番外その34:前回総選挙以来の著作権法改正関係国会議員リスト
この11月16日に衆議院が解散され、12月4日公示、16日投開票という総選挙日程が示された。残念ながら、今回も著作権問題が選挙の争点となることはないだろうが、多少なりとも誰かの参考になるかも分からないので、ここで番外として前回総選挙から3年あまりの間に議論され、成立して来た各種著作権法改正に関係して名前が出て来た国会議員のリストを載せる。
(1)ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正関係
この3年あまりの間で一番大きな問題を含む法改正はダウンロード犯罪化だと私は思っている。10月1日の施行以来今のところ逮捕者は出ていないようで、遠隔操作ウィルスによる冤罪問題でそれどころじゃないというのもあるかも知れないが、法改正をして何もしないというのも今の警察の振る舞いから見てあり得ないだろうし、何かしらの形で逮捕者が出るのは時間の問題だろう。
この著作権法改正案はこの6月15日に衆議院文部科学委員会及び本会議で可決され、6月20日に参議院文教科学委員会及び本会議で可決されたものだが、ここでこのダウンロード犯罪化について特に忘れてはならないのは、まず推進したのが自民公明の両党であって、消費税増税法案の成立と引き換えに文化庁作成・内閣提出の著作権法改正案の中に混ぜ込まれて最終的に成立したものだということである。
このダウンロード犯罪化法案の成立までの経緯は、第256回、第275回、第276回、第277回などをご覧いただければと思うが、このダウンロード犯罪化問題で名前の出て来た議員を以下にリストとして載せる。一応推進派と反対・慎重派という形で分類をしているが、自民党と民主党に関しては議員ごとに見解の違いがかなりあること、ただし自民党は党として規制強化に大きく寄っていること、また一丸となってダウンロード犯罪化を強力に推進していた節がある公明党は本当に党全体として危険であることは良く認識しておく必要がある。また、社民党と共産党は明確に党としてダウンロード犯罪化に慎重な立場を示していたことや、著作権問題で正しく懸念を表明して下さった民主党の議員の方々は今はほぼ国民の生活が第一に移っていることも大きなポイントである。なお、既に国民の生活が第一に合流しているが、新党きづなも法改正に反対していた(きづなのHP参照)。
(以下、ダウンロード犯罪化を特に推進していたと考えられる議員の名前を赤で、特に慎重な立場を示していた議員の名前を青で示す。リストの名前の色分けの意味は以下全て同じである。)
○衆議院 ダウンロード犯罪化推進派議員
・下村博文議員<自民・東京11区>(HP、wiki):自民党文部科学部会長、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
・河村健夫議員<自民・山口3区>(HP、wiki):元文部科学大臣、ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
・馳浩議員<自民・比例北陸信越>(HP、wiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
・松野博一議員<自民・比例南関東>(HP、wiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人
・池坊保子議員<公明・比例近畿>(HP、wiki):ダウンロード犯罪化修正案の提案者の一人、今期限りで引退を表明
・斉藤鉄夫議員<公明・比例中国>(HP、wiki):自公ダウンロード犯罪化法案について民主に協力要請
・平野博文議員<民主・大阪11区>(HP、wiki):法改正審議時の文部科学大臣
○衆議院 ダウンロード犯罪化反対・慎重派議員
・川内博史議員<民主・鹿児島1区>(HP、twitter、wiki):ダウンロード犯罪化に慎重な立場を示す
・宮本岳志議員<共産・比例近畿>(HP、wiki):衆議院文部科学委員会でダウンロード犯罪化に反対
・木内孝胤議員<無所属・東京9区>(HP、twitter、wiki):ダウンロード犯罪化に反対の立場を示す
○参議院 ダウンロード犯罪化推進派議員
・鶴保庸介議員<自民・和歌山>(HP、wiki):自公ダウンロード犯罪化法案の主要検討メンバーの一人
・三原じゅん子議員<自民・比例代表>(HP、twitter、wiki):自公ダウンロード犯罪化法案の主要検討メンバーの一人
○参議院 ダウンロード反対・慎重派議員
・森ゆうこ議員<民主→生活→未来・新潟県>(HP、twitter、wiki):法改正に反対票を投じ、ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出
・はたともこ議員<民主→生活→未来・比例代表>(HP、twitter、wiki):ダウンロード犯罪化に関する質問主意書を提出
・林久美子議員<民主・滋賀>(HP、twitter、wiki):民主党部会で慎重な意見を表明
・井上哲士議員<共産・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・市田忠義議員<共産・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・紙智子議員<共産・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・田村智子議員<共産・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・大門実紀史議員<共産・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・山下芳生議員<共産・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・福島みずほ議員<社民・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・又市征治議員<社民・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・山内徳信議員<社民・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・吉田忠智議員<社民・比例代表>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・糸数慶子議員<無所属・沖縄>(HP、wiki):法改正に反対票を投じた
・世耕弘成議員<自民・和歌山>(HP、twitter、wiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明
・山本一太議員<自民・群馬>(HP、twitter、wiki):ダウンロード犯罪化について慎重な意見を表明
また、文化庁作成・内閣提出の著作権改正法案に元から含まれていたDRM規制の強化も私は問題なしとしないが、こちらの方がほとんど問題にされないのも非常に残念である。
(2)海賊版対策条約(ACTA)批准関係
海賊版対策条約(ACTA)の批准は、7月31日に参議院外交防衛委員会で、8月3日参議院本会議で可決された後、問責決議で野党が欠席する中、8月31日に衆議院外務委員会で、9月6日の衆議院本会議で可決されたものである。かなり異様な決議過程を経ているが、ACTAに関しては、これが小泉政権の置き土産であるということも忘れてはならないだろう。(経緯に関しては第279回参照。ACTA自体の問題点については第280回参照。)そのため、自公に関してはリストとしてあげるまでもなくほぼ全員がACTAに関しては推進の立場を取っていたと考えられること、実際に主力となって推進していたのは外務・経産官僚であると考えられることに注意が必要ということを前置きとして、以下にリストをあげる。ACTAについては、TPPの前哨戦とも考えられることから、国民の生活が第一・新党きづなやみどりの風などの議員の方々を中心に反対の声がかなりあがっていたこと、民主党の一部でも反対の動きがあったことを覚えておくべきだろう。
○衆議院 ACTA推進派議員
・玄葉光一郎議員<民主・福島3区>(HP、wiki):ACTA批准審議時の外務大臣
○衆議院 ACTA反対・慎重派議員
・三宅雪子議員<生活→未来・比例北関東>(HP、twitter、wiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
・京野公子議員<生活→未来・秋田3区>(HP、twitter、wiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
・大谷啓議員<生活→未来・大阪15区>(HP、twitter、wiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
・中野渡詔子議員<生活→未来・比例東北>(HP、wiki):本会議で反対
・相原史乃<生活→未来・比例南関東>(HP、wiki):本会議で反対
・斎藤やすのり議員<きづな→生活→未来・宮城2区>(HP、twitter、wiki):ACTAに関して反対の立場を表明、本会議で反対
・渡辺義彦議員<きづな→生活→未来・比例近畿>(HP、wiki):本会議で反対
・中後淳議員<きづな→生活→未来・比例南関東>(HP、twitter、wiki):本会議で反対
・石田三示議員<きづな→生活→未来・比例南関東>(HP、wiki):本会議で反対
・川内博史議員<民主・鹿児島1区>(HP、twitter、wiki):ACTAに関して慎重な立場を表明、本会議で棄権
・橘秀徳議員<民主・神奈川13区>(HP、twitter、wiki):ACTAに慎重な立場を表明、本会議で反対
・石山敬貴議員<民主・宮城4区>(HP、twitter、wiki):本会議で反対
・近藤昭一議員<民主・愛知3区>(HP、wiki):本会議で棄権
・鳩山由紀夫議員<民主・北海道9区>(HP、twitter、wiki):本会議で棄権
・中山義活議員<民主・東京2区>(HP、wiki):本会議で棄権
・首藤信彦<民主・神奈川7区>(HP、wiki):ACTAに慎重な立場を表明
・中島隆利議員<社民・比例九州>(HP、wiki):ACTAに関して慎重な立場を表明
・小泉俊明議員<減税日本→未来・茨城3区>(HP、wiki):本会議で反対
・小林興起議員<減税日本→未来・比例東京>(HP、wiki):本会議で反対
・平智之議員<減税日本→未来・京都1区>(HP、wiki):本会議で反対
・佐藤夕子議員<減税日本→未来・愛知1区>(HP、wiki):本会議で反対
○参議院 ACTA反対・慎重派議員
・森ゆうこ議員<生活→未来・新潟>(HP、twitter、wiki):ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
・外山斎議員<生活→未来・宮城>(HP、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
・主濱了議員<生活→未来・岩手>(HP、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
・谷岡郁子議員<みどりの風・愛知>(HP、twitter、wiki):ACTAに慎重な立場を表明、ACTA批准に反対票を投じた
・亀井亜紀子議員<みどりの風・島根>(HP、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
・行田邦子議員<みどりの風・埼玉>(HP、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
・平山誠議員<大地・比例代表> (HP、twitter、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
・横峯良郎議員<大地・比例代表>(HP、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
・米長晴信議員<無所属・山梨>(HP、wiki):ACTA批准に反対票を投じた
(3)出版社への著作隣接権付与問題関係
このブログで大きくは取り上げて来なかったが、衆議院の中川正春議員を中心とした勉強会で出版社へ著作隣接権を付与するかどうかがずっと検討されて来ており、つい最近この出版社への隣接権を付与するべきとの結論をまとめている。(読売新聞のネット記事、印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会のHP、事務局である文字・活字文化推進機構のHP、同HP上の「出版物に係る権利 (仮称)」に関する検討の現状について(pdf)参照。)
この結論には大きな問題があると私は考えているが、こうまとめられたからには、衆院選後、この出版社への隣接権付与は著作権関係で真っ先に問題になる話の一つだろう。この問題の大きさもさることながら、以下のようなこの勉強会の参加メンバーは議員の中で誰が権利者団体に近いのかを示すものとして参考になるだろう。
○衆議院 出版社の著作隣接権創設推進派議員
・中川正春議員<民主・三重2区>(HP、wiki):勉強会の座長
・甘利明議員<自民・比例南関東>(HP、wiki):参加メンバーの一人
・河村健夫議員<自民・山口3区>(HP、wiki):参加メンバーの一人
・池坊保子議員<公明・比例近畿>(HP、wiki):参加メンバーの一人、今期限りで引退を表明
・富田茂之議員<公明・比例南関東>(HP、wiki):参加メンバーの一人
○参議院 出版社の著作隣接権創設推進派議員
・石橋通宏議員<民主党・比例代表>(HP、wiki):参加メンバーの一人
(4)その他著作権問題関係
○音楽議員連盟参加衆議院議員(音楽業界と関係が深い議員、芸団協のHPに掲載されている2011年12月のシンポジウム講演録(pdf)参照)
・中野寛成議員<民主・大阪8区>(HP、wiki):連盟会長
・塩谷立議員<自民・比例東海>(HP、wiki):連盟副会長
・斉藤鉄夫議員<公明・比例中国>(HP、wiki):連盟副会長
・服部良一議員<社民・比例近畿>(HP、wiki):連盟副会長、2011年12月7日の外務委員会(議事録参照)で戦時加算の問題について質問
○音楽議員連盟参加参議院議員
・鈴木寛議員<民主・東京>(HP、wiki):連盟幹事長
・市田忠義<共産・比例>(HP、wiki):連盟副会長、ただしダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案では反対票を投じている
全体的なことを言えば、著作権問題でも、規制強化を党として一貫して推進している公明党が一番危険であることに変わりはなく、自民党は議員によってかなり立場に違いがあるが最近の動きを見る限りほぼお話にならないレベルで規制強化に凝り固まっており、民主党は議員によって規制強化にかなり反対・慎重な立場を示すものの全体としては政権与党として官僚に流され、民主党の中でも規制強化に特に慎重な立場を示した多くの議員が国民の生活が第一に移り、社民党と共産党がかなり明確に党として慎重な立場を示しているということになるだろう。さらにぶっちゃけて書くなら、自公と官僚が規制強化に向けて暴走をして、それをごく一部の議員が問題視するが、やはり全体としては多勢に無勢でどうにもならないというのが日本の無惨な現状である。
民自公と自称第3極の思惑がどうあれ、今回の総選挙の争点は消費税、原発、TPPとなるのだろう。いつも通り著作権が選挙の争点にならないだろうのは残念だが、著作権問題に関してはTPPに参加すればそのままアメリカに引っ掻き回されることは必至なので、著作権問題を最も重視するような奇特な方は、TPPへの賛成が著作権規制の強化に直結すると見てTPPに関する賛否から判断して投票すれば大きく外れることはないだろうと私は考えている。
今回の選挙もそれで現状が劇的に改善することはないだろうが、日本の将来を決める重要なものであることに変わりはない。一人でも多くの人に選挙に行ってもらいたいと私は思っている。
同日投開票(11月29日公示、12月16日)の都知事選・東京都議会補欠選挙もあり、情報規制法改正関係についてもリストを作ろうと思ったのだが、著作権関係だけで結構な量になったのでそれは次回に回すことにする。
(2012年11月18日の追記:江口秀治氏(twitter)の指摘を受けて斉藤鉄夫議員、服部良一議員他音楽議員連盟の議員の名前をリストに追加した。また、今は議員ではないが連盟事務局長の簗瀬進氏も出馬する可能性があるので確かに注意が必要だろう。)
(2012年11月19日夜の追記:1カ所誤記を直し、いくつかリンクを追加・修正した。)
(2012年11月24日の追記:コメントを受けて、木内孝胤氏をリストに追加し、新党きづなに対する言及を加えた。また、既に新党きづなは国民の生活が第一に合流しているので、リスト中に矢印で追記した。合わせていくつか誤記も修正した。)
(2012年11月28日夜の追記:国民の生活が第一や減税日本・反TPP・脱原発が日本未来の党へ合流するとのことなので、リスト中に矢印で追記した。)
(2012年12月1日夜の追記:1カ所リンクを修正した。)
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コメント
もし既出なら失礼。
木内孝胤 前衆院議員(この当時は無所属)
https://twitter.com/takatanekiuchi/status/213484842447405057
【本会議】著作権法と原子力規制委員会などの法案に反対しました。
http://www.kizuna-party.jp/archives/432
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○文部科学委員長の報告の後、委員長報告のとおり修正議決した。
きづな:反対
投稿: | 2012年11月23日 (金) 21時39分
コメント・情報ありがとうございます。
念のため本文中にも追記しました。
投稿: 兎園 | 2012年11月24日 (土) 00時32分