こんなこと許されていいのだろうか 踊る自由について

本日(5/16)朝日新聞朝刊文化面に、風営法でのクラブ取り締まりの行き過ぎを指摘する記事出ている。
「風営法違反の店、摘発相次ぐ クラブじゃ踊れない? 時代と法のずれ指摘する声も」
そこでも指摘されているとおり、事態は深刻で、関西、とりわけ大阪ではクラブが壊滅状態、他の地域でもこのまま黙っていたらクラブは壊滅してしまいかねない情況です。
この問題は、昨年から話題になっていて、わたし自身も関西に行く度に、いろいろな関係者にあって話を聞いたり話し合ったりしています。
どうも様子がおかしい・・・。なんでこんなことになってるんだろう。戦前の日本じゃあるまいし・・・。
最初はそんな感じでした。でも事態は刻々と悪くなる一方です。


本来この法律は戦後まもなく、売春を取り締まるために作られたものです。そもそも当時のダンスは男女がペアで踊るものしかなく、これが売春の温床にもなっていたという事情があって許可を受けた店以外でダンスすることを規制するこの法律が出来たようです。でもそのダンスも、今やソーシャルダンスと呼ばれて、風営法の適応外になっています。
今あるような個人で踊るダンスというのは60年代以降に出て来たものです。ですから法律の出来た当時の事情をそのまま今にあてはめるのには無理がある、これがわたしの意見です。なのに今になって突然この法律を持ち出して、これまで十年、十数年と営業して来たクラブを営業停止に追い込む・・・こんな無謀なことが許されていいのでしょうか。


ぼくらにとってクラブは音楽を演奏する重要な創作の場でもあり、発表の場でもあり、さまざまなアーティストや様々な世界の人たちが交流する場でもあります。世間的に誤解を受けてるところもありますが、わたしが世話になってるようなクラブは近隣との関係もうまくやってるし、ドラッグをみかけることもない店ばかりです。でも優良だからいいと言ってるのではありません。そもそも音楽をやる現場というのは、いろいろな文化が、上から下まで、明から暗までが混在するからこそ豊かさを生むのです。ちょっとくらいはねかえった若者がいてもいいし(みんなだってそんな時期があったでしょ)、特殊な髪型やファッションの連中がいてもいい、いろんな国の人たちがいてもいいし、様々なマイノリティがいれる場でもあります。
そういう場がなければ世の中はどれだけ窮屈になってしまうことか。
過度な取り締まりがどういう世界を生むかは、戦前の日本や、自由のない国を見ればすぐにわかるはずです。


若者人口が減っている中で、クラブの経営はかつてのようには楽ではありません。一度営業停止をくらえば、二度と立ち上がれなくなる・・・これが現実です。


そして、もうひとつの問題は、人間がダンスを踊るのは自由である・・・という基本的人権にも関わることを、今回の取り締まりは無視していることです。
人には歌を歌う自由もあれば踊る自由もあるはずです。踊らない自由だってあるし、歌わない自由だってあるべきです。こんなものは法律で取り締まるべきではないとわたしは思います。あくあまでも他人に迷惑をかけたり他人を傷つけないという前提で、これらの自由を法律が保証するべきです。わたしたちはそういう基本的人権の保証された法律のある国家に住んでいるはずです。
そう考えると何時以降は踊ってはいけないとか、指定された店以外では踊ることを禁ずるなどという法律自体が、わたしにはおかしなものに見えるんだけど、間違ってるかな? 
何度でもいうけど、他人に迷惑をかけるようなことは、もちろん許されるべきじゃない。深夜に踊ることで近隣に迷惑がかかる・・・そういうケースが許されていいわけがなく、だったらその場合は近隣に迷惑がかかったことて取り締まるべきではなかろうか。
ダンスすることそのもので取り締まれてしまう今の法律は、どう考えてもオレには合点がいかない。騒音を出さないようにし、近隣にも配慮してる店を客がダンスをしてるという理由で摘発出来てしまうというのはどう考えても問題だ。このままこの状態をゆるしてしまえば、クラブだけじゃなく、客が踊る可能性のあるライブハウスだって取り締まり対象にされかねない。実際、朝日新聞によれは警察は昨年の渋谷のライブハウスであった放火事件を持ち出して、今回の摘発をはじめていると語っているそうだけど、それって、おかしくないか? だってこの場合ライブハウスは被害者じゃない。へんだよ、そんなの。


とにもかくにも、いま行われている取り締まり、わたしはまったく納得がいかないし、こんな世の中を許していたら恐ろしいことになるとすら思っている。


間違ってることが横行してるように見える以上、しかもそれが自分の生活や創作に影を落とすものである以上、ここで愚痴を書いてるだけでなく、はっきりと法律にのっとって、なんらかの運動をしていこうと思っていて、幸い、そういうことをしっかり考えている人たちが沢山いるんで、そんな人たちと手を結びながら、この問題、言い続けていこうと思っている。
近日中にいくつかの組織から声明のようなものが出ると思うので、同意してくれるみなさんもぜひ一緒に考えてください。