seraphyの日記

日記というよりは過去を振り返るときのための単なる備忘録

児童ポルノ法が私に及ぼした実害と、今後増えると予想される家宅捜索令状

今回の日記について

大変亀レス的、且つ、私的な話題でネットで晒すのも恐縮なのですが、コンピュータに関係しなくもない経験をしたので、なにかの役に立つかもしれないので日記として残しておきます。


事故や犯罪被害をうけた人は、「まさか自分が、こんな目に遭うとは思っていなかった」と皆、そう言うそうです。
私も、こんなことが自分の身に起こるとは思っていませんでした。

しかし、誰にでも起き得ることであり、だから記録として残す価値はあると思いました。

事件の内容

今年の二月、早朝の6時から警察に叩き起こされて、3人がかりで四畳半のアパートの家宅捜索を受けました。
はじめ自分の身に何が起こったのか、まったく分かりませんでした。


2月の初旬でしたが、4月リリースにむけて仕事の忙しい時期だったので、そんなに寝てない状況でした。
まだ寝不足な朝っぱらから、尋常ではなく激しくチャイムが鳴らされるので何事かとドキドキしながらドアごとに、なんでしょうか? と尋ねたら「警察です」というので何事かと思ってドアを開けた訳です。

すると、いきなり警察手帳を見せられて、このアパートから違法なファイルが送信されているから家宅捜索します、とB5のコピー用紙みたいなものに私の名前が書かれた裁判所の令状とかいう紙を見せられました。
児童ポルノ禁止法違反の疑いによる捜索差押令状でした。
はじめて令状をみたのですが、裁判所の令状が取られるなんて、いったい何事!?!?と思いました。


会社が借りてくれた、このレオパレスは、アパート全体で1個のIPしかない共有型らしく、外からみたら、だれが送信もとかはIPアドレスだけでは分からないので、レオネットに契約している全住人の部屋を調べるとのことでした。

一応、法学部卒業なのですが、まさか自分が令状が取られるなんてことは予想もしていませんでした。

裁判所の令状には「児童ポルノ法違反」とあり、まさに私が犯罪者として捜査される立場であることを示してあり、なんでオレ疑われてんの!? なにやらかしちまったの!? という恐怖に似たようなものがこみ上げてきた覚えがあります。


「パソコンは何台もっているか」「今、電源は入っているか?」など聞かれ、奥に普段使ってない検証用OSの入ったノートパソコンがあるので取りにいこうとしたら「パソコンには触れないで!」と怒られたりして、電源つけっぱなし(スリープ)になっているiMacに案内すると、ログインしろというのでログインして、捜査官がiMacの中身を調べ始める。
「捜査するのはパソコンだけで、それ以外は捜査しませんから」という説明をうけたのですが、そうはいっても部屋に何があるかは一目瞭然で、平積みされている漫画本とプログラミング関係の本をみて、コンピュータ関係の人ですか? とか聞かれたり。(でも、はじめから分かっていたと思うんだけどね。)


後ろで見ていて、当たり前なんでしょうが、何を探しているのかはいってくれません。
片っ端からファインダーで覗かれたりスポットライトで検索かけられるのは気分のいいものではないです。


私も男ですから多少はエッチな画像もあるし、児童ポルノ法といえば実在・非実在問わず20歳未満の未成年の裸であれば即アウトな法律なので、今パソコンにある画像の何パーセントかは違法と言われるかもしれない、という漠然とした恐怖がありました。(画像投稿サイトのボランティアのメンテナもしているので、そこのサイトバックアップが大半でしたが。)*1
一個でもあれば有罪にできるでしょうし、起訴するか否かは取り調べる側で決めることですから。


それで、捜査員が、Applicationsフォルダを探して「Cありません」「Lもありません」みたいなことを報告していて、はじめ何かなと思ったが、どうやらファイル共有ソフトを探しているらしく、Cはカボス、Lはライムなんだろうなぁ、と気づくと、ようやく事情が分かってきて、どうやら、このアパートから、誰かがP2Pのファイル共有ソフトで児童ポルノを共有したのだろう、と気がつきました。


2月の時点では分からなかったのですが、児童ポルノ規制強化でプロバイダがウェブ経由での流通をアクセスできなくする努力のおかげでウェブに公開される児童ポルノは激減したらしく、かわりにP2Pを使ったファイル共有での拡散が当時は広がって摘発件数が増加していたらしいと、この事件後の 3月ごろのネットニュースで見聞きして、ようやく児童ポルノがどんな状況なのか分かったのですが…。
(で、たぶん、P2P撲滅キャンペーンみたいなことを警察内部でやっていたから2、3月の摘発件数が激増していたのではないかと。)


で、私は去年の8月から東京に出稼ぎにきて、それにあわせて9月ごろにiMacを買ったので、そもそもファイルを溜め込んでいないので、画像や動画を探しても、そんなに出て来るはずがなく。(サイトバックアップ分ぐらい。)

探しているものがみつからないらしく、「おかしい、あなたぐらいの年齢の独身男性なら、もっと猥褻なものがあっていいはずだ」とかいわれてしまう。


今考えると、どれだけ決めつけて捜査していたのかを現す、かなりの暴言のように思えるのですが、そのときは、ああ探しているものが無かったんだ、ということの安堵感のほうが強かったのも確かでした。


結局、探しているのは数分ぐらいの動画で、このパソコンには、そもそも動画なんて数本もないはず。(iMacやアプリケーションにプリインストールされている説明動画とかぐらい?)
いくら探してもみつかるはずがありません。


「P2Pは?」と問われたので、「ファイル共有ですよね? やりませんよ。」と答えると逆に真顔で「どうしてP2Pをやらないのですか?」と尋ね返されてしまって逆に困惑してしてしまいました。

一応、この業界で働いてますから、と答えたのですが、いったい、どうゆう事前情報があったのか知らないですが、どうして私がP2Pファイル共有をやっていると思われたのだろうか。そのところが、とても気持ち悪い。


それで、ここではなかった、と分かった様子で、次の部屋の捜索に行ってくれたのですが…。

捜査を振り返って

もちろん捜査が終わりましたとか、そうゆう説明はいっさいなく、あわただしく次の部屋に向かっただけです。

思い起こせば、お邪魔します、とかお邪魔しました、とかの挨拶はないんですね。

あらためて説明し直すと、家宅捜索とは「有無を言わさず部屋に踏み込んで無理矢理パソコンの中をかき回して無言で帰ってゆく」、そんな感じです。


一時間ぐらいの捜査でしたが、寝起きと緊張で、昔短距離を全力疾走したあとで貧血で気分が悪くなるような状態で、しばらく横にならざるをえませんでした。
もし体調が優れなかったり、抗うつ剤でも飲んでいるような状況であれば、かなりのダメージだったと思います。
(もし、同居人のお年寄りがいるならば、おばあちゃんが事情も分からず、いったい何事なの、なにをしでかしたの、とか、かなりの心労をかけることは間違いありません。私でも、かなり動揺して、翌日ぐらいまでは、いろいろ考えてしまって仕事に手がつかないぐらいでした。)


この話を友人にしたら、「警察って捜査するときには、あらかじめ目星をつけてから来るっていうぜ。お前、犯人だと疑われていたんだろうな。」とか言われて、ああ、やっぱり疑われていたのか、と改めて思いました。


実際、一番最初に家宅捜索をうけたのが私の部屋だったわけだし、寝起きだったので、よく覚えていないが、玄関をあけたときから「あなた心当たりありますよね」みたいなことを言われた記憶があります。

あと、「あなたぐらいの年齢の独身男性が…のはずがない」とか「どうしてファイル共有をしないんですか」とか、言葉の節々に、犯罪者をみる偏見を感じられないこともない…。


事前情報としては年齢・職業・出身地、顔写真などは簡単に調べられるので、「田舎から出稼ぎにきたコンピュータに詳しいが一人作業が好きなモテない中年ブサ男 = 滑舌が悪く人間関係がうまくゆかないのでネットに慰みをみつけてバランスをとるしかなく、成人女性が怖いから第二次性徴を迎えていない幼女にしか性的興奮を覚えない、どうしようもないロリコン」とかいうステレオタイプ的図式を思い浮かばれてしまったのかもしれない。

ここまでひどい連想かは知らないが、一般人はともかく、仕事で捜査している警察の人間が、私を第一に考えるということは、過去事例からして、実際に、私みたいな年齢や職業が多かったのかもしれない。


あるいは友人曰く「Facebookのプロフィール写真をみて、人相悪いからじゃない」とかいう意見も…。
たぶん、警察も使っているだろう、と友人はいっておりましたが、たしかに、そんな気がします。
なんか、それもありそうな気がしたので、Facebookの写真もかえました。
見た目が悪くても中身で勝負とかは、さすがに犯罪の嫌疑をかけられるまでとなると、そうも言ってられませんので。
(このレオパレスの物件が、どの程度のものか、私が契約したわけでも金を払っているわけでもないので知らないですが、外国人や一時的な出稼ぎ労働者が使う良くない印象を警察がもっていた可能性もあるかもしれません。近所からのクレームが多いアパートのようです。私も、その住人の一人なわけでして。)


結局、このレオパレスのどの住人がファイル送信者だったのかは警察も教えてくれるはずがなく、そもそも、ちゃんと事件が解決したのかもわかりません。


私が思うに、この木造築30年のレオパレスは壁も床もうっすいので隣の人のしゃべり声は聞こえるし、朝の6時からドタバタやれば、このアパートの全住人に気づかれると思うんです。

朝の6時から7時まで私の部屋で捜索していたので、異変に気づいた犯人は、ヤベ警察来た!?と感づいた時点でファイルを消すのに十分な時間はありましたよね。


もし、これで犯人がわからなかったとかいうと、私は何のために家宅捜索されたのかわかりません。
(違法送信は停止されたと思いますが。)

教訓

今回の私の教訓というか経験からは

  • 自分が何も悪い事していなくても、誰かのとばっちりで簡単に令状は取られる。
  • 令状を拒むことはできないので、すべて開示させられる。
  • 私物を検査され、捜査記録として、さまざまなシリアル番号などを記録されても正当な捜査記録なので文句はいえない。

という現実を知る事ができたことですかねぇ。


イヤー、大変な目に遭いましたね、とか思ってませんか?

ザマァ、みたいな感じで茶化す知人もおりましたが。おまえがやられてみろ、って感じです。


自分はロリコンじゃないし、妻の目も厳しいからエロ画像なんてHDDになんて入れてないよ、とか思ってませんか?

私も、そうです。ロリコンじゃないし、エロ画像も溜め込んでいません。違法アップロードもしてません。


でも、家宅捜索をうけたんです。令状をとられたんです。

これ、人ごとじゃないですよ。ほんと、まじヤバイですって。

結局、「児童ポルノ法」とは何なの?

児童ポルノ法は、この事件に巻き込まれるまで、あまりよく知らなかったのですが、
この法律は、「犯罪被害にあった子供の人権を守ることを主目的とした法律ではありません。」

端的にいうと、

  • 実在しても、しなくても、2018歳未満の裸(男女問わず)をすべて犯罪にしようとする趣旨の法律です。*2
    • 現時点では配布を目的としない単純所持は合法です(6/25修正)
    • 現時点では実在しない児童(架空の児童)は合法です(6/25修正)
  • 猥褻でなくてもダメです。(単にお風呂に入っているだけでもダメ)*3
  • 二次元でもダメということにしようとしてます。

誰得なのか、よく分かりません。*4
まず、目的がよくわかりません。

だれが、こんな法律を通そうとしたのか、もうすこし、関心をもつべきでした。


今なら、私は児童ポルノ法に完全に反対です。

犯罪被害にあった子供の救済や保護のための法律は必要ですが、児童ポルノ法は、その役割ではありません。

たぶん、西洋系の文化の人がはじめた現代の魔女狩りの一種のような気がします。

*1:児童ポルノ法が、かなりヤバい法律らしいという噂は知っていたのですが、まさかで自分が家宅捜索されるなんて思いもよらなかったので詳しく調べた事も無く、家宅捜索をうけたときには、それがどんな場合に罪になるのかなどの知識が十分にありませんでした。警察は、容疑だけは伝えたのですが、具体的に何ですか?と尋ねても何も答えず、何を探しているのかなど全く教えてくれないため、とても不安でした。もし、何を探しているのか見当がついており、法的に単純所持なら安全であると確信がもてていたのであれば、どんな画像が発掘されようと大丈夫だからと、もうすこし動揺せずにいられたかもしれません。 (2012/6/18追記)

*2:日本の法律では、実在児童の犯罪被害の証拠である写真や映像を取り締まることを目的としていると強調されていますが…。世界的な風潮は、それよりも広域な猥褻物禁止が主目的で、だから日本でも、たびたび非実在や二次元を違法にしようとする動きが出るようです。6/25追記

*3:高学歴で一流医大を卒業できるようなリベラルな方に言わせると、海外ではAKBは児童ポルノまがいだと批判されているそうですよ。ふざけんな。

*4:アメリカでは未成年の女性がチャットで知り合った複数人の男性に自分の裸の写真を送ったところ、児童ポルノ法違反で自分が捕まる = 犯罪者にされるという事例も起きています。つまり、世界的な風潮である児童ポルノ禁止法は、その名のとおりポルノ禁止法であり猥褻物の取り締まりや思想犯を吊るし上げることが主目的であって、性犯罪者を摘発したり児童虐待を防止したり子供の人権を保護することを目的とはしていません。児童ポルノ法は女性からすれば猥褻物が減るからという理由で肯定的に思われているように想像するのですが、この事実の気持ち悪いところは、裸を犯罪とするところであり、行為ではないところです。イスラム教では女性が裸をみせることは罪だし姦通は重罪なので、裸を人に見られ、あまつさえ姦通までしたとしてレイプの被害者であるはずの年頃の女性が縛り首にされることも珍しくないようですが、このように、裸そのものや、姦通そのものを罪とすることが女性にとって逆に恐ろしい結果になると思いませんか??

「違法ダウンロード罰則化」

「違法ダウンロード罰則化」は、もっとやばい!?

もう一つ、びっくりした法律が試行されようとしています。

違反ダウンロードの刑事罰化。


違法ダウンロードは犯罪だよね、そんなこと私はやってないから関係ない、、、とはならない。

自分が正規のコンテンツを買っているとしても、関係なくはならない。


むしろ、沢山、正規の曲をもっている人ほど無実証明するのが大変かもしれません。

  1. こいつ沢山曲をもっているが本当に金払っての? と誰かが疑いをかけて権利者に密告する。
    1. もしくはJASRACが業者に頼んで違法そうな人を見つけ出す。(これは、ふつうにやりそうです。) *1
    2. もしくは密告に懸賞をかける?(最近、刑事事件で懸賞を使うようになっているので、ありえない話もないかと。)
  2. JASRACや、音事協やCPRA、音制連の人が警察に、どうやら違法ダウンロード被害にあってるらしいんですけど、と相談する。
  3. 法律に基づき正式な手続きで裁判所からの令状がとられる
  4. ある朝、突然、警察がやってきてパソコンとスマホとiPodが押収され、iCloudのパスワードも要求され検索される。
  5. 例えばiCloudに正規の方法で入手した音源があるが、正規の方法で入手したと証明することができない。「ダウンロードは犯罪だと知ってますから、そんなことするはずがありません。でも、もしかしたらダウンロードしたかもしれません。ごめんなさい」(=故意犯)と言ってしまう。有罪確定。

という話となるわけです。


前後は架空ですが、すくなくとも、太字のところは現実に起きます。


みなさん、もっとよく考えて!!!

私はソフトウェアを作っているという意味で著作権者の側だし、権利者としては誰かが正当な代価無しでコンテンツにただ乗りしているのは許せないのは正しい感覚だと思います。
フリーで提供したのに、だれかが、それを有料で販売していたら、たぶん、私も怒ります。
そうゆうことですよね、感覚的には。
コンテンツのただ乗りを許さない、という気持ちというのは。


が、刑事罰を作るならば、もう少し慎重さが欲しく思います。


実際のところ、警察は令状なしに取り調べる事はできないけれど、大抵の人間は、取り調べられたら何らかの犯罪として検挙されえるものです。


たとえば、カバンの中に友人宅にもってゆく梱包用のNTカッターナイフと粘着テープをもって町を歩いていたら、警察に呼び止められて尋問されたとします。別にやましい事はないので、中身をみせたら、鞄の中にしまってあったとしても、即、アウトで警察署に連行されます。(令状がなければ見せる必要はないはずですが、たぶん、見せろというでしょうね。断るのは、かなり大変というか、実質無理っぽいです。)
仮にこれが、凶器にもピッキングにも使えない只のプラスドライバーだったとしても、工具の不法所持でアウトでしょう。
いずれも軽犯罪法ですが、有罪にすることができます。
2009年の秋葉原では、そうゆうことが本当に横行していたことはネットニュースでも話題になりました。


また、震災に備えて鞄に10徳ナイフを持ち歩いていたら任意同行を求められナイフの不法所持で書類送検されたケースもあります。(有罪で、且つ、当然のように写真撮影や指紋採取等が行われます。)
仕事道具のナイフを鞄にいれていたフィギュアの造形師が秋葉原で摘発されたり、キャンプ用の車の中にナイフをいれてたら捕まった漫画家もいましたね。
このようにネットで調べれば沢山の人が人権侵害にあってます。
どう考えても警察は法律の運用を間違えているでしょう?


でも、一般人は、だまって指紋採取されて写真とられて罰金払って前科者になるのです。
たぶん、そんなことが自分の身にふりかかるとは、ほんの数分前まではおもいもよらなかったと思いますが。


刑法とは、そうゆうものなので、だから一番重要なのは、しらべさせないこと = 令状を取られないようにする事、だと思うわけなのです。
(それが必要だから刑事訴訟法というものがあって令状という仕組みがあるわけです。)


また、損害賠償とかの民事だと訴える側も訴えられる側も双方が頑張らなければならないわけですが、
刑事罰であれば、国家による拘束監禁・強制的な取り調べが可能なわけで、訴える側は警察にお任せで言うだけで終わり、努力する必要がないんですよね。

なので、簡単に訴えることが可能になったりします。
訴えるだけなら簡単にできます。
そのあと誤認だったとしても、警察はともかく、訴えた側が責任を問われることもないでしょう。


たとえば、岡崎中央図書館事件では、図書館のシステムがバグっていて一秒間に1回のアクセスをしばらく繰り返すとシステムが停止したように見えるため、警察に、どうやら一秒間に一回の頻度でアクセスを繰り返す人がいて迷惑している、と相談したところ、アクセスしていた人が逮捕されてしまう、という、あまりに理不尽な事件が起きています。
岡崎中央図書館は自身のシステムに不備があったことをあとで知りましたが、訴えを取り下げませんでした。


あなたが、どこかのホームページにアクセスしたら、たまたまバグを踏んでしまってシステムがダウンしてしまったとき、システム側の管理者が無能で自分の責任だと分からなかった場合、あなたがサーバにアタックしたと訴えられて、警察に逮捕されて取り調べをうける、ということです。

もちろん、たぶん無罪を証明することはできるでしょうが、それまでに20日間は勾留されるかもしれません。パートやアルバイトだったら、本人がどうであれ、仕事ができないのならクビにされるでしょうね。試験や大切なイベントにもゆけないかもしれません。友人たちには、おまえ、なにやらかしたんだ?と好奇の目に晒されるのは間違いないでしょうね。
そのうえ、訴えた側は「我々の権利が侵害されていると確信していた。事実でなかったのは大変遺憾ですが、捜査は警察の方に任せており云々」とでもいえば、何もとがめられる事はありませんので、言ったもの勝ちになるでしょう。


刑事罰化するということは、そうゆうことが可能になってしまう、ということです。*2


犯罪者が逮捕されるという前に、まずは罪の有無をとわず嫌疑をかけられたら家宅捜索をおこなわれる、ということを、よく考えて欲しい。


たぶん、刑事罰化を望むひとは、そこまで考えてなかったのだと思うのです。
それが、無実の人の人権をも制約するということに気づいていないか、もし取り調べをうけても、やましいことがなければ開示すればいいじゃないか、なんて「人ごとのように思っている」程度なのかもしれません。(それが、いかに重大な結果を招くかも知らずに!)


ですが、本当に我々の人権を著しく制約する必要があるのでしょうか?

その意味で、私は、この法律改正にも反対です。



あっという間に決まってしまって…。(2012/6/24追記)

「違法ダウンロード刑罰化」に関する改正著作権法は、今年の10月1日から施行されることが決まってしまいました。


多くのツイートやコメントをいただき、ありがとうございました。
衆議院可決後にコメントが増えたので残念だったのですが、私ひとりではどうにもならないので、何か問題がありそうだ、と気づいていただけたなら、とりあえず私の役割は果たせたかと思います。*3 *4


もともとブックマーク数300しかないブログで*5、一つの記事に10000pv以上に耐えられるような万人向けに校正された文章ではなく、ここにいまさら手を入れてもゴテゴテとなるだけで、終わった出来事の日記でもあり、きれいにまとまらないと思いますので、参考までに以下のリンクを上げるにとどめておきます。

  • 日本弁護士連合会 :「違法ダウンロード刑罰化」に関する著作権法改正についての会長声明

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120621.html

  • 高木浩光@自宅の日記 : ダウンロード刑罰化で夢の選り取り見取り検挙が可能に

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/


※ 著作権法のダウンロード刑罰化を白紙に戻す運動がはじまれば、私も署名したいと思います。

でも補足を一つだけ。

ツイートの中で、ダウンロードしてなければ捕まらないだろ、さわぎすぎだ、とおっしゃる方が居られましたが、

  • まずCDを買うなりレンタルしたものをリッピングし、一般的なビットレートのMP3かAACに変換したとします。
    • DVDは今回の改正で私的複製も違法になってしまいましたが、CDは大丈夫ですよね??
  • 今回のケースのように、とても都合のいい適当な網で、学生寮なりアパートなりまるごと家宅捜索するとします。
    • ある部屋のiPodから出てきたMP3は、ネットで違法にアップロードされているMP3と寸分たがわず同じものでした
      • 部屋には購入されたCDがあるから、この人は違法ダウンロードしていないといえるのか?
      • 部屋に購入されたCDがないから、この人は違法ダウンロードしているといえるのか?
        • CDレンタルを待ちきれない音楽愛好家で、発売後、すぐに購入して、まだ高く売れるうちに、すぐに中古店に売却したのかもしれませんよ? (著作権法上、これは合法ですよね?)
    • あるいは、同じ曲がみつかったが、ファイル形式やデータは一致しなかった場合
      • 本当にレンタル等して、異なるビットレートやエラー補正の有無の違いによってデータが一致しないのか?
      • ダウンロードしたものをビットレートや形式変換等しているとは考えられないか?
        • そうだとして、それは立証できるのか?
        • あるいは無実を証明できるのか?
        • 冤罪にならないと確実に言えるのか?

誰かを捕まえて罰したいという法律なのは確かですが、そもそも原理的に犯人の特定は推定によらざるを得ないと考えられますが、どうでしょうか?


というか、アップロードは不特定多数にコピーをばらまくことになるため大きな損害を与えますが、ダウンロードは一人が1つ盗むだけの罪です。*6
万引は犯罪ですが、それに公権力発動して捜査員を何人も投入して家宅捜索して3000円のアルバムひとつ盗んだ罪で立件するとか、もはや、ただの見せしめショーでしかないような気がします。*7


法律の専門家もおかしいといってる法律なので、たぶん、法律がおかしいのだと思います。
これをおかしくないというならば、なにか宗教にも似た「神を疑ってはならない」みたいな信念があるのか、単にパソコンのことをあまり知らないのか、そもそも良く考えていないのかな、と思います。

*1:違法アップロードの検出ツールをプロバイダに売り込んでいるのは確かなようです。 http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201206200382.html このツールが誤検知して、それを鵜呑みにしてプロバイダが誤遮断した場合の責任はプロバイダがとるのか、そんなことが許されるのか疑問ではありますけど。6/25追記

*2:そうゆう嫌疑をかけられたくなかったら、ネットから曲を購入するのは今後は止めて、お店でCDを買ってね、というのであれば、よほどたちの悪い法律といえます。

*3:はてブの仕様がよく分からないのですが、ツイートはブログの最新の日記のコメント欄につくようで、こちらで多くのツイートをみることができます。http://d.hatena.ne.jp/seraphy/comment?date=20120614#c

*4:いただいた沢山のツイートのノードグラフとかクラスタ分析とかできたら有意義かなぁ、と漠然と考えております。

*5:TopHatenarで上位2%を切るのが目標でした

*6:当然、それが違法にアップロードされていると知っていて、それをダウンロードするならば、です。アップロードした人が、きちんとしたサイトの体裁をとっていて「著作権者の承諾を得ている」とか「これオレの曲、みんな聞いてくれ」とか言ってアップロードし、それを信じてダウンロードしたならば安全のはずです。もし、これを罰するならば、なにを信じていいのかわからなくなります。

*7:高木浩光さんの分析によると最近は中高生ぐらいがp2pファイル交換利用を増やしており、よって家宅捜索を受けるのは中高生ぐらいの難しい年頃のお子さんを抱えた一般家庭ということが推測されます。IPアドレスからは誰かまでは特定できないため、息子、娘のために父親か母親が罪をかぶるか、両親のせいで子供が罪をかぶるようなケース、あるいは兄弟間のなすりあいもでてくるかと思われます。