Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

私の異常なお見合い・風雲篇 または私は如何にしてEDの誇りを胸に忍者プレイを強要してくるお見合い相手を説き伏せたか

 お見合いから9ヶ月、シノさんとのわけのわからない関係は相も変わらずつづいていて後悔先に立たず僕もまったく立たず現在に至る。シノさんとは春先にお見合いをした25歳の娘さんで興味/戦国武将(西軍派)趣味/コスプレ(コスプレネームはノッピー☆)&ドール(輸送は楽器ケース)のスザンヌ似のDカップ。シノさんとは「オヤカタサマー春日山城ですうー(添付画像:山道)」「草や木が生えてますねー」「どこの城かわかりますかあー(添付画像:石)」「小田原城かなー」「ブー。ヒント2(添付画像:石その二)」「松本城?」「ブー」「飯田橋城?」「オヤカタサマー当てる気あるのですかあ」だからないっつーの、なんてメールのやり取りをしているだけで一ヶ月以上会ってなかったりする。


 で今日の夕方ホームセンターで買ったアイロン台を小脇に抱えながら駅に向かって歩いていると「あらー奇遇ねえオホホ」と声を掛けられて振り返るとシノさんのお母さんがいた。なぜアイロン台を買いに行ったかというとアイロン台が何者かに壊されたからだ。僕はアイロン台をちゃぶ台として使っている。マグカップを置くにもちょうどいいし布が貼ってあって質感がやわらかくてねあのねそのね言いにくいけれど人肌っぽくていいのよ肌寒い秋の日にはいやらしい話ここだけの話。シノママがそんないわくつきのアイロン台をみて言った。「あらーお買い物?」「ええボディーボードを一枚」「さすが湘南ボオイねえ。シノにもボディーボードみたいな若い人がやりそうなことをやってほしいわオホホ」「え?どーいうことです?」。シノママが言うに最近シノさんは日本100名城スタンプラリーをコンプリートするために愛車のヴィッツで走り回っているらしい。だから城の画像がメールで送られてくるのかなるほどね。


 シノママが余計なお節介で携帯ピポパすると白いマスクと黒ニーソのシノさんがやってきた。「ごぶさたですうーかたじけないー」。ああ疲れる。もう日も暮れるし風は冷たいし人が集まるところはインフルエンザこわいから居酒屋へ。とりあえずビール。「全国の城をまわったりしているうちにヤリ友が増えましたー」。ヤリ友!やることはやっているんだなー。「ヤリ友っていうからには会ったらヤリまくりですか」「会ったらヤリヤリに決まってますうー」。中ジョッキ追加。「ヤリ友何人いるの?」「3人ですうー」。いいなあ4P。「今度僕にヤリ友紹介してよー。たぶんね僕に必要なのは刺激だと思うんだ」「オヤカタサマはこけしもつくっちゃうくらい工作が得意だから大歓迎ですうー」工作…俺やるよありえない形状の性具をこの世に召喚してみせるぜ。中ジョッキ追加。「なかなかヤフオクでもいい槍が出回らないから困っていたのですうー無双に出てくるような派手なのじゃなくてもっと実戦的でリアリティのあるヤリをつくらなきゃー」ヤリ=槍ね。齢三十五にして槍つくりサークルに参加することに相成りました。実戦的な槍で政府に謀反でも起こすつもりなのかな。中ジョッキ追加。


 「オヤカタサマー、バイアグラ飲んでますかー」とシノさんがアニメ声をあげた。店員のおねえちゃんと隣のテーブルの四人が一斉にこちらを見る。「シノさん、声をさげてっ」「かたじけないー」。適当に誤魔化すことにした。中ジョッキ追加。「シノさんよく勉強したねえ。バイ=ア=グラっていったらトリプルZガンダムに出てくるモビルアーマーじゃないか。設定上だとブラウ=ブロの後継機っていう設定なのだよ。あんなマニアックなモビルアーマーをしっているなんてノッピー☆やるう」大声ででまかせ。一般市民はガンダムなんて知らない。案の定重力にひかれた愚民共の視線がそれていった。それはいい!「突然なんですかシノさん」「城をまわりながらいろいろ考えたのですうー」。天守閣の上から堀を眺めながらインポに思いを巡らすってどーいう感性なんだろう。知りたくもないが。中ジョッキ追加。


 「忍者は跳躍力を養うために日々空に向かって成長する麻の上を飛んでいたそうですうー」「それと僕の病気とどうつながるのですか」「だから忍者コスをしたわたしが毎日オヤカタサマの上を飛べばオチンチンも空に向かって伸びてくるんじゃないかと思うのですうー」「ええー!なんだそりゃ」忍者が跳躍するから麻が成長するんじゃなくてよ。因果関係おかしいだろ。「わたしは忍者コスを堂々と出来るしキミの病気も治るし一石二鳥でござるよ」もうやめて!僕のライフはもうゼロよ!「無理だよそんなの…出来るわけないよ!」「あなたなら出来るわ…」ああ…セイラさんの憧れの台詞…こんな状況で聞きたくなかった。「あなたというのはやはり…」「キミがあなたですよ…オヤカタサマ…」。すみません水割りください…。「毘沙門天がインポじゃなくなったら萌え萌え要素が減ってしまいますうー」「景勝と兼継をホモらせても障害がないから萌えませんー」水割りのグラスにシノさんの声がキンキンと響いた。僕はグラスについた水滴を指でふきとってどうか何事もなく三途の川を渡れるよう願いながらテーブルに水の六文銭を描いた。シノさんと別れ、よたよたと家に帰った僕を出迎えてくれたこけしのディルド君の笑顔がやけに眩しくて、僕は泣きそうになった。今宵はここまでに致しとうございます。