「編集尺」
前回までのあらすじ:
編集作業に必要と称して、滅多に使いもしないものまで持ち歩きたがる携帯中毒者FeZnは、「スケジューラ」「ルーペ」などのみでは飽きたらず「モノサシ」「罫線スケール」「網点スケール」「級数表」「級・ポ 換算表」をポケットに入れる方法を画策しはじめた。
(携帯中毒者:携帯電話依存症ではなくて、アイテムを携帯することそのものに対して偏執的な情念を抱く魂の病理。ところで中毒と依存症は別なんですがそれはさておき。)
級数が分かればポイントの値は(おおむね)算出できる。そして印刷物の級数は、漢字4文字の長さのmmの値と等しいため、mm尺が一本あればなんとかなるのだ。その役割を果たし、かつ罫線スケールのついた定規をゲットしたところまでは良かったが、それは結局のところ建築用品であったため、編集のためのツールとしては不充分なものと言えた。
詳細はこちら:
編集者のための定規/薄くて便利で小さくて/モノサシで簡易級数表
http://fezn.exblog.jp/5147085/
というわけで「ポケットに全部入り」計画。
シンワのクラックスケールは、「書籍の編集作業用としては、欲しい罫線が無い」「目盛りが0.5mm刻みで読み取りづらい」といった問題点がありました。
では、どうするか。どうするか。
……結論から言えば自分で作ればいいわけですね。
ふむ。
考えてみれば数年前に罫線・網点スケールも、自分で作って印刷会社さんにお願いして、量産したりしましたし。
……プリンタ出力でいいじゃん、って?
残念ながら太さ0.05mmの罫線や、10%を下回るAM網点は、プリンタでは満足行く品質にはならない模様です。
それ以上の濃度でも、OKIなど一部のレーザープリンタでないと、きちんとした網点(高倍率ルーペでのぞき込んで、美しい円or方形)が再現できないわけですし。
だからきちんと作ろうとすると、そういった設備が必要になりますが……
しかしとりあえず自分で使う分には、まあ現代のノーマルなレーザープリンタで出力できるレベルで良いでしょう。
で、厚手のコート紙にプリントして、二枚貼り合わせて強度を保つようにしたり。
(シンワの既製品で可能だったような、カッター定規としての使用は無理になりますが)
というわけで罫線スケール。
それから網点スケール。
これは、カードに配置する場所が無いので、諧調の前半・後半で二つに分けて配置します。
そしてmm尺のモノサシ部分。
数字書体は、確かFutra Light Condensed。
そして特徴的なのは山形の配置。普通の目盛りではなくて、少し変わった目盛りにしました。
1mm単位の刻みの、長さを変えた目盛り。
これはコクヨのUD定規(UD=ユニバーサル・デザイン)の影響を受けているのですが、少し視点が異なります。
定規|ユニバーサルデザイン|コクヨ
http://www.kokuyo.co.jp/eco_ud/ud/products/ruler.html
TOYOTA UDS UD直線定規
http://www.megaweb.gr.jp/Uds/About/collection_DB/office/of18.html
コクヨのUD定規の「ウェーブ目盛り」はゼロから10mmまでの間でなだらかに変化しています。
また、数字サイズの工夫や方眼など、定規としてのたくさんの工夫の結晶ですね。
一方、編集&組版をベースに考える、今回のFeZn自作ツールの目盛りの要点は、以下の通り。
デザインとしては、実は製本の世界の遺産(?)「山形背標」の影響も受けています。
本との出会い診断-出会うまで
http://www.iwanami.co.jp/todokumade/seihon/origami/origami.html
本の名称
http://www.bbc-web.com/hyakka/5/kaisetu.html
というか先ず最初にウェーブ目盛りを見て、「(波と直線の違いはあるけれど)背標っぽいなぁ」と考えたことがベースです。
そして自分の仕事では見かけたことのない「山形背標」。それが「岩波背標」etc.に駆逐されていった理由は、「上り坂の途中と、下り坂の途中の区別がつきづらい」という点だったと聞きます。
しかし定規の目盛りの場合には、その混乱は起きそうにないですし、1~2秒ではなく2~5秒程度かけて(暗算しながら)のぞき込んで数えるときに、たとえば「22mm」と「23mm」の区別がつきやすい形にしたいわけです。
15cmや30cmの定規を携えて素早く数字を読み取るにはUD定規のウェーブ目盛りのほうが良さそうですが、僕が使いたいのは「簡易級数表として」あるいは「15~40mm程度の組版要素を測る」という要素が大きいので、試してみた結果、山形目盛りのほうに利点がありそうだ、と思った次第です。
さて、ポイント数を、いかにして測るか。
……15mmの近くに、小さく「10」だの「10.5」だのと印字されています。それから右のほうに「16」とも。これが「4文字=ポイント数」の簡易目盛りです。書体を変えたほうが良いかなぁと思いますが、
もちろん、これだけではいかにも足りないので、その下に簡易換算表を配置してみました。
などとありますが、これは級数に対してのポイントの値。
ちょうどmm目盛りの真下に来ています。
といった感じで。
さて、こういった感じで組み合わせて、それに「洋紙寸法の表」「印刷単位換算式」を加えてやれば、ほぼ出来上がりです。
とりあえず出来上がった「バージョン0.1b」は、おおむねこんな感じです。
名付けて「編集尺」。
この言葉は映像編集の世界において別の意味があったりしますが、「計算尺」とか、建築の人が使う万能ツール「曲尺(かねじゃく)」etc.に対抗して(?)命名。
実は微妙な間違いとか、あったのですが、そのあと直したりしました。
そう。これを作ったのは2か月前なのでした。
なので、もう先のエントリに書く中身は有ります。
今回の「ポイント数の出し方」は(自分で作ったものですが)不満がありまくり、ですし。(ポイントの数字と、ミリメートルの数字が、目の中で混ざってしまうetc.)
(後継バージョンでは、mm目盛りも若干変更しています。)
(つづく)
(2006.07.07追記)
編集作業に必要と称して、滅多に使いもしないものまで持ち歩きたがる携帯中毒者FeZnは、「スケジューラ」「ルーペ」などのみでは飽きたらず「モノサシ」「罫線スケール」「網点スケール」「級数表」「級・ポ 換算表」をポケットに入れる方法を画策しはじめた。
(携帯中毒者:携帯電話依存症ではなくて、アイテムを携帯することそのものに対して偏執的な情念を抱く魂の病理。ところで中毒と依存症は別なんですがそれはさておき。)
級数が分かればポイントの値は(おおむね)算出できる。そして印刷物の級数は、漢字4文字の長さのmmの値と等しいため、mm尺が一本あればなんとかなるのだ。その役割を果たし、かつ罫線スケールのついた定規をゲットしたところまでは良かったが、それは結局のところ建築用品であったため、編集のためのツールとしては不充分なものと言えた。
詳細はこちら:
編集者のための定規/薄くて便利で小さくて/モノサシで簡易級数表
http://fezn.exblog.jp/5147085/
というわけで「ポケットに全部入り」計画。
シンワのクラックスケールは、「書籍の編集作業用としては、欲しい罫線が無い」「目盛りが0.5mm刻みで読み取りづらい」といった問題点がありました。
では、どうするか。どうするか。
……結論から言えば自分で作ればいいわけですね。
ふむ。
考えてみれば数年前に罫線・網点スケールも、自分で作って印刷会社さんにお願いして、量産したりしましたし。
……プリンタ出力でいいじゃん、って?
残念ながら太さ0.05mmの罫線や、10%を下回るAM網点は、プリンタでは満足行く品質にはならない模様です。
それ以上の濃度でも、OKIなど一部のレーザープリンタでないと、きちんとした網点(高倍率ルーペでのぞき込んで、美しい円or方形)が再現できないわけですし。
だからきちんと作ろうとすると、そういった設備が必要になりますが……
しかしとりあえず自分で使う分には、まあ現代のノーマルなレーザープリンタで出力できるレベルで良いでしょう。
で、厚手のコート紙にプリントして、二枚貼り合わせて強度を保つようにしたり。
(シンワの既製品で可能だったような、カッター定規としての使用は無理になりますが)
というわけで罫線スケール。
それから網点スケール。
これは、カードに配置する場所が無いので、諧調の前半・後半で二つに分けて配置します。
そしてmm尺のモノサシ部分。
数字書体は、確かFutra Light Condensed。
そして特徴的なのは山形の配置。普通の目盛りではなくて、少し変わった目盛りにしました。
1mm単位の刻みの、長さを変えた目盛り。
これはコクヨのUD定規(UD=ユニバーサル・デザイン)の影響を受けているのですが、少し視点が異なります。
定規|ユニバーサルデザイン|コクヨ
http://www.kokuyo.co.jp/eco_ud/ud/products/ruler.html
TOYOTA UDS UD直線定規
http://www.megaweb.gr.jp/Uds/About/collection_DB/office/of18.html
コクヨのUD定規の「ウェーブ目盛り」はゼロから10mmまでの間でなだらかに変化しています。
また、数字サイズの工夫や方眼など、定規としてのたくさんの工夫の結晶ですね。
一方、編集&組版をベースに考える、今回のFeZn自作ツールの目盛りの要点は、以下の通り。
- ゼロ~5mmの間は順に長く。
- 5mm~10mmの間は順に短く。
- 最後の10mmだけ、より短い0.5mm刻みを追加。
- ついでに印刷物の文字サイズのポイント数も出せる。
デザインとしては、実は製本の世界の遺産(?)「山形背標」の影響も受けています。
本との出会い診断-出会うまで
http://www.iwanami.co.jp/todokumade/seihon/origami/origami.html
本の名称
http://www.bbc-web.com/hyakka/5/kaisetu.html
というか先ず最初にウェーブ目盛りを見て、「(波と直線の違いはあるけれど)背標っぽいなぁ」と考えたことがベースです。
そして自分の仕事では見かけたことのない「山形背標」。それが「岩波背標」etc.に駆逐されていった理由は、「上り坂の途中と、下り坂の途中の区別がつきづらい」という点だったと聞きます。
しかし定規の目盛りの場合には、その混乱は起きそうにないですし、1~2秒ではなく2~5秒程度かけて(暗算しながら)のぞき込んで数えるときに、たとえば「22mm」と「23mm」の区別がつきやすい形にしたいわけです。
15cmや30cmの定規を携えて素早く数字を読み取るにはUD定規のウェーブ目盛りのほうが良さそうですが、僕が使いたいのは「簡易級数表として」あるいは「15~40mm程度の組版要素を測る」という要素が大きいので、試してみた結果、山形目盛りのほうに利点がありそうだ、と思った次第です。
さて、ポイント数を、いかにして測るか。
……15mmの近くに、小さく「10」だの「10.5」だのと印字されています。それから右のほうに「16」とも。これが「4文字=ポイント数」の簡易目盛りです。書体を変えたほうが良いかなぁと思いますが、
もちろん、これだけではいかにも足りないので、その下に簡易換算表を配置してみました。
- 5.67
- 7.09
- 8.50
- 9.92
などとありますが、これは級数に対してのポイントの値。
ちょうどmm目盛りの真下に来ています。
- 5.67 …… 08mm = 08級
- 7.09 …… 10mm = 10級
- 8.50 …… 12mm = 12級
- 9.92 …… 14mm = 14級
といった感じで。
さて、こういった感じで組み合わせて、それに「洋紙寸法の表」「印刷単位換算式」を加えてやれば、ほぼ出来上がりです。
とりあえず出来上がった「バージョン0.1b」は、おおむねこんな感じです。
名付けて「編集尺」。
この言葉は映像編集の世界において別の意味があったりしますが、「計算尺」とか、建築の人が使う万能ツール「曲尺(かねじゃく)」etc.に対抗して(?)命名。
実は微妙な間違いとか、あったのですが、そのあと直したりしました。
そう。これを作ったのは2か月前なのでした。
なので、もう先のエントリに書く中身は有ります。
今回の「ポイント数の出し方」は(自分で作ったものですが)不満がありまくり、ですし。(ポイントの数字と、ミリメートルの数字が、目の中で混ざってしまうetc.)
(後継バージョンでは、mm目盛りも若干変更しています。)
(つづく)
(2006.07.07追記)
- 第一話:http://fezn.exblog.jp/5147085/ 背景
- 第二話:http://fezn.exblog.jp/5149520/ 開始(当エントリ)
- 第三話:http://fezn.exblog.jp/5182098/ 迷走
- 第四話:http://fezn.exblog.jp/5195035/ 完成
by fezn
| 2006-06-30 12:52
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メディアの海の片隅で、ぷかぷかと漂っているクラゲ。文字とか組版とか、勉強中。
by fezn
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