険しい音楽ジャンルのキレットをタクミにすり抜け、脈々と受け継がれる謎のジャンル「Gorge」(ゴルジェ)。
今まで、GORGE.INの発表したコンピレーションなどに代表される一部のマニアックなレーベルがオンラインで展開した音源以外には、全国各地の「Bootist」(Gorge界ではアートは禁句?アーティストではなくブーティストと呼ばれるのである)のSHOWCASE的なものは存在し得なかった。視野には入るものの実際に手に感触を感じるようにつかむことが出来なかったのである。
2013年4月4日、ご存知DOMMUNEで衝撃的Gorge SHOWCASEストリームとして語り継がれる"「The Mystery of GORGE/BROADJ♯856」〜ゴルジェ、この呪術的NU GROOVEの神秘…“が放送される。その時のまとめはまだ記憶に新しいだろう。
2013/4/4 ゴルジェ特集@Dommune 反応まとめ - Togetterまとめ
ゴルジェ(Gorge)という現象、そしてそのカルト的熱狂 - インターネットの備忘録
それまで一部の愛好家によって密かに囁かれていたBootistの存在・愛聴されていたGorgeがDOMMUNEで全世界へ向け放映されたこと(俗にいうG−Shock)により、各地の潜在的Bootistを呼び起こすことになり、Soundcloudを中心に活動が活発化してくる。そのまま2回目のDOMMUNEではMOODMAN氏を迎えたGorge特集、そしてFreeDommuneでのGorge SHOWCASEへと発展する。
さらに、2013年9月25日の『ROCK MUSIC』発売である。
国内最先端Bootistであるhanaliのフル・ゴルジェアルバムが全国のCDショップに並んだことで、人々は初めて自らの手でGorgeを掴んだ。
その衝撃のほどは、ミュージックマガジンの2013年クラブミュージック年間ベスト9位に選出されたことが物語っているであろう。
そんな表舞台(?)での評価とは裏腹に、その後も全国各地のBootistは黙々と自らのGorge的クライミングスキルを磨き続け、岩にはりつくように活動を続ける。岩壁での安易な行動は命取りと言わんばかりに。
Gorgeをリリースするネットレーベル・Bootist、One Pusher(GorgeにおけるDJのことであり、私もそのひとりだ)も増え、また各地では「Juke vs Gorge」という新しい紛争が連発。大晦日の『HOUSE OF LIQUIDOMMUNE「JUKE vs GORGE」』では、JukeサイドにEYヨ氏、Gorgeサイドには再びMOODMAN氏を迎え、熱い戦いが繰り広げられた。
2014年に入ってからも、様々なアーティストが独自のフィルターを通したGorgeを表現するなど、より連峰感が増していく。中でも志茂田景樹氏によるGORAP(Gorge RAP)の破壊力は凄まじいものであった。
▶ 今、神が死ぬ / 志茂田景樹 by Bullet’s Nishiazabu
ある種の混沌と乱立の始まりを感じずにいられない「Gorge」に、以前から独自の視点で追い続けていたmelting bot、Gorge作品のリリースも激しいレーベルTerminal Explosion、そしてGORGE.INの3者によりこの夏、Gorgeの「今」の集大成とも言えるべきコンピレーション発売の話が立ち上がった際、GORGE.IN CEOのTakaakirah Ishiiの脳裏に浮かんだのは、かつてのMo'Waxに代表されるフリーキーなキュレーティングだという。
Mo'Waxの新旧入り乱れ感というか清濁併せ呑む感覚は私も当時猛烈にハマっていた。DJ Shadowが表紙の『ele-king vol.14』など一時期オブジェのように部屋に飾っていたものだ。
私の知りうる限りに限定したとしても、現在のGorgeの楽曲群はとてもコンピレーション1枚に収まるレベルではない。その肌感も様々で、いろんなバックグラウンドを持つBootist達によるGorgeを今1枚にまとめると考えると、なにか指針のようなものが必要にならざるを得ない。
Gorgeもまた、新たに発表される音源だけでなく、過去の音源の中に(一部ではゴルいとも称される)Gorge性を見いだし再発掘することで時間軸を無視した増殖を続けてきた。先人たるJames Lavelleの視点こそTakaakirah Ishiiのルーツの一つなのかもしれない。
その発想を基に、今回の『僉(The Bootists) - Selected Japanese Gorge by Takaakirah Ishii - 』を見ると、十分納得の行くセレクトに仕上がっていると思う。
僉(The Bootists) - Selected Japanese Gorge by Takaakirah Ishii -
私もコンピ初回特典として全曲をOne PushしたExclusive Mix(DLコードが初回生産分にのみ同封される)と、以下の全曲カットアップサンプラーを提供させていただいた。Exclusive Mixでは私個人も「今」をOne Pushとしてパッケージングしたつもりである。ぜひCDと共に聴いていただけると幸いである。
一癖も二癖もあるGorgeが集まっており、これがDisk UnionやJet Set、HMVやTower Recordsから皆様の手に届くと思うと興奮を隠し切れない。
同時に、これはGorgeの全てではないということもお伝えしたい。全国各地にいるBootistの音源リリースはとどまることを知らず、これからも増殖し続けていくであろう。今後もOne Pusherとしてその活動を追っていきたいと考えている。
Enjoy Your Gorge!