時雨「流れ星に願い事」
【艦これ】武蔵がチャリで来た
加賀「乳首相撲です」
【艦これ】ウ○コマン あるいは(提督がもたらす予期せぬ奇跡)
た だ い ま
弾ける筋肉、迸る汗、涙は見せないわだって男の子だもん。一年振りの新作です
・提督の表記は『( T)』となっています。今更元に戻せませんし
・下ネタ表現は控えめです。少なくともDVD買ってまで観たピンク・フラミンゴよりは控えめです。本当に
・提督はドウェイン・ジョンソン並みのマッスルです。親潮出ました
時雨「流れ星が、綺麗だったんだ」
隣に立つ彼女は、目の前の光景を見てポツリと呟いた
時雨「だから、僕はお願い事をしたんだよ」
時雨「子供が七夕の短冊に書くような、稚拙で無邪気なお願い事さ」
響く悲鳴、怒号、泣声
この世のものとは思えない、惨状
時雨「それが……まさか、こんな事になるとはね……」
彼女は口元を手で抑え、俯いた
泣いているのだろうか?いや、違う
長い付き合いだ。彼女のことは実の娘のようによく知っている
彼女は……いや、こいつは
( T)「なにわろてんねん」
面白がってやがる。今の状況を
鎮守府にオマール海老が大量発生した、このトラブルを―――――
時雨「流れ星に願い事をしたら鎮守府にオマール海老が大量発生した」
.
( T)「スヤスヤ!!スヤスヤ!!」
まぁ、朝だよ。非番だった俺は惰眠を貪りながら『今日は貧乏神がでも読むか』とか考えてた。夢の中で
夢の内容が『いや、はやて×ブレードも捨てがたいなぁ』辺りに流れた頃かなぁ
扉<バキィィィィーーーーーヤァァァン!!!!
自室の扉が鍵ごとぶっ壊される音で目が覚めたんだ
もうヤダ、今月に入って三回目。あのさぁ、お前ら俺のプライベートな空間にどんだけ入り込みたいんだよと
時雨「提督!!起きてよ提督!!」
犯人は、我が鎮守府一番の問題児『時雨』
ワンシーズンに一回、俺の枕にいくらをギッチリと詰める時雨だ
想像してみろ……風呂入ってさぁ寝ようと枕に頭を埋めた瞬間、プチプチといくらが潰れる音と共に中の粘液で髪がドロッドロになる瞬間を……
( T)「知らん……」
いつものテンションなら、ダブルスピンアームでゲロぶちまけるまでぶん回した後に
スープレックスで海に叩き込むところだが、めっちゃ眠たかったので毛布に潜り込むだけで済ませてやった
時雨「知らんじゃないよ!!大変だよ!!」
ゆさゆさと体を揺さぶられ、俺はようやく異常を察する
いつもなら、ヒップドロップで顔面に突っ込んでくるような奴が、『普通』に起こしに掛かったのだ
だから、渋々起き上がってやった
どれほど深刻な問題かと若干不安に思っていたが
時雨が半笑いなのを見て『ああ別に大したことねえな』と思い、戸棚に置いてあったタバコに手を伸ばす
( T)「で、何が大変なんだよ。金剛のケツが爆発したか?」
時雨「あながち間違っちゃいないよ」
( T)「マジかよ超面白いなそれ」
おおかた、金剛がウ○コ漏らしたとかそんなレベルの話だろうとタカを括り、ジッポの蓋を開けたその時
\オンギャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!/
女子が上げてるとは思えない、きったねえ悲鳴が聞こえてきた
( T)「えっ、何?こわい」
一度は咥えたタバコを、箱に仕舞いなおす
流石に悲鳴聞こえてる中で悠長に吸ってられるほど肝は据わってなかった
時雨「とにかく、来てよ。凄く面白いことになってるんだから」
( T)「待て待て、先にズボン穿かせろ」
時雨「パンツも穿いてよ。どうしていつも全裸で寝るんだい?」
言い忘れていたが、俺は全裸だった
何だ文句あんのかテメー羽衣狐だって全裸で寝てるんだから俺だって全裸で寝てもいいだろうがケツと股間に毛布の感触g(ry
基本薄着でいたい俺にとって、いい季節になってきた
時雨「早くしてよ」ゴソゴソ
( T)「俺のおパンツ棚を漁るな」
時雨「高値で売れるんだよ」
( T)「頭痛が痛い」
今度からクローゼットに鍵を掛けようと、俺のカッチカチのケツのように硬い決意をしつつ
( T)「オラ行くぞ」
時雨「ぐえっ」
時雨の襟根っこを掴んでぶっ壊されたドアから廊下に出る
( T)「ん?」
一歩踏み出した瞬間、『ぴちゃり』という湿った足音に眉を顰める
( T)「何だァ……?」
廊下がビッショビッショに濡れている
スプリンクラーでも作動したんじゃねえかってくらいに
( T)「お前の悪戯か?」
時雨「そんなワケないじゃないか僕基本的に濡れるの嫌いなのに」
( T)「ちょっと普段の言動振り返ってみお前?」
( T)「壁も……窓も濡れていやがる」
結露で生じるそれとは、比べ物にならないほど濡れている
指先で触って嗅いでみると、磯の臭いがした
( T)「海水か?」
時雨「舐めればわかるんじゃないかな」
( T)「ちょっと口あーんして?」グググ
時雨「やめてよ汚いじゃないか!!やめっ……やめろ!!」グググ
割とガチな抵抗をされたので、服の袖で指を拭うだけで勘弁してやった(殴られた)
( T)「で……こいつは一体どういう事だ?」
時雨「それはだね……」
\ンギィィィアアアアーーーーーーーーッス!!!!/
( T)そ「叫び声汚ったな!!汚ッ!!」
時雨「行こう提督!!百聞は一見にしかずだよ!!」
( T)「いつになくテンション高いなお前」
( T)「どうし……た……」
駆け込んだ俺は、その光景に絶句することになる
(;T)「えっ……?」
いつもは清潔に保ってあるその場所が、『赤黒』に染まっていた
しかも、その赤黒は『わさわさ』と動き、床や壁を這い歩いている
二本の大きな『鋏』に『触覚』。滑らかな身体に節足。力強く弾ける大きな尻尾
体長およそ30~50センチほどの、『ロブスター』が洗面所を覆い尽くしていた
(;T)そ「キッモーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
時雨「鈴谷かな?」
(;T)「うるせーよ何だよこれ!!なんでこんなロブスターが湧いてんだよ!!」
時雨「ロブスターじゃないよ。オマール海老だよ」
(;T)「それ一緒だからな!?呼び方違うだけだからな!?」
金剛「ンギャアアアアアーーーーーーッス!!!!!」
(;T)そ「うわっ!?」
一際大きなロブスターの山から、金剛の叫び声
見えるのはこう、頭に着いている艦橋っぽい髪飾りだけだ
(;T)「金剛!?」
そこを引っ掴み、むりやりロブスターの群れから無理やり引きずり出した
(;T)そ「うわっ!!めっちゃ挟まれてる!!おい時雨手伝え!!」
時雨 ピピッ カシャッ
(;T)「撮っとる場合かーーーーーーーーーーー!!!!」
時雨「アハハ」
(;T)「アハハじゃねーーーーーーーーーよ!!!!!!」
体の到る所を挟んでいるロブスターを引っ掴んでは放り投げる
金剛の寝巻きはズタボロボンボンで、下手したら普段の大破姿よりも露出度が高い
これセクハラ案件じゃね?裁判官さん俺は無実だ
(;T)「金剛!!おい金剛!!」
金剛 ブクブク
気絶した金剛は白目を向いて泡を吐く。やべえよ美少女がしていい顔じゃねーよ
時雨「厄日だね。それより提督、移動しないかい?」
時雨「矛先が……よっと、こっちに向きはじめているし」
足下にやってきたロブスターを蹴飛ばし、時雨が提案をした
視線を上げると、金剛を襲っていた大群がこちらへと徐々に距離を詰めて来ていた
時雨「こういうの好きでしょ?」
(;T)「好き……だけどぉ!!」
金剛を担ぎ上げ、足早に洗面所を去る
(;T)「うわわわわ」
移動速度こそ遅いものの、ロブスターも追ってきていた
節足動物が大量にいるのってすげーキモい
時雨「提督提督」
(;T)「何!?」
時雨「焼きにする?蒸しにする?」
(;T)そ「お前あの現場見てロブスター食う算段してんの!?」
時雨「オマール海老」
(;T)「どっちでもいいわ!!何その謎のこだわり!?」
神経の図太さに呆れ返っていると、今度は食堂の方面から悲鳴が上がる
時雨「心当たりがあるよ」
(;T)「マジか!?」
時雨「大マジ」
(;T)「そりゃ、どういう……」
と、そうこう言っている内に食堂へと辿り着く
(;T)「……」
そりゃもうすげえ有様だった
洗面所なんかとは比べ物にならないほどのオマール海老(一々訂正されんのもめんどくせえのでこう呼ぶ)が
所狭しと占拠していたからだ。わっさわさと
鳳翔「この!!この!!」
中華包丁を手に、新聞紙でゴキブリ叩き潰すかのようにオマール海老を叩き斬る鳳翔さんや
叢雲「ええいもう面倒くさい!!」
自身の得物を振るい、応戦する叢雲がいる中で
那珂ちゃん「ヤバいよヤバいよいたたたたた!!」
出川バリのリアクション芸を見せる那珂ちゃんや
加賀「……」ボリボリ
豪快な踊り食いを披露する加賀など
さながらモンスター・パニック映画のワンシーンのような光景が広がっていた
現実味の無いその現場に、脱力して金剛を落としてしまいそうに―――――
金剛「ぎゃふん!!」ビターン!!
ごめん、落としちゃった
時雨「流れ星が、綺麗だったんだ」
( T)「いやゴメンちょっとその話後にしてくれる?」
呑気かよこいつ
時雨「だから、僕はお願い事をしたんだよ」
時雨「『お腹いっぱいオマール海老が食べたい』って」
( T)「やっぱ続けろ」
全然関係ない話かと思ったら原因やっぱりこいつかよ胃が痛い泣きそう
時雨「ほら、この前提督とオマール海老食べに行ったでしょ」
( T)「俺が連休中に一人で羽を伸ばそうと街に行った時にお前がこっそり車に乗り込んで着いて来た時な?すげービックリしたからね俺」
時雨「楽しかったね」
( T)「思い出話は今いいから」
( T)「どうせなら世界平和とか願っとけば良かったのに」
時雨「世界平和で僕のお腹が膨れるのかい?」
( T)「身も蓋もねえこと言うなよ」
時雨「ま、供が七夕の短冊に書くような、稚拙で無邪気なお願い事さ。どうせ世界平和なんて願ったって永遠に叶いっこないんだから」
( T)「世界平和を願う善意ある人達が暴動起こしかねない発言だなオイ」
時雨「それが……まさか、こんな事になるとはね……」
時雨「いやもう笑うよねwwwwwwマジでwwwwwww」
( T)「なにわろてんねん」
『オマール海老の味が忘れられない時雨が、流れ星に願ったら叶っちまった』と
まぁ、流石にこんなクソ映画みたいな叶い方するとは本人も想定していなかっただろうが
とにかく、先ずはこの混乱を収めないと
叢雲「ちょっとアンタ!!今度は何やらかしたのよ!!」
(;T)「いや俺ェ!?何一つ関与してねえよ!!とりあえず避難するぞ!!」
金剛「うう……フェイス痛ぇデース……」ムクリ
時雨「あ、起きた。金剛、この光景について一言」
金剛「ワッツ……オンギャーーーーーーーーーッス!!!!!」バターン!!
金剛 ブクブク
(;T)「あーもーめんどくせえ!!!!!」
( T)「長門、金剛運べ!!鳳翔さんは包丁置いてくれ!!加賀は食うのやめろ!!」
長門「心得た!!」
鳳翔「無理です!!」
加賀「お断りします」ボリボリ
(;T)そ「うわぁ長門以外聞き入れてくれねえ!!何でもいいから避難だ避難!!急げ!!」
食堂にいた面子は、それぞれ近い出入り口から外へと出る
中には、足腰が抜けた奴もいたが、他の連中の手を借りつつなんとか脱出していた
( T)「叢雲!!点呼とっとけ!!俺は建物内に残ってる奴がいねえか確かめに行く!!」
叢雲「了解……っと!!」
最後に一薙ぎして自身も窓から脱出した
鳳翔「すみません提督……食料庫だけは死守しようと思っていたのですが……」
俺たちがいる廊下側の出入り口から出てきた鳳翔さんが頭を下げる
身体中に染み付いた体液が、オマール海老との壮絶な戦闘を物語っていた
( T)「こんな状況、普通は想定できねえよ。先ずはわが身を守るのが先決だ」
加賀「そうね。それに、食べ物ならいくらでもあるから」ボリボリ
( T)「いや恐いから生きたままオマール海老食うのやめろ」
( T)「今まで色々と怪奇現象に巻き込まれてきたけど、ここまで大規模なの初めてでどうすればいいかわからない」
長門「しっかりしてくれと言いたいが……柔軟に対応されても気味が悪いな……」
どこの世界にオマール海老の大量発生に柔軟に対応出来る人間がいるんだよ
もし出来る人がいたら当鎮守府までご一報願いたい
時雨「僕が提督の初めてを奪ったんだね……」
( T)「はいはい初めて初めて。はじめて記念日。2009年4月1日より2013年3月29日までフジテレビ系列で放送されていたムーニー提供の育児情報番組」
時雨「クソ提督っ」ゲシッ
( T)「蹴んな。おっと、とりあえず移動すっか」
食堂のオマール海老がわさわさと迫ってきている
加賀は足下まで近づいた一尾を拾って、頭から齧った。ほんともうやめてほしい
加賀「気分が高揚します」ボリボリ
( T)「全部食っていいよ」
時雨「ダメだよ僕のも残しといてよ」
( T)「食えよそのまま」
時雨「無理に決まってるじゃないか。バケモノじゃあるまいし」
加賀「は?」
すまん加賀、否定できねえ
( T)「さすが相棒、仕事が早い。そうするか」
長門「我々はどうする?」
( T)「長門はとりあえず金剛を外まで連れ出してくれ。鳳翔さんと加賀は放送室に行って緊急連絡を頼む」
鳳翔「承りました」
時雨「僕は?」
( T)「おめーは俺と一緒に救難者探しだよ」
時雨「めんどくさ……どうして朝っぱらからこんな謎の仕事こなさないといけないのさ……」
( T)「ホントになぁ。誰の所為だろうなぁ」
いや一概にこいつの所為と決まったわけじゃないけど
もうちょっと申し訳なさそうにしろよ。俺の堪忍袋の尾だって切れるんだよ?
長門「気を付けてな。海老如きにやられるタマでは無いと思うが」
加賀「鎧袖一触よ。心配要らないわ」ボリボリ
長門「あ、ああ……今ほどそのセリフがしっくり来る場面はないな……」
ドン引き長門と、食うのやめない加賀と包丁を手放さない鳳翔と別れ
俺と時雨は寮の方へと歩を進めた
( T)「そうは言ってもなぁ」
時雨が言うには、奴らは水周りに集まっているそうだ
排水溝とか昇って侵入してきたのだろうか
( T)「水周り……んっ?じゃあ先に風呂場見に行った方がよくね?」
時雨「いいの?多分、食堂とか比べ物にならないと思うよ?」
( T)「うわーこえー……入渠中の奴とかいたっけ?」
時雨「……」
( T)「なんだよその無言こえーよ……まぁ、見るだけ見てみるか……」
踵を返し、風呂場兼入渠ドッグへ向かう
最近は派手に出撃していないから、朝から風呂に入っている奴はいないと思う。思いたい
時雨「朧ってさぁ、蟹飼ってるじゃない?」
( T)「うん」
時雨「オマール海老にすり替わってて気付いてなかったら、クソ笑うよね」
( T)「いや気付くだろ……デカさが違うだろデカさが……」
( T)「……」
時雨「何を立ち止まっているのさ?入るよ」
( T)「性別の分厚い壁が遮ってんだよ」
時雨「どうせ勃たないでしょ」
( T)「お前に言っても無駄だとはわかってんだが、モラルって知ってる?」
時雨「オマール海老が大量発生している時にそんな些細なこと気にしている場合かい?」
( T)「お前……正論言えるんだな……もっとすげえ馬鹿かと思ってた……」
時雨「シバくよ?」
女湯の暖簾をくぐり脱衣所へ
( T)「うわっ、結構いるな……」
時雨「本番はこの先だからね。あっ……」
( T)「どうした?」
時雨「服……置いてあるね」
戸棚にはいくつかの制服が乱雑に放り込まれている
やっべえ誰か入ってるじゃねえか
時雨「匂い嗅ぐなら今がチャンスだよ?」
( T)「それこそモラル以前の問題だろうが。やっぱすげー馬鹿だった」
時雨「決めた。後で絶対にシバく」
( T)「おうやってみろや小娘。おーい!!大丈夫かー!!」
浴場から返事は無い。代わりに、擦りガラスの向こう側で何かが蠢く気配がした
( T)「性別の壁とか言ってる場合じゃねえな……」
時雨「しまった……僕としたことが……」
( T)「どうした?」
時雨「もっと性能のいいカメラを持ってくるべきだったよ。携帯だとどうしても撮れる範囲が狭まるからね」
( T)「没収」バッ
時雨「何すんのさ!!」
( T)「こいつを俺のケツに挟まれたくなかったら大人しくしとけ」
時雨「提督は艦娘の携帯をお尻に挟んで興奮する系の変態……?」
( T)「すげーやこいつ何言っても動じねーわ」
没収した携帯をポケットにねじ込んで、引き戸に手を掛ける
一呼吸で心の準備をし、そして――――
( T)「お邪魔します!!!!!」ガラッ!!
開け放った
開けた瞬間、足下に流れ込んでくるオマール海老の群れ
浴場では、俺の膝くらいの高さにまで大量に積みあがっている
時雨「エグっ……」
何言っても動じない時雨が引くレベルだ
(;T)「ああああああああああ!!!!!気持ち悪ぃぃぃいいいいいいいいい!!!!!」
スウェット越しにわさわさと動く節足の感触が寒気を誘う
膝下でこれなら、今風呂に入ってる可能性がある三人は一体……?
(;T)「クッソ!!江風!!嵐!!うーちゃん!!生きてるか!!!!」
三人の姿は見えない。見えないっつーか視界をオマール海老が埋め尽くしててヤバイ
俺の語彙力もヤバイ
時雨「提督!!アレ!!」
(;T)「なんっ……あれは!!」
時雨が指差す先には、見覚えのある髪の色
(;T)「卯月か!!」
時雨「若干色被っているからわかりにくいけど、多分そうだよ!!」
(;T)「本当だ!!つーか三人とも赤基調の髪色じゃねーかそりゃ見つけづれーわ!!」
恐らく、あの位置は浴槽だろう
出入り口から若干距離がある。救出には、このオマール海老のプールを渡らないといけない
(;T)「迷ってる場合か!!行くぞ!!」
時雨「提督、待って!!」
(;T)「なんだ!!」
時雨「オマール海老の握力は、およそ五百キロある。これが何を意味するかわかる?」
(;T)「五百……?いや、すげー痛い、とか?」
時雨「それもあるけど……ブフッwwwもの凄く頭の悪い答えだねwwwwwwww」
( T)「俺がテメーの頭をオマール海老以上の力で締め上げる前にさっさと意味を言え」
時雨「提督のオチ○コが……」
時雨「ちょん切られるかもね☆」ニコッ
時雨「舐めるんじゃない?セクハラだよ提督!!」
めんどくせえので、シカトして浴場へと足を踏み入れる
裸足なのがネックだ。摺り足でなんとか掻き分けながらゆっくりと進む
(;T)「うおお……」
今の所挟まれはしていないが、甲殻類特有の冷たい硬さがなんとも不気味だ
この世で最も恐ろしい暴力は、多数で少数を嬲ることに尽きる
数さえ集まれば、蟻ですら象を殺せるのだ
だからこそ、卯月を引っ張り上げるのが恐ろしい
この髪の先に繋がっているのが、『頭』だけだなんて考えたくは無い。ゲロ吐く
艦娘って頭だけになってても高速修復剤ぶっ掛けたら治るん?手足生える?ナメック星人みたいに
(;T)「オルァ!!」ヌポンヌ!!
浴槽付近に到達した俺は、卯月が埋まっていそうな辺りに目星をつけ腕を突っ込む
なんかこういうシーン、『SAW』かなんかでありそう。恐くて観てないけどあの映画
(;T)そ「ッ!!」
細い腕を掴む感触。ここにいたか
頼む、『腕だけ』とかブラック・コメディみてーなパターンだけはやめてくれ余裕で泣く
(;T)「おっも……!!」グググ
大量のオマール海老の重さだろうか。流石の95万提督パワーを誇る俺も手こずる
だが、俺をただの海軍超人だと思うな。瞬間最大7000万提督パワーを発揮する奥の手がある
卯月の手が、手首が、肩が、徐々に浮かび上がる
卯月「」
顔も確認できた。白目剥いてる
金剛もそうだが、艦娘は何かあったらすぐ白目剥く性質なのだろうか
これで下半身無いとかワンパターンなホラー系なろう小説みてーな展開はやめてくれ半年は引きこもる
(#T)「艦娘……一本釣りじゃい!!」グワッ!!
勢いを乗せ、一気に引き抜く。すると
卯月と江風と嵐と沢山のオマール海老「」スッポンポーーーーーン!!!!!!
芋づる式に、身体中をオマール海老で彩った三人が引きあがった。ちょっとお得感があって、ステキね!!
お互いに手首を繋ぎあって離れ離れにならないようにしていたらしい
気絶していてもこの連帯感、訓練と指導の賜物だな。俺の提督道、やっぱり間違ってなかった!!
(;T)「なんて呑気なこと考えてる場合じゃねえ!!時雨、投げるから受け取れ!!」
時雨「三人いっぺんに!?」
(;T)「いっぺんにだ!!」
時雨「僕、駆逐艦だよ!?包容力に自信ないよ!?」
(;T)「お前に包容力?ブヘッwwwwハハハwwwwwwwあるわけねーじゃん笑わせんなこんな時にwwwwww」
時雨「は?じゃあ見せてあげるよ僕の絶大な包容力にビビッてチビるんじゃないよ提督!!」
さぁ、今からお見せしますはキン肉マン48の殺人技。その№1『宇宙旅行』
(#T)「死ねオラァ!!」ブォンッ!!
時雨「死ねオラ!?」
気合の掛け声と共に、出口へとぶん投げる
艦娘の扱いが荒いって?この異常な非常時に優しく紳士に振舞える奴がいたら、そいつもうサイコパスだよ
サイコマンだよ完璧超人始祖だよマグネットパワー使ったときは驚いたね俺も
時雨「おぶうぇあ!!」ガッシィィン!!!!
おお、受け止めやがった。オッサンみてーな声出して受け止めた
( T)「トゥーーーーーー!!!!!」バッ!!
跳躍、空中で一回転決め
( T)「スタッ!!」スタッ!!
脱衣所に着地。我ながらキマり過ぎている
着地の擬音を声に出したのは可愛さアピールだ
好きなんだろ?俺みたいな可愛げのあるマッチョがさぁ!!
時雨「重い……よいしょ!!」ゴッシャ!!
( T)「おいお前降ろす時に嫌な音したぞ」
時雨「三人同時に投げる提督よりマシだよ!!軌道がライナー気味だったじゃないか!!」
( T)「いや……そういう技だし……」
時雨「このバカ!!」
( T)「ハハハ、アイアンクローの餌食となるがよいぞ」グググ
時雨「ああああああああああ!!!!???」ギチギチギチ
( T)「アホなこと言ってねーで脱出するぞ。ここはもうダメだ」
この場で介抱するのは、ちょいと危険すぎる
浴場にいるオマール海老の群れがなだれ込んでくると、流石の俺も対処しきれない
( T)「服とバスタオルだけ持って来い。ああ、あとそこの高速修復剤も三つ」
時雨「全く、艦娘使いが荒いったらないよ」
三人を両脇に抱え、脱衣所を出る
両手一杯の衣服とタオル、そして高速修復剤を携えた時雨も後に続いた
( T)「部屋の中は比較的安全なんだったな?」
時雨「多分ね。水道が通ってない所なら尚更だと思うよ」
( T)「医務室が理想だが、洗面台があるな。ここから一番近くて、それなりに広い部屋は……」
時雨「提督の執務室かな」
( T)「お前の部屋だな」
時雨「……」
( T)「……」
時雨「間をとって金剛の部屋にしよう」
( T)「よし」
( T)「よし、いねえな」
時雨「三人の体にはまだ沢山ついてるけどね」
( T)「なんかもう腋の下がすげえ気持ち悪い。バスタオル敷いて窓開けろ」
時雨「了解」
バスタオルの上に三人を寝かして、オマール海老を引っ掴んで窓から投げ捨てる
挟まれた部位には痣や傷が出来ているが、軽傷と言える範囲だ。持ってて良かった高速修復剤
( T)「……なぁ、時雨」
時雨「何?エ口いことするの?眠姦?」
( T)「なんでお前一々一言多いの?いや、さっきの話なんだが」
時雨「どの話?」
( T)「オマール海老の握力だ」
ハサミの力は五百キロあると言った。人間の握力でも八十あればリンゴを握りつぶせる事を考えれば、凄まじい力だろう
しかし、それだけの力があるにも関わらずこの軽傷
そして、さほど抵抗することなく体から離れる手ごたえの無さ
どうにも、違和感を覚えた。オマール海老の目的が『捕食』や『殺害』であるならば、この三人は更に痛々しい姿になっていたはずだ
( T)「手を抜いている……つーか、遊び半分?っつーか……」
時雨「僕に食べられに来たんじゃない?」
( T)「何その献身?なんか手塚治虫のブッダで似たようなエピソードあったな……」
時雨「徳が高くて可愛いからね僕は」
( T)「ああ、悪徳がな」
時雨「まぁ、確かにね。襲い掛かってくるにしても、攻めが中途半端……見てよこれ」
時雨は江風の身体に纏わりついたオマール海老を両手に持つと
右手を俺の方へ、左手を江風の鼻に近づけた
時雨「僕も一つ、可笑しいなと思ったことがあるんだよ。提督、ハサミに指を近づけてみてくれないかい?」
( T)「えっ、やだよ痛いもん」
時雨「腰抜け」
( T)「やってやろうじゃねえかこの野郎」
恐る恐る、ハサミに指を伸ばす
那珂ちゃん並みのリアクションの準備をし、激痛に備えた
が
( T)「挟ま……ない?」
ハサミは大きく開け放たれたまま、閉じる気配が無かった
時雨「で、こっちは……」
左手のオマール海老は、江風の形の良い鼻をギッチギチに挟んでいる
もうちょっと挟む箇所考えてやれよ妹だろ
時雨「今だってそう。まるで『見えていない』かのように、攻撃する気配を見せない」
時雨「これは何を意味しているか……そう、導き出される答えは一つ」
時雨「提督が全裸でオマール海老のプールに入っても、オチ○コは切断されない……!!」
( T)「すげえ真面目な話かと思って聞いてやったら結局下ネタに落ち着くのかよどうしようもねえ時雨だなお前」
だが、結構重要な情報じゃないかこれは?
攻撃対象が『艦娘』のみに絞られている……って、ことか?
しかしオマール海老が何故……?
時雨「なんだかとっても誤解を招く物言いだね」
( T)「まぁ……現状で全裸だから、オマール海老引き剥がしたとしても言い訳はできねえな……」
時雨「据膳食わねばなんとやらだよ提督」
( T)「この状況だと据膳じゃなくて火事場泥棒に近いだろ……」
美少女が三人、全裸で寝転がっていると言っても
白目剥いて気絶している今の状況は、例えるならまな板の上で死にかけてる鯉みたいなものだ
興奮する……?しないだろ?普通なら。しない……よな?俺間違ってないよな?
( T)「服着せてからにしない?これ絶対俺が怒られるパターンだろ」
時雨「大丈夫だよ。提督はホモだってしっかり教え込んでるし」
( T)「それの何が大丈夫なの?」
マッチョ=ホモか暴漢という風潮、どうにかならないのかと頭を悩ませつつ
時雨と共に高速修復剤の蓋を開けた
ウチで扱っている高速修復剤は、飲用するタイプだ
量はワンショットグラス程度。一息で飲むことが出来る
服を脱いで風呂に入らなければならない入浴剤タイプと比べて、出撃回転率を大幅に上げることが出来る
味はなんか……こう……わからん……蝉?蝉っぽい味だった
江風「うわっ!!蝉っぽい味!!」ガバァ!!
嵐「まっず!!蝉っぽい味!!」ゴバァ!!
卯月「蝉が口に飛び込んできたぴょん!!」ヨッコイショィ!!
( T)「蝉食ったことねえだろお前ら」
時雨「提督はあるんでしょ?」
( T)「あるよ」
時雨「引くね」
( T)「何も言い返せない」
江風「時雨姉k……提督!?」
卯月「蝉……もしかして、飲み込んじゃったぴょん!?」
( T)「ああ、うん。各々言いたいことは分かるが、とりあえず服着ろ。なっ?」
時雨「安心して、股座は無事だから」
( T)「余計な一言入れるのやめない?」
何一つありがたくねえ艦娘生着替えから目を背け、窓の外を確認する
投げ捨てたオマール海老は、わさわさと動きながら海の方面へと向かっている
と、ここで館内スピーカーから臨時放送を知らせるチャイムが流れた
『緊ボリボリ連絡、緊急バリバリ絡ボリボリ。現在、ロブスターが鎮守府内を占拠中の為、速やかにボリバリ難するボリボリ。繰り返す……』
江風「なンだこの放送……?」
卯月「鳳翔かーちゃん、お煎餅でも食べながら喋ってるぴょん?」
( T)「加賀だよ……」
避難する必要があることさえ理解できればそれでいいんだが、俺の頭痛は増すばかりだ
嵐「えーと……のぼせた、とか?」
江風「時雨姉貴がまた浴場を吹っ飛ばした?」
卯月「またウ○コマン絡みかぴょん……」
( T)「オーケー、誰一人覚えてないな」
時雨「ある意味幸運かもね」
( T)「いいか、気をしっかり持って聞けよ?」
( T)「かくかく、しかじか!!」ドドッド!!
時雨「それで何もかも伝わるわけが……」
嵐「な、なんだって!?鎮守府にオマール海老が攻めてきた!?」
江風「そンで、朝から風呂に入ってたアタシらが大群に襲われてた!?」
時雨「あったよ。理解力凄いね君ら」
卯月「全然わからなかったぴょん……」
時雨「それが普通だよ落ち込む必要ないよ」
( T)「現場見たら余裕で発狂すると思うぞ」
時雨「SAN値がガリガリ持ってかれるね」
江風「なーンかどっかで似たような話聞いたことあるようなー……うーんと確かドラム缶と蟹を……」
( T)「その話、絶対朧の前でするなよ?泣くから」
卯月「はぁ~~~~……とんだ災難だぴょん……」
嵐「ごめんってうーちゃん」
江風「泣くなようーちゃん」
時雨「提督がピザ奢ってくれるってうーちゃん」
卯月「ならよし」
( T)「状況は理解したな?じゃあ外に避難するぞ。ピザは奢らん」
卯月「ケチ!!」
嵐「水虫!!」
江風「痔!!」
時雨「ホモ!!」
( T)「お前ら全員窓から放り出すぞ」
姦しい四人組を引き連れ、金剛の部屋を後にする
若干生臭さが残ってしまったかもしれないが、後でファブればいっか
( T) <ウィイイイイイイイダバダバドゥ!!!!
( T)「なんだ今の音」
時雨「僕の携帯のライン通知。返して、ほら早く」
( T)「そんなテンション高い通知音があるのか……ほらよ」※ないです
時雨「あと、提督がラインを見ないから二度手間になったって怒ってる」
( T)「携帯置いてきたからなぁ……残りの三人はこっちで見つけたっつっとけ」
時雨「提督のオチ○コは無事っと」スマスマ
( T)「余計な情報を送らんでいい」
被害はゼロでは無かったが、深刻な事態はとりあえず防げたらしい
いや鎮守府が海老に占領されてる時点でかなり深刻だけど、海老に殺された奴とかがいなくてよかったなぁっていうそんな感じのアレだ察しろ
江風「なぁ、時雨姉貴」
時雨「なんだい?耳から海老の幼体でも零れ出た?」
江風「いや怖ェよ!!そうじゃなくて、アレさぁ!!」
江風は廊下の奥を指さす
江風「あそこ、妙に暗くねえ?」
嵐「それに……なんだ?変な音もするよな?」
確かに、その場所だけ不気味な暗闇に染まっていた
外は晴天であり、窓から日の光が差し込んでいるにも関わらずだ
嵐「なぁオイあれって……」
ほどなくして、俺たちはその暗闇の正体に気づいてしまう
(;T)「やべえ……」
『オマール海老』だ。それも、これまでとは比較にならない量の
それが、雪崩のようなスピードで此方へと向かっている
(;T)「走れェッ!!!!」
江風「ウッソだろ!!」ダッ!!
卯月「」バターン!!!!
時雨「うーちゃんがSANチェック失敗したよ!!」
(;T)「いや無理もねえわめっちゃ怖いもん!!」
気絶した卯月を抱え、全速力で逃げる
一体どこにこんな数が隠れていたんだよアレに押しつぶされたら流石の俺も一溜りもねえぞ!!
嵐「これどこ向かえばいいんだーーーーーーーーーー!?」
(;T)「外ーーーーーーーーーー!!」
江風「外ってどこーーーーーーーーーーーー!?」
(;T)「外は外だァァァーーーーーーーーーー!!!!!」
やべえ、俺を含めた全員がパニックで頭回ってない
窓ぶち破って逃げるって手もあるが、強制スクロール並みの圧力で迫るオマール海老はその余裕も与えてくれそうにない
時雨「そっち行き止まり!!」グイッ!!
江風「ぐえっ!!」
T字路で右へ進もうとした江風の首根っこを時雨が引っ掴み方向転換させる
カッコカリ済みだけあって、窮地に強い。アホだがこういう時は頼りになる。アホだが
(;T)そ「うわーーーーーーーーーー!!!!もう追いつかれるじゃねーーーーーーかーーーーーー!!!!!」
角を曲がったあたりで一度後方を確認すると
もう目と鼻の先……この場合ケツの先とでも言おうか。ケツの先ってなんだよ
手を伸ばせば届きそうなほど近くに、オマール海老の波は迫っていた
(;T)「畜生……時雨ッ!!」
脱出には間に合わない。卯月を時雨に任せ俺が体を張って時間を稼ごうとした時
夕張「提督ッ!!こちらです!!」
長門「飛び込めェッ!!」
廊下の先、防火扉の前で夕張と長門が待ち構えていた
夕張の手には、見覚えのある『大砲』が握られている
夕張「上手く避けてくださいよォ……」
夕張「対テラフォーマー及び提督用発射式蟲獲り網!!てー!!」
大砲から射出されたのは、いつかの乳首相撲事件で苦しめられたあの強靭な網
(;T)そ「危なッ!?」
ヘッドスライディング気味に防火扉の先に飛び込んだ俺たちの頭上を通り抜け
オマール海老の波を僅かな時間だが食いとどめた
長門「フンッ」バァン!!
その隙に長門が防火扉を閉める。直後、大群が鉄製のそれにぶち当たる音が響き渡った
しかし、押し破るほどの力は無いらしい。俺たちはなんとか危機を脱することが出来た
江風「し……死ぬかと思ったァ……」
卯月「」
時雨「あんなに食べられないよ……一匹か二匹でいいんだよ……」
(;T)「アレをみてまだ食う気あるお前の根性すげーよ……」
シートベルトなしのジェットコースターに乗った気分だ。ちょっと足腰に力が入らない
これが夢じゃなくて現実だってのがタチ悪い。いや悪夢みたいな現実はここじゃ日常茶飯事なんだが
(;T)「何にせよ助かったぜ……ありがとよ」
長門「ああ、貴様から連絡が返ってこないので、叢雲が迎えに行けとうるさくてな……立てるか?」
(;T)「大丈夫だ。それより、卯月を頼む」
長門の手を借りずに、なんとか立ち上がる
怪我の功名とはこのことか。初期艦兼副指令には頭が上がらない
( T)「つーか夕張、それまだ持ってたんだな」
夕張「自室にあったのを引っ張ってって……これのことお話ししましたっけ?」
( T)「気にすんな。風の噂で聞いただけだ」※
※加賀「乳首相撲です」参照
長門「その筈だ。遠征で出張ってる奴ら以外は揃っている」
夕張「そうそう、青葉さんが何かヒントを掴んだらしいですよ?」
( T)「マジ?解決するこの事件?」
夕張「それは……あの……提督の頑張り次第じゃ……」
(;T)「夢なら覚めてくれ~~~~~~~~……」
時雨「ところがどっこい……夢じゃありません……!」
時雨「現実です……!これが現実……!」
( T)「とにかく、そのヒントとやらを聞きに行くか」グググ
時雨「頭割れる頭割れる頭割れる!!!!!」ギチギチギチ
夕張「仲良いですねほんと……」
( T)「お前もやってやろうか?」グググ
時雨「痛いたいたーーーーーーい!!!!!」ギチギチギチ
夕張「いえ結構です」
青葉「あ、司令官。まだ生きてたんですね」
( T)「残念ながらな。張り倒すぞ」
青葉「今度は何やらかしたんですか?」
( T)「なんでお前ら何でもかんでも俺の所為にするの?」
午前八時前、避難時集合場所では様々な格好で連中が待機していた
茶碗を持ってる奴もいれば、寝間着姿で枕抱えている奴もいる
加賀はまだ食ってた。底なしかよあいつ
青葉「青葉も古株の一隻ですけど、まさかロブスターに襲撃される日が来るとは思ってませんでしたよ」
( T)「ほんとになぁ……」
時雨「オマール海老」
青葉「えっ、どっちでも良くないですか?」
( T)「しつこいから合わせてやれ。それで、何か手がかりを掴んだと聞いたが」
青葉「これを」
青葉が差し出したタブレットを受け取ると、ニュースサイトが表示されていた
肝心の内容はと言うと
( T)「『○○鎮守府、謎の襲撃により壊滅。敵の正体は海洋生物か』……?」
青葉「これが一か月の記事です。そしてこちらが……」
青葉が画面をスワイプする
青葉「二週間前」
今度は別の鎮守府が壊滅した記事
青葉はもう一度画面をなぞる
青葉「三日前」
また別の鎮守府の記事
(;T)「いや……お前これ……」
青葉「気づかれましたか?近づいてるんですよこれ」
各拠点を潰しながら、謎の敵はこちらへと近づいている
そして今日、奴らの目標は『ここ』となったわけか
(;T)「ッ~~~~~……こんなもんどうしろっつーんだよ……」
青葉「建物にガソリンブチ撒いて燃やしますぅ?」
(;T)「それは一応最終手段だ!!」
時雨「燃料の臭いが付かない方法にしてよ」
青葉「食べる気なんですか?」
時雨「食べないと嘘だよ」
( T)「真実とは一体……」
( T)「食堂、風呂場から戦艦寮にかけては制圧された。出撃場と工廠はどうだ?艤装を着けて機銃でぶっ殺せば……」
青葉「ダメですね、真っ先にやられてます。オマール海老にしては計画的過ぎますよ」
(;T)「工廠、入渠、出撃場と……主要設備は全て抑えられたってのか……」
時雨「遠征班の帰還を待てば?補給しなくてもある程度の弾薬は残ってるでしょ?」
青葉「それも手ですが、物量で押し切られる可能性もありますしねえ……」
しかし、やはり作為的なものを感じる。つーか作為しかないこれ
『鎮守府を潰す』。その行為にメリットがあるのは間違いなく敵の深海棲艦だ
しかし、何故わざわざオマール海老にその役目を……?
青葉「もう艦隊のバキューム車こと加賀さんに全部食べてもらえば……」
時雨「ダメだよ僕の分も」
青葉「いや食べたらいいじゃないですか今なら食い放題ですよ」
時雨「調理しないと無理……」
青葉「食い気の割に繊細ですね時雨さん」
( T)「なんか……昔こういう展開をパワーパフガールズで観たんだよ……」
青葉「えっ、そんな可愛いアニメ観てたんですか司令官」
( T)「いや意外と……グロいんだよパワパフは……」
時雨「展開って?」
( T)「で、唯一の倒し方は『食べる』ことで、街の子供たちと協力して全部食って解決するんだよなぁ……」
青葉「じゃあもう食べるしかないじゃないですか……」
( T)「つっても、この人数であの量食いきるのに何日掛かることやら……」
時雨「売れば?大儲け出来るよ」
( T)「それd……いやダメだ密漁で引っかかる」
時雨「向こうから来たんだからノーカンでしょ?」
( T)「誰が信じるんだよオマール海老が向こうから捕まりにやってきたなんて与太話」
時雨「爆笑だね」
( T)「なにわろてんねん」
その時
\ドォォォォォオオオオン!!!/
時雨「うわ何」
青葉「地震ですかね?」
地響きが鳴り響いた。方面は海、港湾の方面だ
その場にいた全員が、一斉にその方向を目にする
(;T)「な……何だアレは!?」
建物越しに、ひょこりと二本の赤い『アンテナ』のようなものが忙しなく動いているのが見える
その謎の物体に、青葉も時雨も目を奪われている中
俺は加賀の手に持つ『モノ』をみた
赤黒い甲羅、忙しなく動く節足、大きな鋏
そして、二本の『触角』
青葉「司令官!?」
(;T)「ここにいろ!!」
時雨「もちろんお断りだよ!!」ダッ!!
青葉「好奇心抑えきれませんでした!!」ダッ!!
(;T)そ「お前らホント俺の言うこと聞かねえなぁオイ!!」
時雨と青葉を始め、興味を惹かれた連中がわらわらと着いてくる
何?気ぃ使って待機命じた俺がバカみたいじゃん。やだ……アタシ今顔真っ赤!!
青葉「司令官、アレってもしかして……もしかしたりします?」
(;T)「もしかしたりするだろうよ……この状況なら!!」
時雨「ツインテールだね?」
(;T)そ「違ッげーよ!!なんでこの状況でウルトラ怪獣思いつくんだよお前!!」
青葉「えっ……?」
(;T)「『違うの?』みてーな顔してんじゃねーよお前もォ!!何?俺が間違ってるの!?」
どうしよう……本当にツインテールだったら俺どうしよう……ウルトラマンって電話で呼べる?
(;T)「バッ……嘘だろ……!?」
青葉「……」カシャッ
時雨「えっと……アレって……」
時雨「ツインテールじゃ、無いよね?」
(;T)「見りゃわかるだろ……ツインテールにあんなデカい鋏ついてるか?」
それは、超巨大なオマール海老だった
頭部だけでも優に十五メートルほど、全長は計り知れない
二つの鋏は、それ一つだけで自動車を両断できるほどの大きさだ
青葉「……今週の青葉週報の一面は決まりですね」カシャッ
(;T)「撮っとる場合……い、いや、ビデオも撮っとけこんなもん一生お目に掛かれねえぞ」
時雨「これ……何人前になるのかな……?何百人前?」
(;T)「もうこれ捕食される側じゃなくてする側だろ……」
呆気に取られている俺たちを知ってか知らずか、巨大オマール海老は節足を港湾に掛け、上陸しようとしている
その侵攻を目の当たりにしても、正直な話俺たちに止める術はない。こんなもんマジでウルトラマン案件だろ
青葉「司令官って確か……ニンニクで巨大化出来ましたよね?」
(;T)「キン肉マン並みのマッスルなのは否定しないが、生憎俺の産まれ故郷は地球だからな……」
青葉「なんでキン肉星出身じゃないんですか……?」
(;T)「無茶言うなよ……」
朝日は遮られ、この場にいる三人を影が包み込んだ
ポタリ、ポタリと垂れる海水が顔に付着した時、俺たちはようやく
(;T)「さ……避けろォォォ!!!!!」
自分たちの危機を自覚することが出来た
青葉「うわっ……わわわ!!」
ほどなくして振り下ろされる、甲殻に覆われた巨大な筋肉の塊
青葉と時雨を突き飛ばし、俺は反対側に飛んで逃げる
轟音と共にコンクリートが砕け散り、破片と共に風圧が襲う
(;T)「死……死ぬやつじゃねーか完全に!!!!!!」
青葉「ばな……打っだ……」ダラダラ
時雨「ちょwwwwwww鼻血wwwwwww鼻血出てるよwwwwwwwwブフォwwwww」カシャッ
青葉「後でジバぐ……絶対にジバぎまずがらね……」
青葉マジごめん。後で箱ティッシュやるから
(;T)「せめて戦車的なものがあれば……!!」
時雨「ガルパンかな?」
(;T)「どっちかっつーとゴジラだよ!!」
シン・ゴジラは七月二十九日に全国公開だ。俺は別に観に行かない
それよりデッドプールだ!!!!!!!六月一日から全国の劇場で上映されている!!いいか!!4DXで観に行け!!
後から着いてきた連中も、巨大オマール海老を目撃してしまう
叢雲に至ってはなんか太陽に咆えろで殉職した刑事みたいなリアクション取ってる。お前……死ぬのか……?
(;T)「あぶねえから離れてろ!!」
青葉「ッ!!じれいがん!!」
(;T)「ッ!?うおおォ!?」
後続に気を取られた隙に、オマール海老の巨大鋏が大股開いて近づいていた
回避は間に合わない!!だったら……!!
(#T)「ンダラァ!!!!」ガシィッ!!!
鋏を両腕で抑え込む。人類最強レベルのマッスルを誇る俺だから出来る芸当だ
だが、耐えるので精一杯だ。逃れることが出来ない。少しでも力を抜けばギチギチに挟まれてしまうだろう
青葉「じれ……」
時雨「はいティッシュ」
青葉「どうも……」フキフキヂーン!!
青葉「司令官!!さっきの記事なんですが!!」
(#T)「何だ……ッ!?」
青葉「襲撃された鎮守府の提督は、全員が体を凄まじい力で捩じ切られて絶命されているそうです!!」
(#T)「ああそうかいありがとうよ!!今一番聞きたくなかった情報だわ!!」
人生の終わりをそんな壮絶に迎えてたまるか。そういうのは映画の中だけで十分なんだよ!!
武蔵「オウ!!任せておけ!!」
鎮守府怪力自慢二隻が手助けに入ろうとするが
その行く手を、小さな(通常サイズの)オマール海老の大群が遮った
長門「なっ……どこから!?」
武蔵「ええい、鬱陶しいぞ!!」
(#T)「クソ……!!」ギギギ……
どうやら、どんな手を使ってでも俺をぶっ殺したいらしい
人間サイズなら地獄の断頭台であの世に送ってやるところだが、こんなデカい相手にプロレスもクソもねえ。せめてサンシャインサイズで来いよ
(#T)「手詰まりか……!!」
鋏の範囲が、徐々に狭まっていくのがわかる
通常サイズで五百キロの握力だ。それがこれほど巨大になると、どれほどの力が掛かっているのだろうか
線路上に子犬が飛び込んできた時を想定して鍛えている俺でも徐々に追い詰められている。お前ならこういう時どうするんだテリー!!俺を導いてくれテリー!!
時雨「世話が焼ける提督だよ全く……!!」ダッ!!
(#T)「時雨……ッ!?」
オマール海老(通常)に行動を制限されていない時雨が、此方へと向かってくる
オマール海老(巨大)はそれを見逃さない。空いてる鋏を広げ、時雨を挟もうと迫る
時雨「僕を捕えようだなんておこがましいよ!!」ザッ!!
それをスライディングで避ける。捕える相手を失った鋏は
(;T)そ「うおっ!?」
もう片方の、俺を捕えている鋏と衝突した
一時的に力が緩む。抜け出すには十分な隙だった
(;T)「いっ……てえけど助かった!!!!」
時雨「膝擦りむいた……」ヒリリン
(;T)「無茶するからだろ……あーあ大丈夫だ唾つけときゃ治る!!」
時雨「根拠のない民間療法なんてアテにならないよ……」
(;T)「無責任なこと言ってごめんな!?」
露骨にテンションが下がった時雨と共に、巨大オマール海老と再び対峙する
先ほどまで俺を真っ二つにしようとしてた鋏は最早使い物にならない。関節が逆方向に曲がり、力なく横たえている
しかし決定打にはならない。もう片方は無事なのだ、十分に俺たちをぶっ殺せる威力はある
(;T)「オマール海老の弱点って……なんだと思う?」
時雨「自然界だと……タコに食べられるのが一番の死因だって言われてるね」
(;T)「そうか……あのサイズを平らげるタコが必要なんだな……」
時雨「そうなると完全にB級映画の世界だね……っとと!!」
横薙ぎに振り払われた鋏を、バックステップで避ける
(;T)「チッ……せめて艤装が使えりゃ……」
時雨「艤装……」
時雨「あっ」
あった。一人だけ、この場で艤装を持っている奴がいた
( T)「叢雲ォ!!」
叢雲「はっ、へっ?」
時雨「槍貸して!!」
この場に置いて、唯一武器と成りうる『近接艤装』。叢雲の持つ槍だ
だからと言ってこれが決定打になるとは言いがたいが、無いよりマシだろ!!なぁ!!
叢雲「ッ~~~……ええい、受け取りなさい!!」
叢雲は一瞬考えたが、槍投げの要領で穂先をこちらに向け勢いよく投げた
なんでこっち向けるの?ねえ?
(;T)「危なッ!?」サッ
時雨「怖ッ!?」サッ
結果、反射神経が働いてしまい受け取れなかった
叢雲「どーして避けるのよ!!」
(;T)「アホかぁ!!すげー勢いで飛んでくる槍なんて普通避けるわァ!!」
時雨「完全に殺す気だったよね!?」
では、飛んで行った槍の行方はどうなったのか?
青葉「いい判断ですよぉ、お二人とも」パシッ
( T)「あっ……」
時雨「あっ……」
青葉「格闘も剣術も矛術も……そして槍術も」
我が鎮守府が誇る最高練度艦、青葉の手に渡った
あっ、終わった。オマール海老終わった
青葉「青葉にお任せェッ!!」ゴウッ!!
龐煖と対峙した時のブチ切れ王騎将軍並みの気合と迫力で、オマール海老(巨大)に突貫する
表情はいつもの天真爛漫な笑顔ではなく、悪魔に支配されたバッファローマンのような形相をしている
オマール海老(巨大)は標的を青葉に替え、鋏を振り上げた
青葉「隙だらけですよォ!!オマール海老さんンンン!!!!」
( T)「なんかマジに王騎将軍に見えてきた」
時雨「槍なら王賁でしょ」
青葉の狙いは、鋏の奥。オマール海老(巨大)の懐
奴は決して俊敏ではない。重巡洋艦のスピードなら、余裕で潜り込める
そんな遅い奴に捕まった俺の立場は正直アレなんだが、艦娘だから仕方ない
青葉「セイッ!!」
なんかワチャワチャしてる腹部に槍を突き刺し、縦に切り裂く
体液が溢れ出て、まっさらなセーラー服を派手に染め上げたが、本人は気にするそぶりも見せずもう一撃突き刺す
青葉「手でも足でも、出せるもんなら出してくださいよォォォオオオオオ!!!!!!」
( T)「かわいそう」
時雨「敵でも同情するね」
生命の危機を察知し海に逃げようとするオマール海老(巨大)にも、スイッチが入った青葉は容赦しない
傷口に腕を突っ込み、槍を短めに持ち体内へと掘り進めていく
(;T)「いやオイ青葉!!」
時雨「海に逃げられるよ!!」
青葉「構いません!!ここで決着つけます!!」
ガルパン最終話の西住(妹)かよとツッコミ入れる間も無く、青葉とオマール海老(巨大)は海中へと消える
(;T)「マジかよいくらソロバンの狼と呼ばれててもここまで深追いするか普通!?」
時雨「ソロモンね。それだとめちゃくちゃ計算早い人にしか聞こえないよ」
(;T)「っべえ素で間違えたわ……」
正直どっちでもいいけど、青葉の安否は心配だ
海中は奴のホームグラウンドだ。アトランティスなら水中でアトランティスドライバー決める場所だ
死に物狂いの動物ほど、手強いものはいない。振りほどかれてしまったら、青葉は対抗できるのか?
海の中は、いつも通りの深い群青色で、様子を窺うことが出来ない
それほど深く潜ってしまったのだろうか。クソ、体を張ってでも止めるべきだったか……?
時雨「……爆雷でも投げ込むかい?」
(;T)「青葉に当たったらどうすんだよ……」
( T)「ん……?」
オマール海老(通常)が、一匹、二匹と海へ帰っていく
後ろを振り返ると、長門達の行く手を遮っていたオマール海老の群れが、俺達には目もくれず海を目指して歩いていた
長門「無事か!?」
( T)「ああ、俺らはなんとか……だが青葉が……」
叢雲「私の槍がぁ……」
( T)「いやそっちの心配?」
叢雲「青葉なんて殺しても殺しても生き返ってくるんだから心配するだけ損じゃない……」
( T)「もう禁断の石臼は悪魔将軍によって潰されたから生き返らねえよ……死んだら人はおしまいなのだ……」
時雨「超人か何かかな?」
長門「提督よ、この状況どう見る?」
( T)「どうってお前……良い流れだとは思うよ」
オマール海老が、次々と海へ飛び込んでいる
問題が勝手に解決しているのだ。万々歳と言えるだろう
(;T)「しっかし、原因がわからないまま終わるってのも、後味が悪いって言うか……」
時雨「ねえ、提督」
( T)「どうした?」
時雨「あのさ、海面が……盛り上がっているように見えるんだけど、気の所為かな?」
( T)「盛り上がってる……な?」
確かに、海面の一部が変態仮面のおいなりさんのようにもっこりとしている
変態仮面アブノーマル・クライシスは現在全国の劇場で上映中なので観に行ってほしい
つーか日本産変態仮面とアメリカ産変態仮面(デップ)の実写映画が同時期に上映されてるって結構な奇跡じゃね?
( T)「……あっ」
(;T)「今すぐここを離れろお前ら!!」
長門「な、何なのだ?」
(;T)「もうすぐここに……」
瞬間、盛り上がった海水が『爆発』した
飛び出してきたのは、青葉と共に消えた巨大オマール海老
あのもっこりは、海中から海面まで急上昇した為に生じたモノだった
(;T)「ッ……ワケは以上だ!!逃げろォ!!」
宙に浮かんだオマール海老が、重力に従い落ちてくる
やはりデカい。全身が露わになるとその大きさを更に感じられる
それが、上から降ってくるんだから堪ったもんじゃねえ
多量の海水を雨のようにまき散らし、ゆっくりと放物線を描きながら港湾へと落ちてくる
俺や時雨の傍にいた長門と叢雲、そして遠目から見ていた他の連中も、全員が蜘蛛の子散らすように逃げていく
(;T)「うおおおおおおお!?」
時雨「わああ!?」
俺と時雨が、その巨大すぎる姿が作った影から飛び出した直後
逃げ遅れたオマール海老(通常)の群れを大勢巻き込みながら、地鳴りと共に強かに全身を陸へと打ちつけた
(;T)「……考えうる中で最悪の部類に入るクッションだな」
時雨「クッションしてくれてないよ……」
(;T)「それより、青葉は!?」
打ちあがったオマール海老(巨大)は、弱弱しく手足をバタつかせている
最後の抵抗と言うよりは、活き作りにされた魚介類の筋肉収縮による反応のように見える
時雨「……食べられた、とか?」
(;T)「艦娘って食えるのかよ……お前らの主成分ってアレだろ?資材だろ?」
時雨「ごめんまさかそういう返事が返ってくるとは思ってなくてさすがの僕も多少困る」
すると、オマール海老(巨大)の頭部が『ガツリ』と音を立てた
時雨「……?」
(;T)「……」
音は、二度三度と続けて鳴り、四度目になると
『パキリ』と甲殻が割れ、『バリバリ』と突き破って
青葉「うえっ、ペッ!!生臭っ……」
オマール海老の体液やら身やらで全身ドロッドロの青葉が出てきた
青葉「あ」
その光景にドン引きしてる観衆を前に、青葉は
青葉「と……」
青葉「獲ったどー……」
ある意味、この場面に一番合った決め台詞を言い放ったのであった
―――
―
( T)「結局、こいつらは何のために鎮守府を襲ってたのかね……」
蒸し上がったオマール海老(巨大)の身を、ナイフとフォークで切り分けながら今回の疑問を口にする
体内に潜り込んだ青葉に内臓やらなんやらをグチャグチャにされた巨大オマール海老が息絶えた後
鎮守府を占拠していたオマール海老(通常)の殆どは海へと戻っていった
しかし、それでも大量のオマール海老が建物内に残っていたため、今日はこうして掃除も兼ねてオマール海老パーティをしている
いや、おそらくしばらく主食はオマール海老になるだろう。なんたって食糧庫がこいつらによって食い荒らされていたのだ
食った分は、文字通りその『身』で返してもらわないとな
青葉「原因も不明ですし、この巨大オマール海老がどうやって発生したのかもわからず仕舞いですしねえ」
怪獣レベルの生き物を一人でぶっ殺した末恐ろしい女は、写真に収めたオマール海老(巨大)の映像を眺めながらフォークを口に咥え弄んだ
そういや今俺らが食ってるこれ、人をぶっ殺してんだよな……まぁ、余計な事考えるの止そう……飯が不味くなる
時雨「はのほほきはほふぁーるふぇひふぁら、ふぁふぁらはふふぉふぁいよ」
青葉「口の中のモノごっくんしてから喋ってください」
時雨は口いっぱいに海老を頬張っている。ほんとこいつ良い根性してんなオイ
時雨「ングッ……あの大きなオマール海老なら、わからなくもないよ」
青葉「ほんとですかぁ?」
時雨「オマール海老って、寿命が無いんだよ」
時雨「海外では、1.2メートル越えのオマール海老が捕獲されていて、推定年齢はおおよそ120歳だって」
時雨「寿命が無いんなら、あれだけ大きくなるまで生き続けられるオマール海老がいても、不思議じゃないよね?」
( T)「これが不思議じゃなかったら他の何が不思議なんだよ」
青葉「何事にも限度ってあるでしょうよ」
120年で1.2メートル。じゃああれだけデカくなるまで何百年掛かるんだよ下手すりゃ恐竜いた時代まで遡るぞオイ
専門家を呼ぶかっつー話もさっきしたが、めんどくさいので結局内密に処理(食べる)ことにした
時雨「じゃあオマール海老の死因は何か?今朝も提督には言ったけど、外敵による捕食か、脱皮の失敗によって死ぬケースがほとんど」
時雨「この事について専門家はこうコメントしている。『残念ながらお前らは美味い』ってね」
そこまで話すと、時雨は俺の皿から切り分けた身を奪い取り、すぐさま口に入れた
いつもならジャイアントスイングでミスミスと回してやるところだが、今回は食っても食っても減らないので大目に見てやろう
( T)「ま、考えるのもクソめんどくせえし、時雨理論で巨大海老の謎は解けたとして」
青葉「暴論にもほどがありますけどね?」
( T)「そうだけど、結局真相を知ってるのは『こいつ』だけじゃねえか」
と、一口サイズにまで小さくなった『こいつ』を口へと運ぶ
うん、美味い。推定ウン万年の重みを感じる。つーかすげえ罰当たりなことをしているようでならない
( T)「通常サイズの奴らは艦娘だけを襲っていたしな。『こいつ』は俺を殺そうとしてたが」
時雨「なんだっていいじゃないか。こうしてお腹いっぱいオマール海老を食べられるんだから」
( T)「お前なぁ……」
時雨にとっちゃ、今回のトラブルは願ったり叶ったりと言った所だろう
流れ星に願い事。まさか、本当にご利益があるとはな
時雨「んー♪」モグリッシュ
だが、ここまで大規模なのは勘弁してほしい。俺もそう流れ星に願いたい気分だった
時雨「次は松坂牛をお腹いっぱい食べたいなぁ」
( T)「やめろ」
しばらく、星は流れて欲しくない
おわり
元スレ
時雨「流れ星に願い事」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464825792/
時雨「流れ星に願い事」
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