2016年はメッセージングアプリ飛躍の年とも言われている。ユーザー数でメッセージングアプリがソーシャルを抜いているという推計すら存在するほどだ。
中国では「Wechat(微信)」という先進的なメッセージングアプリが、大国を飲み込むモンスターのごとく成長。また、Facebookはメッセージングアプリ2強の「Messenger(メッセンジャー)」と「WhatsApp(ワッツアップ)」で、インド攻略にかかる。
LINEもグローバル展開の加速に向けて、東京とニューヨーク双方での上場観測が伝えられている。LINEはメッセージングアプリという枠を越えたプラットフォームの構築を急いでいるのだろうか。
2016年はメッセージングアプリ飛躍の年とも言われている。ユーザー数でメッセージングアプリがソーシャルを抜いているという推計すら存在するほどだ。
中国では「Wechat(微信)」という先進的なメッセージングアプリが、大国を飲み込むモンスターのごとく成長。また、Facebookはメッセージングアプリ2強の「Messenger(メッセンジャー)」と「WhatsApp(ワッツアップ)」で、インド攻略にかかる。
LINEもグローバル展開の加速に向けて、東京とニューヨーク双方での上場観測が伝えられている。LINEはメッセージングアプリという枠を越えたプラットフォームの構築を急いでいるのだろうか。
Advertisement
2016年3月17日、同社のコンテンツ配信事業である「LINEメディアアカウントプラットフォーム」に、もとの38媒体(自社4媒体含む)に加えて、ブロック紙・地方紙17メディアを含む22媒体が新たに参画した。同日記者陣に公開されたデータでは、利用者は10代から40代までの女性が多く、参加する新聞社にとっては「足りない層」へのニュース供給が可能になる部分もあるようだ。
「LINEメディアアカウントプラットフォーム」は下図のように、シンプルなフォーマットを採用。媒体社アカウントからユーザーに、この形式でメッセージとして届けられる。媒体社サイドで共通フォーマットのLINE内雑誌を編集。そのうえで、推計によるオーディエンスのデモグラフィックデータを手にできるという。
収益配分に関しては広告収益を50%ずつ媒体社と分け合う形で、広告商品の販売も視野に入れているようだ。媒体社はLINEが設定する「エンゲージメントランク」で好成績を出した場合、より好ましい分配比率を得られるという。今後は別アプリの「LINEニュース」での記事レコメンドや参加媒体の拡充、分析ツールの強化などを進めていく。
LINEのコマース・メディア担当役員である島村武志氏は会見で、アカウントプラットフォームの利点として、以下の点を強調した。
・エンゲージメントが高い
・他プラットフォームに比べ再訪率が高い
・一記事ではなくパッケージで配信できる
・媒体の色が出しやすい
記者会見では、朝日新聞デジタル編集部の奥山晶二郎氏は「女性がユーザーの7割を占めているのは衝撃だが、とがった話題を全面に押し出さないと、埋もれてしまうことが心配になる」と語った。オリコンNewS編集部長の上野拓人氏は、「ヤフー以外にアピールできる場ができた」と評価。加えて、分析ツールの強化と、「より配信プロセスが簡易になれば」と注文を出した。
「現代ビジネス」のエディター、DIGIDAY[日本版]のコラムニストでもある佐藤慶一氏は、「一記事ごとに消費される時代に、8記事パッケージになるので、他と違う戦略に逆張りできる」と語り、配信フォーマットの拡充を求めた。
CPMは最大公約数の情報流通だけを促進する
LINEの島村氏は、DIGIDAY[日本版]の取材に応じ、ニュース事業での戦略を語った。
「ネット上のコンテンツと人をマッチングさせるという部分はまだうまくいっていない。実際は最大公約数的なコンテンツの広がり方が見てとれる」。CPM(インプレッション単価)を取引通貨とした方法では、多くの人が関心を寄せるコンテンツをつくることになるという。
Facebookのシェアはあくまで友だちの承認ありきのもの。「私はF1が趣味だが、Facebookでシェアしても反応がほとんど見られない。そうなると友達に気に入れられそうなものをシェアするようになるでしょう」。誰でも笑えるコンテンツや、かわいい動物の動画が有利になる、情報流通の状況に合わせたコンテンツだ、と島村氏は話している。
ほかにも人々がコンテンツとマッチできない状況はあるという。幼児を伴って外出したときにラーメン屋を探すには、味よりもベビーカーが使えるかが気になる。だが、グルメサイトの星はそのニーズに応えてくれないのだ。島村氏はNAVERまとめでは、「○○なときに訪れたい○○」のような、状況・文脈を提示するよう工夫をした。 これはGoogleのマイクロモーメント的なアプローチだ。
「ネットは発見だった」
手元に存在して即時性に対応できるスマートフォンという環境により、人の行動は一挙に変わったと、同氏は指摘する。だが、ユーザーの行動が検索に直進するとは思わないという。「検索は図書館で欲しい本がわかっているときには役に立つ」と、限定的な状況でのみ良い働きをする、という考え方だ。
「インターネットの面白さとは、こんなふうではなかったはずだ。予期できない何かに出会うというディスカバリーだった」と、島村氏は語る。「日本のブームには常にテレビが関与していた。意図せず、まったく関係ない情報を受取り『ハッ!』となる瞬間がある。それは最大公約数的なコンテンツでは起きない」。
会話+コンテンツの強み、密集地帯で生きるか
米DIGIDAYによると、「WSJ」、「エコノミスト(The Economist)」のような硬い経済メディアが若者にリーチするためにLINEを使い、高いエンゲージメントを得ることができたという。ただし、これはLINE内の指標で測られたという部分もある。
コンテンツ配信・キュレーションのような分野にはヤフー、スマートニュースのほか、Facebook、Googleのようなグローバルプレイヤーまでひしめいている。中高生を中心に日本で抜群のブランド力をもつLINEがメッセージングアプリというコミュニケーションの隣りにいる強みを活かしどこまで食い込めるか。「コミュニケーションとコンテンツは不可分だ」と語っている。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock / GettyImage