橋本環奈&伊藤沙莉は例年なら選ばない?紅白司会「異例キャスティング」の真相今年5月にロンドンで舞台「千と千尋の神隠しSpirited Away」の報道イベントに登場した俳優・橋本環奈さん Photo:Dave Benett / Getty Images

朝ドラヒロインが『NHK紅白歌合戦』の司会に抜擢されるのは今や定番となりつつあるが、今年の目玉はその中でも異例の存在だ。2024年の『紅白』では、朝ドラWヒロイン、伊藤沙莉と橋本環奈がタッグを組み、女性司会の新たな時代を象徴する場となるだろう。彼女たちの背景とNHKのキャスティング戦略から浮かび上がる『紅白』の進化について考察する。(ライター 木俣 冬)

『紅白』73年の歴史を塗り替える!?
今年の司会抜擢は“大事件”

 日本の暮れの風物詩『NHK紅白歌合戦』(以下『紅白』)。今年の目玉のひとつは朝ドラこと連続テレビ小説のWヒロイン、『虎に翼』(2024年度前期:4月〜9月)の伊藤沙莉と、『おむすび』(24年度後期:10月〜25年3月)の橋本環奈がふたりそろって司会をつとめることだ。

 これは1951年から73年もの長い歴史を誇る『紅白』の歴史を塗り替えるほどの大事件と言っても過言ではない。

 ちなみに、20年までの『紅白』は紅組と白組に司会が分かれていたが、21年からは司会は紅白に分けないことになったことも歴史的転換点といえるだろう。

 このコラムでは徐々に変わりつつある『紅白』における司会抜擢の流れを見ていく。

『紅白』の司会をその年の朝ドラヒロイン俳優がつとめることは少なくない。その歴史は、1965年、『うず潮』で64年から65年の1年間、ヒロインをつとめた林美智子からはじまった(この頃の朝ドラは1年放送していた)。その後、再び朝ドラヒロインが司会に抜擢されるのは年月を経て1986年『はね駒』の斉藤由貴。さらにまた時間を置いて92年『ひらり』の石田ひかりが続き、彼女は93年と2年連続で担当した。

 朝ドラヒロインがコンスタントに司会をつとめるようになるのは2010年『ゲゲゲの女房』の松下奈緒から。あとに堀北真希、井上真央、吉高由里子、有村架純、広瀬すず……と続々続いていく。

 朝ドラヒロインの『紅白』司会は近年、当たり前に感じられるようになってきたものの、『紅白』放送時に放送中の「○年度後期」と呼ばれる朝ドラのヒロインが司会になることは『ひらり』以来なかった。橋本環奈は、久々に後期朝ドラヒロインとして『紅白』司会に抜擢されたことになる。