【ネタバレ酷評】『グレイテスト・ショーマン』が致命的にダメダメだった8の理由

グレイテスト・ショーマン(2017)
THE GREATEST SHOWMAN(2017)

監督:マイケル・グレイシー
出演:ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、
ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン、
ゼンデイヤ、ポール・スパークス、
バイロン・ジェニングス、
ベッツィ・アイデムetc

評価:30点

『グレイテスト・ショーマン』は劇中のバーナム同様、批評家にボロクソ言われた大コケが予想されていたが、口コミで大衆に大ウケした作品。日本でもFilmarksで平均4.3/5.0(4143件 ※2018/2/17時点)という好成績を叩き出している作品だ。監督は、実写版『NARUTO』の監督に内定している新鋭監督マイケル・グレイシー。脚本は、『美女と野獣(2017)』『ドリームガールズ』『シカゴ』のビル・コンドン。出演は、ヒュー・ジャックマンにザック・エフロンと歌って踊れるイケメンだ。これがどうして酷評になるのか?ミュージカル映画に甘いブンブンが本作を酷評にするはずがないと思っていたのだが、予告編を観た際に、不穏な空気がブンブンの背後を流れた。全身痺れる音楽に惹きこまれたものの、如何にも浅そうな雰囲気に不安を抱いたのだ。

そして、本作のモデルのサーカス王P.T.バーナムを調べるうちに地雷感が強まった。予告編では、いかにもマイノリティの人々に希望の光を照らした偉人のようにバーナムが讃えられているが、実際は詐欺師であり、またサーカス=見世物小屋という構造を強固なものにしてしまった人物でもある。これを美談に描くのはかなり危険なのでは?と思った。

また、前日に観たバート・ランカスターがバーナムを演じた映画『バーナム〜ショービズをきわめた男』がサーカスシーンを全然魅せなかったり、肝心なエピソードの数々をナレーションだけで済ませたりと酷かったこともあり、より一層嫌な予感がした。

そして、その予想は見事に当たってしまった。酷かった。本日は、ネタバレ全開で本作が残念だった理由を述べていきます。

『グレイテスト・ショーマン』あらすじ

P.T.バーナムは貧しく厳しい家庭で育った。上流階級の女性チャリティを好きになり長年の死闘の末、結婚にまでこぎつけた。彼らの生活はハッピーエンドになるつもり…だった。しかし、そんなある日バーナムが勤務していた貿易会社が倒産してしまう。家族路頭に迷う羽目になったが、バーナムは借金をして大きな小屋を借り、新しいビジネスを始める。それは陰日向に生きるフリークスを集めたサーカス公演というものだった。地元民との激しい軋轢の末、これが成功する。しかし、成功の先には新たな苦難が待ち受けていた…

ダメダメなポイント1:音楽に頼りすぎた物語

本作は物語展開を音楽に頼り過ぎだ。バーナムの奇天烈な人生A to Zを100分くらいにまとめるのは確かに大変だ。幼少期から青年になるまでを音楽で描いてしまうのは合理的だ。『バーフバリ』二部作

でも、長い冒険の道中や長い時間の流れをショートカットする為にミュージカルが効果的に挿入されている。

しかし、本作は物語の大半をこの音楽による進行で済ませてしまっている。それも基本アップテンポな曲で。だから、ザック・エフロン扮する上流階級の青年を激しいディスカッションの末バーナムサイドに引き込む大事な駆け引きも、その青年と空中ブランコの女性との繊細な恋の駆け引きも非常に浅くなってしまう。

ダメダメなポイント2:物語の軸が見えぬ展開

本作は、冒頭から音楽を使うことで物語を駆け足で進めている。物語をこうも駆け足で進めているということは、余程魅せたい物語や演出があるんだろうと思って観ていた。ただ、これが結局何を描きたかったのかがわからない。

予告編を観る限り、陰日向のフリークスを輝かせた功績を讃えている雰囲気を感じ取った。しかし、本編を観るとスウェーデンの歌姫に浮気し、フリークスたちを邪気に扱った末に劇場を失う物語になっている。

では、劇場が炎上してから改心して頑張るところに軸を置いているのかというと、劇場が炎上してから立て直しまでの流れが唐突すぎる。似たような作品の『シング

』では、じっくり建物の再建を描いていたので感動的だったのだが、本作にはそのような描写はない。そして、肝心なサーカスシーンも、バーナムに愛を捧げたサーカス映画『地上最大のショウ』と比べるとあまりにもしょぼい(後述)。

なので結局、音楽で物語を進行させたのは監督の力量不足を誤魔化したかっただけなのではと感じる。曲も、とにかくアップテンポで、じっくり人物の心情を語るスローペースな曲がないのもやはり監督の不足する実力を隠したい為なのではと思ってしまう。

ダメダメなポイント3:空気と化すフリークス

さて、『グレイテスト・ショーマン』最大の罪はなんだろうか。個人的にフリークスの扱いだと思っている。本作は、アカデミー賞歌曲賞にノミネートされている曲THIS IS MEが象徴しているように、多様性を描いた作品だ。バーナムはサーカス=見世物小屋という強い方程式を世間に伝播させてしまった罪こそある。それを多様性を認めた男と称し讃えるのはまあ、目を瞑ろう。しかし、だとしたらフリークスの多様性を映像でしっかり魅せる必要がある。折角、巨人、小人、巨漢、黒人、毛むくじゃらな女、獣男、シャム双生児と個性的なキャラクターが登場するのに、フォーカスが当たるのは毛むくじゃらな女と空中ブランコ乗りの女程度。残りは完全に空気と化し、ミュージカルパートの背景としてしか機能していないのだ。

ダメダメなポイント4:衝撃すぎるラスト

さらに、本作は衝撃的なことにフリークスを裏切ったバーナムを安易に許すという、多様性にうるさいアメリカ映画にあるまじきドン引きエンディングが用意されている。

バーナムは、金のためなら手段を選ばない男。その性格故に、売れるスウェーデンの歌姫の公演に力を入れ、フリークスを邪気に扱う鬼畜プレイを敢行する。そして、その悪行が祟って、スキャンダルが発覚。バーナム主催のスウェーデンの歌姫コンサートは中止となり、バーナムの小屋は放火により焼け落ちる。まさに天罰だ。通常だったら、フリークスたちはバーナムを責め立てるだろう。なんたって、給与すら未払いなのだから。しかし、フリークスはバーでやけ酒するバーナムの元へやってきて、「金儲けでやっていたんだとしても、私たちはあなたを尊敬します。あなたは虐げられていた私たちに居場所を作ってくれた。」とバーナムを許すのだ。

ブンブンは嘘だろ!と阿鼻叫喚した。少しは責めろよ。それで良いのかよ!

ストックホルム症候群に陥っているブラック企業で働いている人の心を100%肯定的に描いているように見えて気持ち悪くなった。

ダメダメなポイント5:ザック・エフロン…

そういえば、本作ではバーナムが上流階級の人々とのコネを作る為に、上流階級の青年を買収するシーンがある。その買収された青年役をザック・エフロンが演じているのだが、物語に要る?と思うほど空気だ。そのレベルは、モブキャラのフリークスレベル。なんたって、上流階級との人脈つなぎの営業として雇われたという設定なのだが、全くもって彼の有能さが見えてこない。というよりか、セリフで説明しているだけで、行動では彼の活躍がほとんど描かれないのだ。なので、「英国女王からの招待は、団員全員で行くことを条件に引き受けました。」というセリフが「本当に君がやったの?」と思うぐらい胡散臭いものとなっている。

そして、結局青年がやったことは、空中ブランコ乗りへのセクハラのみという非常に痛々しい実績となってしまった。

えっラストはって?バーナムから支配人の座を譲り受けて、ショーマンとして躍り出ているが、あんな踊り全然ショーマンじゃないじゃん!ただ出オチじゃん!

ってことでザック・エフロンの衝撃的すぎる空気感に唖然したのであった。

ダメダメなポイント6:ミュージカル表現に乏しい

ここまでは主に物語面を中心に話をしてきた。物語は酷かったが、ミュージカルシーンは良かったのでは?と思う方もいるだろう。しかしながら、ミュージカルシーンもこれまた残念であった。

本作はサーカスを描いている。サーカスとは、3次元の娯楽だ。映画という2次元の中に3次元が閉じ込められた制約下の中でいかに魅力的にサーカスを描くのかが問題となっている。『地上最大のショウ』では「高さ」や「広さ」を強調する空間表現でもってサーカスを魅力的に表現している。そのせいか、アカデミー賞では『真昼の決闘』という映画史に残る傑作がノミネートされていたにも関わらず作品賞と脚本賞を制した。

本作はサーカスを魅力的に表現するツールとして《ミュージカル》を用いている。しかし、これがあまりに手数不足で、それも空間表現に欠けており、全くサーカスの良さを強調することができていなかった。

なんといっても、本作はほとんどのシーンで2次元的にしか踊りを魅せていない。サーカスのシーンでは、常にモブキャラかき集め、集団で横に並び、レビューのように踊るだけだ。常に演者の間近アリーナ席での景色を魅せることができる映像の優位性が全く活かされていないのだ。

それこそ、フリークスの多様性を強調する話なのだから、巨人の目線から、小人の目線から、そして観客と舞台の視点を目まぐるしく切り替えて演出すべきだ。あまりにも演出が甘い。冒頭や終盤の大団円でも結局キャラクターの個性を引き出すコレオグラフィは皆無だった。

またブンブンはバークレーショットフェチだ。バークレーショットとは、真上から撮影をすることで踊りが万華鏡のように見える撮影技法。これがあるとブンブンは加点しがちなのだが、本作のあまりに安直で凡庸を極めたバークリーショットまで魅せられゲンナリした。

ダメダメなポイント7:批評家の逆鱗に何故触れたのか?

さて、本作は先述の通り批評家に嫌われた作品だ。その理由がなんとなくわかったので語っておこう。河瀬直美の『光』同様、批評家を煽りヘイトを貯める場面があるからこうも嫌われたのではないだろうか。河瀬直美の『光』では、視覚障がい者向け音声ガイドを作る女の話なのだが、突然彼女が自身の映画論を半ギレ気味に長々と語る場面がある。これが河瀬直美を苛める映画評論家、映画ファンへの言い訳に見えてしまう点でブンブンも含め批評家のヘイトを爆稼ぎした。

本作もこれに近い部分がある。劇中で登場するバーナムの敵である批評家の扱いだ。映画好きなら、この敵キャラを観ただけで、ラストに和解することは容易に予想できる。しかし、批評家の心をチクチク刺すバーナムの皮肉からなんも対立なしに、突如この批評家はバーナムサイドに堕ちるのだ。しかもこの批評家、フリークスのサーカスは酷評したが、彼がスウェーデンの歌姫を発掘した瞬間に、「君はエンタメ界にいなくてはならぬ存在だ!」と改心する。確かに、批評家は作家の人格を評価するのではなく、一つ一つの作品を評価すべきだというのは分かる。それにしても、こうも気持ち悪いほどバーナムにべったりくっつく批評家には、批評家寄りの人程気味の悪さを覚えるであろう。

故にこれを観せられた批評家は、劇中の批評家を反面教師に「よし酷評したろう」となり酷評相次いだと言える。

ダメダメなポイント8:ココマルシアターを知る者にとって許しがたい物語

これは、本作の製作者には全くもって関係ないことだ。しかし、ブンブンはこれを語らずにはいられない。なんたって、それが原因で本作が好きになれないのだから。

このバーナム成功物語は、ココロヲ・動かす・映画社〇のイクゾ気合(=樋口義男)を思わずにはいられないのだ。イクゾ気合とは、ゲーム会社株式会社デジタルワークスエンターテインメントの社長である。彼は、昨年映画館ココマルシアターを立ち上げた。クラウドファンディングで資金を調達し、映画業界に参入したのだが、映画館は延期に延期を重ねなかなかオープンせず、いざオープンしてみるとあまりに杜撰な経営に炎上する始末となった。

どうもこのイクゾ気合の発言などを追っていると、バーナムのように夢見がちで現実を見ていないような感じがする。おまけに、自分の夢を実現する為には、周りの人を踏み台にし無意識のうちに搾取しているような人物だ。

あくまでここでは『グレイテスト・ショーマン』の話をすべきなので、彼およびココマルシアターのことを知りたければ、下記の記事を読んでいただきたい。しかし、少なくても本作を褒めることはココマルシアター及びイクゾ気合の搾取と暴走を許してしまうような気がした。

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悪気があるわけではない… が、それが一番の問題かも。

アカデミー賞歌曲賞受賞必死!?音楽だけは神だった

こうも酷評したが、これだけは言える。

「曲は神!」

オープニングのThe Greatest Showは背筋に電撃が落ちたかのような興奮を覚えたし、なんといってもバーナムに裏切られたフリークスが哀しみを込めて歌うTHIS IS MEは本当に魂を揺さぶられた。このパートを歌う毛むくじゃらな女役のカーラ・セトルが抜群に良い。

ってことで真面目にTHIS IS MEはアカデミー賞を撮って欲しいなと思った。

最後に…

日本では、あちこちで絶賛されているのだが、残念ながらブンブンは口汚く罵る羽目となりました。本当にファンの方すみません。ただ、先述の通り曲は本当に良かった。そして本作を映画館で観たのは正解だとさえ思った。それだけに、惜しいなー惜しいなーと悔やんだ次第だ。

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2 件のコメント

  • 批評家は「歌姫のパートナーが君だという事実が残念だ」と皮肉っています。
    手のひら返して「エンタメ界に君は必要だ!」なんてこと一切言っていませんよ。
    別に今作のファンではありませんが、所々あまりにも偏った解釈をされていて、どうかと思ったのでコメントしました。

  • はじめまして。
    ブンブンさんがおっしゃるとおり、音楽が本当に素晴らしかったですね。
    特に、オープニングの「The Greatest Show」から、幼少期の二人が屋敷を抜け出して探検をするまでのシーンで、私は最高にのせられてしまいました。
    私のなかで、アナと雪の女王の「Let It Go」に続き、「THIS IS ME」は劇中の自己開放ソングの名曲として殿堂入りしました。

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