『新ゲームデザイン』がWebサービス開発の勉強になりすぎて感動した

新ゲームデザイン―TVゲーム制作のための発想法

ポケモンを作ったゲームデザイナー田尻智さんの『新ゲームデザイン』を読みました。この本ってタイトル通り「ゲームのデザイン」が中心に語られているんですが、プロダクトデザインとしても学びの多い本だったので感動しました。

表現と方法

僕はファミコンを買ったのが遅かったので、創世記のゲームを全然知らないんですが、ゼビウスに関するエピソードが一番面白かったです。

ゼビウスの圧倒的神秘的世界を構築するのに、何か超絶的なプログラムテクニックも必要ではなく、どうやらそれらは、別の要素によって、構築されているということが解ってきます。

独創的なイメージが先にあった場合、それを実現する技術力はもちろん必要です。ただ、田尻さんがおっしゃるように大切なのは

表現したいことが先にあって、そこに方法があるということ。

です。目的と手段の話みたいですが、実在するゲームを例にした解説が響きました。

製作者の思想

ここでは「マザー」というゲームを元に、製作者の思想について語られています。マザーは糸井重里さんが作ったゲームで有名ですが、そのラストではバトル中に「うたう」というコマンドが登場して、主人公が歌い続けるうちにラスボスが倒れます。

今聞くと深すぎるコマンドw

僕はここからマクロス的な(この愛、とどきますか)ものを感じたんですが、田尻さんは「これまで時間を掛けて育ててきたキャラ関係ないじゃん!」とフンフンしたそうです。たしかにおっしゃるとおりです。なぜなら、RPGは主人公の成長がベースにあるのでその前提条件が狂うと、ゲーム全体のデザインやバランスがおかしくなってきます。

このへんは今の仕事であるWebアプリの開発やプロダクト開発でも感じる部分ですね。クローズドなサービスなのにパブリックな機能を作ったらユーザが混乱するみたいな。

しかし、月日が経つにつれて田尻さんの意見も変わってきて、「うたう」には別の意味が隠れているのではないかと考え出したそうです。隠れた解釈みたいな感じ。

こういった思想を持った製作者はとても重要で、田尻さんは「純然たる動機」と書いていますが、この動機を保つ人が増えなければ、業界が成熟していかないのではないか? とまで考えいます。

インターフェースデザイン

パックマンの敵の動きは乱数使ってないそうです。なぜ乱数を使わないか? というより使えない理由があります。それはユーザに敵の動きを予測させたいからです。

これも製作者の意図によるデザインの好例だと思います。田尻さんはこう語りかけます。

人があるアクションをしようと思った時に、そこの最短ルートをどのように引いてあげようかという気配りのプロセスがインターフェースデザインの肝です。

1996年の本ですが、書いていることは古臭くない。

また、インターフェースデザインのキーワードとして慣習と効率を挙げています。僕は

  • 慣習は過去から未来にかけて、同じにすることの便利さ
  • 効率はユーザの不便を受けて、改善した結果の便利さ

かなと理解しました。

例えば、本書でも書かれているように、テトリスの操作は慣習です。昔から変わらず十字キーで動かしてボタンで回転させます。どこかで一度経験していれば、テトリス2、テトリス3になっても大体操作できる便利さがあります。これはユーザがゲームを始めるときに、敷居が低くなるデザインです。

ただ、慣習は変化に弱いので、KinectみたいなUIが登場し、これまで体感したことのないテトリスの操作性を実現しても、ユーザが受け入れてくれるわけではありません。これが慣習の難しさです。

効率はそのままの意味ですが、効率が正当なインターフェースを作れるとは限らない点に注意が必要です。ネットなら自宅で買い物ができるのに、リアル店舗での買い物が好きな人が多いように、ある程度の非効率性をユーザが求める場合もありえるからです。

そして、効率は習慣に負けます。どれだけ効率が良くても、習慣を変えるは難しい行為です。

おわりに

本書はすでに廃版のようで、残念ながらAmazonでも楽天(売り切れ? ページが無くなってる)でも高値で取引されています。が! 図書館を探せばみつかるはず。

Webサービスの開発やプロダクト開発といった、何かを創る仕事に関わっている人におすすめの一冊です。さらに、ゲーム好きなら間違いないはず!