下戸につき

「何だよ兄貴、おれだって兄者を抱き締めてもいいだろ。兄貴なんか、いっつも兄者にくっついて独り占めしているじゃないか」

「…っしかし…」

「ははは、仲がいいなあお前たち」

「兄者ぁ。のんきに笑ってないで、兄者も兄貴に何か言ってやってくれよ」

「ちょ、張飛！」

「ふふふ。かわいい義弟二人にこれほどまでに慕われて、わたしは本当に幸せ者だよ」

「…」


　裏表のない心底嬉しそうな長兄の笑顔に、関羽はうっすらと目尻を染めて見入る。

　いい歳をして義弟と張り合うなど、自分らしくない。
　そんなことは百も承知しているが、これだけは譲れない。


（拙者に斯様に子ども染みた独占欲を抱かせるのは、この世で唯一あなただけだ）


　心の中で言い置いて、己の腕に囲う小柄な身体を更に強く抱き寄せた。

---

自分も兄貴みたいに兄者にくっつきたい張飛と、
つい嫉妬して義弟にも触らせたくないと思う関羽と、
二人の間に挟まれて何も知らずににこにこほにゃりと笑う劉備。
萌へ。

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