかほしいのか?」と考えたときにそうではないだろうな、と。ハイブリットカーかもしれないし、電気自動車かもしれないけれど、速いとか、馬力があるとかそういうのじゃないだろうなと。さらに「ロボット兵器が彼らが憧れる、欲する力なのか?」と考えたときに「それもやっぱり違うかな」と思ったんですね。
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