第六の絶滅

Die Wahrheit ist irgendwo da draußen.

響け!ユーフォニアム #11 の小道具と演出

 2015Q1をまとめている間に2015Q2も終わってしまった。最初はぱっとしない感じのあった今期も、出揃ってみれば印象的な作品が多くなんだかんだで楽しんでいる。

 中でも『響け!ユーフォニアム』は惹き込まれる回が多かった。今回は小道具の使い方がグッと来る #11 「おかえりオーディション」について何点か。コンテ・演出は雪村愛。

 

■麗奈と香織の位置関係

 トランペットのソロパートを決めるオーディションに臨む麗奈と香織の練習風景が映される。

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 麗奈は(おそらく4階の)渡り廊下、対して香織は校舎裏(地上)。オーディションという形式ではあるが、事実上香織は一度敗北した挑戦者だという両者の立ち位置が表れている。同時に両者はともに人気のない場所を選んでおり(まあ楽器の個人練習なんて大体そうだろうが)、性質は違えど孤独を抱えた存在であることも暗示されている。麗奈にとっての久美子、香織にとってのあすか、二人の話し相手が全く逆の作用をしているのも面白い。

 

■二人の楽器ケース

 グッと来た小道具がこれ。二人のトランペットを収める楽器ケースがハードケースとソフトケースで区別されている。

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 オーディションの準備をしろと言われた二人が、並んで置いてあったそれぞれの楽器ケースを持ち、画面左右反対の方向に歩いて行く、というあからさまにあからさまなカットが挿入される。

 香織は去年までパートメンバーの中で一番の実力を持っていたのにも関わらずただ上級生というだけの三年生にソロパートを奪われ、それどころか部を維持するため折衝役としてひたすら犠牲になってきたということが優子の口から語られるが、一方で麗奈は実力のある者、特別な人間が前に出るべきだという確固たる意志と、自分がその特別な存在であるべきだという目標意識を持った人物として描写されてきた。

 こうした両者の人間としての在り様の違いが、この楽器ケースで表現されているのだ。

 

■麗奈と久美子の光

 そして久美子の“愛の告白”。

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 麗奈のもとに久美子がやって来る。一番最初の個人練習の場面もだが、この回は久美子から麗奈に働きかける構図が反復される。

 

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 「私が悪者になる」とオーディション前に少しナーバスになっている麗奈。光を浴び久美子の目に眩しく特別な存在として映っていた麗奈が、今回は反対に影を背負っている。この場面は #8 「おまつりトライアングル」のリフレインだ。

 

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 私は特別になるからあなたも特別になって、と言う麗奈を見上げていた久美子。

 

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 その久美子が今度は光を浴び、影の中にいる麗奈に語りかけ、“愛の告白”をする。立って並ぶと久美子の方が少し背が高いというのも印象的だ。

 

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 そうすることで麗奈は再び光の中へ、特別な存在になるための一歩をまた踏みしめる。二人は同じ場所に立つ。

 

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 麗奈を眩しく見上げていた久美子が、逆に麗奈に光を与える(それも今までの光源を若干無視するほどまでに!)特別な存在になった瞬間を描いた、とても美しく官能的でさえある、ゾクゾクする場面だ。

 

■ステージ効果

 香織と麗奈のオーディションは、香織が以前よりも確実に上達をした演奏を披露しながらも、麗奈の表現力と独創力に溢れた艶のある演奏が香織の「吹けません」に繋がり、きわめて説得力のある場面に仕上がっている。

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 このオーディションの場面は照明の効果が抜群に良いステージの空気感を表現しているのだが、照明に反射して舞う埃まで描写されていて感心。(拡大してご覧いただきたい)

 

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 で、麗奈が演奏を終えた直後のカットにだけこの埃の効果がかかっていない。*1

 久美子の“愛の告白”を得た麗奈の演奏には一片の埃すらも寄せ付けない気高さが備わったという演出なんじゃないか!?と思ったんだけど、気のせいのような気もする……。

 

 ともあれ、きわめて政治的な世界である吹奏楽部を舞台にリリカルな青春ドラマを展開している本作の魅力が詰まった素晴らしい回だった。まだ残り2回は観ていないので、また後で何か書くかもしれない。

 

 

 

 

*1:香織の演奏や二人の合否判定の場面ではかかっている。