アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)のソーシャル戦略にとって、インスタグラムのような、ビジュアルを軸としたプラットフォームは、その戦略のコアとなる重要な要素だ。
アメックスでソーシャルメディア・コミュニケーション担当のバイスプレジデントを務めるモナ・ハムリー氏は、米DIGIDAYに対し、大勢の人たちが自分のアメックスカードの写真を喜んでインスタグラムに載せていることに気がついた。そこで、ハムリー氏はこの発見を、「インスタグラムを使ったマーケティング」に活用することにした。
目的は顧客会員がさまざまなソーシャルメディアでつながりをもつことで、同氏の言う「オフライン体験」をオンラインに結びつけていくことだという。これまで、同社は自らを「カード会員」のためだけのブランドと位置づけてきたが、ソーシャルプラットフォームの活用を始めたことで、そこに民主化をもたらしたということだ。
アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)のソーシャル戦略にとって、インスタグラムのような、ビジュアルを軸としたプラットフォームは、その戦略のコアとなる重要な要素だ。
インスタグラムは、アメックスにとってもっとも成長著しいソーシャルプラットフォームとなる。フォロワー数は、直近の四半期で18%増加、過去1年間では倍増して、9万8000人に達した。何が人気を呼んだのか? その要因は、インスタグラムに人々が投稿する「クレジットカードの写真」だ。もちろん、クレジットカードの写真なので、その安全性に関わる情報の公開はしていない。
アメックスでソーシャルメディア・コミュニケーション担当のバイスプレジデントを務めるモナ・ハムリー氏は、米DIGIDAYに対し、大勢の人たちが自分のアメックスカードの写真を喜んでインスタグラムに載せていることに気がついたと語る。これについては、同社のセキュリティ部門も、顧客会員がカードの写真を投稿していることに気付いていたという。会員がSNS上に重要番号を晒していたら、個人情報保護のため持ち主に連絡を取り、新しいカードの発行を促す手続きをしているからだ。
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カード投稿には、平均1000件の「いいね!」
そこで、ハムリー氏はこの発見を、「インスタグラムを使ったマーケティング」に活用することにした。同氏は「奇妙なことに、一番パフォーマンスがいいのが、カードが写った写真だった」と語っている。
つまり、アメックスのソーシャルコンテンツは、かなり明白な形でビジュアル志向を強めているのだ。ハムリー氏によると、マーケティング用のコラテラル(カタログ)を使い回すのではなく、さまざまなソーシャルメディアで、実物のクレジットカードとあらゆるものを視覚的に結びつけるやり方をしているという。
また、「カード・アート」シリーズでは、カードのデザインにアーティストを起用。ソーシャル上でカード・アートシリーズの写真を投稿すると、Twitterのリツイート数が2倍になり、インスタグラムでも「いいね!」の数が2倍になるという。カードが写っている写真には、平均でおよそ1000件の「いいね!」がつく。
投稿のカード番号は、もちろんサンプル
もちろん、アメックスが写真に使うカードの番号はサンプル用で、顧客名は「C. F. フロスト」氏。この人物は、広告代理店オグルヴィ&メイザーの広告担当幹部だった人物で、1960年代にアメックスの広告を担当した。現在は、広告に使われるカードにその名をとどめている。
一方で、Snapchat(スナップチャット)は、まだアメックスの信頼を得られていない。ハムリー氏によれば、カスタマーサービスとブランドメッセージに関して長らくソーシャルメディアの最前線を走り続けてきた同社だが、すぐに消えてしまう同サービスのメッセージプラットフォームはあまり魅力的ではないという。「Snapchatについては、いろいろと議論もしたし、関心もある。しかし、我々は常に『レベルの高い』ソーシャル体験を求めている。現在のところ、Snapchatにはそれがない」。
SNSでもっと親しみやすいブランドに
ハムリー氏が考える「レベルの高い」体験とは、顧客会員がさまざまなソーシャルメディアでつながりをもつことで、「オフライン体験」をオンラインに結びつけていくことだという。これまで、同社は自らを「カード会員」のためだけの高級ブランドと位置づけてきた。しかし、ソーシャルプラットフォームの活用を始めたことで、そこへ民主化がもたらされたということだ。
たとえば、アメックスは「クーポンレス特典」を採用している数少ないブランドのひとつでもある。カードをFacebookやTwitterと同期させた顧客は、「いいね!」やフォローをしたブランドで購入するたびに特典が受けられる。「#AmexWholeFoods」といったハッシュタグをツイートすれば、その店で購入時に特典を受ける権利が得られる仕組みだ。
Facebookもアメックスにとって「いまでも非常に重要」なプラットフォームだ。というのも、Facebookでは動画が非常に高い評価指標を得ていて、現段階でアメックスは動画コンテンツを増やしつつあるからだ。しかし、ハムリー氏によれば、その高い評価指標の背景には2014年から実装された、Facebookの自動再生機能があるという。このことから、Facebookの異様に高い動画の評価指標をほかのプラットフォームの動画指標と比較するのは難しいと語った。ハムリー氏は「(規定改定が多いため)今年と昨年の数値を比較するのはやめた。現時点でできるのはそれが精一杯だ」と述べている。
リーチアウトしていくことも重要
また、YouTube上では、アメックスカード会員「限定招待」のコンサートを、会員でない一般の人も視聴できるように、ストリーミング配信を行った。それから、2015年11月3日、「Airbnb(現地の人が自宅を宿泊施設として旅行者に貸し出すことのできるWebサイト)」との技術協力で新たなサービスも開始。アメックス会員は「Airbnb」において、アメックスの認証情報を使い、アカウントの作成やポイントの獲得、チェックアウトができるようになる。そして、「Airbnb」のホスト側は、「アメックスが認証した」潜在的宿泊客のリストを閲覧できるというメリットが得られる。
ハムリー氏は次のように述べている。「カード会員とのコミュニケーションは非常にうまくいっているが、それ以外の層にリーチアウトしていくことも重要だ。もっと親しみやすいブランドになろうと、全社をあげて取り組んでいるところだ」と、ソーシャルコンテンツ戦略への意気ごみを語った。
Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from American Express Instagram