「動画リワード広告」とは、スマホのゲームアプリをプレイ中、全画面広告を一定時間表示する代わりに、プレイヤーはゲーム内通貨などのリワード(オマケ)を受け取れるもの。これまで、この形式で出稿されてきたのは、他社のゲームアプリがほとんどだったが、実は一般商材のブランディングの場として大いなる可能性を秘めているという。
「動画リワード広告」は、ブランドにとって、大きな可能性を秘めた場なのかもしれない。
スマートフォンアプリ向けアドネットワークを運営するタップジョイジャパン株式会社は10月12日、東京・渋谷ヒカリエでイベント「アプリ動画広告がブランドにもたらす価値とは?」を開催。そこで、同社アドセールスマネージャーの伊藤真理絵氏は、「ゲームアプリ内の広告マーケットは拡大中、まだまだ余地が残っている」と述べた。
タップジョイなどのベンダーが提供する「動画リワード広告」とは、スマホのゲームアプリをプレイ中、全画面広告(多くは動画広告)を一定時間表示する代わりにプレイヤーは、ゲーム内通貨などのリワード(オマケ)を受け取れるもの(従来の「リワード広告:ブースト広告」とは異なる)。これまで、ここでプロモーションされてきたのは、同じゲームジャンルの他社アプリがほとんどだったが、昨今、一般商材のブランドも増えつつあるという。
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秘められた可能性とは?
その理由として伊藤氏は、アメリカのモバイルユーザーにおけるサービス滞在時間に関する、2013年の調査結果を示す。フルーリーアナリティクス(Flurry Analytics)、コムスコア(comScore)、ネットマーケットシェア(NetMarketShare)が共同で行ったこの調査では、Facebookを含むソーシャルアプリが28%、YouTubeをはじめとするエンタメアプリが8%、そしてブラウジングが14%なのに対し、ゲームアプリが32%も占めている。つまり、スマホに接する時間の3分の1がゲームに消費されていることになる。
「この調査結果は、少々古いものだが、モバイルゲーマーの増加は、勢いが増すばかりだ」と、伊藤氏。さらに、2015年のイーマーケター(eMarketer)による、アメリカにおけるモバイルコンテンツ別のユーザー数増加予測を参照して、こう捕捉した。「2015年には1億6490万人だったゲームユーザー数は、2016年には1億8040万人、2019年には2億900万人まで増えると予測されている」。
ちなみにこの規模は、同調査によるとモバイルの検索ユーザー数とほぼ同程度。Facebookユーザー数よりも約30%多くなっている。
ゲーム大国・日本の面目躍如
加えて伊藤氏は、なかでもゲーム大国・日本は、アメリカ、イギリス、ドイツと比べて、モバイルゲームの利用時間が「異様に長い」と説明。2016年にアップアニー(App Annie)が調査したモバイルゲーム利用時間の国別比較を提示する。
「13−24、25−44、45以上、すべての年代において日本のユーザーは、ゲームの利用時間が他国より圧倒的に長い。自分の国のことながら、『この国は大丈夫か?』と思ってしまうほどだ。おそらくこれは、ファミコンやプレステが生み出された国ということだけでなく、電車通勤が長いという要素もあるからだろう」。
ゲーム内に露出するブランド
そこで、同社が得意とする「動画リワード広告」だ。ゲームサービスの利用者は増加する一方で、滞在時間も他サービスに比べて、圧倒的に長い。アメリカでは、すでに自動車やスマートフォンなどのブランドが、同社の「動画リワード広告」を利用し、一定以上の効果を挙げているという。
また、日本国内においてもダイソンが、話題の新型ドライヤー「スーパーソニック」のプロモーションでタップジョイを利用。テレビCMでも利用していた15秒のクリエイティブを流用したという。
「『動画リワード広告』は、ゲームのプレイを遮る形になるため、はじめはユーザーの理解を得られるか不安を感じた」と語るのは、同イベントに登壇した、ダイソン株式会社のメディアマネージャー井垣麻美子氏。「しかし、フタを開けてみたら、視聴完了率が96.9%、CTRが2%となり、ブランドリフトの効果も高かった」。
「動画リワード広告」の面白いところは、広告を観ることでユーザーも、ゲーム内通貨をもらえるなど、美味しい思いができる点。そのために、15秒から30秒程度の時間を費やすのは、苦でもない。しかも、全画面で表示されるので、ユーザーは自然とそのコンテンツに集中できる。ユーザー体験としては、テレビCMとほとんど変わらない感覚といえるだろう。あとは、クリエイティブの良し悪しで、効果の成否が決まりそうだ。
Google&Facebookと比較して
最後にタップジョイの伊藤氏は、デジタル広告における興味深い資料を示した。先述のフルーリーアナリティクスらの調査でレポートされた、モバイルにおける滞在時間と広告費の比較だ。現在、デジタル広告の過半数は、GoogleとFacebookの2大巨人に占有されている。だが、下記の図を見ると、滞在時間と広告費の支出のアンバランスさが見て取れるだろう。
「Facebookに対する広告支出は妥当なものだとしても、Googleへの支出は、滞在時間からすると多すぎる」と、伊藤氏。「右側のその他アプリすべてが、ゲームアプリということではないが、全滞在時間に対するゲームアプリの占有率を見ると、いかにここに機会が埋もれているかがわかる」。
※追記:ご指摘を受けて、「リワード広告」→「動画リワード広告」と表記に修正を加えました。
Text by 長田真
Photo from ぱくたそ