今回の発言について難しい話だが、他ブログを参考に考えてみてもとうてい納得できるものではない(ただし勘違いしている所もあるかもしれない)。現場自衛隊の立場を思うと意見するのも気が引けてしまうが、佐藤氏とはどんな人物かと顔をみたら、イラク派遣自衛隊の指揮官でマスコミのインタビューに答えて人気となったヒゲの隊長だった。この人が自民党の参議院議員になったことすら知らなかった。
取材したTBS以外はメディアでは取り上げられていないので、テロ特措法関連で野党のどこかが突っ込めば問題は広く認識されると思うし、自衛隊の今後の海外展開を考えるとこの問題は看過しないほうがいい。
問題は『あえて』巻き込まれるという策略を自衛隊の現場指揮官が巡らしていたことで、TBSの報道意図が正確であればこれは深刻な問題だと思う。さらに自衛隊が批判されるから行動を起こし「自分が裁判で裁かれても仕方ない」というような意味を述べたとすれば、自衛隊(部隊)評価のために法趣旨に背くことを現場司令官が勝手に考えていたにほかならない。しかもこの場合は本来法が想定していない(許されていないということ)任務を行なう目的で、現場指揮官が正当防衛・緊急避難を名目にするために偵察部隊を出すことで、あえて巻き込まれて(攻撃されて)警護(武力応戦をすること-※1)を自らすることを意図していたと読み取れるわけで、法を曲げても合目的に軍事作戦を展開しようと超法規的な武力行使をするつもりだったというほかない。
そもそも武力行使を前提とした活動は極力避ける約束で自衛隊派遣したわけで、だからこそ任務困難な自衛隊の活動に理解も同情もしてきた。しかしこれでは他国の軍事作戦と全く変わらない、明らかな陽動作戦としか思えない。
それに他国の批判というが、他国は軍事展開する上で自衛隊活動の制限については了解済みのことだ。その上で自国部隊展開も作戦行動もあらゆる可能性を検討しているはずで、自軍の作戦計画から事前に武力展開を想定していない国をアテにするとは考えにくい。欧州軍も米軍も日本の活動制限を考慮した上では本末転倒な言い訳だ。日本が密かに警護の約束でもしていたなら話は別だが、いくら自軍が攻撃されたからといってアテにしていない約束の国に責任を問い糾弾するとはおかしな話である。はじめからこのくらいの事態も想定して派遣時に説得できていないのであれば準備不足としかいえない。連係不足でアテにせざろう得ない状況が発生しそうな時点で自衛官として上層にその旨を報告するのが先決で、その上で対処するのが自衛官に限らずどの世界でも常識というものだ。
何処の国だって自軍が攻撃されることは事前に想定している。アテにしない約束自体が問題なら事前に派遣要請を受けるべきではない。日本が他国部隊をアテにするのに他国が日本をアテにしないことが許されないなら、派遣前に武力展開を容認していないのだから政府は直ちにイラクから部隊を撤収すべきだ。
彼の話は他国の軍隊に従属した行動を余儀されることを自ら認めているようなもので、これはこれまでの政府の自衛隊海外派遣活動の方針説明とは180度異なる態度ともいえる。
要は隊長の言っていることは他国から批判されるのが怖いから勝手に戦闘行為に参加しますと宣言しているに他ならない。友軍が同じ地域で攻撃されているというが(※1)、そもそも武力行使とはそういうものであり戦争行為とはそこから始まるものだ。
いくら救命活動とはいえ戦争映画やTVドラマではあるまいし、現実に法治国家で定められた活動の遵守と問題解決の為に意図して武力を用いないことが憲法にあるわけで、どこの国の軍隊だって自国の法に沿った運用がなされている。それとも自衛隊とは、プライド(個人的価値観)の為に勝手に法を捻じ曲げ逸脱して武力衝突を拡大させることができる組織なのだろうか。
こういう話をしようとするとホシュの方々からは法律が実態に合っていないからだというが(掏り替え)、まず法律議論以前の前提として『法を破っても仕方ない』(裁判を受ける)という発想自体が問題であり、いくら法整備してもこの考え方がある限り何ら変わることはない。こういう実例を許しておけば実態が違ってくればまた法律を破っても良いという発想を繰り返す危険性がある。
それから私は武力警護「駆けつけ警護」任務には絶対に反対である。これは直接の武力行使に他ならない完全な憲法違反だ。日本の領土内ならまだしも海外展開部隊にそのような任務がないと国際社会から理解を得られないというなら(そんなことはない、イラク・アフガンの活動要旨にケチがついたか?)、今後一切の海外派遣をやめるべきとすら思う。
やられたらやり返す。もし自衛隊員がイラク兵を掃討すれば、これにより日本はイラク内勢力とその後も継続して武力衝突が起きただろうことは難くない。佐藤氏の話が駆けつけ警護のない故の苦肉の策であるなら、現場指揮官が日本を実質的戦争に巻き込む判断を下せるのが「駆けつけ警護」に他ならない。
これまでも繰り返してきたように、小泉内閣以降はこうした行為で同情を誘い喚起されかねない世情も気がかりで、現にこうした考えにも(マスコミなど)当然と思っているのか、殆ど反応しなくてサヨクというアレルギー反応しか示さない人々が増えつつある。そのサヨクが消滅したことに代わって世論に押された超法規的な軍隊(もはや自衛隊とは呼べない)による軍事貢献なら、私もそのサヨクと一緒に消滅したいくらいの暗澹たる気持ちになる。
※1 交戦状態(だから駆けつける)に巻き込まれての警護だから実質は武力応戦ということ
※2 仮に他国の軍と同一地域ではなくせめて連係活動など同一『場所』で活動している際に攻撃されたのならまだ意味は分かる(そのような危険な活動の責任は別に)。自衛隊を対象としていないとは判別できないし正当防衛にも緊急避難とも言える可能性があるだろう。しかし同一地域とはわざわざ部隊を展開して応戦する戦闘行為に他ならない。これは全く異なるものだ。
国民を騙すつもりだった~佐藤正久は議員として不適切、直ちに辞任せよ! (情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士)
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/6068073902aacc36000843a94e8bac4c
「駆けつけ警護」認めるべきで一致 TBS リンクなし
佐藤正久(参院議員)の問題発言(戦争屋 ひげの隊長こと元イラク先遣隊長) (YOU TUBE)
http://jp.youtube.com/watch?v=rXwJcFChN3