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EC動向定点観測~物流編~

年末商戦の結果を左右する物流体制の整備 6月からおせちの注文受付を始めるケースも

 EC事業者が押さえておきたい最新動向を、ジャンル別にお届けする「定点観測」。物流編では、株式会社オープンロジの伊藤秀嗣氏が解説します。今回は、物流「2024年問題」が本格化して見えてきた課題と、それを乗り越え年末商戦に打ち勝つポイントをお伝えします。

前回の記事はこちら

2024年問題の影響を楽観視していないか

 物流「2024年問題」が本格化してから数ヵ月、どの程度のEC事業者が影響を実感しているだろうか。EストアーがEC事業者を対象に2024年5月に実施した調査によると、64%が2024年問題への対策として「顧客に対して、送料の値上げを実施する(検討中を含む)」と回答したほか、43%が「送料無料(売主負担)となる購入金額を引き上げる(検討中を含む)」、20%が「運送会社を変更する(検討中を含む)」と答えている。伊藤氏はこの結果に対して「部分最適な対策にとどまっている点で、まだまだ危機感をもっていないEC事業者が多いのではないか」と指摘し、「大手小売やメーカーはいち早く対策を行ってきた」と話す。

「生活に直接関わる商品を販売している大手小売やメーカーは、消費者に影響が出ないよう早い段階で物流体制を見直していたのでしょう。たとえば、セブン-イレブンはAIが需要予測と店舗内の在庫数を加味して発注数を提案する『AI発注』を数年前から導入し、店舗への商品の配送回数を減らしても供給量に影響が出ないよう準備を進めてきました。また、ローソンも、2024年1月に元々固定していた車両台数を物量に応じて柔軟に変更できるよう体制を整えると発表しています」

 加えて、昨今、大手メーカー間で見られるのが、競合他社や異業種との共同配送だ。サントリーホールディングスとダイキン工業は、鴻池運輸とNEXT Logistics Japanの協力のもと、お互いの商品を往復輸送する取り組みを2024年7月にスタートした。関東から関西へはサントリーホールディングスの商品、関西から関東へはダイキン工業の商品を輸送し、積載効率を上げる考えだという。

「物流の効率化に向けた施策は、過去データから無駄を洗い出し、各社のシステムや商品特性、物流現場の状況などから、最適解を見つけ出す必要があります。その上で、取り組みの開始前に実証実験を重ねることを踏まえると、2024年問題が注目を集める以前より、各社が水面下で準備を進めてきたのでしょう」

 大手小売やメーカーが協力体制を敷いて対応する中、2024年問題による影響はEC事業者にも着実に近づいている。前回、伊藤氏はドライバーの労働時間短縮による委託費の高騰と、宅配料金への転嫁の可能性に触れたが、それが現実味を帯びてきた。現時点で大きな影響が出ていないからといって、楽観視はできない。

 実際、西濃運輸は2024年5月に複数荷主の荷物を混載して定期便で運行する「特積み」の運賃の引き上げを発表している。事業者間の取引だけでなく、消費者に商品を届ける宅配も対象だ。

「運賃の上げ幅は地域や距離、重量により異なるものの、今後、平均で10~20%は値上げすると考えられます。届け先が遠方や過疎地になるほど、値上げ率も高くなるはずです。

 なお、名鉄運輸は2024年7月5日の日本経済新聞で、運賃について『10〜20%は上げていかないとドライバーを含めた従業員が集まらなくなる』と言及しています。今すぐではないにしても、長距離輸送の費用が上がれば宅配料金に転嫁されることは間違いありません。この流れに追随して、他の物流事業者も運賃の値上げに乗り出す可能性が高いといえます。単に顧客負担の送料を値上げするのではなく、自社の物流体制を俯瞰して効率化できる作業がないか確認しましょう」

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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