ドワンゴvsクリプトン

結論を先に言えば、クリプトン伊藤氏の現在暴走中なのである。
彼がこの問題に首を(公に)突っ込まねば、単なるドワンゴのミスで表向きは済んだ話なのである。

まず、両者のBlogをキチンと読んでみよう。

ドワンゴ社(ニワンゴ社)
「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」JASRAC登録にいたる経緯
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000733.html

クリプトン社の謝罪に対するコメント
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000744.html

クリプトン社様からの着うた配信の経緯(2)に関して
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000751.html

クリプトン社
着うた配信の経緯
http://blog.crypton.co.jp/mp/2007/12/post_61.html

着うた配信の経緯(2)
http://blog.crypton.co.jp/mp/2007/12/2_3.html

まず・・・・
ドワンゴ社が、ミスっちゃった・・・

1.クリプトンとの間でアーチスト表記を「作家名+featuring初音ミク」の表記で登録する依頼を受けていたにも関わらず、実演家名が「初音ミク」としてJASRACの検索サイト「J-WID」登録されてしまったこと

2.さらにこの楽曲がJASRAC管理楽曲になったことで、この動画を素材とした二次的な創作(いわゆるMAD作品)、楽曲の演奏やBGMとしての利用に関しても、使用料が発生してしまう場合がある

1に関しては、ドワンゴ社側のミスで、謝罪してますね。届け出の修正も行われているようで、問題の解決の方向性は見えたと言って良いでしょう。
2はどうなるのだろう?JASRACの硬直な体制が問題ですな・・・・

さて、これで終わっていれば別に大した問題でもない事なのですが・・・・

クリプトン社が、アホな突っ込みを入れちゃった・・・・(絶対にやるべきではない)

ちょっと整理しましょう。

まず・・・クリエイターは誰?

はーい、「ika_mo」氏でーす。

はい、良くできました。

では、初音ミクって? この曲の歌手なの?

はーい、そーだと思いまーす、サンプリング音源としてですけど。

でも、そのひと、その楽曲においてレコーディングしたの?

えっ・・・してないっすね・・・・

ぶっちゃけ・・・それって楽器じゃないの?

曲を作る作業を考えれば・・・・確かにそうですねぇ・・・・

楽器メーカーが著作権を主張するんかい!
という、ちょっと乱暴な考え方もできるのですが・・・・

先生、質問でーす。
じゃ、ドワンゴって何?

ドワンゴは、着うたの配信業者ですから、いわゆる一般の音楽業界においては、レーベル会社と同じ役割ですね。つまり、「複製頒布権」を有する会社ですよ。

先生、ではクリプトン社って?

ソフトウェアメーカーだと思いますよ・・・・

では、どうしてクリプトン社がシャシャリ出てくるんですか?
彼らに何の権利があるんですか?

うん、それはね・・・・
音楽出版権に絡む事情があるんだよ。

もめ事の根本はカネ!
なのですよ。

もっともっとお金が欲しいよぉ!
なのですよ。

楽曲の著作権使用料はJASRACが徴収してくれます。でも使ってもらえなければ、著作権使用料は発生しません。楽曲を誰かに使ってもらうために宣伝つまり「楽曲のプロモーション」が必要になります。楽曲のプロモーションをするのが、「音楽出版社」と呼ばれる会社です。
つまり音楽出版権(著作権)を持った会社が音楽出版社なわけです。
音楽出版権と言うと、混乱するから「複製頒布権」と言い換えても良いですよ。

つまり、宣伝しなきゃ複製物は売れないわけで・・・・
その宣伝にお金をかける企業(団体)が、リスクに対するリターンを要求してくるわけですね。

さて・・・今回、しょせんは楽器屋と同じ立場(厳密には、初音ミクに関わったサンプリング音源の方の人格権も絡んでくるので権利を主張できる部分がある)のクリプトン社が、権利を主張し、かつドワンゴ社もその権利を認めている点は、何でしょうか?

それは、初音ミクというソフトウェアの普及と、キャラクター化など、商業化において彼ら(クリプトン社)が、相応の投資と苦労をしているから。なんです。

もちろん、ニコニコ動画がなければ初音ミクがここまでメジャーになれなかったわけで、両者ともに、複製頒布に対する報酬を受ける権利を持っていて、それは共有されるべきなんですよね。
その利益配分の割合は微妙ですから、まずはその権利によって生じるお金を一時的にどっちかが預かり、時間をかけて協議すれば良いわけです。で・・・独占がどうのこうの、そんな問題も「表に出す必要はない」はずなのです。
仮に一方がそれを表に出したとしても、最終的には「法廷」で争うことで、どっかのアンケートやユーザーの投票で決まる事でもありません。

普通、音楽業界ではこういったゴタゴタは、あまり表に出ません。
なぜなら・・・・

一人のアーティスト(クリエーター)を売り出すためには、たくさんのスタッフの力が必要です。アーティストがスタッフに支えられているのと同様に、スタッフもアーティストに生活を支えてもらっているのです。

スタッフ一人ひとりには家族もいます。その人たちの生活がどうなるか、アーティストによって左右されるといっても過言ではありません。

アーティストの人気がでれば、スタッフの給料もよくなりますが、逆に人気が低迷すれば、スタッフの生活も不安定なものになってしまいます。

言い方は非常に悪いですが、「自分が看板である・商品である」という自覚を、プロアーティストは持っていますし、スタッフもその自覚をもって行動しています。

つまり・・・・
何を間違っても、会社のBlogで口論なんてしませんし、その理由の説明も「大人の都合」としか言いません。
アーティスト(クリエーター)の人生やスタッフの生活がかかっているのですから・・・・

しかし、ドワンゴ社にとっては、独占配信ができないのであれば、最悪、初音ミクがこけたって、それに代わるネタが生まれてくれば良いわけで、ある程度(ニコニコがコケない程度)自身の主張をすることはできるわけです。

問題は、クリプトンの伊藤というオッサンです。
自分たち(会社のスタッフを含む)の苦労を無にする行為をBlogで晒しちゃっているわけです。独占配信をドワンゴにさせる事によって生じる、ドワンゴ側のリスクや自社に対するメリットも考慮せず、Blogで馬鹿丸出ししちゃってます。

ましてや、権利ビジネスの生命線である著作権交渉を忙しさを理由に、自社(とお抱えの弁護士等)で行わないと言うのは、そもそも論外だし、そんな恥部をBlogで晒すのは、言語道断。
外部(フロンティアワークス http://www.fwinc.co.jp/ )に代行するなら、その契約方法(口頭だ、どうだ)に口を出すべきではないのです。(ちなみに、口頭であっても、契約締結には民法上、その口頭を証明できれば何の問題もない。実際プログラム開発のゴタゴタで、メールのやりとりすら裁判上の決定的証拠として有効である。)

こんなゴタゴタが続けば、良くも悪くも、現在配信されている着うたや、今後出版されるであろうCD等の売れ行きは落ち、苦労したクリプトン社のスタッフに報いるお金が激減しちゃうのです。
(少なくとも、11月12月の配信に関して、クリプトンが仕掛けたドワンゴに対する悪印象で相当数の損益を発生させているのは間違いない)

実際のクリエイターが、自分のブログで晒しちゃうのも問題ですが、彼らは「アマチュア」です。先に述べたプロとしての自覚が浅い(というかナッシング)ので、ついつい公開しちゃったのでしょう。
それに対して、まずは配信する出口であるドワンゴが、公に説明をするのは仕方ないのですが・・・・クリプトン社が一々噛みつく必要は、全くないわけです。(たとえ自社の認識とズレテいたとしても、腹が立ったとしても)
挙句に、自社の不手際も表に出てしまい・・・完全なマイナスです。

CGMとして生まれたコンテンツは、どうやって商業化したら良いのだろう?
どんな問題があるのだろう?
そんな課題が見えてきますね。

早々の解決が望まれますな・・・・

それと・・・両社の猛省を求めます・・・・

【追記】

と・・・Blogを書いたあと・・・発見。

着うた配信及び今後の協業に関する共同コメントhttp://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000756.html

はい、これが大人の解決です。

面白かった(よくまとまっている)Blog

http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20071221