sshd再起動時にssh接続が継続する動作について
Linux/Unixサーバにsshしている際、sshdを再起動したとする。
sshdは一度終了する訳だから、現在接続しているsshも切断されるかと思いきや、接続は継続する。
今まであまり気にしていなかったけど、この振る舞いについて調べてみた。
先ず、現象の確認から
対象サーバにssh接続し、sshdを再起動してみる。
$ ssh [email protected] # 対象サーバに接続 $ hostname centos1.example.jp $ sudo service sshd restart sshd を停止中: [ OK ] sshd を起動中: [ OK ] $ hostname centos1.example.jp
sshdは一度停止されているにもかかわらず、対象サーバからは切断されていない。
プロセス構造から理由を探る
sshdプロセスの構成
先ず、sshdプロセスの構成を確認する。
この例ではサーバに対して同時に2ユーザが接続をしている状態である。
$ pstree -p #抜粋 init(1)─┬ └─sshd(2592) ├─sshd(2602) │ └─sshd(2608) │ └─bash(2609) │ └─pstree(2671) ├─sshd(2630) └─sshd(2634) └─bash(2635)
init配下にsshdのルートプロセス(2592)があり、個々のssh接続毎にsshdの子プロセス(2602と2630)が作成されている。
更にその下にsshd孫プロセスがあり、bashが起動されている。
bashにたどり着くまで、sshdルートプロセスを合わせて、3つのsshdが連なっている状態である。
再起動後のプロセス構造から分かること
ではsshdを再起動してみよう。
$ sudo sshd restart sshd を停止中: [ OK ] sshd を起動中: [ OK ] $ pstree -p #抜粋 init(1)─┬ ├─sshd(2602) │ └──sshd(2608) │ └──bash(2609) │ └──pstree(2712) ├─sshd(2630) │ └──sshd(2634) │ └──bash(2635) ├─sshd(2709)
init配下にぶら下がるsshdプロセスが3つになってる!
この結果から以下のことが分かる。
- 元々のsshdルートプロセス(2592)が消え、新たにsshdプロセス(2709)が立ち上がった
- ssh接続中のプロセス(2602、2630)は残っているが、親プロセスがinitに変わっている
つまり、再起動によって終了されたのはsshdのルートプロセス(2592)のみであり、子sshdプロセスは再起動対象外となっている。
個々のssh接続情報が保持されたプロセス(子プロセス)は生き残っているから、接続は切断されなかったのだ。
ちなみにこの状態から新たにssh接続を行うと、今回作成されたsshdルートプロセス(2709)の配下に新たにsshdのプロセスが立ち上がる。
また、生き残っていたsshd接続を切断すると、対応するinit配下のsshdが丸ごと消える。
新規の接続は再起動後のsshd(2709)が受け付け、既存の接続は、その接続が終了次第、無くなっていくのだ。
この状態でポート22をLISTENしているプロセスを調べてみると
$ sudo lsof -i:22 | egrep COMMAND¥|LISTEN COMMAND PID USER FD TYPE DEVICE SIZE/OFF NODE NAME sshd 2709 root 3u IPv4 22206 0t0 TCP *:ssh (LISTEN) sshd 2709 root 4u IPv6 22208 0t0 TCP *:ssh (LISTEN)
となり、新規のssh接続を受け付けているプロセスは新たに立ち上がったルートプロセス(2709)であることが分かる。
もう少し突っ込んだ確認
以上の結果から、sshdのルートプロセスは新規接続の受け付けを行っていること、また、個々の接続情報はルートプロセスではなく、ssh接続毎に作られたプロセス上で保持していることが分かった。
今度はssh接続した状態で、自身の紐付くsshdルートプロセスを直接killしてみる。
$ pstree -p #抜粋 init(1)─┬ ├─sshd(2709) └──sshd(2845) └──bash(2850) └──pstree(2902) $ echo $$ 2850 $ sudo kill 2709 #sshdルートプロセスを直接kill! $ pstree -p #抜粋 init(1)─┬ ├─sshd(2845) └──bash(2850) └──pstree(3001)
ルートプロセスのみkillされ、子プロセスは生き残り、切断されなかった。
また、この状態からは、外部からのssh接続はできなかった。
なぜこのような振る舞いになるのか?
この現象はsshdの振る舞いと言うより、Linux/Unixのプロセス管理が関係している。
Linux/Unixでは親プロセスが死ぬと子プロセスは「孤児プロセス」として取り扱われる。
孤児となってしまったプロセスは即座にinitプロセスの配下に紐付けられ生き続けることができるのだ。
この動作をリペアレンティングと呼び、カーネルによって行われる。
従来、端末経由で接続し、各種コマンドを利用して作業を行う場合、親プロセスをkillした場合は子プロセスも同時に終了する動作となり、今回のsshdとは異なる振る舞いをする。
この違いはLinux/Unixのセッションやプロセスグループと呼ばれるプロセス管理の仕組みと、端末(ptsやtty)の仕様に関係している。
この辺もまた面白い話があるのだが、長くなりそうなのでまた次の機会にする。
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