伊集院光がゼロから学んだUstream配信

22日深夜のTBSラジオ「伊集院光 深夜の馬鹿力」で伊集院光がネットサービスの「Twitter」や「Ustream」について語っていました。

そのトークは一時間以上にも及び、特にUstreamについては自身が生中継での配信を導入したきっかけから、どんな機材を使ってるか、問題点、自身の課題まで、試行錯誤の経過が少しカタいくらいに事細かに説明されています。

今回の更新では伊集院光がそんなUstream配信について学んだ内容について、かいつまんでまとめてみたいと思います。一時間以上のトークなので文字起こしの都合上、語り口を大幅に改変していますがご了承ください。


○Ustream始めました

エレキコミックのやついいちろうさんが、自分の買い物を生中継していたのを見た。

どうやらiPhoneからUstreamの生中継でライブ映像を配信してる。

「おぃUstreamとやらすげーな」と。「オレが放送局」ってことだからね。

Twitterでつぶやいてるいろんな人の話を総合すると、UstreamのソフトをiPhoneに入れると、iPhoneカメラで撮ったビデオが世界中に配信されて、PCから簡単に見られるシステムらしい、と。

それは「おもしろ」に使いたい。ってことで実験を開始することにした。

「自転車で走っている自分の目線の映像を見せる」「2人の若手芸人にiPhone持たせてお互いに東京上を道交法を守りながら追いかけっこさせる。Twitterとかでみんなが道路情報を寄せ合う」などのアイデアがある。

○準備編

「自転車で走ってる自分の目線の映像を見せる」

となれば、まずはiPhoneカメラを自転車に固定したい。最初はiPhoneを持ちながらの片手運転でいいと思ったけど、それは法律的にダメ。

自転車のハンドルにiPhoneを固定する「iCrew(アイクルー)」というiPhone専用のケースをamazonで見つけた。

これが有能なケースでちゃんと考えて作ってある。アタッチメントで取りつけ可能。自転車のハンドルのところにつけて、箱をパコッとあけると、中にちょうどiPhoneがぴったり入る大きさのウレタンが敷いてある。透明のセロファンの小窓があってそこからタッチパネルもいじることができる。雨が降っても大丈夫な防水仕様。

またiPhoneは電源入れっぱなしなので電池を食いやすいんだけど、その対策で充電用のコードが外付けのバッテリーと接続できるようになってる。コードの取り回しがきちんとしてある。これを導入することにした。

iCrew(アイクルー)
MSY 自転車用iPhoneケース iCrew MS-IC01BK



○初めての中継

始める前の準備は今言っただけの手順。極端な話iPhoneを自転車に固定するのはガムテープだっていい。

それでUstreamにつないで、ただカメラ回して、Twitterで「伊集院がライブ配信をはじめますよ」と告知をする。

するとみるみるうちに500人とか見てる状態になった。こりゃすごい! 俺のチャリからの目線をみんなが見てる。

ただ欲を言うとテレビみたいに完全になめらかな動画というわけではない。テレビが1秒間に「30コマ」を表示してるならば、ソフトバンクの電話回線を使ったiPhoneだと「5コマ」くらい。カクカクした動画になる。まだちょっと限界がある。

「オレは放送局になりたい」。すげーのやりたい。もっとなめらかな映像にしたい。

○なめらかUstreamへの道

高速無線インターネット網に接続することにした。

「イー・モバイル」、ドコモの「FOMAハイスピード」、あるいは「WiMAX(ワイマックス)」など会社がいくつかある。全部に共通して言えるのは、ふつうの電話回線よりもずっと速いスピードで無線でネットとつなげるアタッチメントを買い、会社と契約をすること。

高速無線のスイッチを入れ、もう一台ルーターという機械をかませると、電波がiPhoneにつながる。

iPhoneとルーターを電波でむすび、ルーターには高速通信のアダプターがささっている。これで電話回線よりはぜんぜん速い。電話で「4コマ」ならこれなら「10コマ」いける、と。Twitterでいろんな人からのアドバイスを聞いた。

最初はイーモバイルに契約しようと思った。料金的には月にあまり使わないと1000円、最大限に使っても5000円だという。

しかし話を聞くうちにわからなくなってきた。

「やっぱり電電公社だ」ということでドコモのFOMAハイスピードの話も聞いてみると、プランにもよるけどイーモバイルよりちょっと高い。ちなみにメーカーからいっさいお金もらってません。下限が1000円の上限が6000円。ただ、ドコモのエリアはとても広い。

FOMAハイスピードを勧めるお店の人には「ネットブックのパソコンを無料でプレゼントするよ」と言われた。でも通信機器だけ欲しいからパソコンいらない。かといって「パソコンいらねーよ」もおかしい。プランも値段も変わらないのに。

ドコモ、得すぎて意味分からない。

â—‹WiMAXã‚’å°Žå…¥

迷ったあげく、最終的にWiMAXを選択した。

今後エリアが拡大するらしい。またTwitterの人たちの話だと東京23区内なら問題ないという。

プランの話もいちばんわかりやすかった。「380円から5000円」という価格帯。イーモバイルやFOMAハイスピードと甲乙つけがたかったけど、WIMAXなら東京23区内の野外でチャリ乗って中継するということに関しては悪くない。またどんなに使っても5000円。

さらに殺し文句としては「15日間は無料で試せる」。解約しなければそこから初めて課金される。

ちゃんとお試し期間があった。

ワイマックスを買って、さっそくハンドルにiPhoneを固定し、ルーターも買ったんで胸ポケットに入れて受信してiPhoneと接続。ちょっとしたことでも通信が速くなってるのが体感してわかる。電話回線よりもめちゃくちゃ速い。メール見るのでもなんでも。これは期待できる。

電器屋からの帰りしな、さっそくUstream配信してみた。

伊集院光が自転車で疾走してる画面がネットで見られる。WiMAXの成果で、コマ数も前にやった電話回線の倍くらい。けっこうなめらかになった。一生懸命見てると酔うくらいよく動く。

○マイクを改善

問題がひとつ。

音声にボーボーボーボーと雑音混ざってる。風を切る音だ。iPhoneの内蔵マイクを使っているから、おもいっきり風を受ける。

音にこだわる仕事で音に関しては相当一生懸命やっている。伊集院光が作った放送で音がそんな状況じゃダメだろう。

外付けマイクを買おう。

マイクをiPhoneから出して、胸の近くにピンマイクみたいな性能の良いのをつけて、喋りながら自転車で走ろう。実況しながらとか思い出を喋ったりとか。

iPhone中継するコネクタにつけるプロ仕様のマイクがある。やついいちろうが買ってるらしいと。かなり調子いいらしい。

ただ最初に買ったiCrew(アイクルー)というアタッチメントが防水仕様でぎちぎちに作ってあるから、そこにマイクをつけちゃうと、ハンドルに固定するまた別のマウンターを新たに買い直さないといけない。なのでiPhoneのヘッドフォンとマイクの両方を兼ねた、ジャックにさせるマイクを買えればいい。

ヘッドフォンをしながら自転車に乗っちゃうと道交法違反になってしまう。厳しい警官だと首にかけてるだけでとめられる。マイクは欲しいけどヘッドフォンはあらぬ疑いをかけられる。ヘッドフォンはいらないから高性能のマイクが欲しい。

でもそんなパーツがどこを探してもない。 「よりいいヘッドフォンがついてるものでマイクなし」はある。「マイクに特化した商品」がない。

結局マイクはちゃちだけどヘッドフォンはついてない商品を見つけた。それで配信したところ「音がよくなった」という反応がきた。とはいえ少しはボーボー言って風の音を拾ってしまう。

ここで昔、生中継じゃないけど録音用に機材をいじった経験を活かしてみる。

ガチャガチャの小さいカプセルがある。その横に切れ目をいれて、下のほうに空いている空気穴を少し大きく広げる。そこにコードを通して胸のところにつけたとき、上の部分だけ丸く穴をあけると、「風は逃げるけど声は中に入っていく」という「風防」ができる。

昔の20円ガチャガチャのカプセルがちょうどいい。それで風の音が入ってこないようにできる。

○再挑戦

いよいよUstreamで改めて生放送。

「ちい散歩」的に「ここではこういう思い出があった」みたいなことを喋りながら自転車を漕いでみた。

すると、それをいろんなところで聞きつけた人が1,500人、1,600人ほど見てますと。

自分の無知で準備には右往左往、紆余曲折したけど、それほど大きなお金じゃなく手に入る一揃いで、それだけの生中継ができる。

○iPhoneの問題点

また問題が出てきた。

自分はiPhoneで中継してるのに、Ustreamというソフトの会社の決まりで、その中継をパソコンでは見られるけど、肝心のiPhoneで見ることができない。

Twitterで詳しい人が言うことには、アメリカにあるUstreamの会社にメールで「ぼくの放送をiPhoneで見られるようにしてください」という嘆願書を出して承諾されると見られるようになる。

それはiPhoneアプリケーションに「公序良俗に反するものを配信してはいけない」という決まりがあるからだと。なので誰がどういう目的でやろうとしてるのかの審査がある。「だいたい英文でメールを送ると4,5日で帰ってきますよ」という話。

「自分はサイクリングのシーンを中継したり日常を中継したいんです。Ustream様、おねげーでございます」。

特に問題がなければ5日後くらいに承諾のメールが返ってくる。

どうやらその中にUstream会社からの「アンケート」が記載されているらしい。ぜんぶの項目にきちんと「ハイ」のチェックをつけたらスタートできるとのこと。一例は「他人の権利を侵さない」で、たとえば「他人の楽曲や作品を流さない」とか「暴力はダメです」とか。

その中に最後に「ヌードを流さない」というのがあるという。

ふと思った。一番最初にUstreamを知ったとき、一回ためしに半裸で配信しちゃってるw

「今後このアドレスでヌードを流さない」だったらオッケーだけど、今までそういう試みをしたことがあるかないかでは、「ある」。

UstreamもTwitterも、もうめんどくさくなってる。


○ふくらむ疑問

というわけで、面白いことに使えないかと思ってモバイルで生中継の配信をやっている。

結果、キリがない。

「iPhoneだけで出来る」という手軽さがいちばん面白い。

ただ、高速移動通信網につなげるルーターを使ったり、長い時間できるために外付けのバッテリーを使ったりとかやると、まったくお手軽感がない。

iPhoneじゃなくてもモバイルPCにweb用のカメラを接続したほうが、おそらくコマ数も画質もよくなる。

あと、これはタレントがやることなのか?

今後どういう感じになってくるのか。

変な話、何回もやってると、「伊集院、次はどうなるんだろう?」と期待してくれる人が出てくることへの、嬉しさと不安がある。

仕事としてはやってない。今後おもしろいことをやるための知識の蓄積や、努力としてはやってる。Twitterも含めて。

家で「ガチャガチャのカプセルより見た目がいい」という理由でチョコエッグのカプセルを切って、安全ピンで留めて、防水もいい、いかにも工業製品というかたちのマイクの風防を作ってみた。

そのあたりから、何をやってるのか職業がわからなくなり始めた。

今は迷宮入りです!


「迷宮入り」と言いながら、伊集院光は2月25日(木)の現在でも新しい動画を生中継で「テスト配信」として不定期的に流し続けています。

その名も「伊集院光のはいしん」。著作「伊集院光のはなし」DVD「伊集院光のでぃーぶいでぃー」に続く『伊集院光の』シリーズということになるでしょうか。

若干ネガティブな発言もありましたが、今後もTwitterIDHikaruIjuinでいつ告知するともわからない神出鬼没の配信がおこなわれそう。

深夜ラジオの達人が、ここへきて新しい「あそび」を手に入れたようです。