雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

共通番号制度への違和感

共通番号制度について大綱ほか関連資料を読んだが、全体として詰まってない。税と社会保障の一体改革は必要だし残された時間は少ないが、ICカードや情報連携基盤の進め方は仕切り直した方がいい。使途の例示として住民の利便性改善ばかり先にきているが、もともとの発端は消えた年金や年金不正受給など行政情報の不正確さに対する問題意識だったはずである。医療サービス利用の追跡を通じた住民の生存確認、現在は目視で行われている戸籍の附票と住民票の紐付けなど、名寄せの議論から逃げずに行政情報の正確性を高め国民からの信頼回復を最優先すべきではないか。
その次に具体的な行政ニーズとして、行政であれば児童手当など現金給付の世帯合算や、エコポイントなど政策的なポイント還元、事前記入型税申告や被災者向け行政サービスの提供、民間であれば保険金支払に必要な居所確認など、新規IT投資を要する具体的な使途を念頭に詰めてはどうか。
また民間開放を先送りすべきではない。現行の住基カードを民間開放できないのは証明書にアクセスしたら4情報を読めてしまうからで、係る問題を解決しないまま新たな認証方式を展開すれば新カードも住基カードと同様に民間開放できない。接続の相手方を信頼できるとは限らない民間開放の具体的な使途を詰めてこそ、必要となるセキュリティ実現方式を検討できる。会議では予算措置の必要性も議論されたようだが、住基カードや健康保険証を置き換える分には新規の予算措置を必要ないのではないか。受益者負担を原則として、新たな財政負担は可能な限り抑えるべきである。
次に「番号」の管理に厳しい罰則を入れながら割と幅広く民間で「番号」を扱うのも問題だ。「番号」の専門家でもない限り何が「正当」かなんて分からない。そもそも問題が起こらないよう「見えない番号」にするか「見える番号」を導入するならば番号授受そのものへの罰則は控えるべきだ。正しい扱い方が浸透するか分からない「番号」の授受を厳しく法律で縛るのではなく、対象者の許諾を得ない不当で目的外の名寄せに対して行為規制をかけるべきである。
情報連携基盤だが何をやりたいかも、さっぱり分からない。名寄せを予防する観点からは「セクトラル+見えない番号」簡便性を優先すれば「フラット+見える番号」で現行案となる「セクトラル+見える番号」は勝手な名寄せを防げない割に仕組みだけ煩雑となる。
政権交代以降、無計画に猫の目のように変わる制度への対応で自治体は疲弊しているのではないか。システム間連携を図るにしても、個別の自治体が繋ぎ込むよりも、自治体システムを集約するのが先ではないか。紙ではなく電子化を前提とするならば、全ての事務を法定受託義務とするのではなく、継続的なIT投資を要するバックオフィスは広域化した上で、窓口事務のみ法定受託義務とした方が負担は小さい。
いまの共通番号制度(に何故か紐づいてる情報連携基盤や次期住基カード)は拙速で予算ばかりかかる割に、何がどう便利になるのかはっきりしない。まず政府CIOなりを任命した上で、行政情報の精度向上や利便性改善の手段として、情報連携に必要な基盤整備を検討すべきではないか。