御社のブログを見ているのは、現在や未来のお客様と、同業他社や取引先です。御社のブログは、それらの人々に見られて恥ずかしくない内容になっているでしょうか? 誰かに誤解を与えたり不利益をもたらしたりすることのない誠実なものになっているでしょうか? あなたやあなたの会社の信頼につながるものになっているでしょうか?
あなたはきっと、同業他社のブログを見て「これではとても信頼できない」と感じたことがあるのではないかと思います。御社のブログも同じです。もし御社のブログが、根拠が曖昧だったり、説明が分かりにくかったり、正確でなかったり、公平性を欠いたりしていれば、あなたやあなたの会社が信頼を失う可能性が高まります。
僕も自分の専門分野であるSEOに関して、他社のブログ記事を見て「こんな露骨な間違いを書いてたら信頼を失うよ」と心配になることがよくあります。
会社ブログで情報を発信する目的の一つは信頼の獲得です。現在や未来のお客様をはじめ、同業他社や取引先といった人々に「ただ見てもらう」だけのために書いているのではないはずです。であるなら、企業の顔として誰に見られても恥ずかしくない、信頼に足る記事を書いていく必要があります。
信頼されることは、販売や契約にとって不可欠であり、SEOの実践ではE-E-A-Tを構成する最重要の要素であり、業界内での存在感を高めるために必要な要件であり、またブランディングの一環でもあります。会社ブログを信頼に足るものにしていくことには、とても大きな意味があります。
シンガポール国立大学のダニエル・J・マカリスター准教授による対人信頼関係の研究1によれば、信頼には認知的な側面と感情的な側面があるといいます。認知的な信頼は相手の能力に対する信頼で、理性的に判断されます。もう一方の感情的な信頼は認知的な信頼の上に築かれる個人的な信頼です。
僕もあなたも何らかの分野の専門家ですから「専門家として信頼される」ことが必要です。専門家として信頼されるには、認知的な信頼だけでなく感情的な信頼も獲得する必要があります。医師や弁護士などの専門家を頼るシーンを思い浮かべれば、相手が自分をいい結果に導いてくれるという信頼は不可欠だとわかります。
信頼の獲得はとても難しいもので、比較的容易とされる認知的信頼(知識や能力に対する信頼)を獲得するだけでも難しいのに、感情的信頼となるとかなりのハードルの高さです。
少し難しい話をしましたが、企業としての情報発信では、まず「知識や能力が十分にあると判断してもらう」ことが最初の一歩であり、そのうえで時間をかけて接触を繰り返し、「お客様のために誠実に働き、一方的に利用したり害したりする意図がないと信じてもらう」ことが次の段階となります。
会社ブログで発信する情報は専門家として発信するものですから、専門性や正確さは必須です。また、内容を確実に伝えるためには、明瞭でわかりやすいことも重要なポイントでしょう。加えて、他にはない独自の価値があることも、そのブログを読む理由になるため重要です。まとめると次のようになるでしょう。
知識や能力といった認知的信頼の次は、誠実さや公正さを信用してもらえるように、時間をかけて取り組んでいきましょう。発信内容の透明性や公正性を意識し、誠実な発信を続けていくことで、時間をかけて感情的な信頼を獲得していきます。極めて難しい試みですが、やる価値はあります。
こうして要件を挙げてみても、難しさがにじみます。会社ブログで信頼の獲得を目指すのは、最終的には自社の利益のためです。また、何を書き、何を書かないかは、それが恣意的なものであるかはともかく、常に書き手が選択するものです。こうしたことから、完全な誠実や公正はあり得ず、常に留意する努力目標とするのが現実的でしょう。
また、人にはレイク・ウォビゴン効果と呼ばれる認知バイアス2があり、誰もが自分自身を平均以上に優れていると認識します。人間は誰でも、自分自身の道徳性や信用性や正直さを平均以上だと評価しやすい性質があるのです。僕もあなたも、自分で思っているほどには公正でも誠実でもないと認識しておくべきでしょう。
個人的には、自分自身も認知バイアスの影響下にあることを自覚したうえで、公正でいようと誠実に努力し続けることが鍵になるのではないかと思います。
信頼とは、あなたやあなたの会社を有能であると信じる「認知的信頼」と、あなたやあなたの会社が誠実であり顧客や社会に対して善意を持っていると感じる「感情的信頼」が複合したものです。こうした信頼を獲得していくことは簡単ではありません。かなり強く意識して取り組む必要があります。
とはいえ多くの会社ブログには雑なものが多くあり、片手間に書かれたか、若手社員や生成AIに丸投げしたような記事を追加し続けているブログも少なくありません。あなたの競合がそのようなブログを更新しているなら、大きなチャンスがあると考えることもできるでしょう。
完璧な正確さや、完璧な公正さはありません。それでも、より信頼できる情報発信をしようとする努力は必要です。会社ブログを信頼獲得のための「企業の顔」と認識し、誠実な姿勢を保持して丁寧に運営していれば、それはやがて信頼へと実を結んでいくことでしょう。僕も頑張ります。
ウェブ検索の文脈におけるトピカリティ(topicality)とは、検索クエリのトピック(キーワードではなく)と、ウェブページに書かれている内容の一致度のことをいいます。ユーザーの検索意図をGoogleが理解し、その意図するトピックに最も関連性の高いウェブページを見つけ出す能力であると言い換えることもできます。
トピカリティを判定するシステムは、たとえば「ドナルド・トランプの身長は?」というクエリに対して、昔のように「身長」というキーワードが含まれるページを探すのではなく、実際の「ドナルド・トランプの身長」という情報そのものを提供しているページを探し、それをクエリに一致したものとして返します。
2017年頃にはすでに確認できていた挙動ですが、下の画像に示したように「勝新の奥さん」と検索したときも「中村玉緒」さんを検索結果に返します。検索キーワードには「中村玉緒」の文字列は含まれていませんが「勝新の奥さん」というクエリの意味を「勝新太郎の配偶者を知りたい」意図であると理解し、その回答を表示するのです。
トピカリティが導入された当初は上記のスクリーンショットのようなダイレクト・アンサー(Direct Answers)で回答が表示されることが中心でしたが、現在では強調スニペットや「AIによる概要」を使って、もっと複雑な質問に対しても直接的な答えを返すようになりました。たとえば次のようなものです。
上記の各例に見られるように、以前のGoogleはキーワードに焦点を当てていましたが、現在はトピカリティをより重視する方向に移行しています。これによって、質問形式のクエリや、単語数が多くあいまいなクエリなど、以前は難しかった検索にもより適切に答えられるようになっています。
Googleのポッドキャスト1でプロダクトマネジメント担当ディレクターであるエリザベス・タッカー氏が語ったところによれば、Googleはユーザーの検索意図を正確に把握し、そのトピックに合致するウェブページを見つけ出すために「コア・トピカリティ・システム」と呼ばれるアルゴリズム群を運用しているといいます。
コア・トピカリティ・システムが目指すのは、検索クエリとウェブページのトピックを高い精度で理解し、両者を結びつけることです。これがうまく機能することで、私たちは求める情報に素早くたどり着けるのです。Googleは機械学習モデルを中心としたAI技術を使ってクエリの「トピック」を理解しています。
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)という技術は、単語一つひとつの意味だけでなく、文章全体の文脈を理解するのに長けています。これにより、長くあいまいなクエリであってもそれが全体として何を主題にしているのかをより深く把握できるようになりました。
RankBrainは、Googleが2016年という比較的早い段階で導入したAIシステムの一つです。検索クエリに含まれる抽象的な概念や、これまで解釈が難しかった言葉のニュアンスを理解し、より適切なトピックの検索結果を返すことを可能にしました。
最近話題のLLM(大規模言語モデル)も、検索結果の関連性強化に活用されています。さらに、LLMを用いて「非常に関連性が高い」「ある程度関連性がある」といった、より細かい関連度を判断し、ランキングの精度を向上させる研究も進められています。
米司法省の公聴会におけるGoogleエンジニアのH.J. キム氏の証言2では、Googleの検索順位を決定する主要なシグナルの一つとして「T*(Topicality)」の存在が明らかにされました。この「T*」シグナルは、ABCシグナルを効果的に組み合わせ、検索クエリとページの関連性を判断します。
ABCシグナルは、トピカリティを判断するための特に重要な要素であり、T* (Topicality) シグナルを構成する主要な部分であるといいます。ABCは「A: Anchor」「B: Body」「C: Click」の頭字語で、具体的にはそれぞれ次のような内容です。
これを見ると思い出すのは「検索順位の3本柱」です。そこでは次のようなスライドを使って、検索結果の順位を決める3大要素は「Body: ページの内容」「Anchors: 外部ウェブによるそのページの評価」「User-interactions: そのページに対するユーザーの反応」であると説明しています。
上記の画像は2017年5月15日のGoogle社内向けプレゼンテーション「Life of a Click (user-interaction)3」で示されていたものですが、この「検索順位の3本柱」は、その後コア・トピカリティ・システムの主要な一部となり、名称も「ABCシグナル」と変わったのではないかと筆者は考えます。
先のH.J. キム氏の証言によれば、ABCシグナルやT* シグナルは、RankBrainやBERTのような完全に自動化された機械学習モデルとは異なり、Googleのエンジニアが閾値の設定を決定できる手作りのシグナル(Hand-crafted signals)であるそうです。これは何か問題が発生したときに分析とデバッグを可能にするための仕様であるといいます。
「キーワードからトピック(エンティティ)へ」という流れは2012年頃から始まり、2016年末のRankBrain導入から一気に加速しました。僕たちはSEOの文脈でいまもキーワードを強く意識しますが、Googleはキーワードよりもトピックに焦点を移しています。これが2025年2月18日のH.J. キム氏の証言でも再び裏付けられた形です。
また、2017年に「検索順位の3本柱」と呼ばれていた概念はいまも現役で、さらに「ABCシグナル」という覚えやすい名前がついていることと、ランキングアルゴリズムの中核であるコア・トピカリティ・システムの主要な一部になっていることも、上記と同じキム氏の証言で明らかになりました。
このように新たにわかったこともありますが、とはいえ、僕たちがやるべきことは変わりません。ニーズメットで良質なコンテンツを作成し、実際のユーザーを満足させ、外部からの評価を獲得するだけです。あとは、現在よりはもう少し、キーワードを詰め込むことを控え目にしてもいいかもしれませんね。
エキスパート・コメンタリー(Expert Commentary)とは、 特定の分野における外部の専門家や有識者が、ニュース記事などに対して行う解説や談話のことです。専門家の知識や経験に基づいて、記事の内容をより深く掘り下げたり、背景情報を提供したり、異なる視点からの考察を加えたりすることで、記事の信頼性を高める役割を果たします。
日本国内では、テレビや新聞などのニュースにおいて、そのニュースで扱うトピックの専門家や有識者が知見を提供するシーンをよく見かけます。これがエキスパート・コメンタリーです。英語圏ではウェブ媒体の記事でもエキスパート・コメンタリーが使われることが多く、記事の独自性や専門性、信頼性を高める役割を果たしています。
エキスパート・コメンタリーの役割は上記のようなものです。ごく簡単にまとめれば、エキスパート・コメンタリーは専門家の力を借りてコンテンツの「質」と「信頼」を格段に高め、読者から高く評価されるための有効な手法です。こうした効果をSEOの観点から見れば、独自性やE-E-A-Tやユーザー行動の改善が期待できます。
あなたが配信しているSEO関連記事に、僕、住太陽が無料で、エキスパート・コメンタリーとして短い解説を提供します。コメントの内容は体験談や洞察や背景情報などあなたの記事を補強するものを、その記事に合わせて作成します。対象となるサイトにも制限は設けません。SEO関連記事をお持ちならどなたでもお気軽にご利用いただけます。
SEOプロフェッショナルとしてGoogleにエンティティが認識されている僕によるコメントがあなたの記事に掲載されていれば、それを見る読者は、記事が信頼でき権威性が高いと感じるかもしれません。一般に読者は専門家が関与している記事を信頼するためです。そのほか、次のような効果が期待できます。
僕が作成したコメントはできる限りそのまま、改変せずにお使いください。blockquoteまたは「」または””で囲むなど、その部分が外部の専門家によるコメントであるとわかれば、形式はどんなものでも構いません。コメントの前後の文例としては次のようなものが考えられますが、これらに限りません。
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また、環境や状況が変化した折にはこの取り組みそのものを予告なく取りやめる可能性があります。その際も新規の受け付けを停止するだけでこのページ自体は残すつもりでいますが、先のことはわかりません。コメントをご希望の方はお早めにお申し込みください。
まずはお気軽に [email protected] にEメールで、コメントがほしい記事のURLを添えて、コメント希望の旨をお伝えください。コメント内容についてのご希望がなければその記事のテーマに沿ってコメントしますが、何についてどんなコメントが欲しいかを少し具体的に教えていただけたら、僕もコメントしやすくて助かります。
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エキスパート・コメンタリーを提供した記事は以下の通りです。差しあたってはすべての記事をここに掲載しますが、数が多くなってきたら別の掲載場所を考えるかもしれません。
]]>Google検索のアルゴリズムはアップデートを繰り返して日々進化していますが、その進化の本質は「人々が何を好み、何を重要と考えるか」をデータから学習し、人々による評価を模倣することです。検索アルゴリズムはそれ自体がページの価値を決めるのではなく「人間による評価」を追いかけ、アルゴリズムに取り入れ、検索結果に反映します。
私たちがSEOを実践する中で焦点を合わせるべきなのは、アルゴリズムではなく「人々」のほうです。なぜならGoogle検索のアルゴリズムは人々を見ているからです。あなたが人々の心を掴むものを提供できれば、Google検索のアルゴリズムは人々による評価を取り込んで、あなたやあなたが提供するものを高く評価します。
SEOの実践においては、アルゴリズムやその仕組みの理解よりもむしろ、実際の人間の理解のほうがずっと重要かもしれません。
SEOで「人間中心」や「ユーザー満足」が語られると、綺麗事や理想論のように聞こえるかもしれません。しかし、これは単なる精神論ではありません。Googleの目的はユーザーが満足する検索体験の提供であり、そのためにアルゴリズムは、実際の人間の満足度を示す行動や評価を学習して、順位に反映します。
ユーザーを満足させることはSEOにとって、Google検索の仕組みに合致する現実的な目標です。SEOは実際の人々からあなたやあなたのサイトがより高く評価されるための様々な取り組みの総体です。以下の主要なトピックをを理解することで、なぜSEOが単なる技術最適化を超えた、人間中心のアプローチを必要とするのかが見えてくるはずです。
Google検索の初期からその根幹を支えてきたアルゴリズムの一つにリンクポピュラリティ「PageRank」があります。PageRankの基本的な考え方は非常にシンプルで、リンクをあるページから別のページへの支持投票のように扱い、「質の高い多くのウェブサイトからリンクされているページは重要で信頼できる可能性が高い」とするものです。
PageRankは人々が「この情報は参照する(リンクする)価値がある」と判断した結果であり、人間による評価の表れです。またそれぞれのリンクは等価ではなく、より権威があり信頼されているサイトからのリンクは、Googleに対して「このページは価値がある」という強力なシグナルを送ります。Googleはそのシグナルを受け取り、人間による評価を検索順位に反映します。
Googleは、検索結果ページでのユーザーの行動を追跡しています。これもまた「実際の人間がどのように情報を評価しているか」を知るための重要な手がかりです。検索結果ページを中心としたユーザーの行動を追跡することで、実際の人間が満足するページやそのパターンを検索結果に反映する仕組みです。
検索結果ページ上であなたのページへのリンクが高いクリック率を示せば、あなたのサイトのタイトルや説明文が、ユーザーの検索意図と合致し、関心を引いていることを示唆します。ユーザーが「これが探している情報かもしれない」と判断した結果のクリックであり、人間による最初の評価ステップと言えます。
ユーザーがあなたのページをクリックした後の滞在時間も重要な情報です。ユーザーがすぐに離脱せず、サイト内を回遊したり、コンテンツをじっくり読んだりしている場合、それは「このページは役に立った」「探していた情報が見つかった」という肯定的な評価の表れと解釈できます。逆に、すぐに離脱してしまうなら否定的な評価です。
Googleは単語を単なる文字列としてではなく実際の物事「エンティティ」として理解します。エンティティとは、人、場所、組織、物事、概念など、明確に識別できる対象のことです。例えば「ボーディー有限会社」という会社、「東京タワー」という場所、「人工知能」という概念などがエンティティにあたります。
あなたやあなたのサイトが特定の分野で質の高い情報を提供し続け、その分野の専門家として実際の人々に認識されるようになれば、Googleもまたあなたやあなたのサイトを当該分野における重要なエンティティとして認識します。実際の人々があなたやあなたのサイトを信頼できる情報源とみなすなら、Googleも同じように評価するのです。
指名検索とは、ユーザーが特定の企業名、ブランド名、サイト名、あるいは人名などを検索窓に入力して検索する行動を指します。指名検索が多いということは、その企業、ブランド、サイトが既に世の中に認知されており、ユーザーが「わざわざそのサイトに用がある」と考えていることをGoogleに伝えます。
指名検索は特定の対象への訪問意図を持った行動であり、非常に強力な「人間からの評価」シグナルです。2003年以降、被リンクの多さに対して指名検索が不自然に少ないサイトや、そもそも指名検索されることのないサイトの順位低下が報告されていますが、Googleが誰からも探されていないサイトの順位を下げるのは自然なことです。
サイテーションとは、ウェブ上であなたのブランド名、サイト名、会社名などが言及されることをいいます。サイテーションはあなたのブランドやサイトがウェブ上でどれだけ話題になり、どのように認識されているかを示す指標です。これは現実世界でのクチコミや評判に近いものであり、人々があなたのブランドをどう認識し評価しているかを示します。
例えばニュース記事、ブログ記事、レビューサイト、SNSなどで好意的に言及されていれば、それは肯定的な評価として機能します。またサイテーションは、あなたやあなたのサイトと同時に言及される他のものとの関係や、それぞれの評価など、人々があなたやあなたのサイトをどう評価しているかについての多くの情報をGoogleに伝えます。
これまで見てきた被リンク(支持投票)、ユーザー行動(満足度)、エンティティ(実在する物事としての認識)、指名検索(認知の広さと訪問意図)、サイテーション(言及と評判)といった要素は、すべて最終的に「ブランド」という大きな概念に集約されます。Googleは明確にブランドを優遇します。
単に名前が知られているだけでなく、その分野における信頼性、専門性、そして顧客からの好意的な評価をともなう「強いブランド」は、ユーザーが期待する品質や信頼を提供し続けているからこそ「強いブランド」でいられます。そのブランドが多くの人々から信頼されているなら、Googleもまたそのブランドを信頼するのです。
何がSEOの範囲内で、何はSEOの範囲外なのか、のような議論は無意味です。ブランドと人々が接触する機会のすべてが、人々がブランドを評価する機会だからです。現状すでに、ウェブページやウェブサイトを調整するだけで検索上位を獲得することは困難になっています。なぜならGoogleが見ているのはそれらだけにとどまらないからです。
Google検索のアルゴリズムは「人間による評価」を追いかけ、取り入れ、検索結果に反映する仕組みです。Google検索のアルゴリズムは人々を見ているのです。そのアルゴリズムで高く評価されるための取り組みがSEOですから、SEOとはあなたやあなたのブランドが人々から高く評価されるための取り組みのすべてです。
僕は常々「中小企業のSEOは社長自身が取り組むべき」と繰り返してきました。その理由は、SEOはウェブページやウェブサイトの調整だけで成立するものではないからです。ウェブサイトの更新だけを担当している事務員さんや外注先の手には負えません。自分でやりましょう。
コンテンツはその品質や有用性によって人々から反応を引き出し、話題になり、リンクを集めるものであるべきです。E-E-A-Tを高めるなら、あなたに対する人々からの評価を高める必要があります。新しい取引先に選ばれるためには、あなたの名前や会社名で検索した結果に人々からの肯定的なレピュテーションが多く並ばなければなりません。
知名度の向上や信頼の獲得は、SEOのためだけに取り組むことではありませんが、結果的にはSEOにとってプラスに働きます。同じように、あなたやあなたの会社がブランド価値を高める活動のすべては、直接的にはSEOのための取り組みではなかったとしても、結果としてSEOにプラスに働きます。SEOの業務範囲を気にするのは無意味です。
Google検索のランキングアルゴリズムは常に進化を続けていますが、その根底にある原則は「ユーザーにとって最も価値のある情報を提供する」ことです。そして、その価値を測るためにGoogleは様々な形で「人間による評価」のシグナルを使用します。Googleが人間による評価を借用するのは初期のPageRankから一貫して変わりません。
したがってSEOで成功を収めるためには、ターゲットとする人々に対して真に価値ある情報や体験を提供し、信頼されるブランドを構築するという、人間中心の多面的なアプローチが求められます。「人間からの評価」を勝ち取ることこそが、Google検索で長期的に評価されるための最も確実で本質的な道筋なのです。
]]>Wikipediaの記事では、サイト外部への発リンクはページ下部の脚注にまとめられており、記事本文からの発リンクはすべてサイト内部へのリンクになっています。このような発リンクの方法にはPageRankの配分を最適化する意味があり、検索結果でのWikipediaの存在感を高めている要素のひとつであると考えられます。
Wikipediaの内部リンクと外部リンクの設定方法は非常に合理的で、SEOでは見習うべきポイントがたくさんあります。
あるページ内に含まれるリンクは、すべてが同じだけのPageRankを渡すわけではありません。2004年にGoogleによって申請され2010年に受理された特許1で示されたリーズナブル・サーファー・モデルでは「多くのユーザーがクリックする可能性の高いリンクほど多くのPageRankをリンク先に渡す」ように調整されます(下図)。
このリーズナブル・サーファー・モデルを単純化して説明すると、コンテンツエリア内の上部にあるリンクほど多くのPageRankをリンク先に渡し、コンテンツエリアの下部にあるリンクはより少ないPageRankをリンク先に渡します。また、フッターのメニューなどサイト全体で共通のリンクはコンテンツエリア内のリンクよりも少ないPageRankしか渡しません。
Wikipediaの記事は、コンテンツ本文中のリンクは内部リンクだけにし、外部サイトへの発リンクはページ下部の脚注にまとめることで、内部リンクでより多くのPageRankを渡しながら、外部へのリンクで失うPageRankをより少なくしています。これが意図的なものかはわかりませんが、サイト内のPageRankの流れを巧妙に最適化しているのです。
またWikipediaでは、外部リンク2を脚注にまとめておくことにより、本文中での個別参照(Inline Citation)方式に比べて本文を読みやすくする効果も得ています。これは出典の明記と本文の読みやすさを両立する優れた方法で内部リンクの最適化にもつながるため、ご覧の通りこのサイトでも同様の形式を採用しています。
サイトを WordPress で運用している場合、WordPress 6.3 から導入された標準の脚注ブロック3が使いやすく便利です。機能は最低限ですが、外部の出典にリンクなど普通の使い方なら十分で、このサイトでも使用しています。WordPress で脚注ブロックを使う方法は以下の通りです。
記事に書くことのうち、自分独自の実体験や意見を除けば、通常ほとんどの情報は外部から得たものです。私たちは生まれたときから知っていることなど何もなく、日々たくさんの情報を外部から得ながら仕事や生活をしています。自分独自の実体験や意見、発見や発明ではない部分については、脚注でその情報の出所にリンクしましょう。
丁寧に出典となる情報源をあたり、脚注でリンクしていくことで、読者と検索エンジンに対して補足情報や関連情報を提供することができ、また、あなたの知識の深さをアピールすることもできます。また多数の資料にあたることで、間違ったことを書いてしまうことも回避でき、信頼性の高いきちんとしたコンテンツになります。
この反面、出店情報を明らかにせず、他人のアイデアや発見や発明を自分の実績か生まれたときから知っていることのように書けば、それは剽窃(盗用)であり、読者からの信頼を大きく損ないます。読者が感じるE-E-A-Tがパクリサイトの水準まで下がってしまうことは、何としても回避しなければなりません。
情報源を読者に教えることは、読者に追加の情報を提供でき、あなたの意見に裏付けを与え、あなたの知識をアピールできるだけでなく、他人のアイデアを剽窃してしまう(パクってしまう)ことも避けられます。
脚注を使うことで、本文の可読性を損なうことなく、また必要以上にPageRankを流出させることを抑えながら、たくさんの情報源にリンクすることができます。外部へのリンクを通じて読者に出典や補足情報を提供することは、ユーザー行動の改善につながり、またハブスコアの改善にもつながり、検索結果での順位が向上します。
筆者が行った実験で、サイト全体で出典へのリンクを徹底したところ、14ヶ月で検索流入が約11倍に伸長したケースもあります(上図)。1記事や2記事で実施してもそれほど大きな効果は見込めませんが、サイト全体で出典へのリンクを丁寧につけていくことで、大きなSEO効果を期待できます。問題は出典を調べる手間がかかることだけです。
出典の明記や、それをすることによるパクリの回避、脚注を使うことによる発リンクの最適化は、地味でありながら効果的な施策です。コンテンツ作者の文献知識をアピールすることで読者が感じるE-E-A-Tが向上し、ユーザー行動が改善するほか、PageRankの流出を抑えながらハブスコアを向上させます。やらない理由がありません。
この施策を提案するとよくある反論に「情報の出所が同業他社なのでPageRankを渡したくない」というものがありますが、それなら脚注ではnofollowリンクを使えばいいでしょう。筆者は個人的にはnofollowは滅多に使いませんが、Wikipediaの外部リンクにはすべてnofollowがついているくらいですから、問題のある使い方ではありません。
WordPressをお使いの方はさっそく今日から、脚注ブロックを使って出典にリンクする作業を始めましょう。特に僕の同業で、僕のサイトを参考に書かれた記事をお持ちの方は、ぜひ出典としてリンクしてくださいね。
ブログ記事を書くとき、他者のアイデアを拝借することがあると思います。そんなときの原則は、自分のアイデアと他者のアイデアを明確に区別し、他者のアイデアは正しく引用して出典を明記することです。他者のアイデアを拝借するとき、自分のアイデアであるかのように書けばそれは剽窃、パクリですが、出典を明記して引用すれば問題ありません。
剽窃とは、情報の出所を明確に示さずに他人のアイデアや言葉を使うことである。
Plagiarism: Writing Guides: Writing Tutorial Services: Indiana University Bloomington1
他者のアイデアを拝借するとき「著作権侵害を避けるために自分の言葉でリライトするといい」のような誤った言説を見ることは珍しくありません。しかしそれは明確なバッドノウハウです。リライトすることで表現を変えれば著作権の問題は回避できるかもしれませんが、それでもアイデアの剽窃という倫理上の不正が残るからです。
パクリのことをリライトと呼んで、まるで不正ではないかのようにしらばっくれるのってほんと悪質ですよね。見る人が見ればわかるのに。
他人のアイデアを借用しつつ、でも他人のアイデアを盗まないことを徹底するのであれば、確実な解決策は適切な引用と出典の明記だけです。言い回しを変えるなどして表現だけを別のものに置き換えたとしても、剽窃は剽窃であり、パクリはパクリです。そのような危険を冒す必要はまったくありません。ネタ元にリンクしましょう。
僕たちが持っている知識のほとんどすべては他者から与えられたもので、自分のオリジナルではありません。自分で思いついたアイデアですら、その多くは先に思いついた人がすでにいるでしょう。剽窃だけでなく二番煎じも避けるなら、原典や先行例を探し、それらを適切に引用するのが確実です。公表された著作物であれば引用して利用できます。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
著作権法 第三十二条の一2
すでに一般に広く知られていること(公知の情報)は、あなたのオリジナルの情報ではありませんが、引用したり出典を明記する必要はありません。公知の情報とは、たとえば義務教育で履修する知識や一般常識などです。また、そのコンテンツの想定読者が特定の業界に属している場合には、その業界の常識も公知の情報としてよいでしょう。
しかし公知の情報であっても、その部分が重要で、正確を期したいなら、信頼できる情報源をあたって引用し、その出典を明記するのが安全です。また、引用しないまでも、参考としてリンクしておくことで、読者が自分で参考文献をあたれるようになり、そのコンテンツを読者がより深く理解することを助けるとともに、パクリを避けることができます。
通常、記事を書くときには多くのページを参考にすることでしょう。そうしたとき、参考にしたページに対して、参考URLとしてリンクしましょう。もし参考URLとしてリンクせずに黙ってパクれば第三者からの印象は最悪です。しかしリンクしておくだけで印象は大きく改善し、良好なユーザー行動につなげられます。
ウェブページにおいては、参考URLを記述するための定まった書式はありません。個人的には脚注を使うことがおすすめですが、本文中の該当箇所からリンクしてもいいですし、段落の終わりにまとめてリンクしてもいいでしょう。このように参考URLにリンクしておくことで、読者の理解をより深めることができます。
ここで「引用」と「参考」の違いをまとめておきます。これらは似た用語ですが、「引用」は他人の文章・発言・研究結果などを、原文そのままの形で取り出して、自分の文章の中に取り入れることをいいます。他方で「参考」は、他人の意見・情報・著作物などを、自分や読者の理解や考えを深めるための材料として使うことをいいます。
引用 | 参考 | |
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内容の扱い | 原文のまま使う必要あり | 要約したり言い換えたりできる |
出典表記 | 必須 | 強く推奨 |
使う目的 | 主張の裏付けや根拠を示すため | 理解や説明を補助するため |
表記の方法 | 「」や””やblockquoteタグで囲む | 特に決まりはない |
よく「引用元や参照先は官公庁や公的機関など権威性の高いサイトであることが望ましい」といわれますし理想はその通りですが、現実のネタ元はそれらの権威性の高いサイトであるとは限りません。しかしネタ元がどんなサイトだったとしても、実際にネタ元なのでであればリンクしましょう。黙ってパクるほうがずっと悪です。
リンク先の権威性を気にしてリンクせずに黙ってパクり、結果として自分や自分ののサイトのE-E-A-Tをパクリサイトレベルにまで落とすのでは本末転倒ですよね。
記事作成の参考にしたページにリンクすることは、自分が作成するページの価値を高めます。HITS(Hypertext Induced Topic Selection)アルゴリズムでは、優れたウェブページにリンクすることは、リンク元のページのハブスコアを高めます。参考にしたページにリンクすることがSEOにプラスに働くのです。
知識の大半は他者からもたらされたものですし、自分が生み出したアイデアであっても多くは先行するものがあります。そのような視点でブログ記事に書く個々の要素を見ていくと、自分独自の内容だと言える部分は多くないことがわかります。自分のオリジナルと言えるのはおそらく次のようなものだけでしょう。
極論すれば、上記のようなことが述べられている部分だけがオリジナルで、それ以外についてはすべて引用とその補足でもよいのではないかと思います。実際、このサイトに掲載している僕の記事のほとんどはそのような形で書かれています。参考にしたページに丁寧にリンクすることは、自分のサイトのSEOに効果があります。
Googleは公式のSEOスターターガイドで、執筆内容の裏付けとなる別のページへのリンクを強く推奨しています。リンク先は自分のサイト内でも、外部のサイトでも、どちらでも有効です。引用の出典ページや、参考にしたページ、補足情報が得られるページなどにリンクすることはSEOにおいて強く推奨されることなのです。
Google が発見して検索結果に表示できるように、ぜひともリンクの使用を検討してください。またリンクは、執筆内容の裏付けとなる別のコンテンツにユーザーや Google をつなげるという点でも価値があります。
Google 公式 SEO スターター ガイド | Google 検索セントラル3
ここまで述べてきたように、発リンクはユーザーに対しては補足情報のある場所を示すとともにコンテンツ作成者の専門家としての知識を示すことができ、それは良好なユーザー行動の誘発につながり、検索結果での順位を引き上げます。またHITSアルゴリズムにおけるハブスコアを向上させる効果もあり、これもSEOに有効に働きます。発リンクを渋る理由はありません。
以下の画像はGA4のスクリーンショットで、非常に小規模なサイトに出典を追加する実験を行った結果です。各コンテンツに出典を示すリンクを追加してから2ヵ月ほどで効果が現れ始め、そこから5ヵ月程度の小康状態を経て、実験開始から7ヵ月目以降に大きく伸長しました。実験期間の14ヶ月程度の間に、検索流入は約11倍になっています。
実験は非常に小規模なサイトですので誤差が大きいですし、もともとのサイトの状態にも結果は左右されますから、すべてのサイトでこのような目覚ましい結果が得られるとは限りません。しかし情報提供を目的とし、インフォメーショナルクエリに対応するコンテンツでは、出典の明示はかなり強力な施策となることでしょう。
パクリになってしまうことを避けながら流入を増やすことができるのであれば、出典の明記を丁寧に実施することは非常に大きな意味があります。上で示した例を含め、出典の明記について詳しく書いた記事がありますので、そちらも参照してください。また出典へのリンクは脚注を使うのがおすすめです。
他人のアイデアをパクらないことの重要性がわかる例をひとつ挙げましょう。他の人の考察や意見、発見や発明などを、公知の情報であるかまたは自分自身の考えであるかのように書いてしまうと、またはそのような書き方を常態化させてしまうとどんなことが起きるかという例で、検索意図に関するものです。
僕が2017年から2018年にかけて全国各地で実施し、延べ2,000名ほどの聴衆を集めた一連の講演(その一例はこのレポート)の中で、検索意図を「Know—Do—Go—Buy」という4つに分類する手法を紹介しました。これは2015年にGoogleが発表したマイクロモーメントという概念4を検索意図に援用したもので、海外にもない僕のアイデアです。
マイクロモーメントは下の資料にあるように「利用者がスマートフォンを手に取って検索する瞬間」を意味しており、それを Know(何かを知りたい瞬間)、Do(何かをしたい瞬間)、Go(どこかの場所に行きたい瞬間)、Buy(何かを買いたい瞬間)という4種類の瞬間に分類したものです。これを検索意図に援用することでSEOの狙いをシンプルにできます。
この4種類のマイクロモーメントを検索意図に援用するアイデアは、剽窃のうえに剽窃を重ねる伝言ゲームで広がっていき、いまや日本語圏だけのガラパゴス理解で「検索意図とは Know—Do—Go—Buy の4種類」となってしまっています。「検索意図 Know Do Go Buy」と検索すればその状況は一目瞭然で、数限りないサイトで誤った紹介がされていることがわかります。
日本語圏だけのガラパゴス理解ではない標準的な検索意図の分類について再確認したい方はこちらの記事をどうぞ。
先に剽窃のうえに剽窃を重ねる伝言ゲームで広がったと指摘したのは、それは「厳密には検索意図ではなくマイクロモーメントの援用である」という重要な情報が抜け落ち、また、その援用をした僕の名前に触れながら紹介しているサイトは数えるほどしかなくほとんど全員が自明の知識のように紹介しているという滑稽な状況だからです。
他人のアイデアを拝借するときには、さらに原典があるかもしれないと疑うのも、間違いを避ける一つの策です。ここで挙げた例でも、誰かのブログ記事から安易に剽窃するのではなく、自分で原典にあたっていれば「これはマイクロモーメントであって検索意図ではない」と気付いたり、検索意図に援用した僕にたどり着いたりしたはずです。
ブログ記事を書くことで他者に何かを教えてあげようとするあなたのことですから、日頃からあなたの専門分野で大量の資料を読み下しており、豊富な文献知識を持っているはずです。それらを安易に受け売りするのではなく、きちんと引用して出典を明記すれば、あなたの専門性をアピールでき、ユーザーからの信頼につながります。
その一方、他人のアイデアを自分のアイデアであるかのように書いたり、他者から得た情報を生まれたときから知っていたかのように書けば、自分のE-E-A-Tは失墜します。パクリ野郎だと思われることがどれほどの損失か冷静に見積もる必要があるでしょう。そうした損失はネタ元にリンクするだけで回避できます。
Googleは実際の利用者の行動や彼らによるサイテーションなどのレピュテーション情報からあなたのコンテンツやサイトの信頼性を量ります。実際のユーザーに不信感を持たれないようにしつつ、持っている知識をユーザーにアピールしましょう。そのためには、先行する情報を適切に引用して出典を明記したり、参考URLをきちんと示すことです。
SEOとブランドの間には非常に強い相関があります。確立されたブランドを持つサイトは、指名検索され、検索結果上でのクリック率が高く、サイト上での滞在時間が長く、ポジティブな言及や被リンクを集めます。これらのすべてがシグナルとなって、検索結果の順位をさらに押し上げます。
現在のSEOでは、ウェブサイトやコンテンツ制作者を、人々によく知られ、話題にされ、信頼されるブランドとして確立する必要があります。これが不十分な場合、たとえば指名検索が十分に得られていないサイトでは、コアアップデートのたびに順位が低下する現象も報告されています。
大企業が大きな予算を投じて実施する大々的なブランディングを想像すると、中小企業にとっては無関係なものに思えますが、中小企業であっても身の丈からの着実な取り組みとしてブランディングは実施できます。あなたの地域またはあなたの業種という範囲の中で知名度と信頼を積み上げていくだけだからです。
中小企業のブランディングは地域を限定するか特定分野に特化することが有効です。全国を視野に幅広い分野を狙えば、大手や中堅と直接競合してしまって不利です。弱者のSEO戦略を採りましょう。
コンテンツを作り込むことによるSEOには限界があります。有用で高品質なコンテンツを継続的に制作すれば、当初は順調に検索流入を増やすことができます。しかし検索順位の上昇はどこかの時点で止まります。そのとき、より上位にいるのは、そのトピックにおけるブランドとして知られる有力なサイトです。
私たちは、自分のサイトや自分の会社や自分自身を、特定のトピックにおけるブランドに育てていく必要があります。コンテンツがGoogleに信頼され上位に表示されるためには、サイトやコンテンツ作者が、人々に実際によく知られ、話題にされ、選ばれ、信頼されていなければなりません。
2024年5月からGoogleによる対応が本格化した「サイトの評判の不正使用」は、Googleがブランドを極めて強く重視することの裏返しです。サイトの評判の不正使用とは、すでにブランドが確立されたサイト上に第三者のコンテンツを置くことでランキングを操作することをいい、Googleは次のように説明しています。
サイトの評判の不正使用とは、ホストサイトにおいて、基本的にファーストパーティのコンテンツによってすでに確立されたランキング シグナルを利用することを主な目的として、そのサイトにサードパーティのコンテンツを公開する行為を指します。これは、サードパーティが独自に公開する場合に比べて、当該のコンテンツがより上位にランク付けされるようにすることを目的としています。
Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー | Google 検索セントラル1
ブランドが発するランキングシグナルは極めて強力です。だからこそ不正使用が横行し、Googleは対応の必要に追われています。また、こちらは不正使用ではありませんが、強力なブランドを持ったサイト(例えばLinkedIn2やnote3など)の配下にコンテンツを置くことで上位に表示されやすくなる状況は現在も続いています。
不正な方法であるか正当な方法であるかに関わらず、宿主サイトのブランドに寄生することで自分のコンテンツのランキングを上げることに成功したとしても、借り物のブランドはあくまで借り物に過ぎません。自分のサイトのブランドを強力なものにすることが理想です。
白書「Googleはどのように偽情報と戦っているか(PDF・英語)4」によれば、ウェブ検索はスパムや偽情報との戦いであるといいます。Google検索のアルゴリズムは、スパムや偽情報を排除するために、権威があり信頼性の高いサイトを優先するように設計されています。実際の人々にブランドとして信頼されているサイトを優先するのです。
あるサイトに権威があり信頼性が高いかどうかは、被リンクや指名検索やユーザー行動やサイテーションなど、実際の人々に信頼されているブランドが持つ特徴と重なる指標で量られます。Googleはこうした様々な指標を使って人々が信頼しているブランドを特定し、そこで発信されている情報はスパムや偽情報ではないと判断します。
近年では生成AIの利用が進んでいますが、これらもGoogle検索と同様、スパムや偽情報に対処する必要があるものと考えられます。そのときGoogle検索と同様の対応方法が採られれば、やはり情報源となるサイトやページはブランドを重視したものとなるでしょう。生成AIにおすすめしてもらうためにはブランドが必要となるのです。
情報源からスパムや偽情報を取り除きたいのは生成AIも同じです。生成AIもまた「人々から信頼されているブランド」を信頼する方向性を強めていくでしょう。AI時代を見すえてもブランド化は急務です。
ブランディングの対象になるのは御社や御社が所有するブランドなど、指名検索やサイテーションの対象になるもの、つまり検索エンジンがエンティティとして認識可能なものすべてです。代表的なのは次のものですが、このほかにも独自のブランド名のついた製品ラインがあるならそれもブランディングの対象となります。
これらのうちたったひとつを人々に覚えてもらうだけでも大変なことです。中小企業や個人のように経営資源が乏しいケースでは、ブランドを乱立させないようにすることが大切です。おすすめは「社名=店名=サイト名」とし、「社長=コンテンツ著者」とすることです。こうすることで、ブランディングの効率を最大化できます。
一社で複数のサイトを運営していたり、ブランド名のついた製品ラインを複数持っていたりするケースはよくありますが、可能なら統合していくことをおすすめします。ブランドとして育てるエンティティが少なければ少ないほど、ひとつのエンティティに投下できる経営資源が増えるからです。
通常、ブランディングの取り組みはその成果が漠然としていますが、SEOという目標を持つことで、ブランディングに中間指標を持たせることができます。ブランドとして人々に認知されていくにつれて増えてくるシグナルがあるためです。ここではそうしたブランドシグナルに注目します。
あるエンティティが人々の間でブランドとして確立されれば、人々はそのブランドを指名検索し、ブランドのサイトを訪れ、話題にし、リンクするでしょう。そうした人々の行動のすべてがシグナルになって、ブランドのエンティティは強化されます。Google検索が用いていることが明らかになっている主要なブランドシグナルは次のものです。
指名検索とは、社名やサイト名、コンテンツ著者名などのキーワードを含む、ナビゲーショナルな意図の検索のことをいいます。例えば「ナイキ + スニーカー」や「Amazon + USBメモリ」や「スタバ + メニュー」などの検索が該当します。指名検索されることは、その対象に知名度と検索ニーズがあることを証明します。
指名検索で訪れたユーザーは「そのサイトに訪問する動機」のあるユーザーですから、直帰率が低く、サイト滞在時間が長く、コンバージョン率が高いなど、良好なユーザー行動シグナルを発し、サイト全体の検索順位を引き上げます。またGoogleは指名検索を特定のブランドへの支持投票として機能させる特許を有しています。
Google検索は検索結果画面上でのクリック率や、クリック後のサイト上での滞在時間、ユーザーが検索結果に戻ってきたかどうかなどのユーザーの行動を機械学習し、順位に反映します。ユーザーが満足したことが示唆される行動をとった検索結果はよい検索結果で、ユーザーが満足しなかったことが示唆されれば、それは悪い検索結果です。
よく知られ信頼されているブランドは、よいユーザー行動を導きます。商品を検索する人の70%は、検索結果の上位に表示された小売店よりも、自分がすでに知っている小売店(例えばAmazonのような)の結果を優先的にクリックすることが、Search Engine Land と SurveyMonkeyが実施した調査5で明らかになっています。
また米Page One Power社の調査6によれば、検索結果に表示されたリンクのクリックを促進する理由として、アメリカ人の59%は知っているブランドであることを重視する一方で、上位にランクされていることを重視する人は3分の1未満でした。ユーザーはアルゴリズムよりもブランドを信頼する可能性が2倍高いことを示しています。
サイテーションとはウェブ上で対象となるブランドが言及されることを指します。官公庁や大手ニュースサイトなど権威性が高く信頼されているサイト上でブランドが言及されることは、そのブランドが言及に値する重要なものであることを証明します。また、同時に言及された他のエンティティとの関連もGoogleは理解します。
SNSなどで展開される一般の人々によるブランドへの言及(クチコミ)も重要なサイテーションです。これらのクチコミによって初めてそのブランド名を目にする人が増えることに加え、その話題のブランドについて知るために指名検索をしたり、サイトに訪問してコンテンツを熟読する可能性が高まるためです。
被リンクは外部のウェブサイトから受け取るリンクです。Googleなどの検索エンジンはリンクをあるページから別のページに対する一種の支持投票のように扱い、より多くのリンクを集めるページを重要なものとみなします。また同時に、より重要なページからのリンクをより重要なものとみなします。
リンクは信頼性や権威性を測る指標として用いられます。また、リンクは推薦や参照の意味で設置されることが多いため、よく知られていて信頼されているブランドほど、さらにより多くのリンクを集めます。被リンクを構築する意味でも、確立されたブランドは有利に働くのです。
SEOにおけるブランディングの目標は、ブランドを覚えてもらい、信頼してもらい、話題にしてもらうことです。その目標につながることであれば、どんなことを実施してもいいでしょう。御社が実施可能なもの、できれば得意なものを実施していきましょう。
テキストコンテンツが得意ならそれを軸に施策を展開し、動画コンテンツが得意ならそれを軸に、SNSやオフラインでの社交が得意ならそれを軸に施策を展開する、といった具合です。何であれ、ブランドを覚えてもらい、信頼してもらい、話題にしてもらうために、得意なことをやっていきましょう。
ターゲット市場(ローカルかニッチ)に対して、覚えてもらい、信頼してもらい、話題にしてもらうことにつながるのであれば、何をしてもブランディングになります。得意なことや好きなことを中心に展開しましょう。
ここから紹介する各施策は基本的な、できればどの会社にもおすすめしたいものだけを選りすぐっています。したがってブランディングの全体像からすればごく一部に過ぎませんが、全体的なブランディングを実施していくにあたっての中間目標として取り組んでいくのがよいでしょう。
サイテーションが機能するためには、あなたやあなたの会社が外部から言及を受けたとき、それがあなたやあなたの会社に対する言及であると検索エンジンが認識できる必要があります。他と重複しない社名、サイト名、コンテンツ著者名であれば最善です。
同名の会社やサイトがあったり、同姓同名の人物がいる場合には、所在地や業種名など他と区別できる情報を常に付加するようにしましょう。例えば「アシスト」のようなよくある社名だった場合、常に「横浜のシステム開発 アシスト」や「京都の土木建築 アシスト」などと名乗るようにします。
もし会社名やサイト名をこれから考えるのであれば、他と重複しにくいことに加えて、読みやすく、覚えやすく、発音しやすく、聞き取りやすく、入力しやすい、といったことも考慮すべきです。外国語や当て字など、読めない、覚えられない、入力できないブランド名では、サイテーションや指名検索の獲得において損をします。
あなたやあなたの会社を単なる文字列ではなく実体(エンティティ)として検索エンジンに認識させることを意識しましょう。
コンテンツごとに、そのコンテンツに責任を持つ人物の個人名と連絡先を表示しましょう。コンテンツの著者はそのトピックの専門家としてブランディングしていく対象です。実在する専門家として名前と顔を出した著者情報を表示することはE-E-A-Tの観点から必須です。
コンテンツ制作者のエンティティを専門家として検索エンジンに認識させるためには、マスメディアなどから取材を受けたときに名前の出る人物、つまり取材内容が記事化されたときにサイテーションを受ける人物が、コンテンツの著者として表示されていることが理想です。中小企業ならほとんどの場合、これは社長の役割です。
ただし、実際に社長自身が制作したのではないコンテンツ、たとえば他の社員や外部のライターが制作したコンテンツを、社長の名義で発表するのは感心しません。社員が制作したコンテンツはその社員の責任で記名すべきですし、社長は自分の名義で発表するにふさわしいコンテンツを自作すべきです。
ローカルビジネスではGoogleビジネスプロフィールのクチコミ投稿を獲得すること、ECサイトでは購入者による商品レビュー投稿を獲得することで、御社のE-E-A-Tが向上します。地域密着のローカルビジネスとECサイトでは、クチコミ投稿の獲得は他のどんな施策よりもSEOに効果的です。
とはいえ飲食店など一部の例外を除けば、お願いしないとクチコミ投稿は増えません。口頭で直接お願いすることはもちろん、ポップなどの掲示物やチラシやショップカードなどの配布物を使ったり、ECサイトなら同梱物やフォローアップメールを使うなどして、クチコミ投稿をお願いするようにしましょう。
ただし、Googleビジネスプロフィールのクチコミ投稿に対して金銭や物品などのインセンティブをつけることは、Googleマップの投稿コンテンツに関するポリシー7に違反します。クチコミ投稿に何らかの対価を支払うことはせず「単にお願いするだけ」にするようにしましょう。
個人を認知してもらうにあたっては、X8のようなSNSの活用は欠かせません。自分の専門分野に関心のある人々とつながり、そこでの存在感を高めることで、認知を広げるとともに、コンテンツを発信するときには拡散も期待できます。Googleも公式ブログで次のように述べています。
そのサイトのテーマに関連するコミュニティに積極的に参加することが、サイトの評判を上げ、良質なリンクを得るのに有効です。フォーラムやブログなどで、意見やコメントを投稿し、参加ユーザーと交流してみましょう。
良質なリンクを得るには | Google 検索セントラル ブログ9
SNSは個人同士が交流するのに適した場です。会社の公式アカウントは交流には向きません。個人のアカウントで、個人としてSNSに参加することが基本です。公式アカウントの運用はうまくいかない一方で、社長の個人アカウントのほうがうまくいっているというのは、SNSの性質から当然の結果です。
私的な日常をつぶやいたり見知らぬ他者と交流することに躊躇してしまって、SNSの活用が苦手だという人も多いと思います。実は筆者もそんな一人です。そんな場合には「仕事として、仕事に関連することだけつぶやき、頻度も上げない」と割り切ってしまうのも一つの方法です。筆者のXもそのように運用しています。
マスメディアや地域メディアなど、権威あるメディアへの露出を狙った広報活動を実施します。「(地域または業種)で初めて」や「(地域または業種)で一番」や「いま話題の○○」のような形の報道価値のある話題を作ってプレスリリースを配信しましょう。権威あるメディアに扱われれば強力なサイテーション効果が得られます。
なお複数の記者の証言として、報道価値のない単なるお知らせでプレスリリースを乱発しているようなスパムまがいの会社(残念ながら大量に存在します)のリリースは自動的に無視するといいます。パブリシティを狙うなら、報道価値(ニュース性)のあるリリースだけを配信するようにしましょう。
この項の冒頭で「SEOにおけるブランディングの目標は、ブランドを覚えてもらい、信頼してもらい、話題にしてもらうこと」と述べました。これらを実現するための最も確実な方法は、より多くの人々にお客さまになってもらい、御社の製品やサービスを実際に使っていただき、満足していただくことです。
熱心なクチコミや評判は満足してくださったお客さまから生まれます。満足してくださったお客さまを増やすことこそが、最も確実なブランディングです。そのために広告を使うのもいいですし、社長が広告塔となって既存メディアやSNSやYoutubeで露出するのもいいでしょう。方法はたくさんあります。
地域のイベントに協賛したり、地域の学校の社会見学や行政の視察を受け入れたり、業界団体での役職を引き受けたり、国の助成事業で官公庁と協力関係を築いたりすることで、メディアでの露出を増やした例もあります。露出機会を増やし、お客さまを増やすことのすべてが、ブランディングにつながります。自社に合った取り組みを探しましょう。
一例として筆者がブランディングに取り組んでいるのは、自社とこのサイトを表す「ボーディーSEO」のエンティティと、コンテンツ著者である「住太陽」のエンティティの2つだけです。筆者は自分一人だけでサイトを運営している零細企業オーナーですので、多数のエンティティをブランディングするのは不可能で、少数に絞って取り組んでいます。
それら2つのエンティティをブランディングすることの目標はキーワード「SEO」での検索結果で1ページ目に安定して表示させることです。このキーワードの上位には上場企業やSEO専業の中堅企業、Googleの公式やWikipediaの記事などがひしめいていて一人運営のこのサイトには厳しい環境ですが、うまくやりおおせることができたら痛快です。
一人運営で手間や時間に余裕がありませんので、サイトのコンテンツ量は諦めて、質だけを追うようにしています。また個人としては、依頼された講演は基本的に断らず、Web担当者Forumで連載を持つなど、専門家としての講演や執筆の機会をできるだけ多く持てるように努めています。この結果、目標まであと一歩のところまできています。
一人で運営しているような小規模なサイトが不利なのは事実ですが、着実にブランド化に取り組めば、極めて競争の激しいキーワードでもある程度は戦えます。
中小企業のブランディングで目指すのは、地域か業種を絞り、その範囲内での知名度と信頼を獲得することです10。その結果として、指名検索や、良好なサイテーション(言及)やレピュテーション(評判)やユーザー行動、そして被リンクを獲得していきます。これらは着実な積み上げが可能で、あとはやるかやらないかだけです。
ことSEOの観点からは、ブランディングは必須の要件です。信頼されていない無名のサイトに集客することはますます困難になってきています。あなたの会社やサイトと、専門家としてのあなた自身を、ブランドとして確立しましょう。そして最も大切なことは、こうしたブランディングはSEOがなくても生き残りのためにやるべきことだということです。
オンページSEOとは、ウェブサイトの内部をユーザーと検索エンジンに最適化する取り組みです。これには、ユーザーの検索意図を的確に満たすコンテンツを作成し管理するコンテンツSEOと、技術的な側面を最適化しサイトを検索エンジンに正しく理解・取得させるテクニカルSEOが含まれます。
オンページSEOの基礎になるのはデザイン(設計)です。ユーザーがあなたのサイトを訪れる目的はコンテンツであり、検索エンジンのアルゴリズムが評価するのもコンテンツです。デザインもコンテンツにフォーカスした使いやすくわかりやすいものにすることで、SEOの効果を最大にできます。
スマートフォンの普及によって検索はより生活に密着したものになりました。この状況に対応してウェブサイトは、様々な種類のデバイスでの表示や操作がしやすいようにモバイルファーストで設計されている必要があります。ユーザーが迷いにくいシンプルなナビゲーションと、最適化された内部リンク構造も重要です。
ウェブサイトは利用者の便宜のために構築するべきであり、すべての最適化はユーザー エクスペリエンス向上のための調整である必要があります。検索エンジンもそうした利用者のひとつであり、他のユーザーがあなたのコンテンツを見つけるための手助けをしています。
Google 公式 SEO スターター ガイド(2022年時点)1
検索エンジンは人間のユーザーと同じように、サイトやコンテンツの信頼性やユーザビリティ、速度、モバイルフレンドリー性などを評価します。ユーザー体験を損なわないデザインはとても重要です。これらができていることで、次に紹介するコンテンツSEOや、後述するテクニカルSEOが大きな効果を生みます。
デザイン以外の面では、低品質なページを改善または削除することも有効です。サイト内に低品質なページが多くある場合、サイト全体の評価が下がる可能性があるためです。サーチコンソールなどの無料ツール類をうまく使い、クロールされているがインデックスされていないページなど、低品質の兆候のあるページを精査しましょう。
コンテンツSEOとは、検索ユーザーのニーズを満たすようにウェブサイト上のコンテンツを最適化する取り組みです。自社が専門性を保持している領域の範囲内で、自社の見込み客の疑問に答え困りごとを解消するコンテンツを作成することで、検索エンジンから見込み客を集客します。
Google の自動ランキング システムは、検索エンジンでのランキングを上げることではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを主な目的として作成された、有用で信頼できる情報を検索結果の上位に掲載できるように設計されています。
有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル2
Googleは公式ドキュメントで上記のように述べて、検索結果の上位に表示されるためにはユーザーのメリットになるコンテンツが必要であることを説明しています。コンテンツ制作にあたっては、検索ユーザーの役に立ち、検索ユーザーにメリットを提供することを重視しましょう。重要なポイントは次の通りです。
コンテンツを制作するときには、見込み客がそのコンテンツを探して検索するときに使いそうなキーワードを選定し、そのキーワードをタイトルや見出しやパラグラフの中で自然に使うようにします。ただし、キーワードは過度に使う必要はありません。迷ったときは常に読者にとっての読みやすさとわかりやすさを優先しましょう。
コンテンツは検索マーケティングのファネル(下図)を念頭に、見込み客がコンバージョンまでにたどる各段階に応じたものを揃えることで、接触を増やし、関係を構築し、コンバージョンを最大化できます。また、ファネルの各段階ではSEOの他にリスティング広告やアフィリエイト広告を併用するのも効果的です。
コンテンツ同士を内部リンクすることも重要です。各コンテンツから、サイト内の関連性のあるページにリンクしましょう。このとき、リンクのアンカーテキストにはリンク先を端的に表す文字列を使います。こうすることでユーザーと検索エンジンにページ同士の関連性を伝えます。トピッククラスターを構成すればさらに効果的です。
テクニカルSEOとは、検索エンジンがウェブサイトを正しく把握するための技術的な側面を最適化することをいいます。検索エンジンにとってウェブサイトの構造やコンテンツを理解しやすくし、正しくクロールやインデックスすることを助ける役割を担っています。ここで実施するのは次のような作業です。
ただし近年では、検索エンジンの性能向上と、一般的によく使われているCMSやカートシステムの改善によって、テクニカルSEOの必要性は大きく減少しています。一般的なCMSやカートシステムで運用されているサイトでは、狭義のテクニカルSEOの必要性はほとんどなくなったといってもよいでしょう。
一方、デバイスの多様化やユーザーの利用シーンがより日常に密着したものになってきていることを受けて、ユーザーエクスペリエンスの高いウェブ開発の重要性は大きくなっています。機能の面でもビジュアルの面でもコンテンツの面でも、ユーザーエクスペリエンスの向上を第一に、サイトを改善していきましょう。
オンページSEOの中心はコンテンツSEOです。設計面や技術面の課題は一通りの解決が可能で、毎日のように取り組むものではないからです。設計面や技術面での課題を一通り解決したら、コンテンツSEOにリソースを振り向けましょう。またサイトの外にも目を向けオフページSEOに取り組むことも重要です。
オフページSEOとは、ウェブサイトの外部で発生するランキングシグナルへの働きかけを指し、デジタルPRを含む被リンク構築やソーシャルメディア最適化などが含まれます。 オフページSEOの目標は、自分が管理するサイトの存在感を高め、信頼でき権威があると検索エンジンに認識してもらうことです。
Googleなどの検索エンジンは、ウェブサイトやコンテンツを評価するにあたり、外部の独立した第三者からの評価を活用します。このとき参考にされるのは、外部のサイトからの被リンク人気度や、サイテーション(言及)やレビュー(クチコミ)などによるレピュテーション情報です。
ウェブサイトやコンテンツ著者について他人が述べていること: ウェブサイトやコンテンツ制作者に関する独立したレビュー、参考文献、ニュース記事、その他の信頼できる情報源を探そう。ウェブサイトやコンテンツ著者が経験豊富である、専門知識がある、権威がある、またはその他の点で信頼できると考えられる独立した信頼できる証拠が見つかるか?
Google検索品質評価ガイドライン1
Googleは検索品質評価ガイドラインの中で上記引用のように述べて、独立した第三者による評価の重要性を強調しています。オフページSEOは、こうした外部の情報源に働きかけることで、自分が管理しているサイトへの参照や言及を増やし、検索エンジンに対して信頼性や権威性(E-E-A-T)を証明していきます。
リンクやクチコミを獲得することに加えて、指名検索(社名や店名やサイト名など固有のブランド名での検索)を獲得することも、オフページSEOの重要な側面の一つです。指名検索が発生するという事実は、知名度が高く、多くの人の話題になっている本物のブランドであることの証明だからです。
検索意図に対してニーズメットで品質の拮抗したページが複数あるようなとき、より上位に表示されるのは、より有名で評判のよい会社やウェブサイトや著者が発信するページです。知名度と評判を実際に高めることと、それを的確に検索エンジンに伝えることが、オフページSEOの役割です。
外部の独立した情報源からの参照(被リンク)や言及(サイテーション)や指名検索は、ソーシャルメディアの活用などによって多少の促進が可能です。しかし最終的には、実際にあなたの会社やサイトが参照や言及に値する存在になる必要があります。オフページSEOの目標は、知名度が高く、評判がよく、人々の話題にのぼる状態です。
検索順位の決定要因における評判要素の割合が大きいECサイトのSEOやローカルSEOではすでに、その分野や地域においてよく知られた評判のよいサイトや店舗が上位に表示され、人気順のような検索結果となっています。他の分野についても同様の傾向が見られ、その傾向は今後ますます進むでしょう。
オフページSEOは、単にSEOのためだけの施策としてではなく、会社やサイトの存在感やブランド価値を実際に高める取り組みとして、中長期の視点で進めていくことをおすすめします。こうした取り組みは、ウェブだけを担当する部署や外注先には不可能です。中小企業なら社長が率先して取り組みましょう。
会社やサイトが参照や言及に値する存在になるためには、オンラインで有用なコンテンツを継続的に提供することのほかに、実際に優れた製品やサービスを提供してユーザーからの反応を引き出すことや、世話役を務めて地域や業界の貢献することなど、オフライン世界での存在感を高めていくことが重要です。それには次のような取り組みが挙げられます。
上記は筆者やそのクライアントが実施している施策ですが、これらをはじめとして、会社やサイトの知名度や評判を高める取り組みには多種多様なものがあります。これらのすべてを実施することはほとんどの会社にとって不可能でしょうが、適性のあるものや可能なものを組み合わせて実施していきましょう。
オフページSEOが対象とするのは、自社が管理していない第三者のサイトや一般の人々です。それらのサイトや人々の評価や行動への介入には、サクラなどの不正な手法を除けば限界がありますから、オフページSEOは難しく、時間もかかります。しかし、難しく、地道な活動が必要であるからこそ価値があります。
オフページSEOの成功のためには、実際の人間から評価や行動を引き出す必要があります。成果を焦って過剰なアウトリーチを実施して反感を買ったり、または注目を集めようとするあまり炎上したり、といった結果を招かないためにも、成果を焦らず、忍耐強く、しかし積極的に取り組んでいきましょう。
ここからは、多くの会社が取り組んでいる代表的なオフページSEO施策を紹介します。時間のかかる施策の多いオフページSEOのなかでは、比較的すぐに始められ、結果が出てくるのも早い施策です。まずはこれらを確実に実施しましょう。そのうえで、先述した各種の取り組みをコツコツ実施していくのがおすすめです。
すぐにできることとして、既存の取引先や加盟団体にリンクを依頼することができます。既知のもの以外にも、業界や地域の名簿やリストを公開しているサイトを探し、そうしたものの管理者にリンクを依頼することもできます。また、社名や店名で検索してリンクのない言及を探し、その管理者にリンクを依頼することもできます。
顧客や取引先にクチコミの投稿を依頼することもできます。口頭でお願いするのもいいですし、店頭の掲示物でお願いするのもいいでしょう。通販事業者なら同梱物やステップメールやメルマガを活用しましょう。クチコミの投稿先は、Googleマップ、Facebookページのほか、各種のクチコミサイト、ECサイトならサイト内の商品レビューも重要です。
ソーシャルメディアを活用することで、事業領域に関連のある人々と交流し、その中での存在感を高めていくことができます。個人のSNSアカウントを使って会話に参加し、有用な情報があれば共有するなどしてコミュニティに貢献します。こうした活動を継続していくことで、あなたの存在感を高めることができます。
会社の公式アカウントでは、顧客や潜在客にとって役立つ、または得する情報を発信し、情報源としての存在感を高めることができます。社名やブランド名でエゴサーチし、言及してくれている人にお礼の返信をしたり、使い方などで困っている人を探して助けたり(アクティブサポート)することも有効です。
コンテンツSEOを実施します。検索ユーザーにとって役立つ良質なコンテンツを作り、それを前項で述べたソーシャルメディアで宣伝します。顧客や同業者や取引先など、あなたの事業領域に関心のある人々とあらかじめ交流を持っていれば、ソーシャルメディアを通じて多くの人の目に触れ、言及されたりリンクされる機会が増加します。
オンラインとオフラインで存在感を高めるSEO戦略として、オフページSEOは欠かすことのできない重要な施策です。被リンク、レピュテーション、サイテーション、ソーシャルメディアでのエンゲージメント、そして指名検索の獲得は、あなたの会社やサイトがよく知られていて評判のよいものであることを検索エンジンに証明します。
ただしオフページSEOには地道な継続が必要で、実施には中長期的な視野と忍耐力を要します。時間のかかるものであるだけに、戦略的に取り組むことと、できるだけ早く取りかかることが重要です。自社にとって適性がある施策、市場にインパクトを与えられる施策を見極め、コツコツと積み重ねていきましょう。
指名検索とは、ショップ名や会社名やサイト名、商品名などのブランドキーワードを含む検索のことをいいます。指名検索には、[ナイキ]のようにブランド名だけで検索する場合と、[ナイキ+バスケットシューズ]のようにブランド名と一般名詞を組み合わせて検索する場合があります。
Googleは検索結果において、大手マスメディアや大手メーカー、大手ECサイトなど、大手ブランドを優遇する傾向があります。その一方で、無名のECサイトやアフィリエイトサイトの冷遇は加速しているように見えます。この違いを生んでいる重要な要因の一つが「指名検索の有無」です。
指名検索をするのは、ショップ名や会社名やサイト名などのブランド名をすでに知っている人々です。その人々は、そのブランドに関心があり、購入の候補にしているか、またはもっとよく知りたいと考えていることが強く推察されます。指名検索の多さは、そのブランドの知名度の高さや、関心を持つ人の多さを反映しています。
2012年以降、Google検索はエンティティを理解するようになりました。このことは、検索されているブランドが注目されている重要なエンティティであることを理解できることを意味しています。私たちは社名やサイト名や店名を、よく知られ、信頼され、指名検索されるブランドに育てる必要があるのです。
Googleの2012年の特許「Ranking search results1」には、指名検索を特定のリソースを指し示す「暗示的なリンク(implied link)」として扱い、通常のリンクと同じように順位決定要因として扱う方法が示されています(下図)。あるページに対する通常のリンク数と指名検索数を使って、そのページの順位を修正するというものです。
通常のリンクは特定のURLを指し示すもので、Googleはこれをリンク元のページからリンク先のページへの一種の支持投票のように扱います。指名検索もリンクと同様に特定のURLを指し示すものであるため、それを検索ユーザーによる一種の支持投票のようなものとみなし、リンクに準じる「暗示的なリンク」として扱う、というのがこの特許の要諦です。
これはあくまでも特許に書かれていた内容であり、実際の検索システムにそのまま実装されているとは限りません。しかし様々な状況証拠から、指名検索を被リンクのように扱うというアイデアは何らかの形で実装されているものと考えられます。次項で示すように、検索結果には相関が現れているためです。
検索エンジンにとって指名検索は、検索の対象となったブランドが本物のブランドであることを示す強力なシグナルとして機能します。指名検索を感知した検索エンジンは、そのブランドが人々に実際に知られていて興味を持たれている本物のブランドであることを理解し、そのブランドの公式サイト全体の検索順位を上昇させます。
米Mozのトム・キャッパー氏は2017年のブログ投稿2で、指名検索数と検索順位に相関があることを明らかにしました。そこで述べられていたことは、被リンクよりも指名検索数のほうが検索順位をよく説明するということでした。サイトの検索順位は、被リンクとの相関よりも指名検索との相関のほうがより強かったのです。
筆者のクライアントの中には、ある特定の分野で一定の知名度を持つ非常に小規模なECサイトがあり、その特定の分野の検索結果では少なくとも5年以上にわたって常に上位をキープできています。このサイトでは、全検索流入の数パーセントを指名検索によるものが占めています。限定された分野におけるブランドが確立しているのです。
米PureLinqのケビン・ロウ氏がSearch Engine Landに寄稿した2024年7月2日の記事3によれば、Googleの2024年3月のコア・アップデート以降、指名検索を獲得しているサイトの順位が向上した一方で、指名検索を獲得していないサイトの順位が大幅に下降したといいます。この記事でケビン・ロウ氏は次のように述べています。
2024年3月のコアアップデートにより、指名検索はSEOの必須要件に近づいた。これは検索における継続的なトレンドである。
ケビン・ロウ
近年のGoogle検索では、検索結果において大手サイトが優先されやすく、小規模なサイトは苦戦を強いられやすい傾向が顕著です。この理由をシンプルに言えば「人々に信頼され指名検索を得ているサイトはGoogleにも信頼され、指名検索のないサイトはGoogleに信頼されない」ということです。サイトの規模の問題ではない可能性は大です。
筆者が知っている例でも、指名検索ではない一般キーワードのSEOだけで検索流入を得ていたあるアフィリエイトサイトが、2023年10月のコア・アップデートで大幅に検索流入を減らし、その後も徐々に流入を減らし続けていました。私たちは早急に、自社のサイト名や社名や商品名や著者名をブランディングしていく必要があるでしょう。
Googleは指名検索を受けていることがそのサイトの順位向上に直結するとは公表しておらず、先述した特許の内容がそのままの形で実装されている確証はありません。とはいえ、順位向上に直結するかどうかはともかく、間接的にサイトの順位向上に寄与することは、次のことからも説明できます。
Google検索上でのユーザー行動は匿名化されて集計され、検索結果に反映されます。検索エンジン上での理想的なユーザー行動は、検索結果に表示されたリンクをクリックし、その移動先のページで検索意図が満たされて検索を終えることです。そのようなユーザー行動が多く見られるサイトは、検索結果の順位が上昇します。
指名検索は、そのサイトまたはそのサイト内の特定のページに訪問するというナビゲーショナルな検索意図であることが多いため、検索結果上でのクリック率が高く、検索結果に戻る率は低くなるなど、理想に近い行動をとるユーザーの割合が高くなります。この結果、指名検索の多いサイトはユーザー行動シグナルが改善し、検索結果の順位が上昇します。
ユーザー行動シグナルはGoogleをはじめとする検索エンジンの最重要のシグナルです。指名検索と検索順位の相関については、このユーザー行動シグナルが最もよく理由を説明するものと筆者は考えます。
Googleが2019年に発表した白書「Googleはどのように偽情報と戦っているか4」によれば、Googleのランキングシステムは、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼)の高いサイトを特定するために特別に設計されているといいます。そして指名検索は、E-E-A-Tの高いサイトを特定する方法のひとつとして機能します。
指名検索が発生することは、その分野での知名度があることや、特定のユーザーに信頼されていることの証明です。また指名検索は、オンラインまたはオフラインのどこかでそのブランドについての言及や評判を見聞きして興味を持った結果としても発生し、この場合はそのブランドが言及や評判を持っていることを証明します。
先述したユーザー行動の改善やブランドのE-E-A-Tの証明の結果、指名検索を得るサイトは指名キーワードを含まない一般キーワードだけでの検索でも順位が向上します。そのサイトが扱う特定の分野について優れた体験を提供し、人々に支持され、関心を集めているサイトであると認識されるためです。
たとえば、普通名詞と指名キーワードを組み合わせた [バスケットシューズ+ナイキ] のような検索が増加すると、検索エンジンはナイキがバスケットシューズのブランドとして消費者に信頼されていることを理解し、単に [バスケットシューズ] と検索したときの上位にナイキのページを表示するようになります。
ユーザーが指名検索する状況は、おおまかに2種類が考えられます。ひとつは、すでにそのブランドを知っていてナビゲーショナルクエリとして検索するケースです。もうひとつは、テレビや雑誌などの他媒体や、ディスプレイ広告や動画広告やSNS広告などのウェブ広告を見て、またはSNSやブログなどで他の人の投稿を見て、気になって検索するケースです。
ナビゲーショナルクエリとしての指名検索も、どこかで目にして気になって検索する指名検索も、それらを増やすための働きかけが可能で、それによって検索結果での順位を向上させることができます。その反面、指名検索を獲得するための施策を打っていなければ、前項で述べたようにコア・アップデートに対して脆弱で順位の下落を引き起こしやすいサイトになってしまいます。
大手自動車メーカー並みの大企業なら、一社で複数のブランド名を持ち、それらのすべての認知度を高めていくこともできるでしょう。しかし中小企業にとってその選択はあり得ません。覚えてもらいたい、話題にしてもらいたいブランド名をできる限り少数に絞り込む必要があります。社名、製品名、屋号、サイト名など、様々なものを使い分けているなら統合を検討しましょう。
よくある間違いは、複数の屋号で複数のサイトを運営していたり、製品ラインごとにブランド名をつけていたり、社名と店名とサイト名がすべて違っていたりするものです。ブランド名が2倍に増えれば、覚えてもらい話題にしてもらう労力も2倍です。すでに知られているものか、人々にとって覚えやすく話題にしやすいブランドに統一するのが得策です。
サイト名や店名などのブランド名を無駄に増やしている例は本当に多く見かけます。ブランディングのために使える経営資源が限られている中で、複数のブランドに経営資源を分散させるのは非常にもったいないです。
そもそもそれが指名検索であることをGoogleが理解するためには、そのキーワードが特定のエンティティを指していることをGoogleが知っている必要があります。会社や店や商品や人物やサイトなど、指名検索の対象となる事物のエンティティをGoogleに理解させることが最初の一歩です。
Googleが会社や店や商品や人物やサイトなどのエンティティを重要なものとして理解するためには、ニュースサイトや各種ソーシャルメディアなど、外部ウェブサイトから言及されることが不可欠です。また会社や店であれば、Googleビジネスプロフィールでクチコミを集めることも有効です。基本的なブランディングに取り組みましょう。
会社名やサイト名などのブランド名は、他と重複しないユニークなものであることが重要です。加えて、覚えやすく入力しやすいものであればより言及しやすいでしょう。一般名詞やその組み合わせのブランド名や、長すぎて覚えにくいブランド名、入力しにくい外国語のブランド名などは損をします。
オンラインやオフラインの広告でブランド名の露出を高めたり、SNSで人々の話題になることでも「たまたま目にしたブランドが気になって検索する」という指名検索を増やすことができます。広告を含めた話題作りは有効な施策です。社長が前面に出て広報活動や社交に取り組むのもいいでしょう。
ブランド名を目にする、または耳にする人が増えれば、それにしたがって話題にしてくれる人も増え、指名検索は増えていきます。自社や自社の商品や自分自身に合った知名度向上策を実施していきましょう。SEOにおいては、知名度の向上とそれにともなう指名検索の増加は、被リンクの構築と同じように重要です。
たとえばあなたは、AmazonやYoutubeのサイトに行くために指名検索することがあるでしょう。場合によってはより具体的な目的を持って「Amazon + ヘッドセット」や「Youtube + 窓掃除」などと検索することもあるでしょう。これらも指名検索です。ユーザーにとっての「そのサイトを検索する理由」を自社のサイトに用意することは、指名検索を得るうえで重要です。
一例として、既存の顧客向けのサポート情報を充実させておけば、製品の使い方やメンテナンス方法を知りたい既存客が「製品名 + 手入れ」のような検索をしたり、サービス内容を知りたい既存客が「会社名 + 修理費用」のような検索をしてくれるでしょう。こうした既存客の検索行動はSEOにおける加点要素となり、新規客の集客につながります。
指名検索の獲得がサイト全体のSEOに寄与するということについては、Googleからの公式の発表はなく、世界のSEO専門家が信じる状況証拠に過ぎません。しかし、よく知られ、人気や話題性があり、信頼されているブランドが多くの指名検索を集めることは事実で、Googleが検索結果において強いブランドを優遇する傾向があることもまた事実です。
筆者のクライアントでも、知名度の高いブランドを持ち指名検索を多く受けとっているクライアントは検索流入が安定している一方で、一般的なキーワードによる検索だけに頼ったSEOで流入を大きく減らしてしまったクライアントもいます。指名キーワードを含まない一般キーワードだけに頼ったSEOは非常に脆弱です。この意味で、Googleの次の表現は示唆的です。
検索の基本事項に沿って作成したサイトは Google の検索結果に表示されやすくなります。SEO とは、一歩進んで Google 検索での存在感を高める取り組みのことです。
Google 公式 SEO スターター ガイド | Google 検索セントラル5
上記の引用にあるようにSEOとは、Google検索が知ることのできる場所での存在感を高めていく取り組みの集合です。これは言い換えれば、SEOとは、人々からよく知られ、言及され、リンクされ、検索結果上で優先的に選ばれ、指名検索されるようなブランドに育てていく取り組みであると言えます。指名検索は、様々なブランディングの結果として得られるものです。
上記のようなものが有効な策になるでしょう。もちろん、ここで言っているブランドとは、ロゴやコーポレートカラーやタグライン、またはブランドガイドラインなどのことではありません。ある特定の地域や分野で実際によく知られ、実際に信頼され、頻繁に言及され、実際に選ばれている、存在感のあるブランドのことを言っています。
ブランディングは重要な経営課題であり、経営陣や顧客の関与が欠かせません。社長自らが積極的に動きましょう。その特定のサイトを訪れる理由となる固有の価値を提供し、他のサイトやSNSで社名やサイト名や著者名に言及される状況を作りましょう。特定の地域や分野での存在感を高めましょう。簡単なことではありませんが、すぐにも始める価値はあります。