【艦これ】暁「一人前のレディ? あぁ、そんなの目指していた時もあったわね」
キィィィ
暁「……ん? 何? あなたまた来たの?」
暁「ここには来ちゃダメって言われてるんじゃないの? 私が怖くないの?」
暁「……怖くないって……何を根拠に……いや、まぁいいわ。適当に座りなさい。コーヒー、飲める?」
暁「あら、ごめんなさい。別に子ども扱いしたわけじゃないのよ? ただ確認しただけ。今淹れるわね」
暁「はい、どうぞ。お砂糖とミルクは……え? いらない? そのまま飲むの? 私と同じブラックでいいの? あっ、そう。まぁ別に止めはしないわよ。オススメもしないけど」
暁「……ふふ、ほら、だから言ったじゃない。苦かったんでしょ? 素直にお砂糖とミルクを入れなさい。というか、あなたくらいの歳でブラックを飲むなんて、どうかしてるわ。もう少し大きくなってからにしなさい」
暁「え? 私はいつ頃からブラックで飲んでたかって? ……正確には覚えてないわ。まぁ、意地はって飲んでたけど、いつもひぃひぃ言いながら飲んでたわ。大人の皆はなんでこんなの飲めるんだろうって思いながらね」
暁「じゃあなんで飲んでたかって? そうねぇ、あなたが先に教えてくれたら教えてあげる。……ふぅん、その方が大人っぽいから、ねぇ……ぷっ、ふふふふ」
暁「あ、ちょ、いじけないの。ごめんなさいね。ちょっと、懐かしくなっちゃって、面白かったのよ」
暁「私もあなたと同じ理由で飲んでたから、ね」
暁「まっ、意地はってブラックコーヒーを飲んで後悔してた大先輩に私が言うわ。もっと大きくなってからブラックコーヒーは飲みなさい。以上」
暁「……ね? その方が美味しいでしょ? うん、素直でよろしい」
暁「というか、あなたそろそろここに来る理由を教えなさいよ」
暁「何もじもじしてるのよ。早く白状なさい。……そうだ、今日教えてくれなかったらもうここには入れてあげない。あと話してもあげない。決めたわ」
暁「…………」
暁「…………」
暁「…………」
暁「あら、やっと観念したのね。さっ、じゃあ教えなさい」
暁「……私とお話がしたいから? それだけ? 来ちゃダメって言われてるのに?」
暁「……呆れた。お馬鹿ねぇ、あなた。そんな理由でここに来るとか……本当に呆れたわ」
暁「それ以外に理由があるって? んー、まぁ確かに冷静に考えたらそれ以外理由なんかないわよね。ここ、何もないし」
暁「まっ、正直嬉しいか嬉しくないかって言われたらうれしいわね。良い暇つぶしになるし。……ふふ、暇つぶしは嫌だって? 何? もっと親密な仲にでもなりたいの?」
暁「図星ね。ふふっ、10年早いわよ、ぼうや」
キィィィ
暁「あら、いらっしゃい。また来たのね。あなたも暇ねぇ~」
暁「それで、今日は何かあったの? へぇ、テストで100点取ったのね。すごいじゃない。偉い偉い」
暁「……え? それだけかって? 当たり前じゃない。それ以外に何しろって言うの? 何もあげられるものなんてないし」
暁「……は? なでなでしてほしい? 私に?」
暁「……あなた。子供ねぇ……私とあなた、背丈はそんなに変わらないのよ? ……そう、それでも私になでなでしてほしいのね。分かったわ。まぁ、頑張ったみたいだしご褒美ね。おいで」
なでなで
暁「ほら、これでいい? え? もっと? ……調子に乗るんじゃありません。もうおしまいよ」
暁「まったく、自分からなでなでを要求するなんてよくできたわね。私なら恥ずかしくてできないわ」
暁「……褒められてる気がする、ねぇ。まぁ、分からなくもないけれど、それを私に要求する思考はよく分からないわね」
暁「ん? 私はなでなでされたことがあるのかって? ……えぇ、あるわよ。いっぱい、ね」
暁「皆私をなでなでしてからかってきたのよ。あの時の私は子供だったから、なでなでされる度に『頭をなでなでしないでよね』ってプンスカしてたのよ。何でかって? 子供に見られてるのが気に入らなかったからよ。子供だったくせにね」
暁「今でも見かけは子供だって? ……あなた最近ちょっと一言多くなってきたわね。出禁にするわよ? ……ふふ、素直に謝られる子、私好きよ?」
暁「何顔赤くさせて勘違いしてるのよ。まだまだあなたみたいなぼうやは私の好みじゃないわよ」
キィィィ
暁「はい、いらっしゃ……ってその小犬どうしたの?」
暁「へぇ、お母さんが買ってくれたの。可愛いわね~ほら、おいでー」
プイ
暁「……むっ、なかなかクールな小犬じゃない。こうなったら意地でもその白いふさふさの毛をわしゃわしゃしてあげるわ」
暁「ほら、ここに美味しそうなビーフジャー……って食いつき早いわね。さっきまでそっぽ向いてたくせに目キラキラさせやがった」
暁「ふふ、ただじゃあげないわよー。ほら、おいしそうでしょー? 欲しかったら……」
暁「わしゃわしゃさせなさーい!」
わしゃわしゃ
暁「ふふふ、ちょろいもんねー。んん? 気持ちいい? 幸せそうな顔してるわねあなた。クールぶってるけど本当は遊んでほしかったんでしょ? あなたに似た子知ってるんだからね私はー」
暁「……ん? どうしたの? あぁ、ごめんね。別に放置したわけじゃないのよ? ほら、なでなでしてあげるからぼうやもおいでー。ほら、よしよし」
暁「そう言えばこの子なんて名前なの? あぁ、ユキちゃんっていうの。良い名前じゃない」
暁「ん? 似た子って誰かって?」
暁「……妹よ……」
キィィィ
暁「あら、いらっしゃ……え? ど、どうしたのよ? なんで泣いてるの?」
暁「大丈夫? 来る途中で転んだの? 違う? じゃあ誰かにいじめられたの?」
暁「……そう、ユキちゃんが……そっか……」
暁「……ほら、おいで? 大丈夫大丈夫。泣く事は恥ずかしい事じゃないの。いっぱい泣いていいから、ね?」
ギュー
暁「……ほら、よしよし。こんなに泣いてくれる飼い主がいるんだもの。ユキちゃんはきっと幸せだったわよ。そうに決まってるわよ」
暁「落ち着いた? ううん、泣きたいときは思いっきり泣いていいの。スッキリしたでしょ? ……いーえ、気にしなくて大丈夫よ」
ぎゅー
暁「今日は随分と甘えん坊さんねぇ。まぁいいわ。大人になったらできない事なんだから、今のうちにギューっとされてなさい。よしよし」
暁「え? なんで大人になったらできないかって。うーん、それわねー、おまわりさんに捕まるからよ。理由は教えません。ヒントは私の見かけ、以上よ」
暁「……え? 生き物は死んだらなんで動かなくなっちゃうかって?」
暁「…………」
暁「正直、分かんない。うん、私にもわからないの。ただ、目を覚まさなくなる。もう、動けなくなっちゃう。それだけが真実でその後どうなるかは、誰にもわからないの」
暁「……お星さまになるのかもしれない。天国ってところに行くのかもしれない。はたまた……何かに生まれ変わるのかもしれない。悲しいけど、それが現実なの」
暁「だからこそ、生き物は必死に生きるの。他の生物の命を奪ってでも、生きるの。そこに生きていたという証を残すために、ね」
暁「……ユキちゃんの事、忘れちゃダメよ? あの子の分まで、あなたは必死に生きて、大人になるの。死んじゃってもあなたの思い出の中にあの子がいる限り、生きていた証は残るわ。忘れちゃ……ダメなんだからね」
キィィィ
暁「ん、今日も来たのね。いらっしゃい。コーヒー飲む? えぇ、今淹れるわね」
暁「はい、どうぞ。……あら、もうブラックコーヒーが飲めるようになったんだ。……今思えば、あなた大きくなったわね。時間経つのって早いわね」
暁「……うん、私の姿は変わらないわ。あなたが大人になっても、わたしはこのまま。……皆が私を魔女って言う理由はそれよ。それなのにあなたは小さい頃からよくここに来てたわよね。一回雨宿りさせたのが運のつきだったわね」
暁「ふふ、冗談よ。それにしてもあなた、本当に暇人よね。その歳になっても毎日くるんだもの。あなた、まだ私の事好きなの?」
暁「そっか。……この口リコーン。……ふふ、冗談よ冗談」
暁「……私の気持ちはどうなんだって? うーん、なんだろ。正直あなたは弟……いや、息子って感じね。恋愛対象では、ないかなぁ」
暁「って、そんな露骨に落ち込まないでよ。しょうがない事なのよ。あんな小さな頃から一緒にいるんだし」
暁「……それでも諦めないって? ……呆れるけど、まぁ好きにしなさいよ。夢見る事は若者の特権よ。私も昔は一人前の……あれ?」
暁「…………」
暁「あっ、いや、何でもないの。ただ……私が小さい頃何を目指してたのかが思い出せないだけ。まぁ、大したことじゃないと思うんだけどね」
暁「……一人前の……なんだっけ?」
キィィィ
暁「……今日も来たの? はぁ……だから言ってるでしょ、私はあなたとは一緒にいられないの。同じ時間を歩むことはできないの」
暁「だからそうやってプロポーズされても答えはNOよ。あなたが歳取っても、私はこの姿のままなの。わかる?」
暁「……何もわかってないわあなたは。あなたがヨボヨボのおじいちゃんになっても、私はこの姿のままなの。……一緒に、死ねないの。それがどれだけ辛い事かわかる? 置いて行かれる気持ちがわかる?」
暁「教科書に載ってるでしょ? ……私は、艦娘っていう存在でね、深海棲艦との戦争で使われていたの」
暁「戦争には勝利したわ。けど、皆死んじゃったの。唯一生き残った艦娘って、一人だけなの。……そう、私だけ」
暁「響も、雷も、電も……みんな……いなくなっちゃったわ。司令官も、私を置いて行ってしまった。もう……あんな体験、したくないの……」
暁「……思い出だけが残ってるのに、会えない。話せない。……辛いわよ、本当に」
暁「…………それでも、諦めないって?」
暁「……あなた、酷い人ね。……いいわよ、そこまで言うなら……結婚してあげるわ」
暁「けど、一つお願いがあるの」
暁「あなたが死ぬ前に、私を殺して。約束よ」
暁「……大丈夫? ほら、横になってなさい。大丈夫よ、私はここにいるわ」
暁「ほら、手、握ってるでしょ? ……しわくちゃな手ね……私も、こうなりたかったわ」
暁「ん、なぁに?」
暁「……ふふ、私の事愛してるって? ……うん、知ってるよ。ずっとずっと、聞いてきたからね」
暁「……私も好きよ。愛してるわ、あなた。……えぇ、おやすみ」
暁「…………」
暁「君は僕にとっての、最愛のレディだった、か」
暁(……あぁ、そうだった。今思い出したわ)
暁「一人前のレディ。そんなものを目指していた時期もあったわね」
暁「……さて、これを飲めばいいんだったわね。こんなもの開発しちゃうなんて、私の夫は皆すごい人ね」
暁「……やっと、皆の所に行けるんだ。……ありがとう、私の夢を、叶えてくれて」
ゴクリ
暁「…………終わらせてくれて、ありがとう」
おわり
元スレ
【艦これ】暁「一人前のレディ? あぁ、そんなの目指していた時もあったわね」
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【艦これ】暁「一人前のレディ? あぁ、そんなの目指していた時もあったわね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1477353170/
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けどあの見た目で陸奥並のお姉さん口調が想像できない